ディオール(フランス語: Dior)は、フランスを代表する高級ファッションブランドであり、正式名称は「クリスチャン・ディオール(Christian Dior SE)」です。1946年にクリスチャン・ディオールによって設立され、パリ8区モンテーニュ大通り30番地に本社を構えています。
現在は、世界最大のラグジュアリーコングロマリットであるLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトングループの傘下に属し、単独で株式上場(Euronext: CDI)を行っています。ディオールはオートクチュール(高級注文服)をはじめ、プレタポルテ(既製服)、バッグ、革製品、宝飾品、時計、コスメ、香水、ホームコレクションなど幅広い分野で展開し、ファッション業界のトップブランドとして君臨しています。特に「ディオール オートクチュール」「ディオール(ウィメンズ)」「ディオール メン」「ベビー ディオール」「ディオール メゾン」といったラインが知られています。ブランドの特徴は、エレガンスと革新性を融合させたデザインで、女性らしさや洗練された美しさを追求する姿勢が根幹にあります。
現状
2025年現在、ディオールは世界中で高い評価を受け、ファッション、コスメ、香水の分野で影響力を保持しています。レディース部門はマリア・グラツィア・キウリが2016年からクリエイティブ・ディレクターを務め、フェミニンかつ現代的なデザインで新たな客層を獲得しています。しかし、2025年5月にLVMHがキウリの退任を発表し、今後の方向性が注目されています。メンズ部門では、キム・ジョーンズが2018年から2025年までクリエイティブ・ディレクターを務め、ストリートウェアとラグジュアリーを融合させたスタイルで成功を収めました。2025年4月にはジョナサン・アンダーソンが後任に就任し、6月のパリ・メンズファッションウィークで初コレクションを発表予定です。ディオールはサステナビリティにも注力し、2030年までにガーデンやパートナーガーデンでのオーガニック栽培や再生型農業への移行、店舗のエコデザイン化を推進しています。LVMHの「LIFE 360プログラム」に基づき、環境負荷の低減や生物多様性の保全にも取り組んでいます。
歴史
ディオールの歴史は、クリスチャン・ディオール(1905年1月21日~1957年10月24日)によって1946年に始まりました。彼はフランス・ノルマンディー地方のグランヴィルで生まれ、幼少期に花や自然に親しんだ経験が後のデザインに影響を与えました。パリ政治学院で学びながら芸術に傾倒し、1928年に画廊を運営しましたが、世界恐慌で閉鎖。1938年からロベール・ピゲ、1941年からリュシアン・ルロンの下でデザイナーとしてのキャリアを積みました。1946年、繊維王マルセル・ブサックの支援を受け、パリに自身のメゾンを設立。翌1947年、初のコレクション「コロール(花冠)」を発表し、ハーパース・バザー編集長カーメル・スノウにより「ニュールック」と名付けられました。このコレクションは、細く絞ったウエストとフレアスカートが特徴で、戦後の簡素なファッションに革命をもたらしました。ニュールックは女性らしさを強調し、平和の象徴として世界中で受け入れられました。
ディオールは香水部門にも進出し、1948年に「ミス・ディオール」を発売。1953年には靴専門店を設立し、ロジェ・ヴィヴィエとのコラボレーションでシューズラインを展開しました。1957年、クリスチャン・ディオールは心臓発作で急逝しましたが、ブランドは後継者たちによって発展を続けました。以下は主な歴代クリエイティブ・ディレクターとその貢献です。
- イヴ・サンローラン(1957~1960)…21歳で主任デザイナーに就任。「トラペーズライン」を発表し、ディオールの女性らしい美学を継承しつつ、軽やかで着やすいデザインを提案。徴兵により退任後、自身のブランドを設立。
- マルク・ボアン(1960~1989)…保守的でエレガントな「スリム・ルック」を発表し、エリザベス・テーラーらが愛用。メンズライン「ディオール ムッシュ」や「ベビー ディオール」を立ち上げ、ブランドの基盤を強化。
- ジャンフランコ・フェレ(1989~1996)…イタリア人初の主任デザイナー。伝統と自身の建築的デザインを融合させ、成功を収めた。
- ジョン・ガリアーノ(1996~2011)…劇場的で大胆なデザインでブランドを再活性化。ダイアナ妃が愛用したドレスや「サドルバッグ」が代表作。2011年に不適切発言で解雇。
- ラフ・シモンズ(2012~2015)…ミニマルな美学で現代的なディオールを構築。初のクチュールショーは100万本の花に囲まれた会場で話題に。
- マリア・グラツィア・キウリ(2016~2025)…初の女性クリエイティブ・ディレクター。フェミニンで現代的なデザインで人気を博す。
- キム・ジョーンズ(2018~2025、ディオール メン)…ストリートウェアとラグジュアリーを融合。2025年にジョナサン・アンダーソンが後任に。
ディオールは日本とも深い関係を持ち、1953年に鐘紡や大丸とライセンス契約を締結し、日本人モデルを起用したショーを開催。日本の文化や浮世絵からインスピレーションを受けたコレクションも発表しています。
歴代グローバル・アンバサダー
ディオールのアンバサダーは、ブランドのイメージを体現する著名人として世界中で起用されています。アンバサダーは広告塔として、ファッション、ビューティー、ジュエリー、フレグランスなどの分野でブランドを代表します。以下は主なグローバルおよびジャパンアンバサダーです。
- ナタリー・ポートマン…2011年より「ミス・ディオール」の顔として活躍。『ブラック・スワン』で知られるハリウッド女優で、優雅なイメージがブランドにマッチ。
- アニャ・テイラー=ジョイ…2021年からディオールのミューズとして、2024年に「ルージュ・ディオール」のキャンペーンに登場。ギリシャ神話風のドレスで話題に。
- カーラ・デルヴィーニュ…「ディオール・アディクト」のアンバサダーとして、モダンで大胆なイメージを体現。
- シャーリーズ・セロン…オートクチュールにふさわしいエレガントな存在感で起用。
- ロバート・パティンソン…「ディオール・オム」のアンバサダーとして、メンズラインの新たな魅力を発信。
- ジョニー・デップ…「ソヴァージュ」フレグランスの顔として、男性的な魅力を表現。
- ジミン(BTS)…2023年にグローバルアンバサダーに就任。K-POPスターとして初の起用で、若年層への訴求を強化。
- ジス(BLACKPINK)…2021年にファッション&ビューティーのグローバルアンバサダーに。アジア圏での影響力が強い。
- セフン(EXO)、チャウヌ(ASTRO)…メンズラインのアンバサダーとして、アジア市場での人気を牽引。
- 中谷美紀…2022年からファインジュエリー&タイムピーシズのジャパンアンバサダー。芸術への造詣と美意識が評価。
- 北村匠海…2024年にジャパンアンバサダーに就任。メンズコレクションのビジュアルで注目。
- 八木莉可子…ジャパンのファッション&ファインジュエリーのアンバサダー。日本の美意識を体現。
- 新木優子、横浜流星…ジャパンアンバサダーとして、ファッションショーに出席し、クラシカルなスタイルで話題に。
- Cocomi…2020年にジャパンアンバサダーに就任。18歳での起用は大きな話題に。
- ラウール(Snow Man)…リップ製品のコラボレーションで参加。アンバサダーではないが、若年層に影響。
まとめ
ディオールは、クリスチャン・ディオールの「ニュールック」から始まり、戦後のファッション界に革命を起こしたブランドです。歴代のデザイナーたちがその美学を継承し、革新を加えることで、現代でもトップブランドとしての地位を維持しています。サステナビリティへの取り組みや、グローバルおよび地域のアンバサダー起用により、幅広い層に訴求。K-POPスターやハリウッド俳優を起用する戦略は、ブランドの現代性と普遍性を象徴しています。今後もジョナサン・アンダーソンの新体制や環境への配慮が、ディオールの新たな歴史を刻むでしょう。
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