『シドニー・ホールの失踪』は、若き作家シドニー・ホールの成功と転落を描くサスペンスドラマ。高校時代の小説がヒットするも、その内容が彼の人生を狂わせ、失踪へと導く。5年後、連続放火事件が彼の過去を暴く。
基本情報
- 邦題：シドニー・ホールの失踪
- 原題：Sidney Hall／The Vanishing of Sidney Hall
- 公開年：2017年
- 製作国：米国
- 上映時間：117分
見どころ
シドニーの青年時代、成人時代、作家時代、そして失踪後と、さまざまな時間軸が巧みに切り取られる。どこに真実が隠されているのかと、登場人物の言葉に聞き入ってしまう。
さまざまな時間軸に、子供の都合と大人の都合が重なり、図らずとも、素朴な青春時代がナタで切り落とされたような痛みを伴います。
あらすじ
シドニー・ホール（ローガン・ラーマン）は、高校時代に書いた小説が予想外のヒットを記録し、一躍有名作家となる。しかし、その作品の内容は賛否両論を呼び、読者だけでなくシドニー自身の人生にも深刻な影響を及ぼす。彼の書いた物語は「死」をテーマにした重い内容で、読者の解釈によって破滅的な影響を与えることもあった。シドニーはその影響力に耐えきれず、精神的に追い詰められていく。やがて彼は姿を消し、世間から完全に失踪する。
5年後、アメリカ各地の書店でシドニーの著作が燃やされる連続放火事件が発生。彼の過去と失踪の真相が徐々に明らかになる中、物語はシドニーの高校時代、作家としての絶頂期、そして失踪後の3つの時間軸を交錯させながら展開する。
彼の人生に関わる人々、とくに隣人の少女メロディ（エル・ファニング）との関係や、彼を支える人物たちの葛藤が描かれる。この映画は、若さゆえの脆さ、創作の影響力、そして人生の選択がもたらす結果を深く掘り下げる。
解説
『シドニー・ホールの失踪』は、ショーン・クリステンセン監督によるサスペンスドラマであり、文学的なテーマとエンターテインメント性を巧みに融合させた作品。物語は、3つの異なる時間軸（高校時代、作家としての成功期、失踪後）を交互に描く非線形な構成を採用しており、これが観客に緊張感と高揚感を与えます。
この構造は、シドニーの人生の全体像を徐々に明らかにし、彼の行動や選択の背景を深く掘り下げる役割を果たしています。特に、シドニーが書いた小説が引き起こす社会的影響や、彼自身の精神的な葛藤は、現代社会における創作と責任の関係を問うテーマとして重厚に描かれています。
映画のトーンは静かで内省的でありながら、ミステリー要素が物語を牽引し、観客を引き込む巧妙なバランスが特徴です。シドニーの苦悩や弱さは、若者が直面するプレッシャーや期待の重さを象徴しており、普遍的な共感を呼びます。また、映像美や音楽も作品の感情的な深みを増しており、とくにエル・ファニングの演技が物語の情感を高めています。
2017年1月25日、この映画はサンダンス映画祭でプレミア上映されました。商業的な劇場公開が限られたにも関わらず、批評家や観客から高い評価を受け、隠れた名作として語り継がれています。
女優の活躍
本作で最も注目すべき女優は、エル・ファニングが演じるメロディ。彼女はシドニーの隣人で、彼の人生に深い影響を与えるキャラクターとして登場します。エル・ファニングは、メロディの純粋さや脆さ、そしてシドニーへの深い愛情を見事に表現し、物語の感情的な核を担っています。彼女の演技は、シドニーの人生の明るい部分と暗い部分を映し出す鏡のような役割を果たし、彼とのロマンティックなシーンでは、観客に強い印象を与えます。エル・ファニングは、ディズニー映画『マレフィセント』や『ネオン・デーモン』での経験を活かし、若々しさと成熟さを兼ね備えた演技で、メロディを魅力的なキャラクターに仕上げています。彼女の存在感は、物語のファンタジックな要素と現実的な苦悩のバランスを取り、映画全体の完成度を高めています。
また、ミシェル・モナハンも重要な脇役として登場し、シドニーの人生に影響を与える大人の女性（母親ヴェロリア・ホール役）を演じています。彼女の落ち着いた演技は、シドニーの精神的な混乱との対比を際立たせ、物語に深みを加えています。
両女優の演技は、シドニーの人生の複雑さを映し出す上で欠かせない要素となっています。
女優の衣装・化粧・髪型
エル・ファニング演じるメロディの衣装は、彼女のキャラクターの純粋さと青春の雰囲気を反映しています。高校時代では、カジュアルなTシャツやジーンズ、軽やかなワンピースが中心で、明るい色合いが彼女の楽観的な性格を強調します。メイクはナチュラルで、ほとんど施さないか、薄いリップと軽いアイメイクで若々しさを表現。髪型は、ゆるいウェーブのかかったロングヘアや、シンプルなポニーテールで、少女らしさと親しみやすさを演出しています。これにより、メロディはシドニーの「日常の中の特別な存在」として際立ちます。
一方、ミシェル・モナハンの衣装は、大人っぽく洗練されたスタイルが特徴です。彼女はダークトーンのドレスやジャケットを着用し、落ち着いた大人の女性像を強調。メイクは控えめながら、シャープなアイラインや深みのあるリップカラーで、知性とミステリアスな魅力を表現しています。髪型は、きちんとまとめられたアップスタイルや、滑らかなストレートヘアで、彼女の落ち着いた雰囲気を補完しています。
これらの衣装やメイク、髪型は、キャラクターの個性や物語の時代背景（高校時代とその後）を明確に示す役割を果たし、視覚的な物語性を高めています。
キャスト
- シドニー・ホール：ローガン・ラーマン
- メロディ：エル・ファニング
- シドニーの母（ヴェロリア・ホール）：ミシェル・モナハン
- カイル・チャンドラー
- ブレイク・ジェナー
- ネイサン・レイン
- マーガレット・クアリー：シドニーの秘書
スタッフ
- 監督：ショーン・クリステンセン
- 脚本：ショーン・クリステンセン、ジェイソン・ドーラン
- 製作：ジョナサン・シュワルツ
- 音楽：ダレン・モラウスキー
- 撮影：ダニエル・カッツ
- 編集：サビーヌ・ホフマン
総括
『シドニー・ホールの失踪』は、若き作家の栄光と挫折を描いた心揺さぶる作品です。エル・ファニングとミシェル・モナハンの演技、時代を反映した衣装とメイク、そして非線形な物語構成が、シドニーの複雑な人生を鮮やかに描き出します。文学と現実の交錯、創作の責任をテーマにした本作は、深い余韻を残す一作です。U-NEXTでの配信を通じて、ぜひこの隠れた名作をご覧ください。
レビュー 作品の感想や女優への思い