『フォーリング 少女たちのめざめ』(2014年・英国)は、1969年の厳格な女子校を舞台にした青春サスペンス。親友の死をきっかけに、少女たちが次々と失神する奇妙な現象に直面。揺れる思春期の心情と社会の不安を描く。メイジー・ウィリアムズ、フローレンス・ピューが出演、キャロル・モーレイ監督。
基本情報
- 邦題:フォーリング 少女たちのめざめ
- 原題:The Falling
- 公開年:2014年
- 製作国:英国
- 上映時間:102分
- ジャンル:ミステリー、スリラー
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The Falling Official UK Trailer (2015) - Maisie Williams Mystery Movie HDSubscribe to TRAILERS: to COMING SOON: to INDIE TRAILERS: us on FACEBOOK:...
見どころ
『ゲーム・オブ・スローンズ』のメイジー・ウィリアムズと『ミッド・サマー』のフローレンス・ピュー主演。思春期の心と不安定な世相を絡めた予想外の展開に引き込まれる。
あらすじ
1969年、英国の厳格な女子校に通うリディア(メイジー・ウィリアムズ)は、反抗的な性格で学校当局と対立し、家庭では父親の不在と母親との確執に悩む日々を送っています。彼女の大親友アビー(フローレンス・ピュー)は、リディアの兄ケニーと肉体関係を持ち、妊娠が発覚しますが、突然の失神を繰り返した末に謎の死を遂げます。アビーの死後、リディアをはじめとする生徒や教師たちが、次々と原因不明の失神に襲われるようになります。この奇妙な現象は学校全体に広がり、集団ヒステリーとも取れる状況が展開します。リディアは親友の死と自身の出生の秘密、そして母親との関係に向き合いながら、現象の真相と自身の内面に迫っていきます。果たして、この不可解な失神の連鎖の背景には何があるのか、物語は少女たちの揺れる心と社会の抑圧を浮き彫りにしながら進みます。
解説
『フォーリング 少女たちのめざめ』は、青春ドラマとサスペンス、ミステリーの要素を融合させた作品で、1960年代後期の英国社会の閉塞感と、思春期の少女たちの内面的な葛藤を繊細に描いています。監督のキャロル・モーレイは、ドキュメンタリー出身の視点を生かし、リアルかつ詩的な映像美で、少女たちの脆さや情熱を表現。特に、集団ヒステリーとも解釈できる失神現象を通じて、抑圧された感情や社会規範に対する反抗、性への目覚めといったテーマを探求します。
物語の舞台となる1969年は、女性解放運動や性的革命が台頭し始めた時期であり、伝統的な価値観と新しい自由の衝突が背景にあります。女子校という閉鎖的な空間は、こうした社会的緊張を象徴する場として機能し、少女たちの行動や感情が極端な形で現れる様子を描いています。映画はサスペンス的な要素を持ちつつも、むしろ少女たちの内面的な成長や葛藤に焦点を当てた青春ドラマとしての側面が強く、観客に感情の揺れや曖昧さを共有させる作りが特徴です。
また、映画のトーンはどこか幻想的で、トレイシー・ソーンによる音楽やアニエス・ゴダールの撮影が、物語の不気味さと美しさを強調。視覚的・聴覚的な演出が、少女たちの不安定な心理状態を効果的に映し出しています。ラストの展開は、母親との関係やリディアの出生の秘密に触れる重いテーマを扱い、観客に解釈の余地を残す余韻を残します。
レビューでは賛否が分かれ、Filmarksでの平均スコアは2.7点(レビュー数397件)と、物語の曖昧さや冗長と感じる部分を指摘する声もありますが、フローレンス・ピューの存在感や雰囲気の独特さが高く評価されています。
女優の活躍
本作は、メイジー・ウィリアムズとフローレンス・ピューの若手女優二人が主演を務め、彼女たちのキャリアにおける重要な一歩となりました。
メイジー・ウィリアムズ(リディア役)
メイジー・ウィリアムズは、『ゲーム・オブ・スローンズ』のアリア・スターク役で知られる女優で、本作では主人公リディアを演じています。リディアは学校や家庭での抑圧に反抗しつつ、親友の死に直面して感情の起伏を経験する複雑なキャラクターです。メイジーは、繊細さと大胆さを兼ね備えた演技で、リディアの不安定な心理をリアルに表現。特に、失神シーンや母親との対立シーンでは、感情の爆発と抑制のバランスを見事に演じ、若手女優としての実力を示しました。本作は彼女の映画初主演作であり、テレビドラマでの成功を映画の場でも証明する機会となりました。
フローレンス・ピュー(アビー役)
フローレンス・ピューは、本作が映画デビュー作であり、短い出演時間ながら圧倒的な存在感を発揮。アビーはリディアの親友で、物語の早い段階で死にますが、彼女の死が物語の引き金となる重要な役割を担います。ピューの演技は、観客に強い印象を残し、特にその自然体でありながら神秘的な魅力が評価されました。彼女はこの後、『レディ・マクベス』(2016年)や『ミッドサマー』(2019年)、『リトル・ウーマン』(2019年)で国際的な評価を得るなど、現代を代表する女優の一人へと成長。本作での彼女の存在感は、後の成功を予感させるものでした。
その他の女優
マキシン・ピーク(リディアの母親アイリーン役)は、抑圧的で冷淡な母親を演じ、物語の重みを増しています。彼女の演技は、リディアとの緊張感ある関係性を強調し、物語の感情的な深みを加えました。また、グレタ・スカッキやアナ・バーネットも脇を固め、女子校の閉鎖的な雰囲気をリアルに演出しています。
女優の衣装・化粧・髪型
『フォーリング 少女たちのめざめ』の衣装、化粧、髪型は、1969年の英国女子校という設定を反映し、時代感とキャラクターの個性を表現しています。
衣装
生徒たちは、典型的な英国の女子校の制服を着用。濃紺のブレザー、プリーツスカート、白いブラウス、ネクタイというクラシックなスタイルが中心です。この制服は、厳格な学校の規律と抑圧的な雰囲気を象徴し、少女たちの内面的な反抗とのコントラストを強調します。一方、リディアやアビーの私服シーンでは、1960年代後期のファッションが垣間見え、フローラル柄のワンピースやシンプルなカットソーなど、時代を感じさせるカジュアルなスタイルが登場。リディアの母親アイリーンは、地味で保守的なドレスを着用し、彼女の孤立感や時代遅れな価値観を表現しています。衣装は、物語のテーマである「抑圧と解放」を視覚的に補強する役割を果たしています。
化粧
化粧は、少女たちにはほとんど施されておらず、自然な肌や薄いリップが中心。これは、思春期のナチュラルな美しさと、女子校の規律厳しい環境を反映しています。アビー役のフローレンス・ピューは、わずかにアイラインやチークを施し、彼女のミステリアスな魅力を引き立てています。一方、教師や母親役のキャラクターは、よりフォーマルなメイク(赤いリップや整った眉など)で、大人らしい威厳を表現。メイクの控えめさは、少女たちの純粋さと不安定な心理状態を強調する効果があります。
髪型
生徒たちの髪型は、1960年代のスタイルを反映し、シンプルなポニーテールやハーフアップが主流。リディアの髪は、ルーズなポニーテールや少し乱れたスタイルで、彼女の反抗的な性格を表現。アビーは、緩やかなウェーブのかかった髪で、自由奔放な雰囲気を出しています。教師陣は、きっちりまとめたアップスタイルやショートカットで、規律正しさを強調。全体的に、髪型はキャラクターの社会的立場や内面を反映する重要な要素として機能しています。
キャスト
- リディア・ラモント:メイジー・ウィリアムズ…主人公。学校に反抗的で、親友アビーの死をきっかけに失神現象に巻き込まれる。
- アビー:フローレンス・ピュー…リディアの親友。兄ケニーとの関係と妊娠が物語の鍵を握る。
- アイリーン・ラモント:マキシン・ピーク…リディアの母親。冷淡で孤立したキャラクター。
- ミス・アルヴァロ:グレタ・スカッキ…学校の教師。失神現象に困惑する大人たちの一人。
- ミス・マントル:アナ・バーネット…もう一人の教師。学校の規律を象徴する存在。
スタッフ
- 監督・脚本:キャロル・モーレイ…ドキュメンタリー出身の監督で、詩的かつリアルな演出が特徴。本作では脚本も担当し、少女たちの心理を深く掘り下げた。
- 撮影:アニエス・ゴダール…フランスの名撮影監督。幻想的で柔らかな映像美で、物語の雰囲気を構築。
- 音楽:トレイシー・ソーン…エヴリシング・バット・ザ・ガールのメンバー。エモーショナルで不気味なサウンドトラックが作品のトーンを高める。
- 製作:カイロ・キャノン、リュック・ローグ…インディペンデント映画らしい丁寧なプロダクションを支えた。
総括
『フォーリング 少女たちのめざめ』は、1969年の英国女子校を舞台に、少女たちの揺れる心と社会の抑圧を描いた青春サスペンスです。メイジー・ウィリアムズとフローレンス・ピューの鮮烈な演技、時代を反映した衣装や髪型、キャロル・モーレイの詩的な演出が融合し、観客に深い余韻を残します。集団ヒステリーや性への目覚めといったテーマは、現代にも通じる普遍性を持ち、思春期の複雑な感情を丁寧に描き出しています。
レビュー 作品の感想や女優への思い