ジョアンナ・ペティット(Joanna Pettet)は英加系元女優。ロンドン出身で、父親の戦死後カナダに移住。ブロードウェイデビュー後、映画『グループ』(1966年)で注目を集め、『カジノ・ロワイヤル』(1967年)などで活躍。TVムービーやゲスト出演も多数。1989年に離婚、1990年代に引退。私生活では悲劇を経験し、動物権利擁護に携わる。エレガントな美貌で知られる。
プロフィール
- 名前:ジョアンナ・ペティット(Joanna Pettet)
- 生年月日:1942年11月16日(82歳)
- 出生地:イギリス・ロンドン
- ジャンル:映画女優
- 配偶者:アレックス・コード(1968年 – 1989年)
生い立ち・教育
ジョアンナ・ペティットは、1942年11月16日、イングランドのウェストミンスター、ロンドンで生まれた。本名はジョアンナ・ジェーン・サルモンである。父親のハロルド・ナイジェル・エジャートン・サルモンは、英国空軍の勇敢なパイロットだったが、第二次世界大戦中の1943年に戦死した。母親のセシリー・J・トレメインはカナダ人で、芸術的な感性豊かな女性だった。二人は1940年にロンドンのチェルシーで結婚しており、ジョアンナはその唯一の娘として生を受けた。
父親の死後、母親は再婚し、家族はカナダのモントリオールに移住した。継父の姓である「ペティット」を引き継ぎ、そこで幼少期を過ごした。カナダの穏やかな環境の中で育ち、母親の影響で芸術やパフォーマンスへの興味を早くから育んだ。学校では劇場活動に熱心で、演劇の才能を早くに発揮した。家族の芸術的背景が、彼女の創造性を刺激したと言われている。
教育面では、演劇への情熱を本格的に追求するため、米国へ渡った。ニューヨークの名門、「ネイバーフッド・プレイハウス「(Neighborhood Playhouse School of the Theatre)で、サンフォード・マイスナーに師事し、厳しいトレーニングを受けた。また、Lincoln Center Repertory Companyでも学び、プロフェッショナルな演技スキルを磨いた。これらの教育経験は、彼女のキャリアの基盤を固めた。19歳の若さでブロードウェイの舞台に立つまでに成長し、演劇界での基礎を築いたのである。
この時期のジョアンナは、移民としての適応力と強い意志を身につけ、厳しい競争環境の中で自己を鍛えた。カナダでの生活は、彼女に多文化的な視野を与え、後年の国際的な役柄に活かされた。教育を通じて得た技術は、単なる演技以上の、感情表現の深みを彼女にもたらした。
経歴
ジョアンナ・ペティットのキャリアは、1960年代のブロードウェイから始まった。1961年、19歳で『Take Her, She’s Mine』にデビューし、好評を博した。以降、『The Chinese Prime Minister』や『Poor Richard』に出演。後者ではアラン・ベイツやジーン・ハックマンと共演し、演技力を認められた。これらの舞台経験が、彼女を映画界へ導いた。
1966年、シドニー・ルメット監督の『グループ』で映画デビュー。このメアリー・マッカーシー原作の作品は、女性たちの友情と葛藤を描き、ジョアンナの演技が批評家から称賛された。以降、映画界で急速に頭角を現した。1967年には『夜の大将軍』でオマー・シャリフやピーター・オトゥールと共演し、ミステリアスな役をこなした。同年、『カジノ・ロワイヤル』ではマタ・ボンド役を演じ、ジェームズ・ボンドのパロディ映画でユーモアと魅力を発揮。ピーター・セラーズやデヴィッド・ニヴンと共演し、国際的な注目を集めた。
1960年代後半には、『強奪北へ90分』(1967年)でスタンリー・ベイカーと共演し、緊張感ある犯罪ドラマに挑んだ。1968年の『ブルー』ではテレンス・スタンプと共演し、心理的な深みを加えた役柄を体現。1969年の『ロンドンの最高の家』では、ヴィクトリア朝のコメディで優雅な女性を演じ、多様なジャンルへの適応力を示した。
1970年代に入り、テレビ分野にシフト。TVムービー『The Weekend Nun』(1972年)で主演し、修道女の葛藤を描いた。以降、『フットステップス』(1972年)、『Pioneer Woman』(1973年)で西部開拓者の妻役を熱演し、強い女性像を確立。『荒野の叫び』(1974年)、『絶望のマイル』(1975年)、『ハンコックス』(1976年)、『セックス・アンド・ザ・マリード・ウーマン』(1977年)と、次々に主演を務めた。
TV番組では、ロッド・サーリングの『ナイト・ギャラリー』に4度ゲスト出演。元夫アレックス・コルドと共演したエピソード『Keep in Touch – We’ll Think of Something』が特に印象的。英国の『スリラー』にも2度出演し、国際的な活躍を続けた。1980年には『無垢なる者の叫び』でロッド・テイラーと共演し、ミステリーを展開。『フランク・キャノンの帰還』でも主演した。
1980年代には『チャーリーズ・エンジェル』(1980年)でバーバラ・ブラウン役を演じ、アクション要素を取り入れた。『Knots Landing』にレギュラー出演し、プライムタイム・ソープの複雑な人間関係を表現。しかし、キャリアの後半は低予算作品へ移行。1982年の『ダブル・エクスポージャー』、1987年の『スウィート・カントリー』、1991年の『テラー・イン・パラダイス』で出演。1990年代初頭に引退を決意し、スクリーンから姿を消した。
全体として、ジョアンナの経歴は、ブロードウェイの新星からハリウッドのエレガントな女優へ、そしてTVのベテランへの変遷を示す。彼女の演技は、常に洗練され、感情のニュアンスを捉えることに優れていた。引退後も、その遺産は多くのファンに記憶されている。
私生活
ジョアンナ・ペティットの私生活は、華やかなキャリアとは対照的に、幾多の悲劇と静かな献身に満ちている。1960年代後半、女優シャロン・テートと親しい友情を育んだ。1969年8月8日、テートの自宅で昼食を共にしたが、数時間後に犯罪集団マンソン・ファミリーによる惨殺事件が発生。ジョアンナはこの事件を辛くも逃れたが、深いトラウマを残した。これは、1963年にニューヨークで二人の親友が刺殺された事件に続く、二度目の暴力による喪失だった。
私生活の中心は、1970年に結婚した俳優アレックス・コルドとの関係である。二人は1971年に息子ダミアン・ザカリー・コルドをもうけた。共演を通じて結ばれた夫婦だったが、1989年に離婚。離婚後も息子との絆を大切にしたが、1995年、ダミアンは26歳でヘロインの過剰摂取による昏睡状態に陥り、亡くなった。この喪失は、ジョアンナに計り知れない悲しみをもたらした。
引退後、ジョアンナは友人である俳優アラン・ベイツの介護と伴侶役を務めた。ベイツは2003年に癌で亡くなるまで、彼女の支えとなった。この時期、彼女は公の場から遠ざかり、プライベートな生活を優先した。動物権利擁護活動にも積極的に関わり、愛犬家として知られる。執筆活動も行い、さまざまなテーマのエッセイを発表した。
1968年には、プレイボーイ誌のグラビアに登場し、当時の女優としては珍しい大胆な選択をした。これにより、セクシーなイメージを確立したが、私生活のプライバシーを守る姿勢を崩さなかった。現在は米国在住で、静かな余生を送っているとされる。彼女の人生は、成功と悲劇の交錯であり、強い精神力で乗り越えた証である。
出演作品
ジョアンナ・ペティットの出演作品は、舞台、映画、TVにわたり、多岐にわたる。以下に主なものを挙げる。
- 舞台:Take Her、She’s Mine (1961年、Broadwayデビュー)
- 舞台:The Chinese Prime Minister (1964年)
- 舞台:Poor Richard (1964年、アラン・ベイツ、ジーン・ハックマン共演)
- 映画:グループ (1966年、シドニー・ルメット監督、デビュー作)
- 映画:The Night of the Generals (1967年、オマー・シャリフ、ピーター・オトゥール共演)
- 映画:カジノ・ロワイヤル (1967年、マタ・ボンド役、ピーター・セラーズ共演)
- 映画:Robbery (1967年、スタンリー・ベイカー共演)
- 映画:Blue (1968年、テレンス・スタンプ共演)
- 映画:The Best House in London (1969年)
- TV:Highway to Heaven (エピソード出演)
- TV映画:The Weekend Nun (1972年、主演年)
- TV映画:Footsteps (1972年)
- TV映画:Pioneer Woman (1973年、主演、マギー・サージェント役)
- TV映画:A Cry in the Wilderness (1974年)
- TV映画:The Desperate Miles (1975年)
- TV映画:The Hancocks (1976年)
- TV映画:Sex and the Married Woman (1977年)
- TV:Night Gallery (1970年代、4エピソード出演、元夫アレックス・コルド共演)
- TV:Thriller (1970年代、2エピソード出演)
- TV映画:Cry of the Innocent (1980年、ロッド・テイラー共演)
- TV映画:The Return of Frank Cannon (1980年)
- TV:チャーリーズ・エンジェル (1980年、バーバラ・ブラウン役)
- TV:Knots Landing (1980年代、レギュラー出演)
- TV:Fantasy Island (ゲスト出演)
- TV:The Love Boat (ゲスト出演)
- 映画:Double Exposure (1982年)
- 映画:Black Commando (1982年、デズデモナ役)
- 映画:Sweet Country (1987年、モニカ役)
- 映画:Terror in Paradise (1991年)
- TV:The X-Files (エピソード出演、1990年代)
これらの作品を通じて、ジョアンナはエレガントで多面的な演技を披露し、観客を魅了しました。引退後も、これらの遺産は彼女の才能を物語っています。
レビュー 作品の感想や女優への思い