『LAW & ORDER：犯罪心理捜査班』（原題：Law & Order: Criminal Intent）は、ディック・ウルフが制作し、2001年9月30日からアメリカのNBCで放送開始された刑事ドラマで、『LAW & ORDER』フランチャイズの3番目のスピンオフ作品。
本作は、ニューヨーク市警察（NYPD）の重要事件捜査班（Major Case Squad、MCS）を舞台に、犯罪者の心理を深く分析し、巧みな尋問術で真相を解明する刑事たちの活躍を描いた心理サスペンスドラマです。
2011年まで全10シーズン、195エピソードが放送され、シーズン7以降はUSAネットワークで放送されました。ここでは、ドラマの概要、シーズンごとの特徴、女性キャストの活躍、そして主要キャストについて詳しく解説します。
ドラマの概要
『LAW & ORDER：犯罪心理捜査班』は、犯罪者の視点や心理に焦点を当てたユニークなアプローチで、他の『LAW & ORDER』シリーズと一線を画しています。本家『LAW & ORDER』が刑事捜査と法廷ドラマのバランスを取るのに対し、本作は捜査過程での心理戦や犯罪プロファイリングに重点を置き、容疑者の動機や心理的背景を掘り下げます。エピソードは「リップド・フロム・ザ・ヘッドラインズ（実際の事件に着想を得た）」スタイルで、現実の凶悪犯罪を基にしたストーリーが多いのも特徴です。
舞台はニューヨーク市警本部のMCSで、知性と洞察力に優れた刑事たちが、マンハッタンの富裕層や権力者に関連する複雑な事件を扱います。事件の解決には、証拠収集だけでなく、容疑者の心理を読み解き、自白を引き出すための戦略的な尋問が欠かせません。主人公のロバート・ゴーレン刑事は、犯罪プロファイリングの天才として、独特の捜査スタイルで視聴者を魅了しました。
日本では、2008年12月からFOXで放送開始され、Dlifeやスーパー！ドラマTVでも放送されました。特にDlifeではシーズン1の吹き替え版が制作され、以降は字幕版が主流です。本作は、心理戦の緊張感とリアルな刑事像が評価され、シリーズ開始直後から人気を博しました。2025年5月15日現在、日本ではHuluから配信されています。
シーズン解説
全10シーズンにわたる本作は、キャストの交代やストーリーの進化により、各シーズンで異なる魅力があります。以下にシーズンごとの特徴を簡潔にまとめます。
シーズン1（2001-2002年）
シリーズの基盤を築いたシーズン。ロバート・ゴーレン（ヴィンセント・ドノフリオ）とアレクサンドラ・エイムズ（キャスリン・アーブ）のコンビが初登場。ゴーレンの独特な捜査スタイルとエイムズの冷静なサポートが確立され、視聴者に強い印象を与えました。本家『LAW & ORDER』のキャラクター（レニー・ブリスコーやアニタ・ヴァンビューレン）がゲスト出演し、フランチャイズの繋がりを強調。宝石強盗や美術館殺人など、多彩な事件が描かれ、平均視聴率は高く、シリーズの人気を確立しました。
シーズン2-4（2002-2005年）
ゴーレンとエイムズのコンビがさらに深みを増し、心理戦の描写が洗練されました。シーズン3では、ゴーレンの過去や家族関係が少しずつ明かされ、キャラクターの背景が掘り下げられます。シーズン4では、ゴーレンの精神的な葛藤やストレスが描かれ、彼の人間性がより強調されました。事件の規模も拡大し、国際的な犯罪や連続殺人事件が増加。
シーズン5（2005-2006年）
大きな転換期。クリス・ノース演じるマイク・ローガン（本家『LAW & ORDER』から）がMCSに復帰し、ゴーレンと交互にエピソードを担当する形式に変更。ローガンのタフで直感的な捜査スタイルが新たな風を吹き込みました。エイムズ役のキャスリン・アーブが妊娠のため一時降板し、アナベラ・シオラがキャロリン・バレック刑事として登場。視聴率は安定し、クロスオーバーエピソードも増加。
シーズン6（2006-2007年）
キャスリン・アーブが復帰し、ジュリアンヌ・ニコルソンがメーガン・ウィーラー刑事として新加入。ローガンとウィーラーのコンビが新鮮な化学反応を生みました。ゴーレンのエピソードでは、彼の母親の病気や個人的なトラウマがストーリーに影響を与え、感情的な深みが増加。NBCからUSAネットワークへの移行が決定し、製作費削減の影響も見られました。
シーズン7-8（2007-2009年）
USAネットワークでの放送開始。ジェフ・ゴールドブラムがザック・ニコルズ刑事としてシーズン8から加入し、独特の知性とユーモアで人気を博しました。ゴーレンの出番が減少し、ローガンやウィーラーのエピソードが増加。シーズン8では、ゴーレンの一時的な休職や精神的な不安定さが描かれ、彼のキャラクターに新たな層が加わりました。
シーズン9（2010年）
ゴーレンとエイムズがフルタイムで復帰し、ファンを喜ばせました。ストーリーは原点回帰し、心理戦とプロファイリングに焦点を当てたエピソードが中心。視聴率は低下傾向だったものの、ゴーレン役のヴィンセント・ドノフリオの演技が高く評価されました。
シーズン10（2011年）
ファイナルシーズン。ゴーレンとエイムズを中心に、シリーズの集大成となるエピソードが展開。ゴーレンの過去のトラウマや人間関係が解決に向かい、感動的なフィナーレを迎えました。視聴者からの評価は高く、シリーズの終幕にふさわしいシーズンとなりました。
女優の活躍
『LAW & ORDER：犯罪心理捜査班』では、女性キャストが刑事や検事補として重要な役割を果たし、ストーリーに深みを与えました。女性キャストは、男性中心の刑事ドラマの中で、知性、強さ、感情のバランスを体現し、視聴者に多様な女性像を提示しました。特にエイムズとウィーラーのコンビは、プロフェッショナルな女性刑事のロールモデルとして、シリーズの人気を支えました。以下に主要な女優とその活躍を紹介します。
キャスリン・アーブ（アレクサンドラ・エイムズ役）
キャスリン・アーブは、ゴーレンの相棒であるエイムズ刑事を全10シーズン（一部を除く）で演じました。エイムズは元バレリーナという異色の経歴を持ち、冷静でプロフェッショナルな刑事としてゴーレンの突飛な行動を補完。彼女の知的で落ち着いた演技は、ゴーレンとの対比を際立たせ、シリーズのバランスを保ちました。特にシーズン1-4、9-10での活躍が顕著で、ゴーレンとの信頼関係が視聴者に感動を与えました。アーブのブロードウェイでの舞台経験が、感情の細やかな表現に活かされ、批評家からも高く評価されました。シーズン5での一時降板（妊娠による）後も復帰し、シリーズの顔として最後まで貢献。
ジュリアンヌ・ニコルソン（メーガン・ウィーラー役）
シーズン6から登場したウィーラー刑事は、マイク・ローガンの相棒として活躍。ニコルソンは、若く野心的な刑事を自然体で演じ、ローガンとのユーモラスな掛け合いが好評でした。彼女の演技は、ウィーラーの成長とプロフェッショナリズムを強調し、特にシーズン7-8での複雑な事件での冷静な判断力が光りました。ニコルソンは映画『8月の家族たち』などでも知られ、本作での演技がキャリアのステップとなりました。
アナベラ・シオラ（キャロリン・バレック役）
シーズン5でエイムズの代役として登場したバレック刑事。シオラは、タフで経験豊富な刑事を力強く演じ、ゴーレンとの緊張感ある関係性を表現。短期間の出演ながら、彼女の存在感は視聴者に強い印象を残しました。シオラの映画『ソプラノズ』での経験が、本作でのハードボイルドな演技に反映されました。
コートニー・B・ヴァンス（ロン・カーバー役、検事補）
厳密には女優ではないが、検事補として主要な女性キャラクターに匹敵する役割を果たしたヴァンス（男性）は、シーズン1-5で登場。法的な視点から捜査をサポートし、刑事たちと対立しながらも事件解決に貢献しました。彼の出演は、女性キャラクターの活躍を引き立てる重要な要素でした。
主要キャスト
以下は、『LAW & ORDER：犯罪心理捜査班』の主要キャストとそのキャラクターの特徴です。
ヴィンセント・ドノフリオ（ロバート・ゴーレン役）
本作の中心人物で、MCSの天才刑事。陸軍犯罪捜査局やNYPD麻薬課での経験を持ち、犯罪プロファイリングと尋問術に優れる。知性と風変わりな行動が特徴で、容疑者を心理的に追い詰める姿はシリーズの最大の見どころ。ドノフリオの演技は、ゴーレンの複雑な内面（母親の病気、トラウマ）を繊細に表現し、批評家から絶賛されました。シーズン1-4、9-10を中心に登場。
キャスリン・アーブ（アレクサンドラ・エイムズ役）
前述の通り、ゴーレンの相棒。冷静で信頼できる刑事で、ゴーレンの突飛なアイデアを現実的な視点で補佐。シリーズ全体を通じて安定した存在感を示しました。
クリス・ノース（マイク・ローガン役）
本家『LAW & ORDER』からシーズン5で復帰。タフで直感的な刑事で、ゴーレンとは対照的なスタイル。ノースのユーモアとカリスマ性が、ローガンの魅力を引き立てました。シーズン5-7で活躍。
ジェフ・ゴールドブラム（ザック・ニコルズ役）
シーズン8-9で登場。風変わりだが鋭い洞察力を持つ刑事。ゴールドブラムの独特な演技が、ニコルズにユーモラスで知的な魅力を与えました。
ジュリアンヌ・ニコルソン（メーガン・ウィーラー役）
シーズン6-8でローガンの相棒。若く成長中の刑事で、ニコルソンの自然な演技が好評でした。
ジェイミー・シケーラ（ジェームス・ディーキンス警部役）
MCSの指揮官。刑事たちを厳しくも温かく指導。シケーラの落ち着いた演技が、チームの安定感を支えました。シーズン1-5で登場。
まとめ
『LAW & ORDER：犯罪心理捜査班』は、心理戦と犯罪プロファイリングに焦点を当てた独自のスタイルで、『LAW & ORDER』フランチャイズに新たな魅力を加えました。全10シーズンにわたり、ゴーレンとエイムズを中心とした刑事たちの活躍は、視聴者に緊張感と感動を与えました。キャスリン・アーブやジュリアンヌ・ニコルソンら女性キャストは、知性と強さを兼ね備えたキャラクターでシリーズを支え、ヴィンセント・ドノフリオやクリス・ノースらの演技がドラマに深みを与えました。心理サスペンスの傑作として、刑事ドラマの新たな可能性を示した本作は、今なお多くのファンに愛されています。
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