『サラ、いつわりの祈り』はJTリロイの自伝的小説を基にした2004年の映画。監督・主演はアーシア・アルジェント。娼婦の母と息子の過酷な旅路を描く衝撃作。PG-12指定、96分。
基本情報
- 邦題:サラ、いつわりの祈り
- 原題:THE HEART IS DECEITFUL ABOVE ALL THINGS
- 公開年:2004年
- 製作国:米国
- 上映時間:96分
- ジャンル:ドラマ
女優の活躍
本作で監督・脚本・主演を務めたアーシア・アルジェントは、イタリアのホラー映画監督ダリオ・アルジェントの娘として知られ、女優としてのキャリアも豊富です。彼女は本作で、ドラッグ中毒で不安定な生活を送る母親サラを熱演しました。サラの複雑な心理や破滅的な生活を体現し、感情の起伏を力強く表現しています。アルジェントは、自身の監督としての情熱と演技力を融合させ、観客に深い印象を与える演技を見せました。彼女の演技は、母子の愛情と同時に破壊的な関係性をリアルに描き出し、物語の核心を担っています。特に、ジェレマイアとのシーンでは、母親としての愛情と自己破壊的な行動の間で揺れる姿が痛切に伝わります。共演のウィノナ・ライダーも、短い出演ながら印象的な役柄で作品に深みを加えました。彼女はサラの知人として登場し、独特の存在感で物語に彩りを添えています。
女優の衣装・化粧・髪型
アーシア・アルジェント演じるサラの衣装は、彼女の不安定で奔放なキャラクターを反映しています。サラの衣装は、露出度の高い派手なドレスやタイトなトップス、破れたジーンズなど、娼婦としての生活や反社会的な態度を象徴するものが多く、けばけばしい色合いやパンク風のデザインが特徴です。化粧は濃いアイラインや赤いリップスティックが強調され、彼女の荒々しい美しさと破滅的な魅力を引き立てています。髪型は、乱れたロングヘアや色鮮やかなウィッグを使用し、場面によって変化。時には無造作に結んだスタイルで、彼女の生活の混沌さを表現しています。一方、ウィノナ・ライダーの衣装は比較的控えめで、カジュアルなシャツやスカートが中心。彼女の化粧はナチュラルで、落ち着いた印象を与え、サラとの対比を際立たせています。子役のジミー・ベネットやディラン&コール・スプラウス演じるジェレマイアの衣装は、ボロボロのTシャツや女装用のドレスが用いられ、過酷な環境を視覚的に表現。女装シーンでは、ウィッグやメイクが施され、物語の悲劇性を強調しています。
あらすじ
7歳の少年ジェレマイア(ジミー・ベネット)は、里親のもとで穏やかに暮らしていましたが、ある日突然、実の母親サラ(アーシア・アルジェント)に引き取られます。サラはドラッグ中毒で、トラック運転手相手の娼婦として生計を立て、恋人や住む場所を次々と変える不安定な生活を送っています。ジェレマイアは、サラの弟や妹として振る舞うことを強いられ、彼女の恋人エマーソン(ジェレミー・レナー)から性的虐待を受けます。その後、施設に一時保護されたジェレマイアは、祖母(オルネラ・ムーティ)に引き取られ、厳格な祖父(ピーター・フォンダ)の家で暮らします。3年後、11歳になったジェレマイア(ディラン&コール・スプラウス)の前にサラが再び現れ、2人の漂流生活が再開。サラの新たな恋人ジャクソン(マリリン・マンソン)との関係で、ジェレマイアは女装して誘惑する行動に出ますが、これがサラの怒りを買い、彼女の精神はさらに不安定に。サラは全裸で町を徘徊し逮捕され、ジェレマイアと同じ病院に入院。深夜、サラはジェレマイアの点滴を外し、2人で病院を脱走し、物語は幕を閉じます。
解説
『サラ、いつわりの祈り』は、JTリロイの自伝的小説とされた同名作品を原作とした映画ですが、後にこの小説がローラ・アルバートによるフィクションであり、JTリロイが架空の人物であったことが判明しました。この背景は、作品のセンセーショナルな内容にさらなる議論を呼びました。映画は、母子の愛情と破壊的な関係性を軸に、虐待や依存、貧困といった社会問題を描きます。アーシア・アルジェントの監督手法は、ドキュメンタリーのような生々しさとパンク的な映像美を融合させ、観る者に強烈な感情を呼び起こします。物語は、ジェレマイアの視点から語られ、彼の無垢な愛と過酷な現実のギャップが強調されます。サラのキャラクターは、単なる「悪い母親」ではなく、自身のトラウマや依存症に苦しむ複雑な人物として描かれており、観客に同情と批判の両方を誘います。音楽は、ソニック・ユースやティム・アームストロングらが参加し、パンクやオルタナティブの雰囲気で作品の荒々しさを補強。カンヌ国際映画祭の監督週間に上映され、賛否両論を呼びましたが、その過激な描写と感情的な深さで多くのアーティストから支持されました。
キャスト
- サラ – アーシア・アルジェント
- ジェレマイア(7歳) – ジミー・ベネット
- ジェレマイア(11歳) – ディラン&コール・スプラウス
- 祖父 – ピーター・フォンダ
- 祖母 – オルネラ・ムーティ
- エマーソン – ジェレミー・レナー
- ジャクソン – マリリン・マンソン
- 知人 – ウィノナ・ライダー
- その他 – ジョン・ロビンソン、マイケル・ピット
スタッフ
- 監督 – アーシア・アルジェント
- 脚本 – アーシア・アルジェント
- 原作 – JTリロイ(ローラ・アルバート)
- 撮影 – エリック・エドワーズ
- 音楽 – マルコ・カストルディ、ソニック・ユース、ティム・アームストロング
- 製作 – 2004年(アメリカ)
- 配給 – アーティストフィルム=ファントム・フィルム(日本)
- 公開 – 2005年5月7日(日本)
レビュー 作品の感想や女優への思い