『ドント・ムーヴ』はNetflixで2024年10月25日より配信開始のサスペンス映画(92分、米国)。サム・ライミ製作、ブライアン・ネット&アダム・シンドラー監督。息子を亡くした女性アイリスが、森で殺人鬼に筋弛緩剤を打たれ、動けない体でサバイバルを繰り広げます。ケルシー・アスビル、フィン・ウィットロック主演。緊張感溢れるスリラー。以下では、あらすじ、女優の活躍、女優の衣装・化粧・髪型、解説、キャスト、スタッフをまとめています。
基本情報
- 邦題:ドント・ムーブ
- 原題:Don’t Move
- 公開年:2024年
- 製作国:米国
- 上映時間:92分
- ジャンル:サスペンス
あらすじ
映画『ドント・ムーブ』は、深い悲しみに暮れる女性アイリス(ケルシー・アスビル)を主人公としたサスペンス・スリラーです。物語は、アイリスが息子を事故で亡くし、生きる希望を失った状態でカリフォルニア州ビッグサーの人里離れた森を訪れるところから始まります。早朝、彼女は息子が愛した赤いボートのおもちゃを供え、崖の上で自ら命を絶とうとします。しかし、そこにリチャード(フィン・ウィットロック)と名乗る男性が現れ、自身も最愛の女性を失った経験を語り、アイリスを思いとどまらせます。
リチャードの優しさに心を動かされたアイリスは彼と一緒に山を下りますが、突然リチャードがスタンガンで彼女を襲い、拉致します。目を覚ましたアイリスは、車内でリチャードに筋弛緩剤を注射されていることに気づきます。この薬は徐々に全身の運動機能を奪い、最終的には呼吸すらできなくなる危険なものです。リチャードは連続殺人鬼でアイリスを次の標的として選んだのです。
アイリスの体は刻一刻と動かなくなり、残された時間はわずか20分。彼女は意識と視覚だけを頼りに、車が事故で大木に衝突した隙をついて逃げ出そうとします。森の中、川辺、さらには見知らぬ家へと舞台は移り、アイリスは動かない体で知恵と意志を振り絞ってリチャードから逃げ、隠れ、戦います。一方、リチャードは異常な執念で彼女を追い詰め、自身を「神」と称しながら残酷なゲームを楽しむ様子が描かれます。
物語は、アイリスの生存本能とリチャードの狂気がぶつかり合う緊迫した展開で進み、終盤ではアイリスが筋弛緩剤の効果が切れ始めたことで反撃に転じる場面も。彼女は絶望の中から「生きる」意志を見出し、リチャードに精神的な揺さぶりをかける一方、最終的に自らの手で決着をつけず、瀕死のリチャードに「ありがとう」と告げて立ち去る姿が印象的です。この言葉には、皮肉と同時に、命の価値を再発見したアイリスの複雑な感情が込められています。
女優の活躍
本作の主人公アイリスを演じたケルシー・アスビル(Kelsey Asbille)は、1991年9月9日生まれのアメリカ人女優で、TV番組『イエローストーン』(2018年~)のモニカ・ダットン役や、映画『ウィンド・リバー』(2017年)のナタリー役で知られています。『ドント・ムーブ』では、感情的な深みと肉体的な表現力を要求される難役を見事に演じ切り、彼女のキャリアにおける新たな飛躍を示しました。
アイリスは、息子の死によるトラウマを抱え、自殺を考えるほど精神的に追い詰められた女性です。ケルシー・アスビルは、序盤の絶望的な表情や静かな涙で、アイリスの内面的な苦しみを繊細に表現。特に、崖の上で息子の思い出に浸るシーンでは、抑制された演技で観客に深い共感を呼び起こします。一方、筋弛緩剤を打たれた後は、ほぼ目と表情だけで感情を伝えなければならず、恐怖、怒り、希望、決意といった複雑な感情を微妙な目の動きや顔の筋肉の震えで表現。この身体的制約の中での演技は、彼女の技術力の高さを証明しています。
特に注目すべきは、中盤でアイリスが川に流されながらも生存本能を奮い立たせるシーンや、終盤でリチャードに言葉で対抗する場面です。ケルシー・アスビルは、動けない体でも強い意志を放つアイリスの姿を、力強い視線と声の抑揚で体現。観客に「彼女なら生き延びられる」と信じさせる説得力がありました。レビューでも、彼女の「目だけの演技」が高く評価されており、Filmarksでは「アイリスの目や表情に注目してほしい」との声が上がっています。
女優の衣装・化粧・髪型
ケルシー・アスビルの衣装、化粧、髪型は、アイリスのキャラクターと物語のトーンを反映したシンプルかつ現実的なデザインが特徴です。
衣装
アイリスは、物語のほとんどの場面でカジュアルなアウトドアスタイルを着用。冒頭の森のシーンでは、ダークグレーの長袖Tシャツ、黒いパンツ、トレッキングシューズという動きやすさを重視した服装で登場。この装いは、アイリスが計画的に森を訪れたこと、そして自殺を考えていた彼女の無気力な心情を間接的に示しています。物語が進むにつれ、衣装は泥や血で汚れ、破れ、彼女の過酷なサバイバルを視覚的に強調。川に流されるシーンでは、濡れた衣装が体に張り付き、彼女の脆弱さと同時に闘志を際立たせます。衣装は派手さや装飾性を排除し、アイリスの実直なキャラクターと物語のリアリティを支えています。
化粧
アイリスのメイクはほぼナチュラルで、彼女の心理的状態を反映しています。冒頭では、薄いファンデーションとわずかな眉メイクのみで、疲れ果てた顔色とくすんだ肌が強調され、喪失感を表現。筋弛緩剤を打たれた後は、汗や涙でメイクが落ち、頬や額に泥や傷が付くことで、彼女の絶望と闘争心がよりリアルに伝わります。終盤、生き延びる決意を固めたアイリスの顔は、汚れていても力強い表情で輝き、化粧の不在が逆に彼女の内面の強さを引き立てます。
髪型
アイリスの髪は、肩より少し長いダークブラウンのストレートヘアで、シンプルなポニーテールにまとめられています。この髪型は、森での活動に適した実用性を示すと同時に、彼女の飾らない性格を象徴。物語が進むにつれ、ポニーテールは乱れ、濡れた髪が顔に張り付くことで、彼女の過酷な状況が視覚的に伝わります。終盤、リチャードとの対決後、髪をほどいた姿で立ち去るアイリスは、自由と再生の象徴として印象的です。
解説
『ドント・ムーブ』は、筋弛緩剤というユニークな設定を軸に、限られた時間と空間の中で極限のサスペンスを描く作品です。サム・ライミのプロデュースによるホラー要素と、ブライアン・ネット&アダム・シンドラー監督の緻密な演出が融合し、観客を90分間スクリーンに釘付けにします。本作の魅力は、以下の3点に集約されます。
ユニークな設定と緊張感
筋弛緩剤による「動けない」状態でのサバイバルは、従来のホラー映画とは一線を画すアイデアです。アイリスが意識は明晰なのに体が動かない恐怖は、観客に claustrophobic(閉所恐怖症的)な体験を提供。20分というタイムリミットが、物語に切迫感を与え、観客の心拍数を上げ続けます。レビューでは、「思ったよりも早い段階で動きを封じられて、どうなるのかハラハラした」との声が多く、設定の斬新さが評価されています。
アイリスの心理的成長
本作は単なるサバイバルだけでなく、アイリスの心の再生を描く人間ドラマでもあります。自殺を考えていた彼女が、リチャードの脅威を通じて「生きる」意志を取り戻す過程は、物語の核心。終盤の「ありがとう」という言葉は、リチャードの残酷さが逆にアイリスに命の価値を再認識させたことを示唆し、複雑な余韻を残します。このテーマは、Filmarksのレビューで「主人公が生きる実感を感じられたからありがとうなんかな」と解釈されており、観客に深い考察を促します。
サム・ライミの影響
サム・ライミのプロデュースは、ホラーとサスペンスのバランスに大きく貢献。『死霊のはらわた』や『スパイダーマン』シリーズで知られる彼のテイストは、リチャードの狂気や血生臭いシーンに現れ、ホラー映画ファンに訴求します。しかし、過度なゴア描写は控えめで、心理的恐怖に重点を置いた演出は幅広い観客層に受け入れられています。
一方、課題としては、物語の後半がやや単調との指摘や、リチャードの動機が曖昧な点が挙げられます。レビューでは「犯人の人間性が分からないままだった」との声もあり、キャラクターの掘り下げが不足していると感じる観客も。それでも、短い上映時間の中で緊張感を維持し、アイリスのサバイバルを力強く描いた点は高く評価されています。
キャスト
- アイリス(ケルシー・アスビル):主人公。息子の死に絶望し、自殺を考える女性。筋弛緩剤を打たれながらも生存本能で戦う。
- リチャード(フィン・ウィットロック):連続殺人鬼。表向きは優しいが、異常な執念でアイリスを追い詰める。『アメリカン・ホラー・ストーリー』で知られる。
- モレイ・トレッドウェル:脇役として登場。詳細な役柄はネタバレを避け記載省略。
- ダニエル・フランシス:同様に脇役。物語の進行に重要な役割を果たす。
ケルシー・アスビルとフィン・ウィットロックの対決は、本作の最大の見どころ。二人の緊張感溢れる演技が、物語のスリルを支えます。
スタッフ
- 監督:ブライアン・ネット、アダム・シンドラー(『イントゥルーダーズ』で知られるサスペンスの名手)
- 脚本:T・J・シンフェル、デヴィット・ホワイト
- 製作:サム・ライミ(『死霊のはらわた』『スパイダーマン』)、他
- 撮影:ザック・クーパースタイン
- 編集:トム・エルキンス
- 音楽:未公開情報(劇伴は緊迫感を高めるミニマルなスコアが特徴)
- 製作会社:ライミ・プロダクションズ、Netflix
- 配信:Netflix(2024年10月25日開始)
サム・ライミのプロデュースは、ホラーとサスペンスの融合に大きく貢献。ブライアン・ネットとアダム・シンドラーの共同監督は、テンポの良い演出で物語を牽引します。
まとめ
『ドント・ムーブ』は、筋弛緩剤という斬新な設定とケルシー・アスビルの圧倒的な演技力で、観客を引き込むサスペンス・スリラー。アイリスの衣装やメイクは、彼女の過酷な状況と心理をリアルに反映し、物語の緊張感を高めます。サム・ライミのプロデュースによるホラー要素と、アイリスの再生を描くドラマ性が融合し、短い上映時間ながら深い余韻を残します。一部、キャラクターの深掘り不足が指摘されるものの、緊迫感とアイリスの闘志が光る一作です。Netflixで配信中の本作を、ぜひご覧ください。
レビュー 作品の感想や女優への思い