キャンディス・バーゲン(Candice Bergen)は米国の女優・写真家。映画『グループ』でデビューし、『結婚ゲーム』でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。テレビシリーズ『TVキャスター マーフィー・ブラウン』でエミー賞・ゴールデングローブ賞を受賞。写真家としてもファッション誌で活躍。
プロフィール
- 名前:キャンディス・バーゲン(Candice Bergen)
- 本名:Candice Patricia Bergen
- 生年月日:1946年5月9日(79歳)
- 出生地:アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス
- 国籍:アメリカ合衆国
- 配偶者ルイ・マル(1981~1995年)、マーシャル・ローズ(2000年~)
生い立ち・教育
キャンディス・バーゲンは、1946年5月9日、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスのビバリーヒルズで生まれました。彼女の家族は芸能界に深く根ざしており、父親のエドガー・バーゲンは有名な腹話術師で、ラジオやテレビで人気を博したコメディアンでした。母親のフランセス・バーゲンはモデルとして活動し、プロフェッショナルな名前でフランセス・ウェストコットとして知られていました。キャンディスは幼少期から父親のショーに参加し、人形のチャーリー・マッカーシーやモーティマー・スナードとともに登場する機会がありました。このような環境で育った彼女は、幼い頃からエンターテインメントの世界に親しみ、11歳の時にはグーチョー・マルクスのクイズ番組『You Bet Your Life』に父親と共に出演し、そこで将来の夢として服飾デザイナーを志すと語りました。
しかし、芸能一家の生活に次第に辟易し、14歳の時にスイスに留学するという大胆な決断を下しました。この留学経験は、彼女の視野を広げ、異文化への理解を深める重要なものでした。スイスでの生活を通じて、英語圏の女優としては珍しくフランス語を流暢に習得し、後年のキャリアでそのスキルを発揮することとなります。アメリカに帰国後、彼女はペンシルベニア大学に入学し、美術史と絵画を専攻しました。大学時代はモデルとしても活躍し、美しい容姿が注目を集めました。在学中にはホームカミング・クイーンやミス・ユニバーシティに選ばれる栄誉に浴しましたが、本人によると教育に対しては真剣に取り組めていなかったそうです。この時期に、監督のシドニー・ルメットからスカウトされ、女優への道が開かれました。こうした生い立ちと教育は、彼女の多才な才能を育み、女優、写真家としての基盤を築きました。
経歴
キャンディス・バーゲンの経歴は、1960年代のモデル時代から始まり、多様な分野で輝かしい活躍を遂げてきました。大学在学中にモデルとして『ヴォーグ』誌の表紙を飾るなど、ファッション界で注目を集めましたが、1966年にシドニー・ルメット監督の映画『グループ』で女優デビューを果たしました。この作品は、8人の女性の友情と葛藤を描いたもので、彼女はレイキー役を演じ、鮮烈な印象を残しました。以降、映画界で着実にキャリアを積み重ね、1966年の『サンドペブルズ』ではスティーブ・マックイーンの相手役を務め、1970年の『ソルジャー・ブルー』では西部劇のヒロインを演じました。1971年の『肉体関係(Carnal Knowledge)』ではジャック・ニコルソンやアート・ガーファンクルと共演し、複雑な人間関係を表現する演技で評価されました。
1970年代には、映画のヒット作に恵まれない時期もありましたが、写真家としての第二のキャリアを追求しました。彼女の写真作品は『ライフ』、『プレイボーイ』、『エスクワイア』などの雑誌に掲載され、ジェラルド・フォード大統領一家の特集やチャールズ・チャップリンのポートレートなど、著名な撮影で名を馳せました。この時期の経験は、彼女の芸術的感性を磨き、後年の演技に深みを加えました。1979年の『結婚ゲーム(Starting Over)』ではバート・レイノルズと共演し、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされる快挙を達成しました。この作品は、離婚後の女性の再出発を描いたコメディで、彼女のコミカルな才能が開花しました。
1980年代に入り、テレビ界への進出が彼女のキャリアを頂点に導きました。1988年から1998年まで放送されたシットコム『TVキャスター マーフィー・ブラウン』でタイトルロールのマーフィー・ブラウンを演じ、製作総指揮も兼任しました。この番組は、ニュースキャスターの日常と社会問題をユーモラスに描き、全米で大ヒット。1992年には副大統領ダン・クウェールの批判を呼びましたが、それが逆に番組の人気を高めました。彼女はこの役で5回のプライムタイム・エミー賞(1989、1990、1992、1994、1995年)と2回のゴールデングローブ賞(1989、1992年)を受賞し、フェミニズムの象徴となりました。番組終了後、2000年にはオプラ・ウィンフリーのネットワークOxygenでトークショー『Exhale with Candice Bergen』をホストしました。
2000年代以降も活躍を続け、2005年から2008年の法律ドラマ『ボストン・リーガル』でシャーリー・シュミット役を演じ、再びエミー賞にノミネートされました。2018年には『マーフィー・ブラウン』のリバイバル版に出演し、現代社会の問題を風刺しました。また、映画では2000年の『ミス・コンジニアリティ』でサンドラ・ブロックの母親役、2018年の『ブック・クラブ』で共演者たちとコメディを披露しました。写真家としても日本でミノルタのCMに出演するなど、国際的に知られています。彼女の経歴は、女優としての成功だけでなく、写真やジャーナリズムへの情熱が融合した多面的なものです。
私生活
キャンディス・バーゲンの私生活は、華やかなキャリアと並行して、喜びと悲しみの両方を経験したものであります。1980年、彼女はフランスの著名な映画監督ルイ・マルと結婚しました。ルイは彼女より14歳年上で、映画『プリティ・ベビー』などで知られる巨匠でした。二人はパリやニューヨークで暮らし、1985年に娘のクロエ・マルを出産しました。この結婚生活は創造的な刺激に満ち、ルイの影響で彼女の演技力がさらに洗練されました。しかし、1995年にルイがリンパ癌で逝去するという悲劇が訪れ、彼女は深い喪失感に包まれました。この時期、彼女は公の場から姿を消し、家族との時間を大切にしました。
悲しみを乗り越え、2000年にニューヨークの不動産エグゼクティブで慈善家であるマーシャル・ローズと再婚しました。この結婚は安定したものであり、現在も続いています。娘のクロエはジャーナリストとして活躍し、母娘の絆は強いものです。2006年には脳梗塞を発症しましたが、迅速な治療により回復し、以後健康管理に努めています。私生活では、フェミニズムやリベラルな政治的立場を公言し、環境保護や女性権利の活動にも関与してきました。2015年に出版した回顧録『A Fine Romance』では、結婚生活や母性、キャリアの裏側を率直に綴り、読者から共感を集めました。1984年の初回顧録『Knock Wood』もベestsellerとなり、彼女の文才を証明しました。また、弟のクリス・バーゲンは映画編集者として業界で働いています。こうした私生活のエピソードは、彼女の強い精神力を物語っています。
出演作品
キャンディス・バーゲンの出演作品は、映画、テレビ、舞台に及び、60年以上にわたるキャリアを反映しています。以下に主なものを年代順に挙げます。
映画
公開年 | 邦題 | 役名 |
---|---|---|
2020 | レット・ゼム・オール・トーク | ロバータ |
2018 | また、あなたとブッククラブで | シャロン |
2016 | ハリウッド・スキャンダル | ナディーン・ヘンリー |
2010 | 選ばれる女にナル3つの方法 | オーガスタ・ヘイズ |
2009 | ブライダル・ウォーズ | マリオン |
2008 | セックス・アンド・ザ・シティ | イニード・フリック |
2008 | THE WOMEN 明日の私に着替えたら | キャサリン |
2003 | ハッピー・フライト | サリー・ウェストン |
2003 | セイブ・ザ・ワールド | ジュディ・トビアス |
2003 | 殺しのターゲット | デイジー |
2002 | メラニーは行く! | ケイト |
2000 | デンジャラス・ビューティー | キャシー・モーニングサイド |
1996 | メアリーとティム | メアリー |
1987 | メイフラワー・マダム | シドニー |
1985 | SFキング・オブ・アーサー/魔剣伝説 | モーガン・ル・フェイ |
1985 | バート・レイノルズのスティック | カイル |
1984 | 2010年 | SAL9000 |
1982 | ガンジー | マーガレット・バーク=ホワイト |
1981 | ベストフレンズ | メリー・ノエル・ブレイク |
1979 | 結婚ゲーム | ジェシカ・ポッター |
1978 | 続ある愛の詩 | マーシー・ボンウィット |
1976 | ドミノ・ターゲット | エリー・タッカー |
1975 | 風とライオン | イーデン |
1975 | 弾丸を噛め | ケイト・ジョーンズ |
1974 | 新・おしゃれ泥棒 | Maren Shirell |
1971 | 愛の狩人 | スーザン |
1971 | さらば荒野 | メリッサ |
1971 | 愛はひとり | T. R. バスキン |
1970 | …YOU… | ジャン |
1970 | ソルジャー・ブルー | クレスタ・リー |
1969 | 冒険者 | スー・アン・デイリー |
1968 | 怪奇と幻想の島 | リリー |
1967 | パリのめぐり逢い | キャンディス |
1967 | 魚が出てきた日 | エレクトラ・ブラウン |
1966 | グループ | レイキー |
1966 | 砲艦サンパブロ | シャーリー |
TV番組
放映年 | 邦題 | 役名 |
---|---|---|
2005-2008 | ボストン・リーガル | シャーリー・シュミット |
2002-2004 | セックス・アンド・ザ・シティ | イニード・ミード/イニード・フリック |
1988-1998 | TVキャスター マーフィー・ブラウン | マーフィー・ブラウン |
2011 | Dr.HOUSE | アーリーン・カディ |
2004 | ロー&オーダー | アマンダ・アンダリー判事 |
1992 | となりのサインフェルド | マーフィー・ブラウン |
これらの作品を通じて、彼女はドラマからコメディまで幅広いジャンルで存在感を発揮し、現代のアメリカン・アイコンとして位置づけられています。
レビュー 作品の感想や女優への思い