『誘惑は死の香り』(原題:Fatal Affair)は、2020年公開の米国のサスペンス映画。監督はピーター・サリヴァン、主演はニア・ロング。大学時代の友人の再会から始まる危険な関係を描く。Netflixで配信。
基本情報
- 邦題:誘惑は死の香り
- 原題:Fatal Affair
- 公開年:2020年
- 製作国:米国
- 上映時間:89分
女優の活躍
本作の主演を務めるニア・ロング(エリー・ウォーレン役)は、1990年代からハリウッドで活躍する実力派女優として知られています。『ボーイズ・ン・ザ・フッド』(1991)や『ソウル・フード』(1997)での演技が高く評価され、ブラック・エンターテインメント・テレビジョン(BET)アワードやNAACPイメージ・アワードにノミネートされた経歴を持ちます。本作では、順調なキャリアと家庭を持つ弁護士エリーを演じ、過去の友人デヴィッド(オマー・エップス)との再会によって引き起こされる心理的緊張を見事に表現。エリーの葛藤や恐怖、家族を守るための決意を繊細かつ力強く演じ、物語の中心として観客を引き込みます。特に、デヴィッドの執着がエスカレートする後半では、感情の起伏を巧みに表現し、サスペンス映画のヒロインとしての存在感を発揮しています。批評家からは、彼女の演技が本作の最大の魅力の一つと評価されており、インディワイアーのケイト・アーブランドは「ニア・ロングとオマー・エップスの演技が作品を救った」と述べています。
女優の衣装・化粧・髪型
ニア・ロング演じるエリーの衣装は、彼女の職業(弁護士)と生活環境(都会から海岸沿いの新居へ移った設定)を反映した洗練されたスタイルが特徴です。劇中では、ビジネスシーンではテーラードスーツやシンプルなブラウスにタイトスカートを着用し、プロフェッショナルな印象を与えます。色調はネイビーやグレーなど落ち着いたものが多く、彼女の落ち着いた性格を象徴。カジュアルなシーンでは、柔らかい素材のニットやジーンズが登場し、家庭的な一面を表現しています。
化粧はナチュラルメイクが中心で、弁護士としての信頼感と自然な美しさを強調。薄いファンデーションに控えめなアイメイク、ヌーディーなリップカラーが多く、緊張感が高まるシーンでも崩れないメイクが彼女のプロフェッショナルなイメージを保ちます。
髪型は、ショートカットのストレートヘアが基本で、清潔感と知性を演出。シーンによっては軽くウェーブを加え、柔らかさをプラス。全体的に、衣装・化粧・髪型はエリーの多面的なキャラクター(仕事と家庭の両立、危機への対処)を視覚的に補完する役割を果たしています。
あらすじ
エリー・ウォーレンは、サンフランシスコから海岸沿いの新居に移ったばかりの弁護士。夫マーカス(スティーヴン・ビショップ)は交通事故からの回復中、娘ブリタニーは大学に進学し、新生活をスタートさせています。ある日、エリーの職場に新しい技術コンサルタントとしてデヴィッド・ハモンド(オマー・エップス)が配属されます。彼はエリーの大学時代の友人で、久々の再会を喜ぶ二人。バーで思い出話に花を咲かせる中、雰囲気は親密になり、キスを交わす寸前でエリーは夫の存在を思い出し、関係を断ちます。しかし、デヴィッドの態度は次第に異常さを増し、エリーやその家族に執着。デヴィッドの過去には、怒り管理療法を受けるほどのトラブルがあったことが明らかになります。エリーは家族を守るため、デヴィッドの脅威に立ち向かう決意をしますが、彼の行動は予想を超えた危険なものへとエスカレートしていきます。
解説
『誘惑は死の香り』は、1987年の名作『危険な情事』(Fatal Attraction)にインスパイアされた心理サスペンス映画です。現代の設定にアップデートされ、テクノロジーやソーシャルメディアがストーカー行為にどう影響するかを描いていますが、批評家からはオリジナルほどの緊張感や独自性に欠けるとの声も。インディワイアーのケイト・アーブランドは、ストーリーの展開が緩慢で、演出が控えめすぎるとC-評価を付けつつも、主演二人の演技を高く評価しました。
本作は、Netflixの低予算スリラー映画の典型とも言える作品で、短期間で撮影され、ストリーミング配信向けに設計されています。監督のピーター・サリヴァンは、ライフタイムチャンネルで放送されるようなメロドラマ的サスペンスのスタイルを得意としており、本作もその特徴を色濃く反映。観客にとっては、気軽に楽しめる「B級スリラー」としての魅力がありますが、深いテーマ性や複雑なキャラクター造形を求める視聴者には物足りないかもしれません。
映画は、女性主人公が自らの過ち(一瞬の誘惑)に直面し、それを乗り越える過程を描く点で、フェミニスト的な視点も垣間見えます。エリーは被害者として描かれつつも、家族を守るために積極的に行動する姿が強調され、伝統的なスリラー映画の「悲劇のヒロイン」像から一歩進んだキャラクター像と言えます。
キャスト
- エリー・ウォーレン:ニア・ロング。弁護士で、家族との新生活を始めたばかりの女性。デヴィッドの執着に立ち向かう。
- デヴィッド・ハモンド:オマー・エップス。エリーの大学時代の友人で、技術コンサルタント。異常な執着心を持つ。
- マーカス・ウォーレン:スティーヴン・ビショップ。エリーの夫。交通事故からの回復中。
- コートニー:KJ・スミス。エリーの友人で、物語の進行に影響を与える脇役。
その他、オーブリー・クリーヴ、ジェイソン=シェーン・スコット、マヤ・ストウヤノフたち。
スタッフ
- 監督:ピーター・サリヴァン。TV映画や低予算スリラーの監督として知られ、『シークレット・オブセッション』(2019年)などNetflix作品も手掛ける。
- 脚本:ピーター・サリヴァン、ラシーダ・ガーナー。サリヴァンが共同執筆。シンプルで展開の早い脚本が特徴。
- 製作:ジェフリー・シュenck、バリー・バーナーディ。Netflix向け低予算映画の常連プロデューサー。
- 撮影:エーモン・ウェルズ。緊張感を高める暗めのライティングを採用。
- 音楽:マシュー・ジャンセン。サスペンスを盛り上げる劇伴を提供。
- 編集:ランディ・カーター。テンポの速い編集で物語の緊張感を維持。
総評
『誘惑は死の香り』は、ニア・ロングとオマー・エップスの演技が光るNetflixのサスペンス映画です。衣装や髪型はエリーのキャラクターを効果的に補完し、ストーリーはシンプルながら緊張感を保ちます。『危険な情事』の現代版として、気軽に楽しめる作品ですが、深いテーマ性を求める視聴者には物足りないかもしれません。家族を守る女性の強さと、過去の過ちの代償を描く本作は、ストリーミング配信のB級スリラーとしての役割を十分に果たしています。
レビュー 作品の感想や女優への思い