『ジェントルメン』（2019年）は、ガイ・リッチー監督によるアクション・クライム映画。ロンドンの大麻帝国を巡る裏社会の駆け引きと裏切りを描く。豪華キャストとスタイリッシュな演出が魅力の113分。
基本情報
- 邦題：ジェントルメン
- 原題：The Gentlemen
- 公開年：2019年
- 製作国：米国
- 上映時間：113分
- ジャンル：アクション、クライム
- 配給：キノフィルムズ
見どころ
『スナッチ』のガイ・リッチー監督がクールな男たちのダーティでスリリングな駆け引きを描き出す。スタイリッシュな映像の爽快さと巧妙な伏線にだまされる快感を楽しめる。
あらすじ
『ジェントルメン』は、ロンドンの裏社会を舞台に、大麻ビジネスの帝王ミッキー・ピアソン（マシュー・マコノヒー）が自身の帝国を売却しようとするところから始まる。アメリカ出身のミッキーは、英国で巨大な大麻事業を築き上げたが、引退を決意し、事業を富豪マシュー（ジェレミー・ストロング）に売却しようとする。しかし、この取引の噂が広まり、野心的なギャング、詐欺師、ならず者たちが利権を狙って動き出す。ミッキーの右腕レイモンド（チャーリー・ハナム）は、混乱を収束させようと奔走するが、事態は複雑化。詐欺師フレッチャー（ヒュー・グラント）が裏で暗躍し、ミッキーのビジネスを脅かす情報を握る。一方、中国系ギャングのドライ・アイ（ヘンリー・ゴールディング）や、若者ギャングのリーダー、コーチ（コリン・ファレル）も絡み合い、裏切りと策略が交錯する。物語は、フレッチャーがミッキーの物語を映画プロデューサーに売り込もうとする形で進み、予測不能な展開が続く。
解説
ガイ・リッチー監督の得意とするクライム・コメディのスタイルが本作でも存分に発揮されている。『ロック、ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』で知られるリッチーらしい、テンポの良い会話、複雑に絡み合うプロット、ユーモアと暴力の融合が特徴。物語は非線形に展開し、フレッチャーの語りを通じて過去と現在が交錯する手法が緊張感と娯楽性を高める。ロンドンの多様な裏社会を描き、階級や文化の対立を巧みに織り交ぜ、現代英国社会の闇を風刺的に表現している。キャストのアンサンブル演技も見どころで、各キャラクターの個性が物語のダイナミズムを支える。リッチー監督のスタイリッシュな映像美と音楽の選曲も、作品に独特の魅力を与えている。
女優の活躍
本作の主要な女性キャラクターは、ロザリンド・ピアソン役のミシェル・ドッカリー。ロザリンドはミッキーの妻であり、ビジネスにおいても重要な役割を果たす強烈な存在感を持つ女性だ。ミシェル・ドッカリーは、英国ドラマ『ダウントン・アビー』での上品な貴族女性役とは対照的に、本作ではタフで頭脳明晰な裏社会の女王を演じ、観客に新たな一面を見せた。ロザリンドはミッキーのビジネスを支えるだけでなく、危機的状況での冷静な判断力と行動力で物語に深みを加える。特に、ギャングたちとの対峙シーンでは、彼女の鋭い眼光と堂々とした態度が印象的。ドッカリーの演技は、冷酷さと愛情深さを両立させ、ミッキーとのパートナーシップを説得力あるものにしている。彼女の登場シーンは少ないものの、物語の要所で強烈なインパクトを残し、男性中心の裏社会に女性の力を刻み込む。
女優の衣装・化粧・髪型
ミシェル・ドッカリー演じるロザリンドの衣装は、彼女のキャラクター性を強調する重要な要素だ。ロザリンドはロンドンの裏社会に君臨する女性として、洗練されたスタイルと威厳を兼ね備えている。衣装は主にテーラードのスーツやタイトなドレスで、高級感のある素材（シルクやウール）と大胆な色使い（深紅、黒、エメラルドグリーン）が特徴。彼女のスーツはシャープなシルエットで、男性的なパワーと女性的なエレガンスを融合させ、裏社会での地位を視覚的に表現している。アクセサリーは控えめだが、大ぶりのイヤリングや金のネックレスがアクセントとなり、彼女の自信を際立たせる。
化粧は、強い印象を与えるために計算されている。ロザリンドのメイクは、濃いアイラインとスモーキーなアイシャドウで目元を強調し、赤やプラム色のリップで力強さをプラス。肌はナチュラルに仕上げ、洗練された雰囲気を保つ。髪型は、シーンに応じて変化するが、基本的にはタイトにまとめたアップスタイルや、滑らかなウェーブのかかったショートヘアが中心。これにより、彼女のプロフェッショナルな一面と、ミッキーとの親密な場面での柔らかさが両立されている。全体的に、ロザリンドのルックは「美しさと危険」を体現し、物語の緊張感を高める役割を果たしている。
キャスト
- ミッキー・ピアソン：マシュー・マコノヒー。大麻帝国の王。カリスマ性と冷酷さを兼ね備えたアメリカ人。
- ロザリンド・ピアソン：ミシェル・ドッカリー。ミッキーの妻で、ビジネスでも重要なパートナー。知的でタフな女性。
- レイモンド：チャーリー・ハナム。ミッキーの忠実な右腕。冷静沈着で実行力がある。
- フレッチャー：ヒュー・グラント。詐欺師で物語の語り手。狡猾でユーモラスな演技が光る。
- ドライ・アイ：ヘンリー・ゴールディング。野心的な中国系ギャング。ミッキーの帝国を狙う。
- コーチ：コリン・ファレル。若者ギャングのリーダー。独特のユーモアと意外な義理堅さが魅力。
- マシュー：ジェレミー・ストロング。ミッキーのビジネス買収を狙う富豪。
スタッフ
- 監督・脚本・製作：ガイ・リッチー。クライム映画の巨匠。独特のテンポと視覚スタイルで知られる。
- 製作：アイヴァン・アトキンソン、ビル・ブロック。
- 撮影：アラン・スチュワート。ロンドンの暗部を捉えた鮮やかな映像。
- 編集：ジェームズ・ハーバート。非線形な物語をスムーズにつなぐ巧みな編集。
- 音楽：クリストファー・ベンステッド。リッチー作品らしいエネルギッシュなサウンドトラック。
- 美術：ジェムマ・ジャクソン。ロンドンの裏社会をリアルに再現したセットデザイン。
総括
『ジェントルメン』は、ガイ・リッチー監督の持ち味であるスタイリッシュなクライム・コメディの集大成ともいえる作品だ。ミシェル・ドッカリーのロザリンドは、物語に女性の力強さを加え、衣装やメイクも彼女のキャラクターを際立たせる。豪華キャストの掛け合いと、複雑に絡み合うプロットは観客を引き込み、113分間飽きさせない。裏社会の策略とユーモアが交錯する本作は、リッチー監督のファンだけでなく、アクションやクライム映画愛好者にもおすすめの一作。
レビュー 作品の感想や女優への思い