『カリブの白い薔薇』（2006年）は、スペイン・キューバ合作のラブロマンス映画。1930年代のキューバ・ハバナを舞台に、密航業者のシモンと若者アンドレス、美少女マリーの恋と裏切りが交錯する。アナ・デ・アルマスのデビュー作として注目される。
基本情報
- 邦題：カリブの白い薔薇
- 原題：UNA ROSA DE FRANCIA
- 公開年：2006年
- 製作国：スペイン、キューバ
- 上映時間：100分
見どころ
『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』などで知られるアナ・デ・アルマスのデビュー作。ハバナの美しい景色と熱いラテンのリズムが、切ない男女の運命を彩る。
女優の活躍
『カリブの白い薔薇』（原題：Una rosa de Francia）はアナ・デ・アルマスの映画デビュー作として特に注目されています。アナ・デ・アルマスは、1988年4月30日生まれのキューバ出身の女優で、本作では16歳の時に主役のマリーを演じました。彼女はキューバのハバナで生まれ、14歳でキューバ国立演劇学校に入学。在学中に本作のオーディションを受け、キューバの著名な俳優ホルヘ・ペルゴリアの推薦により主役に抜擢されました。この出会いは、ペルゴリアが娘の誕生日パーティーでアナと知り合い、監督のマヌエル・グティエレス・アラゴンに彼女を推薦したことがきっかけでした。監督が演劇学校を訪れ、16歳のアナに役を決定したエピソードは、彼女のキャリアの始まりを象徴しています。
本作でのアナの演技は、若さと純真さを湛えたマリーのキャラクターを通じて、観客を引き込む魅力的なものでした。レビューでは、彼女の「不思議な目」や「繊細な表情」が特に称賛されており、16歳とは思えない妖艶さと清純さを併せ持つ存在感が際立っています。彼女の登場シーンは、映画の華やかさを引き立て、特に視覚的な魅力で観客を魅了しました。このデビュー作を機に、彼女は18歳でスペインに渡り、ドラマ『エル・インテルナド・ラグナ・ネグラ』（2007-2010）で知名度を上げ、後にハリウッドで『ブレードランナー2049』（2017）や『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』（2021）などに出演し、国際的なスターとなりました。『カリブの白い薔薇』は、彼女のキャリアの原点として重要な作品であり、若き日のアナの輝きを捉えた貴重な一作です。
女優の衣装・化粧・髪型
アナ・デ・アルマス演じるマリーの衣装は、1930年代のキューバの雰囲気を反映した華やかで女性らしいデザインが特徴です。映画の舞台である高級娼館の設定上、彼女の衣装は優雅で少し扇情的な要素を含んでいます。ドレスは、シルクやサテンなどの光沢のある素材を用いたものが多く、ピンクや花柄の装飾が施されたものが登場し、キューバのコロニアル様式の華やかな背景と調和しています。これらの衣装は、マリーの若さと美しさを強調しつつ、娼館という環境での複雑な立場を表現していました。
化粧に関しては、16歳のマリーの純粋さを保ちつつ、娼館の女性としての魅力を引き出すため、控えめながらも洗練されたメイクが施されています。ナチュラルな肌に、柔らかなピンクや赤系の口紅、軽いアイメイクが施され、彼女の大きな瞳と愛らしい表情を際立たせています。レビューでは、彼女の「ラ・ラーのような瞳」や「魔性の魅力」が特に印象的と評されており、化粧がその効果を増幅していました。
髪型は、1930年代のスタイルを意識した柔らかなウェーブや、シンプルにまとめられたアップスタイルが中心です。マリーの若々しさと無垢な魅力を引き出すため、過度な装飾は避け、自然体でありながら優雅な印象を与えるヘアデザインが採用されています。シーによっては、髪を下ろしたナチュラルなスタイルも見られ、彼女の清純さと官能性を両立させていました。
あらすじ
物語は1930年代のキューバ・ハバナを舞台に展開します。アメリカの禁酒法時代、酒の密輸や不法移民の密航が盛んに行われていたこの時期、シモン（ホルヘ・ペルゴリア）は古い船を使ってニューヨークへの密航を請け負う男です。しかし、彼は客をアメリカ本土ではなく無人島に置き去りにし、密造酒の製造に従事させる悪徳業者です。ある日、米軍のパトロール船に追われ、危機に瀕したシモンは、若い船員アンドレス（アレックス・ゴンサレス）に命を救われます。シモンはアンドレスを弟分として迎え入れ、彼を高級娼館に連れていきます。そこでアンドレスは、シモンが保護している美少女マリー（アナ・デ・アルマス）と出会い、二人は恋に落ちます。マリーとアンドレスはニューヨークへの逃亡を夢見ますが、シモンもまたマリーに密かな愛情を抱いており、彼女を渡したくないという執着を見せます。愛と裏切り、欲望と友情が交錯する中、三人の関係は複雑に絡み合い、緊張感溢れるドラマが展開します。物語は、キューバ革命前夜の猥雑で退廃的なハバナの雰囲気の中で、情熱的なラブロマンスとして進行し、衝撃的な結末へと向かいます。
解説
『カリブの白い薔薇』は、キューバとスペインの合作によるラブロマンス映画であり、1930年代のキューバの社会背景を背景に、愛と欲望、裏切りを描いた作品です。監督のマヌエル・グティエレス・アラゴンは、スペイン映画界の巨匠として知られ、ベルリン映画祭最優秀監督賞やスペイン・アカデミー賞を受賞した経歴を持ちます。本作では、ハバナの美しい海やコロニアル様式の建築を活かし、カリブ海のエキゾチックな雰囲気を存分に描き出しています。物語の中心となるのは、シモンの悪徳なビジネスと、彼を取り巻く人間関係の複雑さです。シモンは悪人でありながらも、どこか憎めない人間味を持ち、アンドレスやマリーとの関係を通じてその内面が掘り下げられます。
映画のテーマは、純潔と欲望、自由と束縛の対比に焦点を当てています。マリーのキャラクターは、純粋さと娼館という環境のギャップを象徴し、観客に強い印象を与えます。キューバ革命前のハバナの退廃的な雰囲気や、ルンバやマンボといった音楽が物語の背景を彩り、視覚的・聴覚的な魅力が作品を際立たせています。レビューでは、ストーリーがやや緩慢であるとの指摘もある一方、キューバの風景やアナ・デ・アルマスの魅力が作品を救っているとの声が多く聞かれます。また、娼館という重いテーマを扱いつつも、明るく軽快なタッチで描いている点が、スペイン映画特有のテンポと相まって評価されています。
一部の批評では、歴史的背景の描写に不正確さがあるとの意見もあります。例えば、Amazon Primeの解説では1930年代とされていますが、アイゼンハワー大統領や朝鮮戦争の言及から1953年頃の設定と推測され、キューバ革命前夜の状況とは整合性が取れないとの指摘があります。それでも、映画のエンターテインメント性やアナ・デ・アルマスの鮮烈なデビューは、観客を引き込む要素として十分な魅力を持っています。
キャスト
- アナ・デ・アルマス（マリー）：本作のヒロインで、16歳の美少女。清純さと妖艶さを兼ね備えた演技で注目を集めた。
- ホルヘ・ペルゴリア（シモン）：キューバの名優で、シモンを演じる。『苺とチョコレート』などで知られる実力派。
- アレックス・ゴンサレス（アンドレス）：若き船員役で、マリーと恋に落ちる情熱的なキャラクターを演じる。
- ブロセリアンダ・エルナンデス：娼館のマダム役で、物語に深みを加える。
- ロクサーナ・モンテネグロ、ヨライシ・ゴメス：脇役として登場し、ハバナの雰囲気を彩る。
スタッフ
- 監督・脚本：マヌエル・グティエレス・アラゴン（ベルリン映画祭最優秀監督賞受賞歴を持つスペインの巨匠）。
- 脚本：セネル・パス
- プロデューサー：ヘラルド・エレーロ、カミロ・ビベス
- 音楽：ザビエル・カペラス（キューバのルンバやマンボを活かした音楽が特徴）。
- 衣装デザイン：レナ・モッサム、リズ・アルバレス（1930年代のキューバの雰囲気を反映した華やかな衣装）。
まとめ
『カリブの白い薔薇』は、アナ・デ・アルマスの鮮烈なデビューと、1930年代のキューバ・ハバナの退廃的かつ魅力的な世界を描いたラブロマンスです。彼女の衣装、化粧、髪型は、マリーの純粋さと物語の扇情的な要素を見事に表現。ストーリーは愛と裏切りを軸に展開し、キューバの美しい風景と音楽が作品を彩ります。歴史的背景に一部疑問が残るものの、アナの魅力とスペイン映画の独特なテンポが楽しめる一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い