『トレイン・ミッション』（原題：The Commuter、2018年）は、ジャウム・コレット＝セラ監督によるサスペンス・アクション映画。リーアム・ニーソン演じる元警官のマイケルが、通勤電車内で謎の女性から「ある人物」を探すミッションを課され、家族を人質に取られた中、陰謀に立ち向かいます。リアルタイムで進行する緊張感あふれる展開が魅力です。
以下では、映画『トレイン・ミッション』について詳細に解説。リーアム・ニーソンとフローレンス・ピューが出演する本作について、概要、女優の活躍、あらすじ、解説、キャスト、スタッフを説明しています。
基本情報
- 邦題：トレイン・ミッション
- 原題：The Commuter
- 公開年：2018年
- 製作国：米国
- 上映時間：105分
- ジャンル：アクション、ドラマ、クライム
- 配給：ギャガ
見どころ
先の読めない展開やタイムリミット迫るスリルとサスペンス、手に汗握るアクションから目が離せない。監督はシチュエーションスリラーの名手、ジャウマ・コレット＝セラ。
あらすじ
マイケル・マコーリー（リーアム・ニーソン）は、元NYPDの警察官で、現在は保険会社のセールスマンとして働く60歳の男性です。妻カレンと息子ダニーと共に平凡だが幸せな家庭を築いていますが、息子の大学進学や住宅ローンの支払いなど、金銭的な悩みを抱えています。ある日、10年間勤めた保険会社から突然の解雇を言い渡され、失意の中、いつもの通勤電車（メトロノース鉄道ハドソン線）に乗り込みます。
電車内で、マイケルは見知らぬ女性ジョアンナ（ヴェラ・ファーミガ）から奇妙な提案を受けます。彼女は、電車が終点のコールド・スプリングに到着するまでに、乗客100人の中から「プリン」と名乗る人物を見つけ出し、その荷物にGPSを取り付ければ10万ドルの報酬を支払うと持ちかけます。ヒントは3つ：常連客ではない、終着駅で降りる、盗品を隠したカバンを持っている。半信半疑ながら、マイケルはトイレで前金の25,000ドルを見つけ、経済的困窮からこの依頼を引き受けることにします。
しかし、調査を進める中で、マイケルは妻と息子が人質に取られていることを知り、断ることができない状況に追い込まれます。元警察官の経験を活かし、乗客一人一人を調査するものの、罠や妨害に遭い、命の危険を感じます。やがて「プリン」が国家を揺るがす重大事件の目撃者であることが判明し、マイケルは巧妙に仕組まれた陰謀の核心に迫ります。クライマックスでは、列車事故や警察との交渉を経て、乗客たちの協力を得ながら、マイケルは家族と乗客を守るため決死の戦いに挑みます。
解説
『トレイン・ミッション』は、ジャウム・コレット＝セラ監督とリーアム・ニーソンが『アンノウン』（2011年）、『フライト・ゲーム』（2014）年、『ラン・オールナイト』（2015年）に続く4度目のタッグを組んだ作品。本作は、ヒッチコックの『見知らぬ乗客』や『北北西に進路を取れ』を彷彿とさせる、密室空間でのリアルタイム・サスペンスとして設計されています。監督は、電車という限られた空間を最大限に活用し、観客が主人公と一体となって謎を解く体験を提供することを目指しました。物語はほぼリアルタイムで進行し、105分の上映時間が劇中の時間とリンクする構成が緊張感を高めています。
リーアム・ニーソンは、アクションスターとしての地位を確立した『96時間』以降、家族を守るために奮闘するタフな男を演じることが多いですが、本作では「普通の男」としての側面が強調されています。マイケルは、経済的困窮やリストラという誰もが共感できる悩みを抱え、観客が感情移入しやすいキャラクターとして描かれています。監督のコレット＝セラは、ニーソンの演技について「毎回新しいキャラクターを作り出し、小さなニュアンスで役に深みを与える」と称賛しており、彼の身体を張ったアクションと感情的な演技が作品の核となっています。
本作のもう一つの魅力は、電車という閉鎖空間でのサスペンスとアクションの融合。列車内の移動や乗客との対話、格闘シーンは、監督の巧みなカメラワークと編集により臨場感たっぷりに描かれます。特に、クライマックスの列車脱線シーンはスケールが大きく、観客を引き込む迫力があります。また、エンドロールの駅表示を模したデザインや、ヒッチコック風のユーモアと「お間抜け演出」が、作品に独特の軽快さを加えています。
批評家の評価は賛否両論で、Rotten Tomatoesでは支持率58%、平均点5.4/10、Metacriticでは56/100と中程度の評価です。脚本は職人的だが、キャストの演技がそれを補い、レンタルやマチネ鑑賞に適したエンターテインメント作品とされています。CinemaScoreはBを獲得し、観客からの一定の支持を得ています。
女優の活躍：フローレンス・ピュー
フローレンス・ピューは、本作でグウェンという大学生の乗客を演じています。グウェンは、腕のタトゥーと鼻ピアスが特徴的な、派手で個性的な外見の女性です。彼女は物語の鍵を握る「プリン」の候補の一人として登場し、マイケルと短いながらも印象的なやり取りを繰り広げます。ピューの演技は、若々しさと反抗的な態度を自然に表現し、乗客の中でも際立つ存在感を示しています。
本作公開当時、ピューはまだ若手女優としてキャリアを積んでいる段階でしたが、すでにその実力は注目されていました。後に『ミッドサマー』（2019年）や『ストーリー・オブ・マイライフ／わたしの若草物語』（2019年）でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされるなど、彼女の才能は本作でも垣間見えます。グウェン役は出番こそ限られていますが、マイケルの調査における重要なピースとして機能し、ピューの自然体な演技がキャラクターに深みを与えています。彼女の登場シーンは、物語の緊張感を高めるスパイスとして効果的で、観客に「彼女がプリンなのか？」と疑念を抱かせる役割を果たしています。
キャスト
- マイケル・マコーリー：リーアム・ニーソン。元NYPD警察官で保険セールスマン。リストラと経済的困窮に直面し、電車内でのミッションに巻き込まれる。アクションと感情的な演技で物語を牽引。
- ジョアンナ：ヴェラ・ファーミガ。マイケルにミッションを課す謎の女性。冷徹でミステリアスな雰囲気を漂わせ、物語の火付け役となる。
- マーフィー：パトリック・ウィルソン。マイケルの元同僚の警察官。物語の鍵を握る人物として登場し、ウィルソンの落ち着いた演技が光る。
- ホーソーン警部：サム・ニール。事件に関わる警察の上級者。短い出番ながら、重厚な存在感を放つ。
- カレン・マコーリー：エリザベス・マクガヴァン。マイケルの妻。家族の絆を象徴する脇役。
- ウォルト：ジョナサン・バンクス。電車内の常連乗客の一人。マイケルと親しい関係で、物語に温かみを加える。
- グウェン：フローレンス・ピュー。派手な外見の大学生。プリンの候補としてマイケルの調査対象となる。
その他、乗客役には多様なバックグラウンドを持つ俳優が起用され、ニューヨークの通勤電車をリアルに再現。監督は、観客がどの乗客にも共感できるようなキャスティングを意識しました。
スタッフ
- 監督：ジャウム・コレット＝セラ。ヒッチコック風のサスペンスとアクションを得意とし、『フライト・ゲーム』や『エスター』で知られる。ニーソンとの4度目のコラボで、密室スリラーの名手ぶりを発揮。
- 脚本：バイロン・ウィリンガー、フィリップ・デ・ブラシ、ライアン・イングル。複雑な伏線とリアルタイム進行の物語を構築。ヒッチコックの影響を受けた脚本が特徴。
- 製作：アンドリュー・ローナ、アレックス・ハインマン。エグゼクティブ・プロデューサーとしてフアン・ソラが参加。
- 撮影：ポール・キャメロン。電車内の閉鎖空間を活かし、ダイナミックなカメラワークで緊張感を演出。
- 音楽：ロケ・バニョス。スリリングな展開を支えるサウンドトラックを提供。アルバムは2018年1月リリース。
- スタント・コーディネーター：マーク・バンセロウ。ニーソンとの長年のコラボで、激しい格闘シーンを安全かつ迫力あるものに仕上げた。
まとめ
『トレイン・ミッション』は、リーアム・ニーソンのアクションとジャウム・コレット＝セラの緻密な演出が融合した、緊張感あふれるサスペンス映画です。フローレンス・ピューは、グウェン役で若手女優としての存在感を示し、物語に彩りを添えています。電車という限定された舞台で繰り広げられるリアルタイムのドラマは、観客を引き込み、ヒッチコックを彷彿とさせるスリルを提供します。賛否両論はあるものの、アクションとミステリーのバランスが取れたエンターテインメント作品として、幅広い層に楽しめる一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い