『デッドプール』(2016年)は、マーベル・コミックスの同名キャラクターを基にした米国のスーパーヒーロー映画。ティム・ミラー監督が手掛け、ライアン・レイノルズが主演。元傭兵ウェイド・ウィルソンが不死身のヒーロー「デッドプール」となり、ユーモアと過激なアクションで復讐を果たす物語。R指定のコメディとバイオレンスが特徴で、2016年2月12日に米国で公開され、全世界で7億8300万ドルの興行収入を記録しました。
基本情報
- 邦題デッドプール
- 原題:Deadpool
- 公開年:2016年
- 製作国:米国
- 上映時間:108分
- ジャンル:アクション
- 配給:20世紀フォックス映画
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あらすじ
『デッドプール』(2016年)は、元特殊部隊の傭兵ウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)の物語。ウェイドは恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と幸せな日々を送っていましたが、末期ガンと診断されます。絶望の中、謎の組織から実験的な治療を提案され、超人的な治癒能力を得る代わりに過酷な人体実験を受けます。治療の結果、ウェイドは不死身の肉体と変形した顔を持つ「デッドプール」となり、組織のリーダー、エイジャックス(エド・スクライン)に復讐を誓います。
ウェイドは、口の軽さと下ネタを交えたユーモアで観客に語りかける「第四の壁」を破るスタイルで、復讐の旅を展開。X-MENのメンバー、コロッサス(ステファン・カピチッチ)とネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)の助けを借りつつ、エイジャックスとその手下アンジエル・ダスト(ジーナ・カラーノ)に立ち向かいます。愛するヴァネッサを救い、自身の人生を取り戻すため、ウェイドは過激なアクションとユーモアで戦い抜きます。物語は、コミカルな掛け合いと血みどろの戦闘シーンが織り交ざり、クライマックスで感動的な結末を迎えます。
解説
『デッドプール』(2016年)は、マーベル・コミックスのアンチヒーローを原作とした作品で、従来のスーパーヒーロー映画とは一線を画すR指定(17歳未満保護者同伴)の過激な内容が特徴です。コミックのファンを意識した忠実な再現と、ライアン・レイノルズの情熱がプロジェクトを牽引。2009年の『X-MEN:ウルヴァリン』でのデッドプール登場が不評だったため、ファンの期待に応える形で本作が製作されました。低予算(5800万ドル)ながら、ユーモア、アクション、ロマンスのバランスが絶妙で、批評家から高い評価を受けました(ロッテントマト83%)。
本作の最大の魅力は、デッドプールの「第四の壁」を破るメタな語り口です。ウェイドは観客に直接話しかけ、映画業界や自身の状況を皮肉るジョークを連発。これにより、シリアスなスーパーヒーロー映画とは異なる軽快なトーンが生まれ、幅広い観客を惹きつけました。また、過激な暴力と下ネタがR指定ならではの自由度を活かし、コミックの過激な精神を忠実に再現。アクションシーンは、ジョン・ウィック風のスタイリッシュな戦闘と、CGを活用したダイナミックな演出で、視覚的にも楽しめます。
社会的なテーマとしては、自己受容や愛の力が描かれます。ウェイドの変形した外見と向き合う葛藤や、ヴァネッサとの関係を通じて描かれる「内面の美」が、物語に深みを加えています。監督のティム・ミラーは、VFX出身の経験を活かし、低予算でも高品質なビジュアルを実現。脚本は、ポール・ワーニックとレット・リースによる軽妙な会話と、コミックへのリスペクトが感じられる構成が評価されました。興行的成功により、続編『デッドプール2』(2018年)や『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)が製作され、シリーズはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に統合されました。
女優の活躍
本作で際立つ女優は、ヴァネッサ役のモリーナ・バッカリンと、アンジエル・ダスト役のジーナ・カラーノです。
モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ)
ブラジル出身のバッカリンは、『ファイアフライ』(2002年)や『ホームランド』(2011年)で知られる実力派女優です。ヴァネッサは、ウェイドの恋人で、ウィットに富んだユーモアと強い精神を持つ女性。バッカリンは、ヴァネッサのセクシーさと人間的な温かさを絶妙に演じ分け、ウェイドとのコミカルな掛け合いでは抜群のケミストリーを見せました。特に、ウェイドの変貌後の再会シーンでは、感情的な演技で観客の心を掴み、物語のロマンティックな軸を支えました。彼女の自然体な演技は、デッドプールの過激なトーンに人間味を加え、作品のバランスを整える重要な役割を果たしています。
ジーナ・カラーノ(アンジエル・ダスト)
元総合格闘家で、『ヘイワイヤー』(2011年)などでアクション女優として活躍するカラーノは、敵役のアンジエル・ダストを演じました。アンジエルは超人的な力を持つ冷酷な戦士で、カラーノの格闘経験が活きた迫力あるアクションシーンが魅力です。特に、コロッサスとの戦闘シーンでは、彼女の身体能力が存分に発揮され、映画にダイナミックなエネルギーをもたらしました。カラーノのタフで威圧的な演技は、コミックのキャラクターを忠実に再現し、悪役としての存在感を際立たせています。
ブリアナ・ヒルデブランド(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド)
若手女優のヒルデブランドは、X-MENのメンバーであるネガソニックを演じました。無愛想で皮肉屋なティーンエイジャー役をコミカルに演じ、短い出番ながら印象的な存在感を示しました。彼女のドライなユーモアは、デッドプールとの掛け合いで笑いを誘い、続編での活躍の布石となりました。
テイラー・ヒクソン(メーガン・オーリリー)
テイラー・ヒクソンはメーガン・オーリリーというキャラクターを演じました。この役は、X-MENのメンバーであるネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)の民間人としての友人として登場する脇役。映画の主要なストーリーラインには直接関与しないものの、ヒクソンの出演シーンは作品の軽快なコメディ要素を強化し、観客に新鮮な印象を与えました。
メーガン・オーリリーは、主人公ウェイド・ウィルソン/デッドプール(ライアン・レイノルズ)と絡むシーンで、作品特有のユーモアとウィットに富んだ雰囲気に貢献。彼女の自然体で少し生意気な演技は、映画のR指定ならではの過激なコメディトーンにマッチし、観客に笑いを提供しました。特に、デッドプールの「第四の壁」を破るメタな語り口と絡む場面では、ヒクソンの反応がコミカルなリズムを支え、作品全体の軽快さを引き立てました。
ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドの友人としての役割は短時間でしたが、ライアン・レイノルズとの掛け合いや、ティム・ミラー監督のスタイリッシュな演出の中で、ヒクソンは若手女優としての可能性を示しました。この経験は、彼女が後に『ゴーストランドの惨劇』(2018年)や『Bad Genius』(2024年)などの作品でより大きな役を獲得するきっかけとなりました。
公開情報では、ヒクソンが『デッドプール』の撮影中に特別なエピソードや事故に遭遇した記録は見られませんが、彼女は当時ほぼ無名の新人女優でした。この作品での出演が、彼女をハリウッドの注目株として押し上げ、アクションやコメディ作品への適性をアピールする機会となりました。ヒクソンのフレッシュな魅力と、短いシーンでも観客に印象を残す能力は、監督やプロデューサーに評価され、以降のキャリアに繋がっています。
彼女の演じたメーガン・オーリリーは、X-MENの若手メンバーと一般のティーンエイジャーを繋ぐ役割を果たし、映画の青春要素やポップカルチャーの雰囲気を補強。ヒクソンの自然な演技は、コミック原作の過激さと人間味のバランスを保つ一助となりました。
詳細補足
モリーナ・バッカリンは、ヴァネッサ役でデッドプールの過激な世界に温かみと人間性を注入しました。彼女のウィットに富んだ演技は、ウェイドとのロマンスをコミカルかつ感動的に描き、物語の心を支えました。ジーナ・カラーノは、アンジエル・ダスト役で身体能力を最大限に発揮。格闘シーンでの迫力と冷酷なキャラクター造形が、映画のアクション要素を強化。ブリアナ・ヒルデブランドは、短い出番ながらネガソニックの個性を際立たせ、若手らしいフレッシュな魅力を加えました。女優たちの多様な演技が、男性中心の物語にバランスと彩りを与えています。
キャスト
- ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン/デッドプール):元傭兵で不死身のヒーロー。ユーモアと過激なアクションで復讐を果たす。レイノルズの情熱が本作実現の鍵。
- モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ):ウェイドの恋人で、強く愛情深い女性。物語の感情的な軸を担う。
- エド・スクライン(エイジャックス):ウェイドを人体実験に引き込んだ冷酷な敵役。『ミッドウェイ』(2019年)などで知られる。
- ジーナ・カラーノ(アンジエル・ダスト):エイジャックスの手下で、超人的な力を持つ戦士。格闘シーンで存在感を発揮。
- ステファン・カピチッチ(コロッサス声):X-MENのメンバー。CGで描かれる巨人で、道徳的な助言者役。
- ブリアナ・ヒルデブランド(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド):爆発能力を持つX-MENの若手。皮肉屋な性格でコミカルな存在感。
スタッフ
- 監督:ティム・ミラー…VFX出身で本作が長編監督デビュー。低予算ながらスタイリッシュなアクションとユーモアを融合させ、大成功を収めた。後に『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019年)を監督。
- 脚本:レット・リース、ポール・ワーニック…『ゾンビランド』(2009年)の脚本家コンビ。コミックへの愛とメタなユーモアを注入し、軽妙な会話で物語を牽引。
- 製作:サイモン・キンバーグ、ライアン・レイノルズ、ローレン・シュラー・ドナー…キンバーグは『X-MEN』シリーズ、ドナーはマーベル映画のベテランプロデューサー。レイノルズは主演兼プロデューサーとしてプロジェクトを推進。
- 撮影監督:ケン・セング…『ステップ・アップ』シリーズなどで知られ、アクションとコメディのテンポを活かしたダイナミックな映像を構築。
- 音楽:トム・ホルケンボルグ(ジャンキーXL)…『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)で知られる作曲家。80年代ポップと現代的なビートを融合させ、作品の軽快なトーンを強化。
- VFX:Weta Digital、Digital Domain他…デッドプールの治癒能力やコロッサスのCGなど、高品質な視覚効果で低予算映画の限界を突破。
総括
『デッドプール』(2016年)は、R指定の過激なユーモアとアクションで、スーパーヒーロー映画の新たな可能性を開いた作品です。ライアン・レイノルズの情熱とティム・ミラーの演出が、低予算ながら高品質なエンターテインメントを実現。モリーナ・バッカリンやジーナ・カラーノら女優陣の活躍が、物語に感情と迫力を加えました。コミックへの忠実さとメタな語り口がファンに愛され、興行的・批評的な成功を収めた本作は、続編やMCU統合へと繋がる重要な一歩となりました。ユーモア、アクション、愛の物語が融合した本作は、幅広い観客に楽しめる傑作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い