イギリス(英国)は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国を正式名称にし、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから成る。首都はロンドン。議会制民主主義と立憲君主制を採用し、経済は金融やサービス業が中心。文化的に多様で、歴史ある文学、音楽、映画が世界に影響。人口約6700万人、英語が公用語。
時代別映画史
初期(1890年代~1920年代):映画の誕生とサイレント時代
イギリスの映画は、19世紀末に始まりました。写真技術の発展とともに、ウィリアム・フリーズ=グリーンらが初期の撮影装置を開発。1890年代には、短い記録映像や実験的フィルムが生まれました。1900年代に入ると、物語性のあるサイレント映画が登場。ロンドンやブライトンを拠点とする映画会社が活動を広げ、商業映画の基礎が築かれました。この時期、映画は主に劇場や見世物小屋で上映され、音楽の生演奏を伴うのが一般的でした。女性の活躍はまだ限定的でしたが、女優としてのキャリアを築き始めた人物もいました。
- 主な作品:『キッドナッピング・バイ・ゼップリン』(1902年)、『メアリー・ジェーンの災難』(1903年)。これらは短編で、コミカルな物語やトリック撮影が特徴。
- 主な女優:フローレンス・ターナー。アメリカでも活躍したサイレント映画の草分け的スターで、表情豊かな演技が人気。
1930年代~1940年代:トーキーの台頭と戦争の影響
1927年の『ジャズ・シンガー』(米国)がトーキー(音声付き映画)の先駆けとなり、イギリスでも1930年代に音声映画が主流に。ヒッチコックが『暗殺者の家』(1934年)や『三十九夜』(1935年)で国際的な評価を得ました。第二次世界大戦中はプロパガンダ映画も制作され、国民の士気高揚に貢献。戦後、ランク・オーガニゼーションが商業映画を量産し、娯楽性を重視した作品が増えました。女優たちは洗練された演技で映画の華となり、特に戦時中の作品で感情的な役割を担いました。
- 主な作品:『暗殺者の家』(1934年、監督:アルフレッド・ヒッチコック)、『逢びき』(1945年、監督:デヴィッド・リーン)。ヒッチコックのサスペンスは現代映画の原型に、リーンのロマンスは情感豊か。
- 主な女優:グリア・ガースン。『ミニヴァー夫人』(1942年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、戦時中の女性像を体現。
1950年代~1960年代:ヌーヴェルヴァーグとスウィンギング・ロンドン
戦後のイギリス映画は、リアリズムと革新性を追求。「キッチンシンク・リアリズム」と呼ばれる労働者階級を描いた作品群が登場し、『土曜の夜と日曜の朝』(1960年)が代表例です。1960年代は「スウィンギング・ロンドン」の時代で、ポップカルチャーと結びつき、ファッションや音楽が映画に影響。『007』シリーズや『アルフィー』(1966年)など、国際市場を意識した作品も増加。女優たちは現代的で自由奔放なイメージを打ち出し、世界的スターが誕生しました。
- 主な作品:『土曜の夜と日曜の朝』(1960年、監督:カレル・ライス)、『007 ドクター・ノオ』(1962年、監督:テレンス・ヤング)。リアリズムと娯楽性の両極が共存。
- 主な女優:ジュリー・クリスティ。『ダーリング』(1965年)でアカデミー賞受賞。モッズ文化を象徴する自由な女性像を表現。
1970年代~1980年代:多様化とヘリテージ映画の台頭
1970年代はハリウッドの影響を受けつつ、独自のジャンルが発展。ホラー映画ではハマー・プロダクションが『ドラキュラ』(1958年以降のシリーズ)を継続し、カルト的人気を博しました。1980年代には「ヘリテージ映画」が登場。歴史や文学を基にした荘厳な作品で、『炎のランナー』(1981年)や『眺めのいい部屋』(1985年)が国際的に評価されました。女優たちは古典的かつ知的な役柄で活躍し、英国文化の象徴として注目されました。
- 主な作品:『炎のランナー』(1981年、監督:ヒュー・ハドソン)、『ガンジー』(1982年、監督:リチャード・アッテンボロー)。歴史的テーマと壮大な映像が特徴。
- 主な女優:ヘレナ・ボナム=カーター。『眺めのいい部屋』(1985年)でデビューし、ヘリテージ映画のミューズとして活躍。
1990年代~2000年代:インディペンデントとグローバル化
1990年代はインディペンデント映画の隆盛期。『トレインスポッティング』(1996年)は若者文化とダークユーモアで世界的にヒット。『ハリー・ポッター』シリーズ(2001年~)はイギリス映画のグローバル化を象徴し、技術力とキャスティングの豪華さが話題に。女優たちは多様な役柄で活躍し、社会問題を扱った作品でも存在感を示しました。ケーブルテレビやデジタル技術の普及で、製作環境も変化しました。
- 主な作品:『トレインスポッティング』(1996年、監督:ダニー・ボイル)、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年、監督:クリス・コロンバス)。現代性とファンタジーの融合。
- 主な女優:ケイト・ウィンスレット。『タイタニック』(1997年)で世界的スターに。『愛を読むひと』(2008年)でアカデミー賞受賞。
2010年代~現在:多様性とストリーミング時代
2010年代以降、ストリーミングサービスの台頭でイギリス映画は新たな局面に。『キングスマン』(2014年)や『ダンケルク』(2017年)など、国際市場を意識した大作が続々登場。一方で、『アイ・トーニャ』(2017年)のようなインディペンデント作品も評価されました。多様性を重視する動きが強く、女性やマイノリティの視点が作品に反映。女優たちは社会派からアクションまで幅広い役で活躍しています。
- 主な作品:『ダンケルク』(2017年、監督:クリストファー・ノーラン)、『1917』(2019年、監督:サム・メンデス)。技術革新と戦争映画の新境地。
- 主な女優:マーゴット・ロビー。『アイ・トーニャ』(2017年)や『バービー』(2023年)で製作も兼任し、現代のマルチタレントとして注目。
総括
イギリス映画は、サイレント時代から現代まで、リアリズム、文学的伝統、ポップカルチャーを融合させながら進化しました。ヒッチコックやリーンの古典から、ボイルやノーランの現代作品まで、多様なジャンルで世界に影響。女優たちは各時代で文化的アイコンとして輝き、映画史に名を刻みました。今後もストリーミングや国際協力を背景に、イギリス映画は新たな可能性を追求し続けるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い