『トラップ』（2024年）は、M・ナイト・シャマラン監督のサスペンススリラー。愛娘とライブ会場を訪れた父親クーパーが、自身が殺人鬼として警察の罠に嵌る物語。緊張感溢れる展開と独自の設定で観客を魅了。
基本情報
- 邦題：トラップ
- 原題：Trap／Good Grades
- 公開年：2024年10月25日
- 製作国：アメリカ、イギリス、イエメン
- 上映時間：105分
- ジャンル：サスペンス、ミステリー、スリラー
- 配給：ワーナー・ブラザース映画
見どころ
『シックス・センス』のシャマラン監督が、殺人鬼を追い詰める究極のわなを描き出す。シャマランの真骨頂であるストーリーテリングとだましあいの応酬を存分に楽しめる。
あらすじ
『トラップ』（原題：Trap）は、M・ナイト・シャマラン監督による2024年公開のサスペンス・スリラー映画。物語の中心は、フィラデルフィアの消防士であり、愛情深い父親であるクーパー・アボット（ジョシュ・ハートネット）。彼は娘ライリー（アリエル・ドノヒュー）の成績のご褒美として、彼女が熱狂する世界的ポップスター、レディ・レイヴン（サレカ・シャマラン）のアリーナライブのプラチナチケットを手に入れ、共に会場を訪れます。ライリーは最高の席に大喜びし、ライブは3万人の観客で熱狂に包まれます。
しかし、クーパーは会場内の異常な状況に気づきます。監視カメラの数が異常に多く、警察官が会場内外に続々と集結しているのです。口の軽いスタッフから聞き出した情報によると、警察は指名手配中の連続殺人鬼「ブッチャー」を捕まえるため、このライブ会場全体を巨大な罠として仕掛けたとのこと。そして、驚くべきことに、その殺人鬼こそクーパー自身なのです。クーパーは、警察の包囲網を掻い潜り、娘を連れて会場から脱出しようと試みます。物語は、クーパーの巧妙な策略と警察の追跡、そしてレディ・レイヴンを巻き込んだ緊張感溢れる展開で進行します。シャマラン監督らしい予測不能なストーリーテリングと、ライブ会場の華やかな雰囲気が織り交ぜられ、観客を最後まで引きつけます。
解説
『トラップ』は、M・ナイト・シャマラン監督の特徴である「意外性」と「心理的な緊張感」を最大限に活かした作品です。シャマランは『シックス・センス』（1999年）や『オールド』（2021年）で知られるように、観客の予想を裏切るどんでん返しや独自の設定で知られています。本作では、主人公が殺人鬼であることを最初から明かし、彼の視点で物語を進めるという斬新なアプローチが採用されています。この設定により、観客はクーパーの心理や行動に共感しつつ、同時に彼の非道な本性を突きつけられるという複雑な感情を味わいます。
本作の舞台であるライブ会場は、華やかな音楽と熱狂的な観客のエネルギーに満ちており、シャマラン監督の娘であるサレカ・シャマランが演じるレディ・レイヴンのパフォーマンスが物語にリアリティと魅力を加えています。サレカは本物のアーティストとしても活動しており、彼女の音楽と演技が映画の重要な要素となっています。ライブ会場という閉鎖空間でのサスペンスは、シャマラン監督の過去作『ヴィジット』（2015年）や『ノック 終末の訪問者』（2023年）に見られる「限定された空間での緊張感」を継承しつつ、音楽とサスペンスの融合という新たな挑戦を提示しています。
映画のテーマは、表の顔と裏の顔、家族愛と犯罪という二面性を描くことにあります。クーパーは娘への深い愛情を示す一方で、冷酷な殺人鬼としての顔を持つ。この対比は、観客に道徳的な葛藤を投げかけ、シャマラン作品特有の「人間性の探求」を深めています。また、警察やFBIのプロファイラー、ジェイミソン博士（ヘイリー・ミルズ）の存在が、クーパーの心理戦をさらに複雑にします。物語の後半では、レディ・レイヴンがクーパーの脱出計画に予想外の役割を果たし、シャマランらしい逆転の展開が観客を驚かせます。
批評家の反応は賛否両論で、設定の斬新さやジョシュ・ハートネットの演技は高く評価される一方、物語の後半の展開や一部の設定に突っ込みどころがあるとの声もあります。それでも、シャマラン監督の「らしさ」が詰まった作品として、ファンにはたまらない仕上がりとなっています。興行的には、2024年8月2日の北米公開で初週末に1545万ドルを記録し、全世界で8267万ドルの興行収入を上げ、3000万ドルの予算に対して成功を収めました。
女優の活躍
本作では、女性キャストが物語の重要な役割を担っています。特に注目すべきは、レディ・レイヴン役のサレカ・シャマランと、ライリー役のアリエル・ドノヒューです。
サレカ・ナイト・シャマラン（レディ・レイヴン）
サレカは、M・ナイト・シャマラン監督の娘であり、本作では世界的ポップスター、レディ・レイヴンを演じています。彼女は実際の音楽アーティストとしても活動しており、本作のライブシーンでは自ら歌唱し、圧倒的なパフォーマンスを披露。彼女の歌声とステージでの存在感は、映画の華やかな雰囲気を支える重要な要素です。物語後半では、クーパーの脱出劇に深く関与し、単なるポップスター以上の知性と行動力を発揮。サレカの演技は、父親の監督作品に新たな次元を加え、批評家からも「新鮮な驚き」と評価されています。
アリエル・ドノヒュー（ライリー）
アリエル・ドノヒューは、クーパーの娘ライリー役で出演。ライリーは父親を慕う無垢な少女であり、ライブ会場での喜びや無邪気さが物語の感情的な軸となっています。アリエルは、クーパーの二面性に気づかず、純粋にライブを楽しむ姿を自然体で演じ、観客に共感を呼び起こします。彼女の演技は、物語の緊迫感の中で一服の清涼剤となり、父親との絆を強調する重要な役割を果たしています。
アリソン・ピル
アリソン・ピルはクーパーの妻役で登場し、物語の後半で重要な役割を担います。彼女の演技は、家族の裏に隠された秘密を浮き彫りにし、物語に深みを加えています。
ヘイリー・ミルズ（ジェイミソン博士）
ヘイリー・ミルズは、FBIのプロファイラーとしてクーパーを追うジェイミソン博士を演じます。彼女の冷静かつ鋭い演技は、クーパーとの心理戦を際立たせ、物語に緊張感を与えています。
女優の衣装・化粧・髪型
サレカ・ナイト・シャマラン（レディ・レイヴン）
レディ・レイヴンの衣装は、ポップスターらしい派手でゴージャスなスタイルが特徴です。キラキラと輝くスパンコールのドレスや、動きやすさを重視したスタイリッシュなパンツルックが登場し、ライブパフォーマンスの華やかさを引き立てます。化粧は、舞台映えする大胆なアイメイクとリップが中心で、彼女の力強い歌声を視覚的に補完。髪型は、ライブのエネルギーを表現するルーズなウェーブやアップスタイルで、現代的なポップスターのイメージを体現しています。
アリエル・ドノヒュー（ライリー）
ライリーの衣装は、ティーンエイジャーらしいカジュアルで親しみやすいスタイルです。Tシャツやジーンズ、ライブ会場にふさわしいポップなアクセサリーが特徴。化粧はナチュラルで、少女らしい清純さを強調。髪型は、ポニーテールやハーフアップなど、若々しく動きやすいスタイルが採用され、彼女の無垢なキャラクターを反映しています。
アリソン・ピル
アリソン・ピルの衣装は、家庭的な母親像を反映したシンプルで落ち着いたもの。カジュアルなブラウスやスカートが中心で、化粧も控えめ。髪型は、ミディアムレングスのナチュラルなスタイルで、日常的な雰囲気を演出しています。
ヘイリー・ミルズ（ジェイミソン博士）
ジェイミソン博士の衣装は、プロフェッショナルなFBI捜査官らしいフォーマルなスーツやジャケット。化粧は控えめで、知的で落ち着いた印象を与えます。髪型は、ショートカットやタイトなアップスタイルで、彼女の厳格なキャラクターを強調しています。
キャスト
- クーパー・アボット／ブッチャー：ジョシュ・ハートネット
- ライリー：アリエル・ドノヒュー
- レディ・レイヴン：サレカ・シャマラン
- ジェイミソン博士：ヘイリー・ミルズ
- クーパーの妻：アリソン・ピル
その他、ジョセフ・ラングドン、スコット・メスカディ。
スタッフ
- 監督・脚本・製作：M・ナイト・シャマラン…シャマランは『シックス・センス』や『スプリット』で知られるサスペンスの巨匠。本作でも彼の独特なストーリーテリングが光ります。
- 撮影：サヨムプー・ムックディプローム（『君の名前で僕を呼んで』）…ライブ会場のダイナミックな映像や緊迫感あるシーンを美しく捉えています。
- 製作：アシュウィン・ラジャン、マーク・ビエンストック
- 配給：ワーナー・ブラザース映画
- 音楽：サレカ・シャマラン（レディ・レイヴンの楽曲）
総括
『トラップ』は、M・ナイト・シャマラン監督の集大成ともいえる作品で、独自の設定とサスペンスフルな展開が魅力です。サレカ・シャマランやアリエル・ドノヒューら女優陣の活躍が物語に彩りを添え、衣装や音楽がライブ会場の臨場感を高めています。シャマランらしい「予想外の展開」を求める観客にとって、見逃せない一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い