1980年に公開されたイタリアのエロティックドラマ「スキャンドール」は、自由奔放な若い女性と元歌手の女性が織りなす人間関係を描いた作品。売春や結婚、嫉妬が絡む悲劇的な物語で、セクシュアリティと人生の儚さをテーマにしています。監督のアルベルト・ラトゥアーダが、魅力的な女優陣を活かした演出が特徴。
基本情報
- 邦題:スキャンドール
- 原題:LA CICALA
- 公開年:1980年
- 製作国・地域:イタリア
- 上映時間:100分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
この映画では、主な女優たちが印象的な活躍を見せています。それぞれの役柄を通じて、感情の機微や肉体的な表現を大胆に演じ、物語に深みを加えています。
ヴィルナ・リージ
ヴィルナ・リージは、ウィルマ役を演じています。彼女はかつて有名な歌手だった女性で、年齢を重ねて落ちぶれた人生を歩むキャラクターです。リージの演技は、洗練されたものであり、過去の栄光と現在の絶望を巧みに表現しています。特に、歌唱シーンや性的なシーンでは、彼女の経験豊富な演技力が光ります。この役で、彼女はダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の最優秀女優賞を受賞しました。
リージはイタリア映画界のベテランとして知られ、この作品ではエロティックな要素を芸術的に昇華させ、観客に強い印象を残します。彼女の表情や仕草は、キャラクターの内面的な苦悩を細やかに描き出しており、映画の中心的な存在となっています。また、娘との対立シーンでは、嫉妬と母性が入り混じる複雑な感情を熱演しています。この活躍により、彼女のキャリアに新たな輝きを加えました。
クリオ・ゴールドスミス
クリオ・ゴールドスミスは、チカーラ(スキャンドール)役を務めています。彼女は自由奔放で男性好きの若い女性を演じ、物語のきっかけとなるキャラクターです。ゴールドスミスの演技は、野生的な魅力と無邪気さを兼ね備えており、観客を魅了します。特に、ウィルマとの出会いや売春生活のシーンでは、彼女の自然体な演技が際立ちます。この作品は彼女の代表作の一つであり、エロティックなシーンでの大胆な表現が注目を集めました。
ゴールドスミスはモデル出身の女優で、この映画で女優としての才能を開花させました。彼女の活躍は、映画の軽快な前半部を支え、後半の悲劇的な展開への橋渡し役となっています。レビュアーからは、彼女の肉体的な美しさが活用された演技が評価されていますが、キャラクターの浅はかさをコミカルに演じている点も魅力です。
バルバラ・デ・ロッシ
バルバラ・デ・ロッシは、サヴェリア役、つまりウィルマの娘を演じています。彼女は17歳の美しい少女として登場し、母との性的競争を繰り広げます。デ・ロッシの演技は、若々しさと反抗心を鮮やかに表現しており、映画の後半を緊張感あるものにしています。この役で彼女は、ヌードシーンを含めた大胆な演技に挑戦し、注目を浴びました。
デ・ロッシは当時若手女優として頭角を現しており、この作品で女優としての幅を広げました。彼女の活躍は、母娘の対立を象徴的に描き、物語のクライマックスを盛り上げます。レビュアーからは、美しさと説得力のある演技が褒められており、映画のエロティックなテーマを深めています。
女優の衣装・化粧・髪型
この映画では、女優たちの衣装、化粧、髪型が、キャラクターの性格や時代背景を反映したものとなっています。1980年代のイタリア映画らしい、セクシーで実用的なスタイルが特徴です。
ヴィルナ・リージ
ヴィルナ・リージのウィルマは、元歌手らしい華やかな衣装を着用しています。ステージシーンでは、ボディコンシャスなドレスやスパンコールのついたガウンをまとい、セクシーさを強調します。売春生活のシーンでは、シンプルなスカートやブラウスで現実的な貧困さを表現しています。化粧は、年齢を感じさせる濃いめのアイシャドウとリップを使い、過去の栄光を思わせる洗練されたメイクです。髪型は、ゆるくウェーブのかかったミディアムヘアで、乱れやすいスタイルがキャラクターの不安定さを表しています。これらの要素が、彼女の役柄の複雑さを視覚的に支えています。
クリオ・ゴールドスミス
クリオ・ゴールドスミスのチカーラは、自由奔放さを表すカジュアルな衣装が中心です。ミニスカートやタイトなトップス、時にはヌードに近い露出度の高い服を着用し、エロティックな魅力を発揮します。化粧は、ナチュラルメイクに近いもので、フレッシュな若さを強調するピンク系のチークとグロスを使っています。髪型は、ロングのストレートヘアやポニーテールで、無邪気さとセクシーさを兼ね備えています。これにより、彼女のキャラクターが視覚的に活気づけられています。
バルバラ・デ・ロッシ
バルバラ・デ・ロッシのサヴェリアは、ティーンエイジャーらしい可愛らしい衣装を着ています。花柄のワンピースやショートパンツで、若さをアピールしますが、後半ではセクシーなランジェリー風の衣装に変わります。化粧は、軽めのファンデーションとマスカラで、自然な美しさを際立たせています。髪型は、ボブカットやゆるふわのショートヘアで、反抗的な少女像を強調します。これらのスタイルが、母との対比を明確にしています。
あらすじ
物語は、自由奔放な若い女性チカーラ(クリオ・ゴールドスミス)が故郷を離れるところから始まります。
彼女は男性好きで、無邪気な性格です。旅の途中で、かつて有名だった歌手のウィルマ(ヴィルナ・リージ)と出会います。ウィルマは、地元のクラブで失敗した後、チカーラと共に売春婦として生活を始めます。二人は苦しい日々を送りますが、そこで出会った実業家のウリッセ(アンソニー・フランシオサ)がウィルマに恋をします。ウリッセは道端のガソリンスタンドを所有しており、ウィルマと結婚した後、二人でレストラン付きの宿泊施設を運営します。
幸せな生活が始まるかに見えますが、ウィルマの17歳の娘サヴェリア(バルバラ・デ・ロッシ)が現れます。サヴェリアは美しく、母の過去を責めながらも、性的に競争心を燃やします。チカーラは二人の間で板挟みになり、嫉妬と欲望が絡み合う中、物語は殺人事件へと発展します。エロティックな要素を交えつつ、悲劇的な結末を迎えます。このあらすじは、人間関係の複雑さと人生の儚さを描いています。
解説
「スキャンドール」は、アルベルト・ラトゥアーダ監督の後期作品で、エロティックドラマとして位置づけられています。この映画は、女性のセクシュアリティと社会的な位置をテーマに、男性中心の視線から描かれていますが、女優たちの強烈な演技により、芸術的な深みを加えています。
物語の前半は軽快でコメディタッチですが、後半になるとメロドラマ的な展開となり、ジェームズ・M・ケインの小説を思わせるノワール要素が現れます。
イタリアの田舎道やトラックストップを舞台に、日常の卑俗さと欲望の交錯をリアルに表現しています。特に、母娘の性的競争は、男性的ファンタジーを基調としつつ、女性の絶望を描いており、批評家からは「芸術とエクスプロイテーションの狭間」と評されています。音楽のフレッド・ボングストは、ナストロ・ダルジェント賞を受賞し、哀愁漂うスコアが映画の雰囲気を高めています。
この作品は、1980年代のイタリア映画の転換期を象徴し、伝統的なドラマとエロティシズムの融合を示しています。レビュアーからは、女優たちのヌードシーンが活用的だが、演技の質が高い点が指摘されています。全体として、人間性の暗部を探る深い作品です。この映画は、女性の視点から見ると、売春や結婚の現実を風刺的に描いており、現代のジェンダー議論にもつながります。
監督のラトゥアーダは、過去の作品同様、社会の底辺を描くことに長けており、ここでは女性の強さと脆弱さをバランスよく表現しています。エロティックなシーンは、物語の必然性から生まれ、単なる扇情ではなく、キャラクターの心理を反映しています。たとえば、ウィルマの歌唱シーンは、彼女の過去を象徴し、観客に感情移入を促します。また、チカーラの無邪気さは、物語の軽やかさを保ちつつ、悲劇の予兆となっています。サヴェリアの登場は、転機となり、家族の崩壊を描きます。このような構成が、映画の緊張感を維持しています。
批評では、男性キャラクターが女性の犠牲者として描かれる点が興味深いとされています。全体のトーンは、ノスタルジックで、1980年のイタリア社会を反映しています。この作品は、海外では「The Cricket」として知られ、エロティック映画のファンに人気です。監督のスタイルは、ネオレアリズモの影響を受けつつ、商業的な要素を加えています。結果として、芸術性と娯楽性を兼ね備えた一作となっています。女優たちの活躍が、映画の成功の鍵です。
キャスト
- ヴィルナ・リージ:ウィルマ・マリンヴェルニ
- アンソニー・フランシオサ:アンニバーレ・メレゲッティ(別名ウリッセ)
- レナート・サルヴァトーリ:カルブーロ
- クリオ・ゴールドスミス:チカーラ
- バルバラ・デ・ロッシ:サヴェリア
- アリスティデ・カポラーレ:ブレテッラ
- リッカルド・ガッローネ:エルメテ
- アントニオ・カンタフォラ:アルベルト・”チプリア”・アントネッリ
- ロリス・バッゾッキ:チプリア
- コッラード・オルミ:不明
スタッフ
- 監督:アルベルト・ラトゥアーダ
- 撮影:ダニーロ・デシデリ
- 音楽:フレッド・ボングスト
- 配給:NIR
- 原作:ナターレ・プリネットとマリナ・ダウニアの小説に基づく
- 脚本:不明
- 製作:不明



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