「ハウス・ジャック・ビルト」は、ラース・フォン・トリアー監督による2018年のサイコスリラー。建築家志望のシリアルキラー、ジャックの殺人行為を5つのエピソードで描く。過激な暴力描写で賛否両論を呼び、カンヌで物議を醸した。マット・ディロン主演、芸術と狂気の融合を追求。
基本情報
- 邦題：ハウス・ジャック・ビルト
- 原題：The House That Jack Built
- 公開年：2018年
- 製作国：スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フランス
- 上映時間：152分
- ジャンル：サスペンス
- 配給：クロックワークス
あらすじ
1970年代のアメリカ、ワシントン州。建築家を目指す技師のジャック（マット・ディロン）は、完璧な「家」を建てる夢を抱きながら、衝動的な殺人衝動に駆られ、殺人をアートのように追求するシリアルキラーへと変貌します。映画は、彼の12年間にわたる5つの殺人エピソードを中心に展開されます。各エピソードでは、ジャックが異なる女性や男性を残忍な方法で殺害し、その行為を芸術作品のように扱う姿が描かれます。ジャックは、謎の人物ヴァージ（ブルーノ・ガンツ）との対話を通じて、自分の行動や哲学を振り返ります。最終的に、彼は自らの「家」を完成させるため、極端な行動に出ますが、その結末は地獄への旅路へとつながります。過激な暴力描写と哲学的な問いが交錯する本作は、観客に深い衝撃を与える作品です。
解説
「ハウス・ジャック・ビルト」は、デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督による、賛否両論を呼んだサイコスリラーです。本作は、カンヌ国際映画祭での上映時に観客の退場が相次ぎつつもスタンディングオベーションを受けたことからも、その過激さと芸術性が議論の的となりました。映画は、シリアルキラーの心理を深く掘り下げ、殺人を「芸術」として昇華しようとするジャックの異常性を描きながら、善悪や創造性、破壊の本質について哲学的な問いを投げかけます。
物語は、ジャックの5つの「インシデント」と呼ばれるエピソードで構成されており、それぞれが彼の殺人行為の進化と内面の葛藤を映し出します。ラース・フォン・トリアー特有の挑発的な演出は、暴力描写だけでなく、歴史や芸術の映像（例：第二次世界大戦の資料映像やダンテの「神曲」への言及）を挿入することで、観客に倫理や美学について考えさせます。ジャックの行動は、単なる猟奇殺人ではなく、彼の強迫観念や完璧主義、そして社会からの疎外感の表れとして描かれます。
本作は、観る者に不快感や恐怖を与える一方で、芸術と狂気の境界、創造と破壊の関係性を深く探求する作品として評価されています。ただし、その過激な内容から、日本では無修正ノーカットで公開された一方、アメリカでは一部編集されたバージョンが上映されました。Filmarksでの平均スコアは3.5点（レビュー数22,732件、2025年2月時点）と、観客の反応が分かれる作品であることが伺えます。
女優の活躍
本作には複数の女性キャラクターが登場し、彼女たちの演技はジャックの狂気を際立たせる重要な役割を果たしています。以下に主要な女優とその活躍を紹介します。
ユマ・サーマン（レディ1）
美熟女になったユマ・サーマンが登場していてビックリ。
ユマ・サーマンは、最初のエピソードで登場する「レディ1」を演じます。彼女は、車が故障しジャックに助けを求める女性として登場。ユマの演技は、最初は無垢で軽快な女性像を演じつつ、徐々にジャックの異常性に気づく恐怖を見事に表現しています。彼女の短い出演時間にも関わらず、強烈な印象を残すのは、彼女のキャリアで培った存在感の賜物です。特に、ジャックの冷酷さを引き出すきっかけとなるシーンでの対話は、映画全体のトーンを決定づけます。
ライリー・キーオ（シンプル）
ライリー・キーオは、ジャックの恋人役である「シンプル」を演じます。彼女のキャラクターは、ジャックに心理的に支配される女性として描かれ、キーオの繊細な演技が光ります。無垢で純粋な女性がジャックの暴力に晒される過程は、観客に強い感情的インパクトを与えます。キーオは、恐怖と服従の間で揺れる複雑な感情を、表情と仕草で巧みに表現しています。
シボーン・ファロン・ホーガン（レディ2）
シボーン・ファロン・ホーガンは、ジャックの被害者となる「レディ2」を演じます。彼女のキャラクターは、ジャックに不信感を抱きつつも最終的に犠牲となる女性で、短いシーンながらも緊迫感ある演技で物語に深みを加えています。ホーガンの演技は、ジャックの狡猾さと残忍さを強調する役割を果たします。
ソフィー・グローベール（レディ3）
ソフィー・グローベールは、ジャックの冷酷な殺人行為の標的となる「レディ3」を演じます。彼女の演技は、ジャックの異常性をさらに浮き彫りにする重要な役割を担っており、特に家族とのシーンでの感情表現が印象的です。彼女の出演は、物語の中盤で観客に強い衝撃を与える場面を支えています。
これらの女優たちは、ジャックの狂気と対峙するキャラクターとして、物語の緊張感を高める役割を果たしています。彼女たちの演技は、限られた出演時間の中でもそれぞれのキャラクターの個性や感情を鮮明に描き出し、映画のテーマである「人間の闇」を強調しています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の女優たちの衣装、化粧、髪型は、1970年代のアメリカを背景に、各キャラクターの社会的立場や個性を反映したものになっています。
ユマ・サーマン（レディ1）
ユマ・サーマンの衣装は、1970年代のモダンな女性を思わせるカジュアルかつ洗練されたスタイルです。彼女は明るい色のトップスとジーンズを着用し、自然体な印象を与えます。化粧は控えめで、ナチュラルなメイクが彼女の美貌を引き立て、髪型はゆるやかなウェーブがかかったミディアムヘアで、時代感を反映しつつも現代的な魅力を持っています。このスタイルは、彼女のキャラクターがジャックに対して無防備であることを強調しています。
ライリー・キーオ（シンプル）
ライリー・キーオの衣装は、シンプルで素朴な女性像を表現するものになっています。淡い色のブラウスやスカートを着用し、純粋で無垢な印象を与えます。化粧はほとんど施されておらず、彼女の若々しさと脆弱さを際立たせています。髪型はストレートのロングヘアで、飾らない自然体なスタイルがキャラクターの従順な性格を反映しています。
シボーン・ファロン・ホーガン（レディ2）
シボーン・ファロン・ホーガンの衣装は、中年女性らしい実用的なスタイルで、落ち着いた色調のワンピースやカーディガンが特徴です。化粧は控えめで、日常的な生活感を表現。髪型はショートカットで、手入れの行き届いたシンプルなスタイルが、彼女のキャラクターの慎重さを強調しています。
ソフィー・グローベール（レディ3）
ソフィー・グローベールの衣装は、家庭的な女性をイメージさせるもの。花柄のドレスやエプロンを着用し、1970年代の主婦らしい雰囲気を醸し出しています。化粧はナチュラルで、家族を守る母親としての温かみを表現。髪型はアップスタイルやポニーテールで、機能的かつ時代感のあるデザインです。
これらの衣装や化粧、髪型は、1970年代のアメリカの文化的背景を反映しつつ、各キャラクターの個性や物語内での役割を強調するものになっています。特に、女性キャラクターの外見がジャックの視点を通じて「芸術的対象」として扱われるシーンでは、衣装や化粧が彼の異常性を際立たせる効果的な要素となっています。
キャスト
- ジャック：マット・ディロン。主人公のシリアルキラー。建築家としての理想と殺人衝動の間で葛藤する複雑なキャラクターを、冷酷さと脆弱さの両面で表現。
- ヴァージ：ブルーノ・ガンツ。ジャックと対話する謎の人物。哲学的で神秘的な存在として、物語の後半で重要な役割を果たす。
- レディ1：ユマ・サーマン。最初のエピソードの被害者。軽快な性格がジャックの殺人衝動を誘発。
- シンプル：ライリー・キーオ。ジャックの恋人。純粋で従順な女性として、ジャックの支配的な性格を浮き彫りに。
- レディ2：シボーン・ファロン・ホーガン。ジャックの狡猾な殺人手法の標的となる女性。
- レディ3：ソフィー・グローベール。家族を持つ女性として、ジャックの残忍さを強調する役割。
スタッフ
- 監督・脚本：ラース・フォン・トリアー。デンマークの映画監督で、「ドッグヴィル」「メランコリア」など挑発的な作品で知られる。本作でも彼の独特な美学と哲学が色濃く反映されている。
- 製作：ルイーズ・ヴェス。ラース・フォン・トリアー作品の常連プロデューサー。過激な内容の制作を支えた。
- 撮影：マヌエル・アルベルト・クラロ。暗く重厚な映像美で、ジャックの心理と暴力のコントラストを表現。
- 音楽：ヴィクター・レイエス。不穏な雰囲気を醸し出す音楽で、映画の緊張感を高める。
- 編集：モリー・マレーネ・ステンスガード。ラース・フォン・トリアー作品の編集を多く手掛ける。複雑な物語構造を効果的に整理。
まとめ
「ハウス・ジャック・ビルト」は、ラース・フォン・トリアーの挑発的なビジョンが詰まったサイコスリラー。マット・ディロンを中心に、ユマ・サーマンやライリー・キーオら女優陣の演技が、ジャックの狂気を際立たせます。衣装や化粧は1970年代の時代感を反映しつつ、キャラクターの個性を強調。過激な暴力と哲学的テーマが交錯する本作は、観客に強烈な印象を残す作品です。Filmarksでのレビューからも、賛否両論ながらその芸術性が評価されています。
レビュー 作品の感想や女優への思い