「ウォー・ドッグス」(2016年)は、トッド・フィリップス監督による実話ベースのブラックコメディ犯罪映画。2人の若者がアフガン軍への武器供給契約を獲得し、巨額の取引に挑むが、危険な状況に陥る物語。ジョナ・ヒルとマイルズ・テラーが主演、ユーモアと緊張感が交錯する。
基本情報
- 邦題:ウォー・ドッグス
- 原題:War Dogs
- 公開年:2016年
- 製作国:米国
- 上映時間:114分
- ジャンル:サスペンス、ドラマ
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
- レイティング:R(暴力、言語、薬物使用のため)
見どころ
弾丸飛び交う物騒でスリリングな状況の中でも、ずる賢さと下卑た笑みで乗り越えていくとんでもなさが愉快痛快。実話ベースのストーリーという点にも注目したい。
あらすじ
「ウォー・ドッグス」は(一応)実話ベースのブラックコメディ犯罪映画。2000年代のイラク戦争中にマイアミに住む2人の若者、エフライム・ディヴェローリ(ジョナ・ヒル)とデヴィッド・パッカウズ(マイルズ・テラー)の物語です。彼らは、アメリカ政府が中小企業に軍事契約の入札を許可する制度を利用し、武器取引ビジネスに参入します。最初は小さな契約で成功を収め、豪華な生活を謳歌しますが、やがてアフガン国立軍に3億ドルの弾薬供給契約を獲得。この巨額の取引は、彼らを国際的な武器取引の闇へと引き込み、詐欺、腐敗、危険な人物との関わりへと突き進ませます。物語は、2人がイラクを横断する危険な旅や、違法な取引の発覚による危機を通じて、彼らの友情と倫理観が試される様子を描きます。映画は「実話に基づく」と銘打っていますが、脚色や誇張が多く、信頼できない語り手(unreliable narrator)の視点で描かれ、ユーモアと緊張感が絶妙に混在しています。
解説
「ウォー・ドッグス」は、2011年のローリング・ストーン誌の記事「Arms and the Dudes」を原案とし、エフライム・ディヴェローリの回顧録『Once a Gun Runner』も参考にしています。監督のトッド・フィリップスは、「ハングオーバー!」シリーズで知られるコメディの名手ですが、本作ではコメディと犯罪ドラマのバランスを見事に取り、資本主義の過剰や戦争ビジネスの不条理さを風刺しています。映画は、若者たちの野心と無謀さが引き起こす悲喜劇を通じて、アメリカの軍事産業の裏側や倫理的問題を浮き彫りにします。特に、信頼できない語り手を用いることで、観客は物語の真実性について疑問を抱きつつも、展開に引き込まれます。批評家からは、ジョナ・ヒルとマイルズ・テラーの演技が高く評価され、特にヒルのエネルギッシュで過激な演技が映画の推進力となっています。一方で、ストーリーの一部が誇張されている点や、女性キャラクターの描写が薄い点が批判されることもあります。
キャスト
- エフライム・ディヴェローリ(ジョナ・ヒル):野心的な武器商人で、ビジネスを拡大するために手段を選ばない。ヒルのコミカルかつ狡猾な演技が光る。
- デヴィッド・パッカウズ(マイルズ・テラー):エフライムの旧友で、安定した生活を望むが、誘惑に負けてビジネスに参入。テラーの誠実な演技が対比を生む。
- イザ(アナ・デ・アルマス):デヴィッドの恋人で、物語の道徳的中心。デ・アルマスは限られた出番で強い印象を残す。
- ヘンリー・ジラード(ブラッドリー・クーパー):謎めいた武器商人。クーパーは短い出演時間でカリスマ性を発揮。
その他、ケヴィン・ポラック、JB・ブラン、グレッグ・ウェイナーらが脇役として登場。
スタッフ
- 監督:トッド・フィリップス(『ハングオーバー!』『ジョーカー』)
- 脚本:トッド・フィリップス、ジェイソン・スミロヴィック、スティーヴン・チン
- 製作:ブラッドリー・クーパー、マーク・ゴードン、トッド・フィリップス
- 撮影:ローレンス・シャー
- 編集:ジェフ・グロス
- 音楽:クリフ・マルティネス
- 製作会社:ワーナー・ブラザース、ジョイント・エフォート
– **レイティング**:R(暴力、言語、薬物使用のため)
映画は2015年3月からルーマニアで撮影を開始し、同年10月に完成。ワーナー・ブラザース配給で、全米公開時に同日公開の他11作品と競合しながらも興行収入約8600万ドルを記録しました。
女優の活躍
本作の主要な女性キャラクターは、アナ・デ・アルマス演じるイザ。イザはデヴィッドの恋人であり、彼の道徳的コンパスとしての役割を果たします。デ・アルマスは、本作がハリウッドでのブレイク前夜の作品であり、限られた出番ながらも感情豊かな演技で観客を引きつけます。彼女の登場シーンは主にデヴィッドとの家庭生活や、彼の危険なビジネスに対する不安を表現する場面に集中しています。イザは物語の中心ではないものの、デヴィッドの決断に影響を与える重要な存在として描かれ、誠実さと優しさで映画に温かみを加えます。批評家はデ・アルマスの自然体な演技を称賛し、彼女の存在感が物語に深みを加えたと評価しています。
ただし、女性キャラクターの出番が少ない点は、一部の批評家から「ステレオタイプ的」と指摘されており、イザの背景や動機が十分に掘り下げられていないとの意見もあります。
女優の衣装・化粧・髪型
アナ・デ・アルマス演じるイザの衣装、化粧、髪型は、彼女のキャラクターが普通のマイアミ在住の女性であることを反映し、シンプルで現実的なデザインが採用されています。
衣装
イザの衣装は、2000年代半ばのマイアミの日常的なスタイルを反映。カジュアルなTシャツ、ジーンズ、または軽やかなワンピースが中心で、派手さは控えめです。彼女の衣装は、デヴィッドとの家庭生活や、経済的に不安定な状況を表現するもので、物語が進むにつれてやや疲弊した印象を与える服も登場。色調は柔らかいパステルやアースカラーで、彼女の穏やかな性格を強調しています。
化粧
イザのメイクはナチュラル志向で、過度な装飾を避けています。薄いファンデーション、控えめなアイメイク、淡いリップカラーが主で、マイアミの暑い気候に合った軽やかな印象。物語の後半、ストレスが増すシーンでは、メイクがさらに控えめになり、彼女の感情的な動揺を間接的に表現。
髪型
アナ・デ・アルマスの髪は、肩より少し長い自然なウェーブのスタイルで、普段はルーズに下ろすか、シンプルなポニーテールに。髪色はダークブラウンで、過度なスタイリングを避け、現実的な生活感を演出。シーンによっては、髪がやや乱れることで、彼女の不安や葛藤を視覚的に示しています。
これらの要素は、イザが派手な武器ビジネスの世界とは対照的な「普通の生活」を象徴するもので、観客に彼女の純粋さと物語の現実的な側面を印象づけます。衣装やメイクは、2000年代のアメリカの若者のライフスタイルを忠実に再現しつつ、彼女のキャラクター性を強調する役割を果たしています。
総括
「ウォー・ドッグス」は、若者の野心と無謀さが引き起こすスリリングな物語を通じて、戦争ビジネスの闇と資本主義の矛盾を描いた作品です。トッド・フィリップスの巧みな演出、ジョナ・ヒルとマイルズ・テラーのダイナミックな演技、アナ・デ・アルマスの心を掴む存在感が、映画に深みとエンターテインメント性を与えています。ブラックコメディと犯罪ドラマの融合は、観客に笑いと緊張を提供しつつ、倫理的ジレンマを考えさせます。ただし、女性キャラクターの描写の薄さや、物語の誇張が一部で批判される点は留意が必要です。全体として、現代の戦争とビジネスの交錯を風刺的に描いた、エネルギッシュで魅力的な映画です。
レビュー 作品の感想や女優への思い