中華人民共和国

中華人民共和国（中国）は東アジアに位置する広大な国で、世界第2位の人口を有します。古代文明の発祥地として知られ、数千年の歴史を持ちます。現代では経済大国として急速に発展しました。文化面では、映画産業が盛んで、独自のスタイルを確立しています。国際的に影響力のある作品も多数生み出しています。

時代別映画史
1. サイレント時代（1905年～1920年代）
黄金時代（1930年代）
1. 共産党時代（1949年～1976年）
改革開放後（1978年～1980年代）
1. 現代（1990年代～現在）

時代別映画史

サイレント時代（1905年～1920年代）

中国映画の歴史は、1896年に上海で最初の映画上映が行われたことに始まります。1905年に制作された『定軍山』が中国初の本格的な映画とされ、これは京劇のドキュメンタリー形式でした。この時代は主に外資系映画会社が主導し、技術的な基盤が築かれました。1920年代に入ると、アメリカ映画の影響を受け、ストーリー性のある作品が増え、上海が映画の中心地となりました。しかし、サイレント映画の限界から、表現は視覚中心でした。社会の動乱期でもあり、映画は娯楽として人気を集め始めました。この時期の映画は、伝統的な京劇や民間物語を題材にすることが多く、観客の心を捉えました。女優の活躍は限定的でしたが、後の黄金時代への布石となりました。全体として、映画産業の草創期であり、技術導入と市場形成が主な特徴です。

主な作品

『定軍山』（1905年）：京劇の名場面を記録した中国初の映画です。
『難夫難妻』（1913年）：初のフィクション映画で、喜劇要素を含みます。
『孤児救祖記』（1923年）：家族ドラマの先駆けです。

主な女優

この時代は女優の記録が少なく、具体的な著名人は少ないですが、初期のサイレント女優として、後の時代に繋がる基盤を築きました。

黄金時代（1930年代）

1930年代は中国映画の最初の黄金期と呼ばれ、上海を拠点に左翼的な革新的作品が多数制作されました。聯華影業公司や明星影片公司が市場を支配し、社会問題や貧困、女性の地位を描く映画が流行しました。トーキー映画の導入により、表現力が向上し、スターシステムが確立しました。この時代は、日中戦争の影響を受けつつも、創造性が爆発した時期です。阮玲玉のようなスター女優が登場し、悲劇的な人生が映画界に衝撃を与えました。周璇の歌声が映画を彩り、ミュージカル要素も加わりました。全体として、芸術性と商業性のバランスが取れた時代で、国際的に評価される基盤ができました。戦前の混乱の中で、映画は人々の心の支えとなりました。

主な作品

『春蚕』（1933年）：農民の苦しみを描いた社会派ドラマです。
『女神』（1934年）：阮玲玉主演の代表作で、女性の悲劇を表現します。
『大いなる路』（1935年）：抗日戦争を予感させる作品です。
『漁光曲』（1934年）：漁民の生活を描き、国際賞を受賞しました。
『十字路』（1937年）：都市の若者たちの苦悩をテーマにします。
『街角の天使』（1937年）：周璇の歌が魅力のミュージカルです。

主な女優

阮玲玉：『女神』などで知られ、中国のグレタ・ガルボと呼ばれました。1935年に自殺し、伝説となりました。
周璇：歌姫として活躍し、『街角の天使』で人気を博しました。
蝴蝶（Hu Die）：国際的に有名で、多くのサイレントからトーキー作品に出演しました。
金焔：情感豊かな演技で知られます。
李麗麗（Li Lili）：活発な役柄で人気を集めました。

ロアン・リンユィ／阮玲玉

『ロアン・リンユィ／阮玲玉』は、スタンリー・クワン監督による1991年の香港伝記ドラマ。マギー・チャン演じるサイレント映画女優、阮玲玉（1910～1935年）の生涯とキャリアを描く。マギーは1992年のベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞しています。

共産党時代（1949年～1976年）

1949年の中華人民共和国成立後、映画は共産党のプロパガンダツールとして機能しました。1950年代はソビエト映画の影響を受け、集団主義や革命をテーマにした作品が主流となりました。1960年代の文化大革命では、映画制作がほぼ停止し、限られた革命オペラ映画のみが許されました。この時代は、検閲が厳しく、芸術性が制限されましたが、『紅色娘子軍』のようなバレエ映画が国際的に注目されました。アニメーションも発展し、『大鬧天宮』が傑作として残りました。女優の活躍はプロパガンダ色が強く、個人の表現は抑えられました。全体として、政治主導の映画史で、娯楽より教育が優先されました。文化大革命の終わりとともに、映画界は新たな転機を迎えました。

主な作品

『橋』（1949年）：戦争後の復興を描いた作品です。
『白毛女』（1950年）：農民の解放をテーマにしたクラシックです。
『紅色娘子軍』（1964年）：女性兵士の物語で、バレエ形式です。
『舞台の姉妹』（1965年）：芸術家の苦難を描きます。
『大鬧天宮』（1964年）：孫悟空のアニメーションで、2部作です。
『武訓伝』（1950年）：教育者の生涯を描きましたが、批判されました。

主な女優

謝芳（Xie Fang）：『舞台の姉妹』で知られ、革命女優として活躍しました。
劉暁慶（Liu Xiaoqing）：後期に登場し、多様な役を演じました。
王暁棠：軍人役で人気を集めました。

この時代は集団性が重視され、個別のスター女優が少ない特徴があります。

改革開放後（1978年～1980年代）

1978年の改革開放政策により、映画界は文化大革命の傷跡を描く「傷痕ドラマ」が流行しました。第五世代監督の登場で、芸術性が向上し、国際映画祭で受賞する作品が増えました。検閲は残るものの、多様なテーマが許され、娯楽映画も復活しました。陳凱歌や張芸謀が台頭し、視覚美豊かな作品を生み出しました。女優では鞏俐が国際的にブレイクしました。この時代は、中国映画の復興期で、伝統と現代の融合が見られます。経済成長とともに、映画市場が拡大し始めました。全体として、抑圧からの解放と創造性の爆発が特徴です。1980年代末には、天安門事件の影響で一時停滞しましたが、基盤は固まりました。

主な作品

『巴山夜雨』（1980年）：文化大革命の余波を描きます。
『天雲山伝奇』（1980年）：知識人の苦難をテーマにします。
『芙蓉鎮』（1986年）：謝晋監督の代表作で、社会変革を描きます。
『黄色い大地』（1984年）：陳凱歌のデビュー作で、農村の風景が美しいです。
『紅いコーリャン』（1988年）：張芸謀監督、鞏俐主演の国際的ヒット作です。
『一人と八人』（1983年）：第五世代の初期作品です。

主な女優

鞏俐（Gong Li）：『紅いコーリャン』でデビューし、張芸謀作品のミューズとなりました。
劉暁慶：多才な女優として活躍し、社会派作品に出演しました。
潘虹：情感深い演技で知られます。
斯琴高娃：少数民族役で国際賞を受賞しました。

現代（1990年代～現在）

1990年代以降、第六世代監督がアンダーグラウンド映画を制作し、社会問題を鋭く描きました。国際合作が増え、武侠アクションが海外で成功しました。2000年代に入ると、ブロックバスター映画が登場し、市場規模が世界トップクラスになりました。賈樟柯のような監督がドキュメンタリー風の作品で注目を集めました。近年は、SFや愛国映画が流行し、『流浪地球』（2019年）のような大作がヒットしています。検閲は厳しいものの、デジタル技術の進化で多様な表現が可能になりました。女優ではチャン・ツィイーやヴィッキー・チャオが国際的に活躍し、楊冪やファン・ビンビンが人気です。この時代は、グローバル化と商業化が加速し、中国映画の影響力が拡大しています。2020年代は、COVID-19の影響を受けつつ、オンライン配信が広がりました。全体として、多様性と経済力が特徴です。