『闇はささやく』（原題：Things Heard & Seen）は、2021年にNetflixで配信された米国のサスペンス・ホラー映画です。エリザベス・ブランデイジの小説を原作に、呪われた家に引っ越した夫婦の暗い秘密と怪奇現象を描きます。主演はアマンダ・セイフライド、監督はシャリ・スプリンガー・バーマンとロバート・プルチーニ。
基本情報
- 邦題：闇はささやく
- 英題：Things Heard & Seen
- 公開年：2021年
- 製作国：米国
- 上映時間：120分
- ジャンル：ホラー、スリラー
女優の活躍
『闇はささやく』で主演を務めるアマンダ・セイフライドは、美術修復家のキャサリン・クレア役で圧倒的な存在感を示しています。セイフライドは、『マンマ・ミーア！』（2008年）や『レ・ミゼラブル』（2012年）で明るく愛らしい役柄を演じてきた一方、本作では内面的な葛藤と恐怖に直面する複雑な女性像を体現。彼女の演技は、摂食障害に悩むキャサリンの心理的脆さと、夫の裏切りや家の怪現象に対する恐怖を見事に表現しています。特に、孤立感と不安が増す中での感情の揺れを繊細に演じ、観客に強い共感を呼び起こします。セイフライドは2020年の『Mank マンク』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実績を持ち、本作でもその演技力の高さを発揮。批評家からは「美しいが緊張感に欠ける」との声もあったものの、彼女の感情表現は物語の重苦しい雰囲気を支える柱となっています。
共演のナタリア・ダイアーは、大学講師ジャスティン役で登場。『ストレンジャー・シングス』で知られるダイアーは、本作では控えめながらも重要な役割を果たし、キャサリンの友人として物語に深みを加えています。カレン・アレンもキーキャラクターとして登場し、ベテランらしい落ち着いた演技で作品に重厚感を与えています。
女優の衣装・化粧・髪型
アマンダ・セイフライド演じるキャサリンの衣装は、1980年代の設定を反映したシンプルかつエレガントなスタイルが特徴です。都会的なマンハッタンから田舎町へ移ったことで、彼女の衣装は都会的な洗練さから素朴なカジュアルさへと変化。序盤では、都会暮らしを象徴するテーラードジャケットやスカート、落ち着いた色調のブラウスを着用。一方、田舎での生活では、柔らかいニットやデニム、フランネルシャツといった実用的な服装が目立ち、キャサリンの心理的孤立と環境の変化を視覚的に表現しています。衣装は物語のトーンに合わせ、暗い色合い（グレー、ダークブルー、ブラウン）が多く、ホラー映画の不穏な雰囲気を強調。
化粧は控えめで、キャサリンの内面の脆さを反映。ナチュラルメイクが基本で、淡いリップと薄いアイメイクが中心ですが、物語が進むにつれて疲れやストレスを表現するため、目の下にクマや青白い肌が強調される場面も。髪型は、ゆるやかなウェーブのかかったロングヘアで、都会では整ったスタイルだったものが、田舎ではやや乱れた自然な状態に変化し、彼女の精神的な混乱を象徴しています。ナタリア・ダイアーの衣装は、よりカジュアルで学生らしいジーンズやセーターが中心で、若々しさと親しみやすさを演出。彼女の化粧もミニマルで、フレッシュな印象を与えています。
あらすじ
1980年代、ニューヨークのマンハッタンで暮らす美術修復家のキャサリン・クレア（アマンダ・セイフライド）は、夫ジョージ（ジェームズ・ノートン）と娘フラニー（アナ・ソフィア・ヘーガー）と共に、夫の新しい仕事のために田舎町の古い農家に引っ越します。しかし、都会を離れたキャサリンは孤立感に苛まれ、摂食障害が悪化。新居では不可解な現象が続き、娘が「家に知らない女がいる」と言い出します。キャサリンは家の過去にまつわる不気味な歴史を知り、夫の裏の顔と秘密に気づき始めます。やがて、家の呪われた過去と夫婦の隠された真実が交錯し、恐怖と悲劇が加速。物語は、超自然的な要素と心理サスペンスが絡み合い、衝撃的な結末へと向かいます。
解説
『闇はささやく』は、エリザベス・ブランデイジの小説『All Things Cease to Appear』を原作としたサスペンスホラーで、ホラー要素と心理ドラマを融合させた作品です。物語は、18世紀の神学者エマヌエル・スウェーデンボルグの思想を参照し、霊的な世界と現実の闇を対比させています。ハドソン川流域の風景画が頻繁に登場し、視覚的な美しさと不気味さが共存する独特の雰囲気を作り出しています。
映画は、ホラー映画『シャイニング』に似た構造を持ち、孤立した環境での家族の崩壊を描きますが、フェミニズムの視点も織り交ぜ、女性の抑圧や夫婦間の力関係を浮き彫りに。特に、キャサリンの摂食障害や夫の欺瞞は、現代的なテーマとして解釈可能ですが、批評家からは「ホラーとしての怖さが不足」「物語の焦点が不明確」との批判も。ラストの曖昧さは観客の想像に委ねられ、賛否両論を呼びました。
監督のシャリ・スプリンガー・バーマンとロバート・プルチーニは、『アメリカン・スプレンダー』（2003年）でアカデミー脚本賞にノミネートされた実績を持ち、本作でも視覚的・心理的な演出に力を入れていますが、ホラーとサスペンスのバランスが取り切れなかったとの評価も。
キャスト
- アマンダ・セイフライド（キャサリン・クレア）：美術修復家で、夫の仕事のため田舎へ。摂食障害と家の怪現象に悩む。
- ジェームズ・ノートン（ジョージ・クレア）：美術史の教授。魅力的な外見の裏に暗い秘密を隠す。
- ナタリア・ダイアー（ジャスティン）：大学の講師で、キャサリンの友人。
- F・マーレイ・エイブラハム：物語の鍵を握る大学教授。『アマデウス』（1984年）でアカデミー賞受賞。
- カレン・アレン：地元の住人で、家の歴史に詳しい人物。『インディ・ジョーンズ』シリーズで知られる。
- アナ・ソフィア・ヘーガー（フラニー）：キャサリンとジョージの娘。
ほかに、アレックス・ニューステッター、レイ・シーホーン、マイケル・オキーフ、ジャック・ゴア、ジェームズ・アーバニアクらが脇を固める助演陣。
スタッフ
- 監督・脚本：シャリ・スプリンガー・バーマン、ロバート・プルチーニ（『アメリカン・スプレンダー』で知られるコンビ）。
- 原作：エリザベス・ブランデイジ（小説『All Things Cease to Appear』）。
- 製作：アンソニー・ブレグマン、ステファニー・アズピアズー、ジュリー・コーエン、ピーター・クロン。
- 製作総指揮：ピーター・パストレッリ。
- 撮影：ラリー・スミス。
- 音楽：ピーター・レイバーン。
- 編集：ルイーズ・フォード、ジェイコブ・クレイ。
総括
『闇はささやく』は、ホラーと心理サスペンスを融合させた意欲作ですが、ホラーとしての緊張感や物語のまとまりに欠けるとの批判も受けています。アマンダ・セイフライドの演技と1980年代の雰囲気、美術的な背景は魅力的ですが、期待を完全に満たすには至らなかった作品です。それでも、夫婦の闇や超自然的なテーマに興味がある視聴者には一見の価値があります。
レビュー 作品の感想や女優への思い