『白いドレスの女』(原題:Body Heat)は、1981年公開の米国のネオノワール・エロティック・スリラー映画。ローレンス・カスダン監督のデビュー作で、ウィリアム・ハートとキャスリーン・ターナーが主演。フロリダの暑い夏を舞台に、情事と殺人計画に巻き込まれる弁護士の物語です。
基本情報
- 邦題:白いドレスの女
- 原題:BODY HEAT
- 公開年:1981年
- 製作国:米国
- 上映時間:113分
- ジャンル:サスペンス、ドラマ
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
見どころ
脚本家として活躍していたローレンス・カスダンの初監督作。感情の機微を細やかに描いた展開が見事。キャスリーン・ターナーは本作で鮮烈デビューを飾った。
女優の活躍
『白いドレスの女』で最も注目を集めたのは、映画デビュー作となったキャスリーン・ターナー。彼女が演じたマティ・ウォーカーは、魅惑的でミステリアスなファム・ファタル(魔性の女)として、観客を強く惹きつけました。この作品でのターナーの演技は、自信に満ちたセクシュアリティと狡猾さを兼ね備えたキャラクターを見事に表現し、批評家から高い評価を受けました。『ニューヨーク・タイムズ』は、彼女の「衝撃的な映画デビュー」がその後のキャリアを築いたと評し、『エンパイア』誌は1995年に彼女を「映画史上最もセクシーなスター100人」に選出しました。ターナーの声は、往年の女優ローレン・バコールに似ているとされ、監督のローレンス・カスダンはその声と「美しい脚」を起用の理由に挙げています。
ターナーは大胆なシーンにも挑戦し、特に官能的なシーンでの演技は映画の雰囲気を決定づけました。彼女の存在感は、物語の中心である情熱と裏切りのテーマを強化し、ウィリアム・ハート演じるネッドとの化学反応は、2008年のMovieFoneの「歴代映画のセクシーなカップル」ランキングで6位に選ばれるほどでした。 このデビュー作以降、ターナーは『ロマンシング・ストーン』(1984年)などでさらに活躍し、80年代を代表する女優の一人となりました。
女優の衣装・化粧・髪型
キャスリーン・ターナー演じるマティ・ウォーカーの衣装は、映画のタイトルにもある「白いドレス」を中心に、官能的かつ洗練されたスタイルが特徴です。白いドレスは、フロリダの蒸し暑い気候を反映し、軽やかな素材と身体のラインを強調するデザインが採用されました。このドレスは、彼女のミステリアスで誘惑的なキャラクターを象徴し、観客に強烈な印象を与えます。特に、ネッドとの初対面シーンで着用された白いドレスは、シンプルながらも彼女の魅力を最大限に引き立て、物語の重要なモチーフとなっています。
化粧は、1980年代初頭のトレンドを反映しつつ、ノワール映画のクラシックな美学を取り入れています。ターナーのメイクは、濃いアイラインと赤いリップで強調された顔立ちが特徴で、ファム・ファタルの妖艶さを際立たせました。髪型は、肩にかかる長さのゆるやかなウェーブで、ナチュラルかつ女性らしい雰囲気を演出。暑いフロリダの設定に合わせ、汗で少し乱れたようなスタイリングが、映画の官能的なムードをさらに高めています。
あらすじ
フロリダの蒸し暑い夏、女癖の悪い弁護士ネッド・ラシーン(ウィリアム・ハート)は、野外ステージで白いドレスを着た美しい女性マティ・ウォーカー(キャスリーン・ターナー)と出会います。彼女は裕福だが怪しげな実業家エドムンド・ウォーカー(リチャード・クレンナ)の若妻です。ネッドはマティに強く惹かれ、彼女の「夫がいなければ幸せになれる」という言葉に動かされ、エドムンド殺害の計画に加担します。二人の情事は情熱的で危険なものとなり、殺人計画は実行されますが、ネッドは次第にマティの裏の顔と緻密な策略に気付き始めます。友人や知人の警告を無視したネッドは、蜘蛛の巣に絡め取られた獲物のように、彼女の罠に深くはまっていきます。物語は、裏切りとどんでん返しが交錯するクライマックスへと進み、ネッドの運命とマティの真意が明らかになります。
解説
『白いドレスの女』は、1944年のビリー・ワイルダー監督『深夜の告白』(Double Indemnity)に強い影響を受けたネオノワール映画。ローレンス・カスダンは、古典的なフィルム・ノワールの要素—破滅へと導く主人公、魔性の女、暗い映像美、裏切りのプロット—を現代的に再解釈し、1980年代の観客に新たな魅力を提供しました。映画は、フロリダの蒸し暑い気候を背景に、汗と情欲が織りなす濃密な雰囲気を作り出し、観客を引き込みます。ジョン・バリーの音楽は、マティを象徴する「メイン・テーマ」を中心に、官能的かつ不穏なムードを演出。撮影はリチャード・H・クラインが担当し、暗い影と光のコントラストがノワールの美学を強調しています。
批評家からは賛否両論あり、ポーリン・ケイルはターナーの演技を高く評価した一方、ジョン・サイモンは「派生的で不快」と酷評しました。しかし、グレン・エリクソンは「初の意識的なネオノワール」と呼び、構造の緻密さと人間性の悲観的な描写を称賛しました。 映画は公開当時、北米興行収入で初登場1位を記録し、約2350万ドルの興行収入を上げました。 ターナーのデビューとカスダンの監督デビュー作としての意義も大きく、80年代のノワール復興に貢献した作品として評価されています。
キャスト
- ネッド・ラシーン:ウィリアム・ハート(女癖の悪い弁護士。舞台出身の彼の3本目の映画出演で、情熱に溺れる男を熱演)
- マティ・ウォーカー:キャスリーン・ターナー(映画デビュー作で、魅惑的な悪女を演じ、一躍注目を集める)
- エドムンド・ウォーカー:リチャード・クレンナ(マティの夫で、怪しげな実業家)
- ピーター・ローウェンステイン:テッド・ダンソン(ネッドの友人で、事件に疑問を抱く刑事)
- オスカー・グレース:J・A・プレストン(検事で、ネッドの知人)
- テディ・ルイス:ミッキー・ローク(爆弾職人で、ネッドに協力する脇役。当時はほぼ無名)
- メアリー・アン:キム・ジマー(マティの知人として登場)
日本語吹替版では、ウィリアム・ハートを堀勝之祐、キャスリーン・ターナーを田島令子が担当。
スタッフ
- 監督・脚本:ローレンス・カスダン(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』の脚本家として知られ、本作が監督デビュー)
- 製作:フレッド・T・ガロ
- 製作総指揮:ジョージ・ルーカス(クレジットなし)
- 撮影:リチャード・H・クライン(ノワールらしい陰影を活かした映像)
- 音楽:ジョン・バリー(官能的で不穏なスコアが特徴)
- 編集:カロル・リトルトン
- 製作デザイン:ビル・ケニー
まとめ
映画はフロリダのデルレイビーチやハリウッドビーチで撮影され、架空のミランダ・ビーチを舞台に設定されました。撮影中は異常気象で寒波に見舞われ、俳優が息を白くしないよう工夫(例:ターナーが氷を口に含む)が必要でした。本作は、情欲と犯罪が交錯するサスペンスとして、フィルム・ノワールの伝統を継承しつつ、現代的な解釈を加えた傑作として今も語り継がれています。
レビュー 作品の感想や女優への思い