注意欠陥障害、正式には注意欠陥/多動性障害(ADHD)と呼ばれます。これは、発達障害の一種で、不注意、多動性、衝動性の症状が主な特徴です。ADHDは、子供時代に発現することが多く、成人期まで続く場合もあります。症状は人によって異なり、不注意が中心のタイプ、多動・衝動性が中心のタイプ、両方が混在するタイプの3つに分類されます。
不注意の症状としては、集中力が持続しにくい、物忘れが多い、細かいミスを繰り返すなどが挙げられます。多動性は、じっとしていられない、落ち着きがない様子で、衝動性は、順番を待てない、考えずに行動してしまうといったものです。これらの症状は、学校や職場、日常生活で支障をきたすことがあります。原因は完全に解明されていませんが、遺伝的要因や脳の神経伝達物質の異常、環境要因が関与していると考えられています。例えば、ドーパミンやノルアドレナリンの働きが弱いと症状が出やすいと言われています。
ADHDは、世界保健機関(WHO)の分類でも精神・行動の障害として位置づけられており、推定では世界の子供の5-7%、成人の2-5%が該当するとされています。日本でも、子供の約3-7%に見られると推測されます。早期の診断と適切な支援により、生活の質を向上させることが可能です。治療としては、薬物療法(メチルフェニデートなどの刺激薬)、行動療法、環境調整が主です。また、ADHDを持つ人は創造性やエネルギーが高いというポジティブな側面もありますが、社会的な誤解が多いため、正しい理解が重要です。
以下に注意欠陥障害について、診断基準、障害をもつ女優、障害を取りあげた映画を紹介します。
診断基準
ADHDの診断は、主にアメリカ精神医学会のDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)に基づいて行われます。この基準では、不注意と多動・衝動性の2つのカテゴリから症状を評価します。診断のためには、以下の条件を満たす必要があります。まず、症状が6ヶ月以上続き、12歳以前に発現していること。次に、症状が学校、職場、家庭などの2つ以上の場面で現れていること。また、他の精神疾患や身体疾患で説明できないこと。そして、日常生活に明らかな支障をきたしていることです。
具体的な症状は、不注意の9項目と多動・衝動性の9項目に分けられ、それぞれ6項目以上(成人では5項目以上)が該当する場合に診断されます。日本では、このDSM-5を参考にしつつ、医師の問診、心理検査、家族や教師からの情報収集を総合的に行います。診断は専門医(児童精神科医や精神科医)によるものが推奨されます。
- 不注意の症状:細かい注意を払わずミスをする、集中力が続かない、話を聞いていないように見える、指示に従えない、整理整頓が苦手、持続的な努力を避ける、物をなくす、外的な刺激に気を取られる、日常のことを忘れる。
- 多動・衝動性の症状:座っていても手足をそわそわ動かす、席を離れる、静かに遊べない、常に動いているように見える、しゃべりすぎる、順番を待てない、他人の活動を妨害する、危険を顧みず行動する、衝動的に答える。
これらの症状は、年齢や発達段階を考慮して評価されます。例えば、子供では多動性が目立ちますが、成人では内面的な落ち着きのなさが主になることがあります。診断プロセスでは、ADHD評価スケールや知能検査も用いられ、うつ病や不安障害との鑑別が重要です。
障害をもつ女優
ADHDを持つ女優は多く、彼女たちは症状を乗り越え、活躍しています。以下にいくつかの例を挙げます。これらの女優たちは、診断を公表し、ADHDへの理解を広めています。
- マーゴット・ロビー:オーストラリア出身の女優で、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『バービー』で知られています。子供時代からADHDの症状があり、集中力が続かないことを告白していますが、演技の仕事でエネルギーを発揮しています。
- ミシェル・ロドリゲス:『ワイルド・スピード』シリーズの主演女優です。ADHDと診断され、衝動的な性格が役柄に活きていると語っています。症状を管理するためにヨガや瞑想を取り入れています。
- ミラ・クニス:『ブラック・スワン』などで有名です。ADHDの不注意症状があり、学校で苦労した経験を共有していますが、女優業では創造性を強みとしています。
- ズーイー・デシャネル:『ニューガール』シリーズの主演です。ADHDを持ち、多動性をコントロールするためにルーチンを設けています。音楽活動も並行して行っています。
- エマ・ワトソン:『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で知られています。ADHDの診断を受け、勉強や仕事のスケジュール管理に工夫を凝らしています。フェミニズム活動でも活躍中です。
- ビジー・フィリップス:『ドーソンズ・クリーク』出演のアメリカ女優です。ADHDの症状を公表し、子育てとの両立について語っています。
- アミー・ルー・ウッド:『セックス・エデュケーション』で人気です。20代でADHDと自閉スペクトラムの診断を受け、役作りに活かしています。
これらの女優たちは、ADHDをハンディキャップではなく、独自の視点を与えるものとして捉え、成功を収めています。公表により、ADHDを持つ人々を励ましています。
障害をとり上げた映画
ADHDをテーマにした映画は、症状の理解を深め、共感を呼んでいます。以下に代表的な作品を紹介します。これらの映画は、ADHDのキャラクターを通じて、挑戦と成長を描いています。
- ファインディング・ニモ:ドリーという魚のキャラクターがADHDのような不注意と記憶の散漫さを示します。冒険を通じて友情と強さを描き、ADHDのポジティブな面を表現しています。
- ファインディング・ドリー:前作の続編で、ドリーのADHD的特性が中心です。短期記憶障害を乗り越える物語で、家族の絆をテーマにしています。
- パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:主人公のパーシーがADHDと失読症を持ち、神話の冒険で能力を発揮します。ADHDを「戦士の特性」として肯定的に描いています。
- チャーリー・バートレット:ADHDのティーンエイジャーが学校でカウンセリングを始めるコメディ。薬物療法の側面も触れ、青春の葛藤をユーモアで表現します。
- ジュノ:主人公のジュノがADHD的な衝動性を持ち、妊娠という出来事を巡る成長物語。現実的な対処を描いています。
- エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス:主人公のエヴリンがADHDのような多動性を示し、マルチバースの冒険で自己発見します。アカデミー賞受賞作で、混沌とした心を象徴的に扱っています。
- ミセス・ダウトファイア:ロビン・ウィリアムズ演じる父親がADHD的なエネルギーで変装します。家族愛をコミカルに描き、ADHDの創造性を強調します。
これらの映画は、ADHDを単なる障害ではなく、個性として描き、観客に啓発を与えています。視聴することで、ADHDへの偏見を減らす効果が期待されます。
レビュー 作品の感想や女優への思い