『South Solitary』は、1928年のオーストラリアの孤島を舞台にしたロマンス映画。35歳の未婚女性メレディスが、叔父の灯台管理の補佐で島に到着。孤立と戦争の傷跡の中で、風変わりな住人たちとの関係や恋愛を通じて人間の絆を探る。監督はシャーリー・バレット。
基本情報
- 原題:South Solitary
- 公開年:2010年
- 製作国:オーストラリア
- 上映時間:121分
女優の活躍
『South Solitary』の主人公メレディス・アップルトンを演じたミランダ・オットーは、本作で卓越した演技力を発揮し、観客に深い印象を与えました。彼女は、孤独と過去の傷を抱えながらも希望を失わない35歳の女性を繊細に表現。メレディスの感情の揺れや、孤島での孤立感、ささやかな喜びや絶望を、抑制された演技で丁寧に描き出しました。特に、父親バリー・オットー演じる叔父ジョージとの緊張感ある関係性や、マートン・チョーカシュ演じるジャック・フリートとの控えめなロマンスでの微妙な表情の変化は、観客に強い共感を呼びます。レビューでは、彼女の演技が「共感を誘い、嫌味なくキャラクターを魅力的に見せる」と高く評価され、オーストラリア映画界を代表する女優の一人としての地位を再確認させました。
また、脇役としてエッシー・デイヴィスがアルマ・スタンリー役で出演。アルマの冷淡で現実的な性格を力強く演じ、メレディスとの対比を際立たせました。彼女の存在感は、島の閉鎖的なコミュニティの雰囲気を強調する重要な要素となっています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の時代設定は1920年代後半で、衣装デザイナーのエディ・クルツァーは、史実に基づいたリアルで控えめな衣装をデザインしました。メレディスの衣装は、彼女の質朴な性格と島の厳しい環境を反映し、手作り感のあるシンプルなドレスやスカートが中心。クローシェハットやウールのカーディガンなど、1920年代の女性らしい装いながら、華美さは控え、島の風や塩気を感じさせる実用的なデザインが採用されました。特に、ミランダ・オットーが編み物をしているシーンでは、彼女の不器用さを示すために、編み棒にコルクをつけるユニークなディテールが取り入れられ、時代感とキャラクターの個性を際立たせています。
化粧は最小限で、メレディスのナチュラルな美しさを強調。風にさらされた肌や、島の過酷な環境によるわずかな疲れを表現するため、薄いメイクで自然な赤みを加えました。髪型は、シンプルなアップスタイルやゆるいウェーブで、1920年代の流行を反映しつつ、島での生活に適した実用性を重視。エッシー・デイヴィスのアルマは、より厳格な印象を与えるタイトな髪型と、地味だが整った衣装で、彼女の厳しい性格を視覚的に表現しました。これらの衣装とヘアメイクは、物語の時代背景と孤島の孤立感を見事に調和させ、視覚的なリアリティを高めています。
あらすじ
1928年、メレディス・アップルトン(ミランダ・オットー)は、叔父ジョージ・ワズワース(バリー・オットー)と共に、オーストラリアの孤島「サウス・ソリタリー」に到着します。ジョージは、前任者の自殺を受けて新たな灯台管理者に任命された厳格な人物。メレディスは彼の補佐として島にやって来ますが、島の過酷な環境と孤立感に直面します。島には、助手灯台管理者のハリー・スタンリー(ローハン・ニコル)とその妻アルマ(エッシー・デイヴィス)、娘ネッティ(アニー・マーティン)、そして第一次世界大戦のトラウマを抱える孤立したジャック・フリート(マートン・チョーカシュ)が住んでいます。
メレディスは、ペットの子羊を連れて島に適応しようとしますが、ジョージの厳しい態度や、島の住人たちとのぎこちない関係に苦しみます。ハリーとの一時的な関係は、ネッティに目撃され、アルマと家族が島を去るきっかけに。ジョージも過労で心臓発作を起こし亡くなり、メレディスはジャックと二人きりに。嵐で島が孤立する中、彼女は灯台の操作や旗の信号を学び、ジャックとの間に信頼と微妙なロマンスが芽生えます。しかし、ジャックの戦争のトラウマが二人の関係を複雑にし、メレディスは島を去ることを決意。別れ際にジャックからの信号メッセージを受け取り、微笑みながら島を後にします。
解説
『South Solitary』は、シャーリー・バレット監督が孤立と人間関係の繊細さを描いた作品です。1920年代の灯台を舞台に、第一次世界大戦の影響や孤島の過酷な環境が、登場人物たちの心理に及ぼす影響を丁寧に探ります。物語は明確なプロットよりも、キャラクター間の関係性や感情の機微に重点を置き、孤独とつながりの必要性をテーマにしています。バレットは、実際の灯台記録やタスマニアの孤島(マーツイカー島など)の歴史を基に脚本を書き、孤立した環境での人間ドラマをリアルに再現。
映画は、風変わりなエピソードやユーモアを織り交ぜつつ、抑制された演出で感情の深さを描きます。メレディスの子羊や、飛ばない伝書鳩といった要素は、島の孤立感と住人たちの奇妙な適応を象徴。撮影はビクトリア州のケープ・ネルソンとケープ・オトウェイで行われ、荒々しい海岸線と灰色の空が、物語の孤独な雰囲気を強調します。批評家からは、ペースの遅さやプロットの薄さを指摘される一方、ミランダ・オットーの演技や視覚的な美しさ、独特の雰囲気は高く評価され、Rotten Tomatoesで71%の支持を得ました。オーストラリア映画の特徴である「内省的で人間味のある物語」として、観客に静かな感動を与える作品です。
キャスト
- ミランダ・オットー:メレディス・アップルトン(主人公、35歳の未婚女性)
- バリー・オットー:ジョージ・ワズワース(メレディスの叔父、厳格な灯台管理者)
- マートン・チョーカシュ:ジャック・フリート(戦争のトラウマを抱える助手灯台管理者)
- エッシー・デイヴィス:アルマ・スタンリー(ハリーの妻、冷淡な母親)
- ローハン・ニコル:ハリー・スタンリー(助手灯台管理者、メレディスと関係を持つ)
- アニー・マーティン:ネッティ・スタンリー(ハリーとアルマの娘)
- リーフ・アイルランド、ベンソン・アダムス:トムとロビー(スタンリー家の息子たち)
スタッフ
- 監督・脚本:シャーリー・バレット(『Love Serenade』で知られる)
- 製作:マリアン・マクガワン(『Two Hands』など)
- 撮影監督:アンナ・ハワード
- プロダクションデザイン:ポール・ヒース
- 衣装デザイン:エディ・クルツァー
- 音楽:メアリー・フィンステラー
- 編集:デニス・ハラツィス
まとめ
『South Solitary』は、孤島での人間関係と孤独を丁寧に描いたオーストラリア映画の佳作です。ミランダ・オットーの繊細な演技、時代を反映した衣装とヘアメイク、風光明媚かつ厳しいロケーションが、物語のテーマを深く支えています。抑制されたロマンスとユーモアが織りなす本作は、静かな感動を求める観客に特におすすめです。
レビュー 作品の感想や女優への思い