『レプタイル -蜥蜴-』は、ベニチオ・デル・トロ主演のクライム・スリラー。敏腕刑事トムが不動産業者殺害事件を追う中、複雑な陰謀と自身の人生の虚構を暴く。Netflixで2023年9月29日配信開始。
基本情報
- 邦題:レプタイル -蜥蜴-
- 原題:Reptile
- 公開年:2023年
- 製作国:米国
- 上映時間:136分
- ジャンル:クライム、スリラー
概要
『レプタイル -蜥蜴-』(原題:Reptile)は、2023年に公開されたアメリカのクライム・スリラー映画です。グラント・シンガー監督の長編デビュー作であり、ベニチオ・デル・トロが主演と脚本に参加。メイン州の田舎町で起きた若い女性不動産業者サマー・エルスウィックの惨殺事件を軸に、刑事トム・ニコルスが真相を追う過程で、警察内部の汚職や複雑な人間関係、自身の人生の影に直面する物語です。2023年9月7日にトロント国際映画祭でプレミア上映され、同年9月22日にアメリカで限定公開後、9月29日からNetflixで配信されました。暗く重厚な雰囲気と、デル・トロの渋い演技が特徴の作品です。
女優の活躍
本作における主要な女性キャストはアリシア・シルヴァーストーンで、主人公トム・ニコルスの妻ジュディを演じています。シルヴァーストーンは、1990年代の『クルーレス』で一世を風靡した女優ですが、本作では落ち着いた大人の女性として、刑事の妻という複雑な役柄を見事に演じています。ジュディは物語の中で、トムの精神的な支柱でありながら、自身も犯罪マニア的な一面を持ち、事件の議論に積極的に参加する姿が描かれます。彼女の演技は、トムの疑念や孤独感を引き立てつつ、夫婦の絆を温かく表現。特に、危機的状況での冷静な対応や、トムとの親密なシーンでの自然体な演技が光ります。シルヴァーストーンの存在感は、物語の重苦しいトーンに人間的な温もりを加え、批評家からも「力強い演技」として評価されています。
また、サマー・エルスウィック役のマチルダ・ルッツも重要な役割を果たします。サマーは物語の冒頭で殺害される被害者ですが、回想シーンや捜査の過程でその人物像が徐々に明らかになります。ルッツは限られた出番の中で、サマーの複雑な人間関係や感情を表現し、物語の謎に深みを与えています。彼女の演技は、事件の核心に迫るトムの動機付けを強化する重要な要素となっています。
女優の衣装・化粧・髪型
アリシア・シルヴァーストーン演じるジュディの衣装は、メイン州の郊外に住む中流階級の女性らしい、シンプルかつ実用的なスタイルが特徴です。カジュアルなニットセーターやコットンシャツ、ジーンズといった日常的な服装が多く、秋の色調(ブラウン、ベージュ、ダークグリーンなど)を基調とした温かみのあるデザインが目立ちます。これにより、ジュディの親しみやすさと現実的なキャラクターが強調されています。化粧はナチュラルで、薄いファンデーションと控えめなリップカラーが中心。派手さを抑えたメイクは、彼女の地に足のついた性格を反映しています。髪型は肩より少し長いミディアムヘアで、ゆるやかなウェーブが施されており、家庭的でありながらも洗練された印象を与えます。この自然体のスタイルは、トムの過酷な捜査生活との対比を際立たせ、夫婦の日常の穏やかさを表現しています。
サマー・エルスウィック役のマチルダ・ルッツは、不動産業者としてのプロフェッショナルな印象を与える衣装が特徴です。ビジネスカジュアルなブラウスやタイトなスカート、ジャケットを着用し、都会的で洗練された雰囲気を醸し出しています。化粧は不動産業者としての信頼感を強調するため、整ったアイブロウと控えめなアイメイク、ヌーディなリップが中心。髪型はタイトにまとめたアップスタイルや、きちんとブローされたストレートヘアで、彼女の職業的な一面を表現しています。これらの要素は、サマーが物語の中心となる事件の被害者として、視聴者に強い印象を与える役割を果たしています。
あらすじ
メイン州スカボローで、不動産業者のウィル・グレイディ(ジャスティン・ティンバーレイク)は、恋人で同僚のサマー・エルスウィック(マチルダ・ルッツ)が売りに出していた家で惨殺されているのを発見します。地元警察の刑事トム・ニコルス(ベニチオ・デル・トロ)と相棒のダン・クリアリー(アトー・エッサンドー)は捜査を開始。ウィル、サマーの元夫サム・ギフォード(カール・グルスマン)、そしてウィルの周囲に現れる謎の男イーライ(マイケル・ピット)が容疑者として浮上します。捜査が進む中、サムが銃撃戦で死亡し、警察は彼を犯人と結論づけますが、トムは証拠の不一致に疑問を抱きます。単独で捜査を続けるトムは、警察内部の汚職や麻薬取引の闇、そして自身の周囲に潜む裏切りを暴いていきます。事件の真相は、トムの人生や信頼していた人々にも深い影響を与え、彼を精神的に追い詰めていきます。
解説
『レプタイル -蜥蜴-』は、フィルム・ノワールやサスペンスの伝統を踏襲しつつ、現代的なクライム・スリラーの要素を取り入れた作品です。タイトルの「レプタイル」は、爬虫類の「脱皮」を象徴し、登場人物たちが隠していた本性を露わにする過程を暗示しています。監督のグラント・シンガーは、ミュージックビデオ出身ならではの映像美と緊張感のある演出で、秋のメイン州の風景を暗く不気味なトーンで描き出します。特に、水や爬虫類のモチーフが繰り返し登場し、物語の不穏な雰囲気を強調しています。
ベニチオ・デル・トロの演じるトムは、過去のトラウマを抱えながらも職務に忠実な刑事として、物語の中心に据えられています。彼の重厚な演技は、孤独と執念の間で揺れるキャラクターに深みを与え、批評家からも高く評価されました。しかし、物語の複雑さやスローペースな展開は賛否両論を呼び、Rotten Tomatoesでは44%、Metacriticでは52点と、批評家の評価は平均的です。一部の批評家は、プロットの複雑さが中途半端に終わり、伝統的な「フーダニット」の方が効果的だったと指摘しています。それでも、デル・トロとシルヴァーストーンの演技、シンガーの視覚的スタイルは、ノワール愛好家にとって魅力的な要素となっています。
本作は、警察の汚職や人間の二面性をテーマに、観客に「誰を信じるべきか」を問いかけます。トムの妻ジュディとの関係は、物語に人間的な温かさを加えつつ、彼の疑念や孤立感を際立たせる重要な要素です。音楽も、緊張感を高める劇伴が効果的に使用されており、特に不協和音を用いたシーンは観客の不安を煽ります。全体として、視覚的・演技的な魅力は強いものの、ストーリーのまとまりに欠ける点が課題とされています。
キャスト
- ベニチオ・デル・トロ(トム・ニコルス):敏腕刑事。過去のトラウマを抱えつつ、事件の真相を追い求める。
- ジャスティン・ティンバーレイク(ウィル・グレイディ):サマーの恋人で第一発見者。不動産会社の社長。
- アリシア・シルヴァーストーン(ジュディ・ニコルス):トムの妻。犯罪マニアで、夫を支える。
- マチルダ・ルッツ(サマー・エルスウィック):殺害された不動産業者の女性。
- マイケル・ピット(イーライ・フィリップス):ウィルの周囲に現れる謎の男。
- アトー・エッサンドー(ダン・クリアリー):トムの相棒。
- カール・グルスマン(サム・ギフォード):サマーの元夫。
- エリック・ボゴシアン、フランシス・フィッシャー、ドメニク・ランバルドッツィ:脇を固める警察や関係者。
スタッフ
- 監督:グラント・シンガー(長編デビュー作。ミュージックビデオ出身)
- 脚本:グラント・シンガー、ベンジャミン・ブリューワー、ベニチオ・デル・トロ
- 製作:モリー・スミス、トレント・ラッキンビル、ベニチオ・デル・トロ
- 撮影:マイク・ジョラキス
- 編集:ケヴィン・ヒッキー
- 音楽:ヤイール・エラザール・グロットマン
- 製作会社:ブラック・レーベル・メディア
- 配信:Netflix(2023年9月29日開始)
まとめ
『レプタイル -蜥蜴-』は、ベニチオ・デル・トロの渋い演技とアリシア・シルヴァーストーンの温かみのある存在感が光るクライム・スリラーです。複雑な陰謀と人間の二面性を描きつつ、視覚的な美しさと緊張感で観客を引き込みます。衣装やメイクはキャラクターの現実感を強調し、物語の重厚な雰囲気を支えています。しかし、プロットの複雑さがやや散漫な印象を与えるため、ノワールやサスペンス愛好家に向けた作品と言えるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い