『サイレント・ハウス』(原題:Silent House)は、2011年に製作された米国・仏国合作のホラー映画で、ウルグアイ映画「SHOT/ショット」のリメイク。湖畔の別荘を舞台に、主人公サラが正体不明の恐怖に襲われる姿を、ワンカット風の撮影で描く。主演はエリザベス・オルセン。監督はクリス・ケンティスとローラ・ラウ。
基本情報
- 邦題:サイレント・ハウス
- 原題:Silent House
- 公開年:2011年
- 製作国:米国・仏国
- 上映時間:85分
女優の活躍
本作の主演を務めるエリザベス・オルセンは、双子の姉であるアシュレイ・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンで知られるオルセン姉妹の妹として注目を集めました。『サイレント・ハウス』は、彼女が2011年の『マーサ、あるいはマーシー・メイ』で批評家から高い評価を受けた直後の作品であり、若手実力派女優としての地位を確立する一歩となりました。
サラ役として、ほぼ全編にわたり出ずっぱりの演技が求められる本作で、オルセンは恐怖と混乱に苛まれるヒロインを体現。特に、ワンカット風の撮影手法により、彼女の表情や仕草がリアルタイムで捉えられ、観客に臨場感あふれる恐怖体験を提供します。彼女の感情の揺れや、追い詰められた心理状態を表現する繊細な演技は、批評家からも「迫真の演技」と評価され、ホラー映画におけるヒロイン像に新たな深みを加えました。サラの恐怖や混乱をリアルに演じきったことで、彼女の演技力は本作の最大の見どころの一つとなっています。
女優の衣装・化粧・髪型
エリザベス・オルセン演じるサラの衣装は、ホラー映画のヒロインとしてのリアリティを重視したシンプルかつ実用的で特徴的です。彼女はタンクトップとタイツというカジュアルな服装で登場し、湖畔の別荘という閉鎖的な環境にふさわしい動きやすいスタイルを採用しています。このタンクトップは、物語の進行とともに汗や汚れでリアルな質感を増し、彼女の追い詰められた状況を視覚的に強調します。
化粧は、ナチュラルメイクに近く、ホラー映画のヒロインとして過度な装飾を避けています。薄いファンデーションと控えめなアイメイクで、恐怖に怯える表情が際立つよう工夫されています。物語が進むにつれ、汗や涙でメイクが崩れる様子が、彼女の心理的動揺をさらに強調する効果を生み出しています。
髪型は、肩より少し長いブラウンの髪を自然に下ろしたスタイルで、特別なアレンジは施されていません。このシンプルな髪型は、サラの平凡な女性像を表現し、観客が彼女に感情移入しやすくする役割を果たしています。物語の後半で髪が乱れる様子は、彼女の恐怖とパニックを視覚的に表現する重要な要素となっています。
あらすじ
サラ(エリザベス・オルセン)は、父親のジョン(アダム・トレーズ)と叔父のピーター(エリック・シェーファー・スティーヴンス)と共に、売却予定の湖畔の別荘を訪れます。長年放置されていたこの別荘は、カビや破損が目立ち、不法侵入者の痕跡も見られます。サラは幼い頃の思い出が残るこの家で、片付け作業を進めるものの、不穏な空気に包まれます。作業中、誰もいないはずの家から不気味な物音やカメラのシャッター音が響き、サラは異様な気配を感じ始めます。やがて、父親が何者かに襲われ、叔父も姿を消し、サラは家からの脱出を試みますが、扉は開かず、外界から隔絶された状況に追い詰められます。見知らぬ少女の幻影やポラロイド写真のフラッシュが現れる中、サラは恐怖の正体に迫ります。物語は、ワンカット風の撮影で緊張感を維持し、観客をサラの恐怖体験に引き込みます。
解説
『サイレント・ハウス』は、2010年のウルグアイ映画『SHOT/ショット』(原題:La Casa Muda)を基にしたリメイク作品で、1940年代にウルグアイで実際に起きた事件に着想を得ています。本作の最大の特徴は、全編をワンシーン・ワンカット風に撮影した手法で、観客にリアルタイムの臨場感を提供します。この手法は、後に『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー撮影賞を受賞した手法の先駆けとも言えるもので、撮影監督イゴール・マルティノビッチの技術が光ります。カメラはサラの視点や動きに密着し、彼女の恐怖や混乱を観客に直接伝えることで、ホラー映画の緊張感を高めています。
物語は、ホーム・インベージョン系のスリラーとして始まり、徐々にサイコホラーの要素が強まります。サラが感じる恐怖の正体や、ポラロイドカメラ、謎の少女の存在は、単なる超自然現象ではなく、深い心理的トラウマや過去の出来事と結びついており、物語の終盤で明らかになる展開は観客に衝撃を与えます。このオチは賛否両論を呼び、一部では「チープ」と評される一方、心理的ホラーとしての深みを評価する声もあります。
監督のクリス・ケンティスとローラ・ラウは、2003年の『オープン・ウォーター』で極限状況下の恐怖を描いた実績を持ち、本作でも閉鎖空間での緊張感を見事に演出。音楽はネイサン・ラーソンが担当し、不気味な音響効果を最小限に抑えつつ、緊迫感を高める役割を果たしています。美術監督ロシェル・バーリナーの手による、荒廃した別荘のセットも、物語の不気味な雰囲気を強化しています。
キャスト
- サラ:エリザベス・オルセン(主人公。恐怖に追い詰められる女性)
- ジョン:アダム・トレーズ(サラの父親。別荘の片付けを主導)
- ピーター:エリック・シェーファー・スティーヴンス(サラの叔父。家族と共に作業)
- ソフィア:ジュリア・テイラー・ロス(サラの過去に関わる謎の少女)
スタッフ
- 監督:クリス・ケンティス、ローラ・ラウ
- 脚本:ローラ・ラウ
- 原案:グスタボ・ヘルナンデス(『SHOT/ショット』監督)
- 撮影監督:イゴール・マルティノビッチ
- 美術監督:ロシェル・バーリナー
- 音楽:ネイサン・ラーソン
- 製作:アグネス・メントレ、ラウラ・ラウ
- 配給:ファインフィルムズ(日本)、Open Road Films(アメリカ)
総評
『サイレント・ハウス』は、ワンカット風の撮影手法とエリザベス・オルセンの迫真の演技が光るホラー映画です。シンプルな衣装やナチュラルなメイクでリアリティを追求したサラのキャラクター造形は、観客に強い感情移入を促します。物語は、単なるホラーにとどまらず、心理的トラウマや過去の秘密を掘り下げる展開で、観客に考えさせる要素を含んでいます。賛否両論ある結末や、暗い画面による視認性の低さを指摘する声もありますが、緊張感と臨場感を重視した演出は、ホラー映画ファンにとって見応えのある作品です。
レビュー 作品の感想や女優への思い