アナ・ベレン(本名:マリア・デル・ピラール・クエスタ・アコスタ)は、スペインの歌手、女優、映画監督。スペインの民主化移行期の象徴として知られ、40本以上の映画、30以上の舞台、35以上のアルバムを誇る。ビクトル・マヌエルと結婚し、グラミー・ラティーノ優秀音楽賞やゴヤ賞名誉賞を受賞。
プロフィール
- 名前:アナ・ベレン(Ana Belén)
- 出生名:マリア・デル・ピラール・クエスタ・アコスタ(María del Pilar Cuesta Acosta)
- 生年月日:1951年5月27日(74歳)
- 出生地:スペイン、マドリード
- 職業:女優、歌手
- 活動期間:1961年~現在
- 配偶者:ビクトル・マヌエル(1972年結婚~)
- 子供:2人(マリーナを含む)
生い立ち・教育
アナ・ベレンは1951年5月27日、スペインのマドリード、ラバピエス地区のオソ通りで生まれました。3人兄弟の長女で、父親はホテル・パレスの料理人、母親はビルの管理人を務める労働者階級の家庭に育ちました。幼少期は質素な環境で過ごし、夏は父親の故郷であるセゴビアのCabezuelaで祖母(農村の教師)と過ごしました。この地域との繋がりから、Cabezuelaには彼女の名を冠した通りがあります。
幼い頃から芸術への強い興味を示し、近所の音楽教師エステバレーナに師事してソルフェージュやピアノを学びました。10歳になる前には、ラジオ番組「Gran Vía」や「Conozca usted a sus vecinos」などの子供向けコンテストに参加し、サラ・モンティエルやマリソルの歌を模倣して歌いました。この時期に早くも才能を発揮し、11歳でラジオ番組「Vale todo」で優勝し、注目を集めました。その後、演劇への関心を深め、スペイン国立劇場でミゲル・ナロスの指導の下、演劇を学びました。
経歴
アナ・ベレンのキャリアは、1961年にラジオ番組「Vale todo」でデビューしたことから始まりました。13歳のとき、1965年に映画「Zampo y yo」で主演を務め、この作品の役名から芸名を「アナ・ベレン」としました。この映画は商業的に成功しませんでしたが、監督ミゲル・ナロスに見出され、彼の指導で演劇の道に進みました。15歳でスペイン国立劇場にてミゲル・デ・セルバンテスの「Numancia」に出演し、プロの舞台女優としての第一歩を踏み出しました。1970年まで同劇場のカンパニーに所属し、「Las mujeres sabias」「El rey Lear」「Don Juan Tenorio」などの作品で経験を積みました。
1970年代以降、彼女は演劇、映画、音楽、テレビの各分野で活躍しました。映画では、「Españolas en París」(1970年)、「Morbo」(1971年)、「La petición」(1976年)、「La casa de Bernarda Alba」(1987年)、「La pasión turca」(1994年)など、40本以上の作品に出演。1991年には「Cómo ser mujer y no morir en el intento」で映画監督デビューを果たし、カルメン・マウラやアントニオ・レシネスを起用しました。この作品でゴヤ賞の新人監督賞にノミネートされました。
音楽面では、1973年のアルバム「Tierra」で歌手デビューを果たし、夫ビクトル・マヌエルが作曲した政治的・社会的な内容の曲で知られるようになりました。1986年の「La Puerta de Alcalá」は7週連続でスペインのチャート1位を記録。1991年の「Como una novia」はビクトル以外の作曲家による初のアルバムで、1997年の「Mírame」は彼女のソロキャリアで最も売れたアルバムとなりました。1998年にはフェデリコ・ガルシア・ロルカの生誕100周年を記念し、「Lorquiana」をリリースし、詩と民謡を収録。1996年には「El gusto es nuestro」ツアーで、ビクトル・マヌエル、ホアン・マヌエル・セラート、ミゲル・リオスと共にスペインで記録的なチケット売上を達成しました。
彼女の功績は数々の賞で認められています。2007年にスペイン政府から芸術功労金メダル、2015年にグラミー・ラティーノ優秀音楽賞、2017年にゴヤ賞名誉賞を受賞。また、1986年にフランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受章しました。
私生活
アナ・ベレンは1972年6月13日、ジブラルタルで歌手ビクトル・マヌエルと結婚しました。二人は1971年の映画「Morbo」の撮影で出会い、以降、音楽や舞台で頻繁にコラボレーションしています。夫婦はスペインの民主化移行期(Transición)の象徴とされ、1974年にスペイン共産党に加入しましたが、2019年の「Vanity Fair」インタビューでアナは共産主義からの離脱を表明しました。二人の間には息子ダビッド・サン・ホセ(音楽家)と娘マリナ・サン・ホセ(女優)が生まれ、2008年にはダビッドの娘を通じて祖母となりました。
出演作品
以下はアナ・ベレンの代表的な出演作品の一部です。
映画
- Zampo y yo(1966年):初主演作。少女アナ・ベレン役で芸名を決定。
- Españolas en París(1970年):若手監督ロベルト・ボデガスによる作品。
- Morbo(1971年):ビクトル・マヌエルと共演、後の結婚に繋がる。
- La petición(1976年):ピラール・ミロ監督作品。
- La casa de Bernarda Alba(1987年):マリオ・カムス監督によるロルカの名作の映画化。
- La pasión turca(1994年):ビセンテ・アランダ監督。ゴヤ賞主演女優賞ノミネート。
- Libertarias(1995年):ビセンテ・アランダ監督。
- El amor perjudica seriamente la salud(1996年):マヌエル・ゴメス・ペレイラ監督。
- Antigua vida mía(2001年):アルゼンチンで撮影、セシリア・ロスと共演。
- Cosas que hacen que la vida valga la pena(2004年):ゴヤ賞主演女優賞ノミネート。
- The Queen of Spain(2016年):フェルナンド・トルエバ監督。
TV
- Fortunata y Jacinta(1979年):ベニート・ペレス・ガルドスの小説を基にした人気シリーズ。
- Petra Delicado(1999年):Tele 5のシリーズで主演。
- Traición、Hospital Central、Cheers:ゲスト出演。
舞台
- Numancia(1965年):ミゲル・デ・セルバンテス作、スペイン国立劇場でデビュー。
- Hamlet、Fedra、Electra、Medea:古典劇での主演。
- La bella Helena(1995年):オッフェンバックのオペレッタ。
- Eva contra Eva(2021年頃):マドリードのテアトロ・レイナ・ビクトリアで上演。
音楽アルバム
- Tierra(1973年):歌手デビュー作。
- Calle del Oso(1975年):ビクトル・マヌエル作曲。
- La Puerta de Alcalá(1986年):ビクトルとのデュエットで大ヒット。
- Como una novia(1991年):初のビクトル非作曲アルバム。
- Mírame(1997年):ソロキャリア最大のヒット。
- Lorquiana(1998年):ロルカの詩と民謡。
- Ana Belén y Miguel Ríos cantan a Kurt Weill(1999年):ミゲル・リオスとのコラボレーション。
まとめ
アナ・ベレンは、スペインの文化シーンで多才な才能を発揮し、女優、歌手、監督として幅広い分野で成功を収めました。彼女の作品は、スペインだけでなくラテンアメリカでも高く評価され、現代スペイン芸術のアイコンとして今なお活躍を続けています。
レビュー 作品の感想や女優への思い