『帰郷／荒れ地に燃える恋』（原題：The Return of the Native）は、トーマス・ハーディの小説を基にした1994年の英米合作映画。愛と裏切りが交錯する壮大なロマンスドラマで、エクスムーア国立公園の美しい自然を背景に、情熱と悲劇を描く。主演を務めるキャサリン・ゼタ＝ジョーンズはユースチューシャ・ヴェイ役として圧倒的な存在感を発揮。
基本情報
- 邦題：帰郷／荒れ地に燃える恋
- 原題：The Return of the Native
- 公開年：1994年
- 製作国：米国、英国
- 上映時間：101分
- ジャンル：ドラマ
あらすじ
19世紀のイギリス、エクスムーアの荒野を舞台に、若く美しいユースチューシャ・ヴェイ（キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ）は、都会のパリでの生活を夢見るが、地元の宿屋の主人であるデイモン・ウィルデヴ（クライヴ・オーウェン）と複雑な関係にある。そこへ、故郷に帰郷したクレム・ヨウブリャイト（レイ・スティーヴンソン）が現れ、ユースチューシャに惹かれるが、彼女の心は揺れ動く。一方、ウィルデヴはユースチューシャの叔母の養女であるトマシン（クレア・スキナー）とも婚約関係にあり、複数の登場人物の愛と欲望が絡み合う。ユースチューシャの野心、クレムの誠実さ、ウィルデヴの裏切りが引き起こす悲劇は、荒涼とした自然の中で展開し、運命的な結末へと向かっていく。この物語は、愛の複雑さと人間のエゴがもたらす破滅を描いた重厚なドラマである。
解説
本作は、トーマス・ハーディの1878年の同名小説を映像化した作品で、19世紀のイギリス文学の古典を現代的に再解釈したものです。監督のジャック・ゴールドは、ハーディの作品が持つ心理的な深みと自然の象徴性を強調し、エクスムーア国立公園の壮大なロケーションを活かして、登場人物の内面的葛藤と外界の荒々しさを対比させています。物語の中心テーマは、愛、野心、裏切り、そして社会的な制約であり、特に女性の自立と選択の困難さがユースチューシャのキャラクターを通じて描かれています。
ハーディの小説はしばしば悲劇的な結末を迎えることで知られていますが、本作もその伝統を受け継ぎ、登場人物の選択がもたらす必然的な結果を丁寧に描き出します。映画は、原作の持つ文学的価値を損なうことなく、視覚的な美しさと感情的な重みを融合させ、観客に深い余韻を残します。特に、ユースチューシャの複雑な心理と、彼女を取り巻く男性たちの対照的なキャラクター造形が、物語に奥行きを与えています。また、1994年にテレビ映画として製作された本作は、当時のイギリスとアメリカの合作による国際的な視野も感じさせ、古典文学の映像化として高い評価を受けています。
女優の活躍
本作の主演を務めるキャサリン・ゼタ＝ジョーンズは、ユースチューシャ・ヴェイ役として圧倒的な存在感を発揮しています。この時期、彼女はまだハリウッドでの大ブレイク前でしたが、本作での演技は、後の成功を予感させるものでした。ユースチューシャは、情熱的でありながら自己中心的な側面を持ち、自身の美貌と知性を武器に運命を切り開こうとする複雑な女性です。キャサリン・ゼタ＝ジョーンズは、ユースチューシャの気高さと脆さを絶妙に表現し、観客を引き込む演技を見せています。
彼女の表情や仕草には、キャラクターの内面的な葛藤が色濃く反映されており、特にウィルデヴやクレムとの対話シーンでは、感情の揺れ動きを繊細に演じ分けています。批評家からも、彼女の美貌だけでなく、感情の深みとキャラクターへの没入度が高く評価されました。また、クレア・スキナーが演じるトマシンも重要な役割を果たし、控えめながらも芯の強い女性像を丁寧に演じています。彼女の演技は、ユースチューシャの華やかさとは対照的な、素朴で誠実な魅力を引き立て、物語にバランスをもたらしています。両女優の対比的な演技は、本作の感情的なダイナミズムを強調し、物語の悲劇性をより際立たせています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、19世紀のイギリスの農村社会を忠実に再現しつつ、キャラクターの個性を強調するデザインが施されています。キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ演じるユースチューシャの衣装は、彼女の気高く野心的な性格を反映しています。彼女が着用するドレスは、深みのある赤や緑といった鮮やかな色合いが特徴で、農村の素朴な環境の中で彼女の美貌と都会への憧れを際立たせます。特に、祭りのシーンで着るエレガントなドレスは、彼女の魅惑的な魅力を強調し、ウィルデヴやクレムとの関係性を象徴的に表現しています。化粧は控えめながらも、彼女の鋭い目元を強調するアイラインと、頬にほのかに施されたチークが、ユースチューシャの情熱的な性格を表現。髪型は、緩やかにウェーブのかかった長い髪をアップスタイルにまとめることが多く、洗練された印象を与えます。
一方、クレア・スキナー演じるトマシンの衣装は、淡い青やベージュのシンプルなドレスが中心で、彼女の純朴で控えめな性格を反映しています。トマシンの化粧はほとんど施さず、自然な肌の質感を活かし、髪はシンプルな三つ編みや低い位置でのまとめ髪で、農村の娘らしい素朴さを表現しています。これらの対比的な衣装とヘアメイクは、両者の社会的立場や性格の違いを視覚的に明確にし、物語のテーマである階級や欲望の衝突を補強しています。衣装デザインは、時代背景を忠実に再現しながらも、現代の観客に訴える美しさを取り入れており、視覚的な魅力の一端を担っています。
キャスト
- キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ：ユースチューシャ・ヴェイ
- クライヴ・オーウェン：デイモン・ウィルデヴ
- レイ・スティーヴンソン：クレム・ヨウブリャイト
- クレア・スキナー：トマシン
- スティーヴン・マッキントッシュ：ディゴリー・ヴェン
- ジョアン・リチャードソン：スーザン・ナンサックル
スタッフ
- 監督：ジャック・ゴールド
- 脚本：ロバート・Ｗ・レンスキー
- 原作：トーマス・ハーディ
- 撮影：アラン・ヒューム
- 音楽：カール・デイヴィス
- 製作：ベン・ルック
- 編集：マイケル・ブラッドセル
- 衣装デザイン：ジョーン・エルウッド
総括
『帰郷／荒れ地に燃える恋』は、トーマス・ハーディの古典文学を基にした、情熱と悲劇が交錯する重厚なドラマです。キャサリン・ゼタ＝ジョーンズの魅力的な演技と、エクスムーアの壮大なロケーションが織りなす映像美は、観客に深い感動を与えます。愛と裏切りの物語は、時代を超えて共感を呼び、文学ファンだけでなく映画愛好者にもおすすめの作品です。衣装やヘアメイクの細部に至るまで、キャラクターの内面と時代背景が丁寧に表現されており、視覚的にも魅力的な一作となっています。
レビュー 作品の感想や女優への思い