1969年のフランス・イタリア合作映画『クリスマス・ツリー』は、核事故による被曝で余命わずかとなった少年の物語を描きます。父親とその恋人が、少年の最後の願いを叶えながら、家族の絆を深めていく感動的なドラマです。主人公の父親の恋人役にヴィルナ・リージ。
基本情報
- 邦題:クリスマス・ツリー
- 原題:L’Arbre de Noël
- 公開年:1968年
- 製作国・地域:フランス
- 上映時間:110分
- ジャンル:ドラマ
ヴィルナ・リージの活躍
ヴィルナ・リージは、『クリスマス・ツリー』で主人公の父親ローランの恋人であるカトリーヌ・グラツィアーニを演じます。彼女の役柄は、母親のいない少年パスカルに対して優しく寄り添う存在として描かれ、物語に温かみを与えています。リージの演技は、優雅で感情豊かな表現が特徴で、少年の病状を知りながらも明るく振る舞う姿が観客の心を捉えます。
リージはイタリアの著名な女優として知られ、1960年代にハリウッド進出を果たしました。本作では、ウィリアム・ホールデンとの共演を通じて、国際的な魅力を発揮しています。彼女の活躍は、単なる脇役ではなく、家族の絆を象徴する重要な役割を果たしており、批評家からも高い評価を得ました。特に、少年との交流シーンでは、自然で母性的な温かさを表現し、映画の感動を高めています。
リージのキャリア全体を見ると、本作は彼女の多様な役柄を示す一例です。以前の作品ではグラマラスなイメージが強かった彼女ですが、ここでは内面的な深みを加え、女優としての幅を広げました。公開当時、彼女の演技はヨーロッパ映画界で注目され、以降の作品にも影響を与えました。リージは本作を通じて、国際的な女優としての地位を確立したと言えます。
映画の中で、ヴィルナ・リージはパスカルと一緒に過ごすシーンが多く、狼を連れての冒険や日常の触れ合いが印象的です。これらの場面で、彼女は少年の願いを尊重し、父親を支えるパートナーとして活躍します。彼女の存在が、物語の悲しみを和らげ、希望の光を添えています。
リージの演技力は、微妙な表情の変化で感情を伝える点にあります。例えば、少年の病状を知った後の内面的な葛藤を、静かな視線で表現します。このような繊細なパフォーマンスが、本作のドラマチックな展開を支えています。彼女の活躍は、映画のテーマである家族の愛を体現するものとして、観客に強い印象を残します。
さらに、リージは共演者との化学反応も見事で、ホールデンとのロマンティックな関係性を自然に描き出します。これにより、映画全体のバランスが取れ、彼女の貢献度の高さがうかがえます。本作以降、リージはさらに多様な役に挑戦し、女優としてのキャリアを豊かにしました。
ヴィルナ・リージの衣装・化粧・髪型
ヴィルナ・リージの衣装は、1960年代のエレガントなスタイルを反映したものです。映画『クリスマス・ツリー』では、シンプルで上品なドレスやスカートを着用し、洗練された女性像を演出しています。例えば、日常シーンでは軽やかなワンピースを、フォーマルな場面ではフィットしたシルエットの服を選んでいます。これらの衣装は、彼女の美しさを強調しつつ、役柄の優しさを表しています。
化粧については、クラシックな1960年代イタリアンスタイルが特徴です。ウィングドアイライナーを用いた目元の強調、完璧な肌の仕上がり、そしてソフトにコントゥアされた頰が、彼女の顔立ちを引き立てます。ナチュラルでありながら洗練されたメイクは、映画の時代背景にマッチし、自然な美しさを醸し出しています。
髪型は、ソフトなウェーブをかけたミディアムヘアが主で、優雅さを加えています。シーンによってはルーズにまとめたり、アクセサリーを加えたりして変化を付け、役柄の多面性を表現します。この髪型は、リージのクラシックな魅力と調和し、観客に親しみやすさを感じさせます。
これらの要素は、ヴィルナ・リージの女優としてのイメージを強化しました。当時のファッショントレンドを取り入れつつ、役柄に適した選択がなされています。例えば、屋外シーンでは風になびく髪型が、自由で優しい性格を象徴します。全体として、彼女の外見は物語の情感を高める重要な役割を果たしています。
リージのスタイルは、現代の観客にも影響を与え続けています。1960年代のビューティアイコンとして、彼女の化粧法や髪型は今も参考にされることがあります。本作では、これらの要素が演技と融合し、忘れがたい印象を残します。
あらすじ
https://www.imdb.com/fr/title/tt0064037/mediaviewer/rm689138944/
富裕な実業家ローラン・セギュールは、妻を亡くした後、10歳の息子パスカルとコルシカ島で夏休みを過ごします。楽しい休暇の最中、突然軍用機が核兵器を積んで墜落し、パスカルが放射能に被曝してしまいます。検査の結果、白血病と診断され、余命半年と告げられます。ローランはショックを受けますが、パスカルに病気のことを隠し、残された時間を有意義に過ごそうと決意します。
パリに戻ったローランは、恋人のカトリーヌとともにパスカルを支えます。パスカルは動物園から狼を盗むことを願い、ローランは旧友のヴェルダンの助けを借りてこれを実現します。狼をヴェルダンと名付け、城で一緒に暮らす生活が始まります。パスカルは狼との冒険を楽しむ一方で、体調が徐々に悪化していきます。
秋が深まり、パスカルは学校に戻りますが、病気の進行により入院を余儀なくされます。ローランとカトリーヌは、クリスマスまで生きるというパスカルの願いを叶えるため、懸命に努めます。クリスマスツリーを飾り、家族のような温かな時間を過ごしますが、最終的にパスカルは静かに息を引き取ります。物語は、愛と別れの感動で締めくくられます。
さて、物語の冒頭では、父子の絆が描かれます。コルシカ島の美しい風景の中で、海水浴を楽しむ様子が印象的です。しかし、事故の発生により一転、悲劇が訪れます。この転換点が、映画の緊張感を生み出しています。
中盤では、狼のエピソードが展開します。パスカルのお気に入りの動物である狼を連れ帰る過程で、ローランの友人ヴェルダンがコミカルに活躍します。この部分は、悲しいテーマの中にユーモアを加え、バランスを取っています。
終盤に向かうにつれ、パスカルの病状が深刻化します。クリスマスのシーンでは、ツリーの飾り付けやプレゼントの交換が、家族の愛を象徴します。パスカルの死は静かに描かれ、観客に深い余韻を残します。
解説
映画『クリスマス・ツリー』は、ミシェル・バタイユの同名小説を基にした作品で、核の脅威を背景に家族の愛を描いたドラマです。当時の冷戦時代を反映し、核事故の恐怖をテーマにしています。監督のテレンス・ヤングは、ジェームズ・ボンドシリーズで知られる人物ですが、ここではシリアスな人間ドラマに挑戦しています。
映画の魅力は、悲劇的なストーリーの中にある希望と温かさです。パスカルの無邪気さと、周囲の大人たちの献身が、観客の心を揺さぶります。特に、核の影響という現実的な問題を、個人的な家族の物語として扱う点が秀逸です。これにより、反戦や平和のメッセージが自然に伝わります。
批評面では、感動的な内容が評価されつつ、センチメンタルすぎるとの指摘もあります。しかし、ホールデンやリージの演技がこれを補い、全体として高い完成度を誇ります。音楽のジョルジュ・オーリックによるスコアも、情感を高めています。
テーマとして、死と向き合う姿勢が重要です。ローランはパスカルに真実を隠しますが、これは愛の形として描かれます。この選択が、現代の医療倫理とも関連します。また、狼のモチーフは、野生の自由を象徴し、パスカルの短い人生を比喩しています。
製作背景では、フランス・イタリア合作が国際色を加えています。撮影のアンリ・アルカンは、美しい風景を捉え、視覚的な魅力を提供します。本作は、クリスマス映画として今も視聴され、家族の絆を考える機会を与えます。
全体として、本作は時代を超えた普遍的なテーマを持ち、観客に感動と教訓を届けます。核の危険を警告しつつ、人間性の美しさを讃える点が、映画の価値を高めています。
キャスト
- ウィリアム・ホールデン:ローラン・セギュール
- ヴィルナ・リージ:カトリーヌ・グラツィアーニ
- ブルック・フラー:パスカル・セギュール
- ブールヴィル:ヴェルダン
- マリオ・フェリチアーニ:医者
スタッフ
- 監督:テレンス・ヤング
- 脚本:テレンス・ヤング、ピエール・デュメイエ、ジャン・オーランシュ
- 原作:ミシェル・バタイユ
- 製作:ロベール・ドルフマン
- 音楽:ジョルジュ・オーリック
- 撮影:アンリ・アルカン


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