『ワイルドシングス4』は、アンディ・ハースト監督、ジリアン・マーレイ、マーネット・パターソン、アシュレイ・パーカー・エンジェル、ジョン・シュナイダー主演の2010年公開のエロチック・スリラー映画。『 ワイルドシングス3』(2005年)の続編であり、「ワイルドシングス」シリーズの4作目にして最終作。2010年6月1日にDVDが発売されました。
フロリダ州ブルーベイを舞台に、シリーズ特有のエロティックな雰囲気、複雑な陰謀、どんでん返しのプロットを特徴としています。本作は、タイトルが示す通り「4人組」を中心に、欲望と裏切りが絡む物語を展開します。以下、あらすじ、感想、解説、キャスト、スタッフについて詳しくまとめます。
ワイルドシングス4
- 原題:wild things: foursome
- 公開年:2010年
- 製作国:米国
- 上映時間:91分
あらすじ
舞台はシリーズお馴染みのフロリダ州ブルーベイ。主人公は、20歳の裕福で傲慢なカーソン・ウィートリー(アシュリー・パーカー・エンジェル)。彼はNASCARレーサーの大富豪テッド・ウィートリー(キャメロン・ダッド)の息子で、1年前に母が死に、父がその死に関与したと疑っています。カーソンは父を憎み、遺産を巡る確執を抱えています。
物語は、カーソンがガールフレンドのレイチェル・トーマス(マーネット・パターソン)、彼女の友人ブランディ・コックス(ジリアン・マーレイ)、パーティで出会った地元の女性リンダ・ドブソン(ジェシー・ニクソン)と、挑発的な「4人での一夜」を過ごす場面から始まります。この夜の後、3人の女性がカーソンをレイプで告訴し、彼は逮捕されます。しかし、リンダは多額の示談金を受け取り告訴を取り下げ、レイチェルも告訴を撤回。ブランディだけが告訴を続け、カーソンの立場は不安定になります。
数日後、テッドがレース中の事故で死亡。事件を調査する刑事フランク・ウォーカー(ジョン・シュナイダー)は、事故に不審な点を見つけ、捜査を深めます。テッドの遺言では、カーソンが30歳になるか結婚するまで遺産を相続できないとされており、カーソンは急遽レイチェルと結婚。これにより遺産を手にしますが、彼らはリンダとブランディを排除し、財産を独占しようと画策します。
しかし、レイチェルとブランディは幼馴染で、実はカーソンを結婚させ殺害することで遺産を奪う計画を立てていました。カーソンとレイチェルはブランディを排除しようとしますが、ブランディも独自の策略を進め、レイチェルを裏切る準備をします。物語は、フロリダの沼地にあるモーテルや古い小屋での緊迫した対決を経て、誰もが互いを欺く複雑な陰謀が明らかに。ウォーカー刑事の追及により、レイチェルとブランディの過去や共謀が暴かれ、ブランディが隠し持つ証拠(テッドの車を細工したビデオや血まみれのブラウス)がレイチェルを陥れます。レイチェルは逮捕され、ブランディは自由の身に。
終盤、ウォーカーが実はブランディと共謀する汚職刑事だったことが判明しますが、ブランディは彼をも裏切り、海上で刺殺して遺体を海に捨てます。ブランディはカリブ海の島に逃亡し、テッドの弁護士ジョージ・スチューベン(イーサン・S・スミス)と合流。全ての裏切りを生き延び、遺産を手に入れたブランディが勝利者として物語を締めくくります。エンドロールでは、これまでのプロットの全貌が明かされ、シリーズらしい驚きの連続が提供されます。
感想
『ワイルドシングス4』は、シリーズの特徴であるエロティックな挑発と複雑なプロットを忠実に再現した作品です。冒頭の「4人組」のシーンは、シリーズの「過激さ」を象徴し、ジリアン・マーレイとマーネット・パターソンの魅力が際立ちます。フロリダのビーチや豪華な邸宅を背景にした映像は、シリーズの視覚的な華やかさを維持。エロティックなシーンは約32~35分に集中し、前作より長めに描かれており、ファンの期待に応えます。
ストーリー面では、シリーズの定番である「誰も信じられない」展開が健在で、レイチェル、ブランディ、カーソン、ウォーカーの四つ巴の裏切りは、終盤まで観客を翻弄します。特に、ブランディの冷酷な策略と最終的な勝利は、シリーズの「最後に笑うのは誰か」というテーマを体現。IMDbのユーザー評価(4.4/10)やRotten Tomatoesのレビューでは、「荒唐無稽だが楽しい」「初代には及ばないがB級としては悪くない」と、賛否両論ながら娯楽性は認められています。
個人的には、B級エロティック・スリラーとしての軽快な魅力は感じつつ、シリーズの繰り返し感が強い印象を受けました。プロットは前作と似通っており、キャラクターの動機や背景が薄く、感情移入が難しい点が惜しいです。カーソンの軽率な行動やレイチェルの単純な裏切りは、初代のサム・ロンバード(マット・ディロン)やケリー・ヴァン・ライアン(デニース・リチャーズ)の複雑さに比べると物足りません。ジョン・シュナイダーの刑事役は、ケヴィン・ベーコンの初代刑事役の狡猾さを彷彿とさせつつ、新たなひねりを加えており、シリーズのファンには見どころです。ただし、脚本の粗さや演技のムラ(特にカーソンのアシュリー・パーカー・エンジェルはやや平板)が目立ち、全体としては「気軽に楽しむB級映画」として割り切って観るのが最適だと感じました。
解説
『ワイルドシングス4』は、1998年の『ワイルドシングス』のカルト的な成功を受けて製作されたシリーズの最終作で、ブルーベイを舞台に遺産を巡る陰謀とエロティックなサスペンスを描きます。シリーズは、初代のストーリーやキャラクターとの直接的な繋がりを持たず、「ブルーベイ」「遺産争い」「挑発的なシーン」「どんでん返し」の要素で統一されています。本作は、タイトル通り「4人組」を強調し、前作の「3人」から人数を増やした点で差別化を図っていますが、プロットの基本構造は初代を踏襲しており、批評家からは「リメイクのよう」と評されることもあります。
監督のアンディ・ハーストは、『ワイルドシングス2』『ワイルドシングス3』の脚本を手掛けた人物で、シリーズのトーンを熟知。低予算ながら、フロリダの明るい風景と暗い室内の対比を活かし、エロティックなムードを構築しています。脚本はハワード・ゼムスキとモンティ・フェザーストンによるもので、複雑な裏切りを重ねつつ、エンドロールでの種明かしで全てを解明するシリーズの定型を守ります。しかし、プロットの穴やキャラクターの浅さが指摘されており、Rotten Tomatoesでは「チェesyで楽しいが、荒唐無稽」と評されています。
2000年代後半から2010年代初頭は、エロティック・スリラーの直販DVD市場が縮小しつつあった時期で、本作はシリーズの最後を飾る作品となりました。初代が1990年代のノワール的スリラー(『氷の微笑』や『危険な情事』)の影響を受けつつカルト的な人気を博したのに対し、続編群はB級映画の枠内でファン向けに製作された経緯があります。本作もその例に漏れず、ニッチな視聴者層に向けた「過激で軽快なエンターテインメント」として機能。テーマ的には、欲望、裏切り、階級差が中心で、レイチェルとブランディの幼馴染設定や貧困からの脱出願望は、初代のスージー・トーラー(ネーヴ・キャンベル)を彷彿とさせます。
文化的背景として、直販DVD市場の衰退や、現代の視聴者がストリーミングでより多様なコンテンツにアクセスできるようになったことで、シリーズのようなソフトコア・スリラーは時代遅れ感を帯びつつありました。それでも、シリーズの「ブランド」を活かし、限られた予算でファンサービスを提供した点は評価できます。IMDbのレビューでは、「初代の緊張感はないが、期待通りのエロティシズムとひねりがある」との声が多く、シリーズ完結作としての役割を果たしたと言えるでしょう。
キャスト
カーソン・ウィートリー(アシュリー・パーカー・エンジェル)
テッドの息子で、傲慢な富豪の御曹司。母の死を父のせいと疑う。エンジェルは元O-Townのメンバーとして知られ、本作では軽率だが魅力的な若者を演じる。演技は平板だが、役柄には合っている。
レイチェル・トーマス(マーネット・パターソン)
カーソンのガールフレンドで、ブランディと共謀する狡猾な女性。パターソンは『スターシップ・トゥルーパーズ3』などで知られ、セクシーかつ計算高い役を好演。シリーズの「危険な美女」の系譜に連なる。
ブランディ・コックス(ジリアン・マーレイ)
レイチェルの幼馴染で、物語の真の黒幕。マーレイは『キャビン・フィーバー3』に出演し、冷酷で魅力的な演技で物語を牽引。彼女の存在感が本作のハイライト。
フランク・ウォーカー(ジョン・シュナイダー)
テッドの死を追う刑事で、後に汚職が発覚。シュナイダーは『スモールヴィル』などで知られ、狡猾な役を説得力を持って演じる。初代のケヴィン・ベーコンを思わせる存在感。
リンダ・ドブソン(ジェシー・ニクソン)
パーティで出会う謎の女性。ニクソンは本作がほぼ唯一の主要出演作で、物語の序盤で退場するが、挑発的な印象を残す。
テッド・ウィートリー(キャメロン・ダッド)
カーソンの父でNASCARレーサー。ダッドは脇役ながら、富豪の威圧感を表現。
ジョージ・スチューベン(イーサン・S・スミス)
テッドの弁護士で、ブランディと繋がる。スミスは地味だが重要な役を演じる。
その他
マーク・マコーレイ(キャプテン・ブランチャード役)など、脇役がブルーベイの雰囲気を補強。
スタッフ
監督:アンディ・ハースト
『ワイルドシングス2』『3』の脚本家で、本作では監督を務める。シリーズのトーンを熟知し、低予算でエロティックなサスペンスを構築。演出は手堅いが、初代のジョン・マクノートンの緊張感には及ばない。
脚本:ハワード・ゼムスキ、モンティ・フェザーストン
シリーズの定型を守りつつ、4人組の要素を追加。プロットの複雑さは維持するが、穴や強引さが目立つ。
製作:マーク・ビエンストック、デヴィッド・カーシュナー
B級映画のプロデューサーとして、シリーズのブランドを活用し、ファン向けの作品を完成。
撮影:ジェフリー・D・スミス
フロリダのビーチや沼地のコントラストを活かし、エロティックなムードを強調。パーティやモーテルのシーンが視覚的ハイライト。
音楽:スティーヴン・M・スターン
サスペンスを盛り上げるスコアだが、初代のジョージ・S・クリントンほどのインパクトはない。
編集:トニー・シュマルツ
テンポの速い編集で、どんでん返しのリズムを維持。エンドロールの種明かしを効果的に演出。
まとめ
『ワイルドシングス4』は、エロティック・スリラー『ワイルドシングス』シリーズの最終作として、ブルーベイを舞台に遺産を巡る陰謀と「4人組」の挑発を描きます。あらすじは、カーソン、レイチェル、ブランディ、ウォーカーの裏切りが交錯するサスペンスで、感想としてはB級映画の軽快な魅力とシリーズの繰り返し感が共存。解説では、シリーズの位置付けやエロティック・スリラーの衰退を背景に、作品の意義を整理しました。ジリアン・マーレイとマーネット・パターソンの魅力、ジョン・シュナイダーの狡猾な演技、アンディ・ハーストの手堅い演出が、シリーズのファンに訴求。初代のカルト的な完成度には及ばないものの、B級エンターテインメントとして気軽に楽しめる作品です。シリーズの締めくくりとして、期待通りの過激さとひねりを提供しつつ、新たな挑戦には乏しかったと言えるでしょう。
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