南カリフォルニア大学(University of Southern California, USC)は、1880年に設立されたロサンゼルスの私立研究大学。47,000人以上の学生を擁し、映画、工学、ビジネスなどの分野で世界的に知られ、オリンピック選手やアカデミー賞受賞者を多数輩出。出身女優にリリー・コリンズ、エリザベス・バンクス、ダリル・ハンナなど。
歴史
南カリフォルニア大学は、1880年10月6日にロバート・マクレー・ウィドニー判事によって設立されました。これはカリフォルニア州で最も古い私立研究大学であり、当初はメトジスト教会と提携していました。設立の背景には、オズロ・チャイルズ、ジョン・ゲイトリ・ダウニー、アイザイアス・ウルフ・ヘルマンという3人の著名な実業家が308エーカーの土地を寄付し、初期の資金を提供したことがあります。これにより、大学は非差別的な入学政策を最初から採用し、人種による差別を禁じました。
1881年に最初の授業が始まり、53人の学生と10人の教員でスタートしました。1884年の最初の卒業式では、3人の卒業生を送り出しました。その中には女性の首席卒業生も含まれ、大学の進歩的な姿勢を象徴しています。初期のキャンパスは小さな建物から始まり、1887年にオールド・カレッジが建設されましたが、1948年に安全上の理由で取り壊されました。
1919年、アーキテクトのジョン・パーキンソンがロマネスク様式のマスタープランを設計し、これによりボヴァード行政ビル(1921年)などの象徴的な建物が生まれました。第二次世界大戦中、学生数は15%減少しましたが、軍事関連プログラムが導入され、戦後のGIビルにより1947年には24,000人に急増しました。1958年からノーマン・トッピング学長のもとで、1961年から1979年にかけて99棟の建物が建設され、キャンパスは大きく拡張されました。
大学のマスコット「トロイの木馬(Trojans)」は、1912年の陸上競技会に由来し、ジョージ・F・ボヴァード学長が正式に命名しました。1952年に教会との正式なつながりを断ち、独立した大学となりました。以降、USCは研究活動を強化し、R1分類の博士課程大学として位置づけられています。近年では、USCビレッジの建設(2014年開始、2017年開業)など、現代的な発展を遂げています。また、2025年現在、反ユダヤ主義に関する調査の対象となるなど、社会的課題にも向き合っています。
これらの歴史的変遷を通じて、USCは常に革新を続け、学術的・文化的リーダーとして成長してきました。創立以来、大学は南カリフォルニアの知的中心地として、地域社会に多大な貢献を果たしてきました。
教育
南カリフォルニア大学の教育プログラムは、多様な学問分野をカバーし、高度な研究活動を支える構造を備えています。2024年現在、総学生数は47,147人で、内訳は学部生21,023人、大学院生26,124人です。大学は「R1: 博士課程大学 – 非常に高い研究活動」と分類され、ウェスタン・アソシエーション・オブ・スクールズ・アンド・カレッジズの認定を受けています。
教育の基盤は、ダナ・アンド・デイビッド・ドーンスファイ・カレッジ・オブ・レターズ、アーツ・アンド・サイエンシズにあり、リベラルアーツ教育を提供します。このカレッジは180以上の学部専攻とマイナーを擁し、20分野で博士・修士プログラムを展開しています。約8,000人の学部生と1,300人の博士課程学生が在籍し、幅広い人文・社会科学の基礎を築きます。
専門学校は20あり、それぞれが独自の強みを有します。例えば、マーシャル・スクール・オブ・ビジネスはビジネス教育のトップ校として知られ、起業家精神を養います。ビテビ・スクール・オブ・エンジニアリングは工学分野で革新的なカリキュラムを提供し、AIやロボティクスに注力しています。スクール・オブ・シネマティック・アーツは映画・テレビ制作の世界的リーダーであり、アカデミー賞受賞者を多数輩出しています。
その他の主な学校として、アネンバーグ・スクール・フォー・コミュニケーション・アンド・ジャーナリズムはメディアとジャーナリズムを、カウフマン・スクール・オブ・ダンスはダンス芸術を、ロスキ・スクール・オブ・アート・アンド・デザインは美術を専門とします。ヘルマン・オストロー・スクール・オブ・デンティストリーは歯科医学、ケック・スクール・オブ・メディシンは医学、ソール・プライス・スクール・オブ・パブリック・ポリシーは政策立案を扱います。
大学全体で95の学部専攻、147のマイナー、134の大学院・専門学位プログラムを提供します。教育の特徴は、インターディシプリナリーなアプローチで、例えば地震センターやロボティクス研究所などの100以上の研究機関が学生の学習を支えます。図書館は20あり、映画・テレビコレクションが特に充実しています。
USCの教育は、学生のグローバルな視野を広げ、就職率の高さを誇ります。学部生は75分野、大学院生は125分野で学位を取得可能で、多様なバックグラウンドの学生が集う環境が創造性を育みます。近年、ステムセル生物学や再生医療のセミナーシリーズなど、先端分野の教育も強化されています。また、ラテン系ヘリテージ・マンスなどの文化イベントが、包括的な学習体験を提供します。
このように、USCの教育構造は、伝統と革新を融合させ、学生一人ひとりがリーダーシップを発揮できる基盤を築いています。
出身女優
南カリフォルニア大学は、ハリウッドの中心地に位置する利点を活かし、数多くの著名な女優を輩出してきました。これらの卒業生は、映画、テレビ、舞台で輝かしいキャリアを築き、USCのシネマティック・アーツ・スクールやドラマチック・アーツ・スクールの教育がその基盤となっています。以下に、主な出身女優を挙げ、それぞれの経歴を丁寧に紹介します。
- アメリカ・フェレラ:1984年生まれのアメリカ人女優。USC卒業後、『UGLY BETTY/ハグベティ』(2006-2010年)でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。2023年の映画『バービー』でアカデミー賞助演女優賞に輝きました。社会問題をテーマにした作品で知られ、ラテン系女優の先駆者です。
- ミランダ・コスグローヴ:1993年生まれのアメリカ人女優兼歌手。子役時代に『ドレイクとジョシュ』で注目を集め、USC在学中に『iCarly』(2007-2012年)の主演を務め、子供向けエンターテイメントのアイコンとなりました。慈善活動にも積極的です。
- ケリー・プレストン:1962-2020年のアメリカ人女優。USC卒業後、『ツインズ』(1988年)、『ジェリー・マグワイア』(1996年)などのヒット作に出演。ジョン・トラボルタの妻としても知られ、60以上の作品で活躍しました。
- トロイアン・ベリサリオ:1985年生まれのアメリカ人女優。USCで学び、『プリティ・リトル・ライアーズ』(2010-2017年)のスペンサー役でブレイク。2025年の警察ドラマ『On Call』で主演を務め、多才な演技力を発揮しています。
- ジェナ・デーワン:1980年生まれのアメリカ人女優兼ダンサー。USCのダンスプログラムで学び、ジャネット・ジャクソンのバックダンサーから女優へ転身。『ステップ・アップ』(2006年)で注目を集め、チャニング・テイタムの元妻としても有名です。
- ダリル・ハンナ:1960年生まれのアメリカ人女優。USC短期プログラム参加後、『スプラッシュ』(1984年)、『ブレードランナー』(1982年)でスターに。環境活動家としても知られ、ユニークな役柄でキャリアを積みました。
- シンディ・ウィリアムズ:1947年生まれのアメリカ人女優。USC卒業後、『アメリカン・グラフィティ』(1973年)、TV番組『Laverne & Shirley』(1976-1983年)で人気を博しました。コメディの女王として愛されました。
- メイシー・グレイ:1967年生まれのアメリカ人歌手兼女優。USCで学び、『スパイダーマン』(2002年)、『トレーニング・デイ』(2001年)に出演。グラミー賞受賞の歌手としても活躍し、音楽と演技のクロスオーバーを体現しています。
- サシャ・アレクサンダー:1973年生まれのアメリカ人女優。USCのシネマティック・アーツ卒業後、『NCIS ネイビー犯罪捜査班』、『Rizzoli & Isles』で刑事役を演じ、ミステリー・ドラマの名脇役として定着。『Shameless』でも存在感を示しました。
- ポーラ・パットン:1975年生まれのアメリカ人女優。カリフォルニア大学から転校したUSCを卒業した後、『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年)、『ディアボロス』(2015年)でアクション女優として活躍。モデル出身の美貌が魅力です。
- リリー・コリンズ:1989年生まれのイギリス系アメリカ人女優。USCで放送ジャーナリズムを学び、『ミラーズ』(2012年)、『モータル・インストルメント』(2013年)でブレイク。ファッション誌のモデルとしても成功しています。
- エリザベス・バンクス:1974年生まれのアメリカ人女優兼監督。USCの演劇プログラム卒業後、『ハンガー・ゲーム』シリーズでプロデューサー・女優として活躍。アカデミー賞ノミネート作『ピッチ・パーフェクト』(2012年)の監督も務めました。
これらの女優たちは、USCの創造的な教育環境で磨かれた才能を世界に発信し、大学のパイオニア精神を体現しています。彼女たちの成功は、USCがエンターテイメント産業の育成に不可欠な役割を果たしている証です。
レビュー 作品の感想や女優への思い