『セルジオ: 世界を救うために戦った男』(原題:Sergio)は2020年公開の米国の伝記映画。国連外交官セルジオ・ヴィエイラ・デ・メロの人生とイラクでの悲劇を描きます。監督はグレッグ・バーカー、主演はワグネル・モウラ。Netflixで配信され、情熱と理想を貫いた男の物語が感動を呼びます。
基本情報
- 邦題:セルジオ: 世界を救うために戦った男
- 原題:Sergio
- 公開年:2019年
- 製作国:米国
- 上映時間:118分
- ジャンル:ドラマ
あらすじ
2003年8月19日、イラクのバグダッドにある国連事務所(カナルホテル)が自爆テロにより爆破され、国連事務総長特別代表のセルジオ・ヴィエイラ・デ・メロ(ワグネル・モウラ)は瓦礫の下に生き埋めになります。意識が朦朧とする中、彼はこれまでの人生を振り返ります。ブラジル出身のセルジオは、34年間にわたり国連外交官として世界各地の紛争地域で活躍しました。特に東ティモールの独立支援では大きな功績を挙げ、国連の英雄として称賛されました。しかし、イラク復興支援という困難な任務を引き受けた彼は、アルカイダによるテロの標的となります。過去と現在を行き来する回想シーンでは、東ティモールでの活動や、同僚カロリーナ(アナ・デ・アルマス)との恋愛が描かれ、彼の理想と私生活の葛藤が浮き彫りにされます。セルジオの命をかけた努力と悲劇的な結末が、観る者に深い印象を与えます。
解説
『セルジオ: 世界を救うために戦った男』は、実在した国連外交官セルジオ・ヴィエイラ・デ・メロの半生を基にした伝記映画です。本作は、サマンサ・パワーの評伝『Chasing the Flame: Sergio Vieira de Mello and the Fight to Save the World』を原作とし、彼のカリスマ性と平和への献身を描写します。監督のグレッグ・バーカーは、2009年に同名のドキュメンタリー『セルジオ テロに死す イラク復興を託された男』を制作しており、本作はその劇映画版として私生活にも焦点を当てています。
物語は、2003年のバグダッド国連事務所爆破事件を軸に、セルジオの過去と現在を交錯させる非線形の構成を採用しています。この手法は、彼の功績と個人的な葛藤を効果的に浮かび上がらせますが、時間軸の頻繁な移動が一部の観客には混乱を招いたとの指摘もあります。 特に、東ティモールでの成功やイラクでの挑戦が描かれる一方で、カロリーナとの恋愛要素が強調されすぎ、セルジオの偉業がやや薄れたと感じるレビューも見られます。
本作は、国連の役割や紛争地域での人道支援の困難さをリアルに描き、セルジオの理想主義と現実の厳しさの衝突を浮き彫りにします。戦争やテロの不条理さ、そして個人の犠牲を通じて平和を追求する姿勢は、現代社会においても深い問いを投げかけます。
女優の活躍
本作で主要な女性キャラクター、カロリーナ・ラリエラを演じるのはアナ・デ・アルマスです。彼女はセルジオの同僚であり恋人として、物語の感情的な軸を担います。アナ・デ・アルマスは、キューバ出身の女優で、『ブレードランナー2049』(2017年)や『ナイブズ・アウト』(2019年)で注目を集め、本作でもその存在感を発揮しています。カロリーナ役では、セルジオの情熱的な使命感を支える一方で、彼のイラク赴任に反対する複雑な心情を繊細に表現しました。彼女の演技は、セルジオの私生活における葛藤や人間性を引き立て、物語に感情的な深みを加えています。特に、爆破テロ後の瓦礫の中でセルジオを救おうとするシーンでは、絶望と愛情が入り混じった演技が観客の心を打ちます。
ただし、一部のレビューでは、彼女の強い存在感がセルジオの功績をやや overshadowed(覆い隠す)したとの意見もあります。 それでも、アナ・デ・アルマスの美貌と演技力は、映画の視覚的魅力と物語の感情的な重みを高める重要な要素となっています。彼女のファンは、本作での彼女の活躍に特に注目するでしょう。
女優の衣装・化粧・髪型
アナ・デ・アルマス演じるカロリーナの衣装は、物語の舞台である紛争地域や国連のオフィシャルな場面に合わせて、機能的かつ現実的なデザインが採用されています。イラクや東ティモールでのシーンでは、カジュアルで動きやすい服装が多く、薄いベージュやカーキ色のシャツやパンツが中心です。これらは、過酷な環境での実務を反映しつつ、彼女の自然体な魅力を引き立てます。特に、暑さや埃っぽい環境を意識した軽やかな素材感が特徴です。一方で、国連本部などフォーマルな場面では、シンプルで洗練されたスーツやブラウスが登場し、プロフェッショナルな印象を与えます。
化粧は、紛争地域の設定を考慮し、ナチュラルメイクが基本です。強い日差しや厳しい環境下でも自然に見えるよう、控えめなファンデーションと淡いリップカラーが用いられ、彼女のエキゾチックな美しさが強調されています。汗や埃でやや乱れたメイクが、過酷な状況でのリアリティを演出しています。
髪型は、シンプルなポニーテールや緩くまとめたアップスタイルが多く、活動的な女性像を表現しています。東ティモールやイラクのシーンでは、風や埃で髪が乱れる様子が自然に描かれ、彼女のキャラクターの現実感を高めています。一部の回想シーンでは、柔らかくウェーブのかかった髪型が登場し、セルジオとのロマンティックな場面で女性らしさを際立たせています。
キャスト
- ワグネル・モウラ(セルジオ・ヴィエイラ・デ・メロ):ブラジル出身の俳優で、『ナルコス』のエスコバル役で知られる。本作ではセルジオの情熱と葛藤を熱演。
- アナ・デ・アルマス(カロリーナ・ラリエラ):セルジオの恋人であり同僚。感情的な支柱として物語に深みを加える。
- ギャレット・ディラハント(ウィリアム・フォン・ゼーレ):国連スタッフの一人で、セルジオをサポート。
- ブライアン・F・オバーン(ギル):セルジオの同僚で、爆破事件の被害者。
- ウィル・ダルトン(アンドレ・ヴァレンティン):国連のメンバー。
- クレーメンス・シック(ギャビー):セルジオのチームの一員。
- ブラッドリー・ウィットフォード(ポール・ブレマー):アメリカのイラク占領統治当局の代表。
- ペドロ・ホッシ(シャナナ・グスマン):東ティモールの独立運動指導者。
スタッフ
- 監督:グレッグ・バーカー – 元戦争特派員でドキュメンタリー監督。2009年の同名ドキュメンタリーも手掛けた。
- 脚本:クレイグ・ボーテン – 『ダラス・バイヤーズクラブ』で知られる脚本家。
- 製作:ブレント・トラバース、ダニエル・マーク・ドレファス、グレッグ・バーカーほか。
- 撮影:エイドリアン・トイフェンバッハ – 紛争地域の臨場感をリアルに捉えた。
- 音楽:フェルナンド・ベラスケス – 感情的なシーンを強調する繊細なスコアを提供。
- 編集:クラウディア・カステロ – 非線形の物語構造を効果的に構築。
総評
『セルジオ: 世界を救うために戦った男』は、セルジオ・ヴィエイラ・デ・メロの英雄的な人生と悲劇的な結末を丁寧に描いた作品です。アナ・デ・アルマスの演技と衣装・髪型は、物語の感情的な重みを強化し、観客を引き込みます。しかし、恋愛要素の強調や時間軸の複雑さが、セルジオの功績を十分に伝えきれなかったとの批判も一部にあります。それでも、国連の役割や平和への献身を考えるきっかけとなる、意義深い映画です。Netflixでの配信により、幅広い視聴者に彼の物語が届けられました。
レビュー 作品の感想や女優への思い