『ブロンド』（2022年）は米国の伝記映画で、マリリン・モンローの生涯をフィクションを交えて描く。アナ・デ・アルマス主演、アンドリュー・ドミニク監督。波乱に満ちた私生活と名声の代償を大胆に再現。Netflixで配信。
基本情報
- 邦題：ブロンド
- 原題：Blonde
- 公開年：2022年
- 製作国：米国
- 上映時間：167分
- ジャンル：ドラマ、伝記
女優の活躍
『ブロンド』でマリリン・モンローを演じたアナ・デ・アルマスは、その圧倒的な演技力で高い評価を受けました。キューバ出身の彼女は、『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』や『ブレードランナー 2049』で注目を集めていましたが、本作での体当たりの演技は特に話題に。マリリン・モンローの複雑な内面と公のイメージのギャップを、感情豊かに表現しました。彼女の演技は、ヴェネツィア国際映画祭での14分間のスタンディングオベーションや、第80回ゴールデン・グローブ賞および第95回アカデミー賞主演女優賞のノミネートに繋がりました。アナはマリリンの声や仕草を徹底的に研究し、キューバ訛りの英語を克服して役に没入。批評家からは「憑依型の演技」と称され、映画の重いテーマを支える存在感を示しました。共演のジュリアンヌ・ニコルソンやサラ・パクストンも、それぞれマリリンの母親や脇役で印象的な演技を見せ、物語に深みを加えています。
女優の衣装・化粧・髪型
『ブロンド』の衣装、化粧、髪型は、マリリン・モンローのアイコニックなスタイルを忠実に再現しつつ、彼女の内面や時代背景を反映しています。衣装は、マリリンの代名詞である白いハルタードレス（『七年目の浮気』の名シーンを想起）や、ピンクのサテンドレス（『紳士は金髪がお好き』の「ダイアモンドは女の親友」）など、歴史的なルックを再現。日常シーンでは、白いコートやシンプルなドレスで、スターの裏の飾らない姿を表現。衣装は女性的なシルエットと官能性を強調し、1950年代のハリウッドの華やかさを現代的に解釈しました。化粧は、赤いリップと太いアイラインでマリリンのグラマラスな魅力を再現しつつ、プライベート場面ではナチュラルなメイクでノーマ・ジーンの脆弱さを表現。髪型は、プラチナブロンドのウェーブヘアが中心で、シーンに応じてタイトなアップスタイルやカジュアルなダウンスタイルも登場。アナ・デ・アルマスの変身は「本人そっくり」と評され、視覚的な説得力を与えました。これらの要素は、マリリンの公私の二面性を象徴し、観客に強い印象を与えます。
あらすじ
『ブロンド』は、ジョイス・キャロル・オーツの同名小説を原作に、マリリン・モンローの生涯をフィクションを織り交ぜて描いた作品です。物語は、ノーマ・ジーンとして育った幼少期から始まります。精神的に不安定な母グレディスに育てられ、父親不在の中で虐待や孤児院生活を経験。1940年代、ピンナップモデルとして活動を始めたノーマは、マリリン・モンローとして映画界に進出。『紳士は金髪がお好き』や『七年目の浮気』でハリウッドのトップスターとなり、セックスシンボルとして世界的な名声を得ます。しかし、華やかなキャリアの裏で、彼女は男性優位の社会や搾取的な関係に苦しみ、ノーマとマリリンのアイデンティティの間で葛藤します。ジョー・ディマジオやアーサー・ミラーとの結婚、ジョン・F・ケネディとの関係など、波乱に満ちた私生活が描かれ、名声の代償として精神的な崩壊へと追い込まれていきます。最終的に、彼女の悲劇的な結末が暗示され、観客に深い余韻を残します。
解説
『ブロンド』は、単なる伝記映画ではなく、マリリン・モンローの神話と現実のギャップを探る実験的な作品です。監督のアンドリュー・ドミニクは、事実とフィクションを融合させ、彼女の内面的な苦悩や社会の抑圧に焦点を当てます。映画は4つのアスペクト比率やカラーと白黒の映像を混在させ、視覚的に不安定な心理状態を表現。NC-17指定を受けた露骨な性的描写は、搾取された女性像を強調し、賛否両論を呼びました。一部では「マリリンの闇に偏りすぎ」と批判された一方、映像美やアナ・デ・アルマスの演技は高く評価されました。本作は、セックスシンボルとしてのマリリンだけでなく、演技を追求した女優としての側面や、男性社会での闘いを描き、現代の女性の視点からも共感を呼びます。マリリンがメソッド演技を学び、リー・ストラスバーグの下で本格的な演技を追求したエピソードも描かれ、彼女の知られざる努力を浮き彫りに。ハリウッドの黄金時代とその裏側を映し出す本作は、観る者に深い考察を促す問題作です。
キャスト
- アナ・デ・アルマス（マリリン・モンロー／ノーマ・ジーン）：主演。圧倒的な演技でマリリンの複雑な内面を表現。
- エイドリアン・ブロディ（アーサー・ミラー）：マリリンの3番目の夫で劇作家。知的な魅力で彼女を支える役を好演。
- ボビー・カナヴェイル（ジョー・ディマジオ）：マリリンの2番目の夫で野球選手。力強い存在感で関係の緊張感を表現。
- ゼイヴィア・サミュエル（チャールズ・チャップリン・ジュニア）：マリリンと短期間恋愛関係にあった人物を演じる。
- ジュリアンヌ・ニコルソン（グレディス・パール・ベイカー）：マリリンの精神的に不安定な母。複雑な親子関係を熱演。
- サラ・パクストン（隣人）：ノーマを一時保護する役。短い出演ながら印象的。
- キャスパー・フィリップソン（ジョン・F・ケネディ）：マリリンとの関係が噂された大統領役。
スタッフ
- 監督・脚本：アンドリュー・ドミニク（『ジェシー・ジェームズの暗殺』）。実験的な演出でマリリンの内面を掘り下げる。
- 原作：ジョイス・キャロル・オーツ（『ブロンド マリリン・モンローの生涯』）。フィクションと事実を融合した小説。
- 製作：デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、トレイシー・ランドン、ブラッド・ピット、スコット・ロバートソン。2010年から企画を進め、2019年8月からロサンゼルスで撮影。
- 撮影：チェイシー・イアビン。カラーと白黒、異なるアスペクト比率を駆使し、視覚的な物語を構築。
- 音楽：ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス。感情的なスコアで映画の重い雰囲気を強調。
衣装デザイン：ジェニファー・ジョンソン。マリリンのアイコニックなルックを再現しつつ、時代感を反映。 - 配信：Netflix。2022年9月28日より独占配信開始。
総括
『ブロンド』（2022年）は、マリリン・モンローの輝かしいキャリアと悲劇的な私生活を、アナ・デ・アルマスの迫真の演技と視覚的な革新で描いた野心作です。衣装や髪型は彼女のアイコン性を再現しつつ、物語はセックスシンボルの裏に隠れた人間性を掘り下げます。賛否両論を呼んだものの、映画史におけるマリリンの影響力と現代的視点からの再評価を促す作品として、観る価値があります。
レビュー 作品の感想や女優への思い