2002年公開のフランス映画『いつか、きっと』は、娼婦の母と娘の逃避行を描く感動のドラマ。イザベル・ユペール主演、オリヴィエ・ダアン監督による南仏の美しい風景を背景に、再生と絆の物語が展開する。娘ロランスを演じたモード・フォルジェも、若さゆえの衝動と母への複雑な愛情を自然に表現。
基本情報
- 邦題：いつか、きっと
- 原題：LA VIE PROMISE
- 英題：The Promised Life
- 公開年：2002年
- 製作国：フランス
- 上映時間：93分
- ジャンル：ドラマ
見どころ
娘と一緒に旅をするなかで自分自身を取り戻していくヒロインを、イザベル・ユペールが好演。監督は『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』のオリヴィエ・ダーン。
あらすじ
『いつか、きっと』は、人生の希望を見失った中年女性シルヴィアと、彼女の14歳の娘ロランスを中心に展開するロードムービーです。シルヴィアは娼婦として流浪の生活を送り、娘のロランスを施設に預けたまま疎遠になっていました。ある日、シルヴィアに暴力を振るう男をロランスが衝動的に刺してしまい、母娘は共に逃避行に出ます。南フランスの美しい田園風景を背景に、車を盗んだり、偶然出会った人々と交流しながら、二人は互いの心の傷と向き合います。シルヴィアはかつての幸せな記憶を追い求め、過去と現在を行き来しながら自己を見つめ直します。一方、ロランスは母との関係を修復し、未来への希望を見出そうとします。旅を通じて、母娘は互いを理解し、再生への一歩を踏み出しますが、物語は決して単純なハッピーエンドには向かわず、人生の複雑さと向き合う深い余韻を残します。
女優の活躍
本作『いつか、きっと』の主演を務めるイザベル・ユペールは、フランス映画界を代表する名女優として知られ、この作品でもその卓越した演技力が際立っています。シルヴィア役で、ユペールは人生に疲れ果て、希望を失った女性の複雑な内面を見事に表現しています。彼女の演技は、感情の起伏を抑えつつも、微妙な表情や仕草でキャラクターの深い悲しみや葛藤を伝え、観客に強い印象を与えます。特に、シルヴィアが過去の幸せな記憶を回想するシーンでは、彼女の繊細な演技が物語に深みを加えています。ユペールは、1976年のシュザンヌ・ビアンケッティ賞や、1978年・2001年のカンヌ国際映画祭女優賞、1995年・2016年のセザール賞主演女優賞など、数々の受賞歴を持つ実力派です。本作では、彼女のキャリアの中でも特に感情的な重みを帯びた役柄を演じ、観客に深い共感を呼び起こしました。
また、娘ロランスを演じたモード・フォルジェも、若さゆえの衝動と母への複雑な愛情を自然に表現し、ユペールとの掛け合いが物語の感動を高めています。フォルジェは本作で注目を集め、若手女優としての可能性を示しました。
女優の衣装・化粧・髪型
イザベル・ユペール演じるシルヴィアの衣装は、彼女のキャラクターの生活と心理状態を反映しています。娼婦としての生活を象徴する、派手だがややくたびれたドレスや、旅の途中で着るカジュアルな服は、彼女の不安定な人生を表現しています。衣装は色彩を抑えたものが多く、シルヴィアの疲弊した精神状態を強調。化粧は薄く、時に乱れたメイクが彼女の荒んだ生活を象徴し、特に目の下のクマや乱れた口紅が、彼女の内面的な混乱を視覚的に表現しています。髪型は、緩くまとめたボサボサのアップスタイルや、旅の途中で風に乱れる自然なスタイルが中心で、彼女の無防備な一面を際立たせます。
一方、モード・フォルジェ演じるロランスの衣装は、10代の少女らしいシンプルなTシャツやジーンズが主で、若さと純粋さを強調。化粧はほとんどなく、自然な顔立ちが彼女の無垢なキャラクターを際立たせます。髪型はポニーテールや下ろしたストレートヘアで、動きやすさと若々しさを表現。母娘の対比が、衣装や髪型を通じて視覚的にも明確に描かれています。
南フランスの自然を背景に、控えめながらもキャラクターの心情を反映した衣装デザインが、作品のリアリティを高めています。
解説
『いつか、きっと』は、フランス映画らしい人間ドラマの深さと美しい映像美が融合した作品です。監督のオリヴィエ・ダアンは、後の『エディット・ピアフ～愛の讃歌～』(2007)で世界的に知られるようになりますが、本作では彼の初期のスタイルである、詩的で感情に訴える演出が顕著です。南フランスの田園風景や海辺のシーンは、登場人物の内面の旅と対比され、物語に視覚的な深みを与えています。映画のテーマは、家族の絆、自己の再生、そして過去との和解です。シルヴィアの人生は、娼婦としての過酷な現実と、かつての幸せな記憶との間で揺れ動き、ロードムービーの形式を通じてその葛藤が描かれます。物語は、単なる母娘の和解を超え、人生の不条理や希望の欠如を直視しながらも、かすかな光を見出す過程を丁寧に描写します。ユペールの演技は、批評家からも高く評価され、彼女のキャリアの中でも重要な一作とされています。音楽は控えめながらも感情を高める役割を果たし、特に静かなシーンでのピアノの旋律が印象的です。本作は、商業的な大ヒットにはならなかったものの、フランス映画の持つ芸術性と人間ドラマの深さを愛好する観客に支持されました。批評家からは、ユペールの演技とダアンの繊細な演出が特に称賛され、母娘の関係性を通じて人生の複雑さを描いた点が高く評価されています。
キャスト
- イザベル・ユペール – シルヴィア（主演、娼婦として生きる中年女性）
- モード・フォルジェ – ロランス（シルヴィアの14歳の娘）
- パスカル・グレゴリー – ジョシュア（旅の途中で出会う謎の男）
- アンドレ・マルコン – 脇役（詳細な役柄は劇中で明らかに）
- ファビエンヌ・バーブ – 脇役（詳細な役柄は劇中で明らかに）
スタッフ
- 監督：オリヴィエ・ダアン
- 脚本：オリヴィエ・ダアン、アニエス・フォワブル
- 製作：ステューディオ・カナル、BACフィルムズ、フランス2シネマ、ローヌ・アルプ・シネマ、SFPシネマ
- 撮影：アレックス・ジョフ
- 音楽：クリストフ・ジュリアン
- 編集：リシャール・マロウ
- 配給：ギャガ＝アニープラネット（日本）
レビュー 作品の感想や女優への思い