『ロストガールズ』は、2010年のロングアイランド連続殺人事件を基にしたNetflix映画。失踪した娘シャナンを捜す母親メアリーが、未解決殺人事件の真相に迫る実話ベースのミステリードラマ。エイミー・ライアン主演。
基本情報
- 邦題：ロストガールズ
- 原題：Lost Girls
- 公開年：2020年
- 製作国：米国
- 上映時間：95分
- ジャンル：ミステリー、スリラー
あらすじ
2010年、米国ニューヨーク州エレンヴィルに住むシングルマザーのメアリー・ギルバートは、離れて暮らす24歳の長女シャナンが家族との夕食をすっぽかしたことから異変に気付きます。シャナンはCraigslistを通じて売春に従事しており、失踪直前に緊急通報で助けを求めていました。
しかし、警察は彼女の職業を理由に捜査に消極的。業を煮やしたメアリーは、妹のシェリーとサラを連れて自ら調査を開始します。シャナンが最後に目撃されたロングアイランドの閉鎖的な高級住宅地オークビーチで、彼女は複数の女性の遺体が発見された事実を知ります。この事件は、10～16人とされる被害者を出した未解決の連続殺人事件として知られる「ロングアイランドの連続殺人鬼」事件に発展。
メアリーは警察の怠慢や社会の偏見と闘いながら、娘の行方と正義を追い求めます。被害者たちの声なき叫びに寄り添い、真実を明らかにしようとするメアリーの執念が、世間の注目を集め、事件の闇を浮き彫りにしていきます。
解説
『ロストガールズ』は、実在の未解決事件「ロングアイランドの連続殺人鬼」を題材にした2020年公開のNetflixオリジナル映画で、ロバート・コルカーのノンフィクション『Lost Girls: An Unsolved American Mystery』を原作としています。
この映画は、単なる犯罪ミステリーではなく、社会的弱者であるセックスワーカーに対する偏見や、警察の怠慢、閉鎖的なコミュニティの隠蔽体質を鋭く批判する社会派ドラマとしての側面が強いです。監督のリズ・ガーバスは、ドキュメンタリー出身の視点を生かし、事件の事実を淡々と描きつつ、被害者とその家族の心情に焦点を当てています。
特に、主人公メアリーの視点を通じて、被害者たちが社会から見捨てられ、軽視される現実を浮き彫りにし、観る者に倫理的な問いを投げかけます。犯人特定のエンターテインメント性よりも、被害者や遺族の尊厳を重視したストーリー展開は、観客に事件の悲劇性と社会問題を深く考えさせる力があります。
また、映画は2010年の事件発覚から10年後の2020年に公開され、2023年に一部容疑者が逮捕された現実の進展ともリンクし、事件の重さを改めて感じさせます。映像は暗く重いトーンで、ニューヨークの寒々しい風景が物語の陰鬱さを強調。音楽もアン・ニキティンの抑制されたスコアが、感情的なシーンを際立たせています。
本作はサンダンス映画祭2020でのプレミア上映後、批評家からは「被害者に寄り添った誠実な作品」と評価され、平均スコア3.1（Filmarks）を記録するなど、観客にも一定の支持を得ています。ただし、未解決事件ゆえの「オチのなさ」に物足りなさを感じる声もあります。それでも、事件の背景や被害者の人間性を丁寧に描いた本作は、実話ベースの映画として深い余韻を残します。
女優の活躍
エイミー・ライアン（メアリー・ギルバート役）
本作の主人公メアリーを演じたエイミー・ライアンは、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』（2007年）でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた実力派女優です。メアリーの感情的な激しさと、貧困層のシングルマザーとしての複雑な内面を見事に表現。特に、警察への怒りや娘への愛情、絶望と希望が交錯するシーンでの迫真の演技は圧巻です。彼女の口の悪さや感情的な爆発は、キャラクターの生々しさを際立たせ、観客に強い印象を与えます。エイミーは本作で、被害者の母親としての執念と、社会的偏見に立ち向かう姿を体現し、物語の中心として作品を牽引しました。
トーマシン・マッケンジー（シェリー・ギルバート役）
メアリーの次女シェリーを演じたトーマシン・マッケンジーは、『ジョジョ・ラビット』（2019年）で注目を集めた若手女優。シェリーの思春期特有の反抗心や、姉の失踪に対する不安を繊細に表現し、家族の絆を強調する重要な役割を果たします。彼女の自然体な演技は、物語に温かみを加えています。
ローラ・カーク（サラ・ギルバート役）
三女サラ役のローラ・カークは、家族の中で最も内向的なキャラクターを演じ、控えめながらも感情の機微を丁寧に表現。姉妹の関係性や母親との緊張感を、静かな演技で補完しています。
ミリアム・ショア（ロレイン役）
他の被害者の家族として登場するミリアム・ショアは、短い出番ながらも、遺族の悲しみと連帯感を力強く演じ、物語に深みを加えました。
小括
女性キャスト全体が、被害者と遺族の視点に寄り添う本作のテーマを体現し、感情的な共鳴を生み出しています。
女優の衣装・化粧・髪型
エイミー・ライアン（メアリー）
メアリーの衣装は、貧困層のシングルマザーを反映した実用的なものが中心。くすんだ色のコートやセーター、ジーンズなど、日常的で地味な服装が目立ちます。冬のニューヨークの寒さを意識した厚手のジャケットやマフラーも多用され、彼女の過酷な生活環境を象徴。化粧はほぼ施さず、すっぴんに近いナチュラルな顔立ちで、疲弊した母親の現実感を強調。髪型は、乱雑に束ねたポニーテールや、肩にかかる長さのストレートヘアで、無造作さがメアリーのストレスと闘志を表現しています。
トーマシン・マッケンジー（シェリー）
シェリーの衣装は、10代の少女らしいカジュアルなスタイル。フーディーやデニム、スニーカーなど、動きやすさを重視した若者らしい装い。化粧は薄く、自然な肌感を活かし、ティーンエイジャーの無垢さを表現。髪はロングで、緩くウェーブがかかったスタイルや、ポニーテールで登場し、若々しさと親しみやすさを演出しています。
ローラ・カーク（サラ）
サラの衣装は、シェリーよりやや大人びた落ち着いたトーン。ダークカラーのトップスやスカートが中心で、内向的な性格を反映。化粧は控えめで、ナチュラルメイクが主体。髪型はミディアムレングスのストレートで、シンプルさが彼女の控えめな存在感を強調しています。
小括
全体的に、衣装や化粧、髪型はリアリスティックで、派手さや華やかさを排除。登場人物の社会的背景や感情を反映し、物語の重厚な雰囲気を支えています。女性スタッフが多く関わった本作では、衣装デザインも女性の視点から丁寧に作り込まれ、キャラクターの生活感をリアルに表現しています。
キャスト
- エイミー・ライアン：メアリー・ギルバート（主人公、シャナンの母親）
- トーマシン・マッケンジー：シェリー・ギルバート（メアリーの次女）
- ローラ・カーク：サラ・ギルバート（メアリーの三女）
- ガブリエル・バーン：リチャード・ドーマン（警視総監）
- ウーナ・ローレンス：サラの友人役
- ディーン・ウィンタース：ディーン（捜査協力者）
- ミリアム・ショア：ロレイン（他の被害者の家族）
- リード・バーニー：ピーター・ハケット（容疑者候補の医師）
- ケヴィン・コリガン：ジョー・スカリス（情報提供者）
スタッフ
- 監督：リズ・ガーバス（ドキュメンタリー出身、『ニーナ・シモン 魂の歌』で知られる）
- 脚本：マイケル・ワーウィー
- 原作：ロバート・コルカー『Lost Girls: An Unsolved American Mystery』
- 製作：アン・ケアリー、ケヴィン・マッコール
- 音楽：アン・ニキティン（『アメリカン・アニマルズ』で注目）
- 撮影：イゴール・マーティン（寒々しいニューヨークの風景を効果的に撮影）
- 編集：カミラ・トニオーロ
総括
『ロストガールズ』は、未解決事件を題材に、被害者とその家族に寄り添った視点で描かれた重厚なミステリードラマです。エイミー・ライアンをはじめとする女優陣のリアルな演技、抑制された衣装や化粧、スタッフの丁寧な仕事が、事件の悲劇性と社会問題を浮き彫りにします。犯人特定の謎解きよりも、被害者の尊厳と遺族の闘いを描く本作は、観る者に深い思索を促す作品です。Netflixで配信中の本作は、実話ベースの映画を求める方や、社会派ドラマに興味がある方に特におすすめです。
レビュー 作品の感想や女優への思い