ワイオミング州はアメリカ合衆国西部に位置し、ロッキー山脈と広大な平原が広がる自然豊かな州です。州都はシャイアン、最大都市はキャスパー。人口約58万人で、牛の牧畜とエネルギー産業が経済の柱です。出身女優にステファニー・コール、パトリシア・ニール、ミルドレッド・ハリスたち。
歴史
ワイオミング州の歴史は、先住アメリカン部族(シャイアン族やスー族)から始まり、19世紀初頭にルイス・クラーク探検隊がこの地を通過しました。1803年のルイジアナ買収で米国領となり、毛皮交易やオレゴントレイルの開拓者たちが通る要衝となりました。1868年にワイオミング準州が設立され、1890年に44番目の州として承認されました。州名の「ワイオミング」は、アルゴンキン語で「大きな平原」を意味します。19世紀中盤、ポニー・エクスプレスや大陸横断鉄道の建設により、ワイオミングは西部開拓の中心地となりました。
特に1869年、ワイオミングは女性に投票権を認めた最初の州となり、「平等の州」として知られるようになりました。19世紀後半、牧畜業が発展し、牛の放牧が経済の中心に。20世紀初頭には石油や天然ガスの発見によりエネルギー産業が急成長しました。しかし、過放牧や経済変動により、牧場主と農民の対立(ジョンソン郡戦争など)が発生した時期もあります。現代では、鉱業、観光業、農業が経済の柱で、特にイエローストーン国立公園やグランドティトン国立公園は世界的な観光地です。政治的には保守的な傾向が強く、連邦政府との土地管理を巡る議論が続いています。近年は風力発電など再生可能エネルギーにも力を入れ、持続可能な発展を目指しています。
芸術
ワイオミング州の芸術は、その雄大な自然と西部文化に深く影響を受けています。ジャクソンホールの国立野生生物美術館は、野生動物や自然をテーマにした作品を展示し、アメリカ西部の風景画や彫刻が豊富です。シャイアンのワイオミング州立博物館は、先住アメリカンの工芸品や西部開拓史に関連するアートを収蔵し、州の歴史的背景を反映しています。文学では、グレッチェン・レガーレの『The Solace of Open Spaces』がワイオミングの広大な風景と孤立感を詩的に描写し、州の文化的アイコンとなっています。
音楽では、カントリーやフォークが根強く、毎年開催される「シャイアン・フロンティア・デイズ」は、音楽やロデオ、芸術展示を組み合わせた祭りで、西部文化を祝います。地元アーティストによる絵画や写真は、イエローストーンの火山地帯やロッキー山脈の美しさを捉え、ギャラリーやフェスティバルで展示されます。ワイオミング大学は芸術教育の拠点で、若手アーティストの育成に貢献。公共アートも盛んで、シャイアンやララミーにはカウボーイや野生動物をモチーフにした彫刻や壁画が点在し、観光客に人気です。先住アメリカンの伝統工芸、特にビーズ細工や革製品も、州の芸術シーンで重要な役割を果たしています。全体として、ワイオミングの芸術は自然と歴史の融合を特徴とし、訪れる者にその独特な魅力を伝えています。
登場する映画
ワイオミング州の壮大な自然と西部の雰囲気を活かし、多くの映画がこの地を舞台やロケ地に選びました。以下は代表的な作品です。
- ヘイトフル・エイト(2015年):クエンティン・タランティーノ監督の西部劇で、ワイオミングの雪深い山岳地帯を舞台に、吹雪で孤立した宿屋で繰り広げられる人間ドラマ。賞金稼ぎや無法者など個性的な8人が互いに疑心暗鬼になり、緊張感あふれる心理戦が展開。過激な暴力と独特の会話が特徴で、タランティーノらしい過剰な演出が光る。
- ウインド・リバー(2017年):ワイオミングのネイティブアメリカン居留地を舞台にしたサスペンス。猟師の主人公がFBI捜査官と共に、雪原で発見された少女の死の真相を追う。厳しい自然環境と社会問題を背景に、孤独と正義感が交錯する緊迫した物語。テイラー・シェリダンの脚本と演出が光る。
- ブロークバック・マウンテン(2005年):ワイオミングの雄大な山々を背景に、1960年代の牧羊人とカウボーイの禁断の愛を描いた感動的なドラマ。社会の偏見と闘いながらも純粋な愛を貫こうとする二人の姿が胸を打つ。アカデミー賞を受賞したアン・リーの繊細な演出が話題に。
- アンフィニッシュ・ライフ(2005年):ワイオミングの田舎町で、過去の傷を抱える牧場主と、娘と孫娘との再会を描く人間ドラマ。家族の絆と赦しをテーマに、静かな風景の中で心の再生が描かれる。ロバート・レッドフォードとモーガン・フリーマンの演技が物語に深みを加える。
- ララミー・プロジェクト(2002年):ワイオミング州ララミーで起きた実在のヘイトクライム事件を基にしたドラマ。ゲイの大学生殺害事件を巡り、町の人々の声を通じて偏見や人間性を探る。ドキュメンタリー風の構成で、社会問題を深く掘り下げ、観客に問いを投げかける。
- 許されざる者(1992年):クリント・イーストウッド監督・主演の西部劇。ワイオミングの荒野で、過去の罪と向き合う老ガンマンが復讐の依頼を引き受ける。伝統的な西部劇の枠組みに、暴力と贖罪のテーマを織り交ぜ、重厚な人間ドラマを展開。アカデミー賞作品賞を受賞。
- ワイオミング(1989年):ワイオミングの広大な自然を背景に、家族やコミュニティの絆を描いたドラマ。地元の人々の生活や葛藤を通じて、土地の歴史と文化を浮き彫りにする。静かながらも心に残る物語で、ワイオミングの風景が印象的に描かれる。
- トム・ホーン(1980年):実在のガンマン、トム・ホーンの生涯を描いた西部劇。ワイオミングの開拓時代、雇われガンマンとして活躍するも、時代に取り残される男の悲哀を描く。スティーヴ・マックイーンの渋い演技と、ワイオミングの荒涼とした風景が作品の雰囲気を高める。
- ダーティファイター 燃えよ鉄拳(1978年):ワイオミングを舞台にしたアクション・コメディ。クリント・イーストウッド演じるトラック運転手が、喧嘩とユーモアで問題を解決していく。軽快なテンポとユーモラスな展開が魅力で、ワイオミングの田舎町の雰囲気が物語に彩りを加える。
- 新・明日に向って撃て!(1976年):名作「明日に向って撃て!」の続編的西部劇。ワイオミングの無法者たちの冒険を、ユーモアとアクションを交えて描く。オリジナルほどの評価は得られなかったが、ワイオミングの風景と軽快なストーリーが楽しめる作品。
- 明日に向って撃て!(1969年):ワイオミングを拠点に活動する実在のアウトロー、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの物語。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの魅力的なコンビが、追跡劇と友情を軽快に描く。ワイオミングの広大な風景が印象的な名作。
- キャット・バルー(1965年):ワイオミングを舞台にしたコメディ西部劇。ジェーン・フォンダ演じるヒロインが、父親の仇を討つために奮闘する姿を描く。ユーモアと音楽が織り交ぜられた軽快な物語で、ワイオミングの牧歌的な風景が物語を彩る。アカデミー賞受賞作。
- 再生の地(1964年):ワイオミングの厳しい自然の中で、開拓者たちが新たな生活を築こうとする姿を描いたドラマ。土地との闘いや人間関係の葛藤を通じて、希望と再生のテーマを探る。ワイオミングの壮大な風景が、物語の感動を一層深める。
- フォート・ブロックの決斗(1957年):ワイオミングの軍事基地を舞台にした西部劇。インディアンとの戦いの中で、兵士たちの勇気と葛藤を描く。緊迫感ある戦闘シーンと、ワイオミングの荒々しい自然が織りなす重厚なドラマが特徴。時代背景を反映した作品。
- 鄙より都会へ(1957年):ワイオミングの田舎から都会へ移り住む家族の物語。新しい環境での苦労や成長を通じて、家族の絆と変化を描く。ワイオミングの牧歌的な風景と都会の対比が、物語に深みを与える心温まるドラマ。
- シェーン(1953年):ワイオミングの開拓地を舞台にした古典的な西部劇。謎めいたガンマンが農民家族を助け、悪党と対決する姿を描く。家族愛と正義のテーマが共存し、ワイオミングの美しい谷が物語の背景として印象的。アカデミー賞撮影賞を受賞。
これらの映画は、ワイオミングの広大な風景や孤立したコミュニティを効果的に活用し、物語に深みを与えています。特にイエローストーンやデビルズタワーは、視覚的なインパクトで観客を引きつけます。
出身女優
ワイオミング州は人口が少ないため、ハリウッドで活躍する女優の数は限られていますが、才能ある人物を輩出しています。以下は代表的な女優です。
- ステファニー・コール:現代のインディーズ映画やテレビで活動する女優。ワイオミング出身で、小規模な作品や地元舞台での活躍が目立ちますが、ハリウッドでの知名度はまだ成長中です。
- パトリシア・ニール:1926年ケンタッキー州生まれだが、ワイオミングで育ち、州と強い結びつきがあります。アカデミー賞受賞女優で、『ハッド』(1963年)で主演女優賞を獲得。『ティファニーで朝食を』(1961年)でも印象的な演技を見せました。
- ミルドレッド・ハリス:1901年シャイアン生まれ。サイレント映画時代に活躍し、チャールズ・チャップリンの最初の妻としても知られます。『The Inferior Sex』(1918年)など多くの映画に出演し、初期のハリウッドで名を馳せました。
ワイオミング出身の女優は少ないものの、ミルドレッド・ハリスやパトリシア・ニールは映画史に名を刻みました。州の小さなコミュニティで育った彼女たちは、ワイオミングの質朴な価値観を背景に、独自のキャリアを築きました。現代では、インディーズ映画や地域の芸術シーンで新たな才能が育ちつつあり、州の文化的影響力が徐々に広がっています。ワイオミングの自然と文化は、女優たちの感性や演技に深い影響を与え、彼女たちの作品に独特の魅力を与えています。
レビュー 作品の感想や女優への思い