ノースダコタ州はアメリカ合衆国中北部に位置する農業とエネルギー産業の中心地です。広大な平原と厳しい気候が特徴で、人口約78万人、州都はビスマルクです。石油と小麦の生産が経済を支えます。出身女優にダコタ・ファニング、ケリー・マクギリス。
歴史
ノースダコタ州の歴史は、豊かな先住アメリカンの文化と開拓時代の物語に根ざしています。この地域には、数千年前からラコタ、ダコタ、マンダン、ヒダツァ、アリカラなどの先住部族が暮らしていました。彼らは狩猟や交易で生活を営み、特にマンダン族はミズーリ川沿いで農耕文化を発展させました。18世紀後半、ヨーロッパ人による探検が始まり、フランス人やイギリス人の毛皮交易業者がこの地を訪れました。1804年から1806年にかけて、ルイス・クラーク探検隊がこの地域を通過し、ミズーリ川流域の地図作成や先住部族との交流を行いました。この探検は、後の白人入植の道を開く重要な出来事でした。
19世紀中盤、米国政府は先住部族との条約を結び、土地を徐々に取得していきましたが、これにより多くの紛争が発生しました。特に1876年のリトルビッグホーンの戦いでは、ラコタ族のリーダー、シッティング・ブルがカスター将軍の部隊を破ったことで知られています。しかし、この勝利も一時的で、先住部族は徐々に保留地へと追いやられました。1880年代には鉄道の建設が進み、農民や移民がノースダコタに流入しました。1889年11月2日、ノースダコタはサウスダコタとともに合衆国39番目の州として認められました。
20世紀に入ると、農業が州経済の中心となり、小麦や大麦の生産が盛んになりました。1930年代の大恐慌とダストボウル（砂嵐災害）は農民に大きな打撃を与え、多くの人々が他州へ移住しました。第二次世界大戦後、農業技術の進歩や灌漑システムの導入により、生産性が向上しました。近年では、2000年代初頭のバケン油田の開発により、ノースダコタは石油・天然ガス産業の主要な州となり、経済が急成長しました。一方で、環境問題や労働力不足など、新たな課題も浮上しています。
芸術
ノースダコタ州の芸術は、先住アメリカンの伝統と開拓者文化の融合により独特の個性を持っています。先住部族の芸術は、ビーズ細工、羽根飾り、陶器、バスケット作りなどで知られ、特にラコタ族やマンダン族の工芸品は色彩豊かで象徴的なデザインが特徴です。これらの作品は、州内の博物館や文化イベントで展示され、観光客にも人気です。例えば、ビスマルクのノースダコタ州立博物館では、先住部族の工芸品や歴史的資料が豊富に収蔵されています。
近代の芸術シーンでは、ノースダコタの広大な風景や厳しい自然環境がインスピレーションの源となっています。ファーゴやグランドフォークスなどの都市では、地元アーティストによる絵画や彫刻がギャラリーで展示されています。特に、平原や農場の風景を描いたリアリズム絵画や、冬の厳しさを表現した抽象画が人気です。ノースダコタ大学には芸術学部があり、若手アーティストの育成にも力を入れています。また、毎年開催される「ファーゴ美術フェスティバル」では、地元作家の作品が集まり、音楽やパフォーマンスも楽しめます。
音楽面では、カントリーやフォーク音楽が根強い人気を誇ります。地元のバンドやシンガーソングライターが、農村生活や自然をテーマにした楽曲を披露することが多く、州内のフェスティバルでその演奏を耳にすることができます。近年では、インディーズ音楽シーンも成長し、ファーゴのライブハウスで若手ミュージシャンが活躍しています。
登場する映画
ノースダコタ州を舞台にした映画は、広大な風景や独特の雰囲気を活かした作品が特徴です。以下に代表的な作品を挙げます。
- LOGAN/ローガン（2017年）：未来の2029年、治癒能力を失い老いたウルヴァリンことローガンは、メキシコ国境近くで病に冒されたプロフェッサーXの世話に追われています。そんな中、遺伝子操作で生み出された少女ローラが現れ、彼女を守るため、ノースダコタ州のエデンへ向かう逃避行が始まります。追っ手から逃れながら、ローガンは自身の過去と向き合い、家族のような絆を再発見します。ヒュー・ジャックマン主演の感動的なアクション・ドラマです。
- すべてが変わった日（2020年）：1960年代のモンタナ州を舞台に、息子を失った老夫婦ジョージとダイアナが、孫のジェームズの幸せを案じ、再婚した息子の妻とその新たな夫の元へ向かいます。ノースダコタ州の荒涼とした土地で、夫婦は凶悪な一族と対峙し、家族の絆を懸けた壮絶な戦いに巻き込まれます。ケビン・コスナーとダイアン・レインの円熟した演技が光る、緊張感あふれるサイコスリラーです。
- モンスタートラック（2016年）：ノースダコタ州の石油掘削現場で暮らす高校生トリップは、怪我を負った謎の生物クリーチャーと出会い、それをモンスター・トラックに仕立て上げて走り回ります。クリーチャーの故郷を救うため、トリップは友人たちと共に企業に立ち向かいます。ルーカス・ティル主演の爽快なアドベンチャー・コメディで、迫力のアクションと友情の物語が楽しめます。
- ファーゴ（1996年）：ノースダコタ州ファーゴの自動車ディーラー、ジェリーは借金返済のため妻の偽装誘拐を企てますが、雇った犯罪者たちの失態で事態は泥沼化。妊娠中の警察官マージが事件を追う中、雪深い中西部の地でブラックユーモアと残酷な事件が交錯します。コーエン兄弟の傑作サスペンスで、ミネソタ訛りの会話と独特の緊張感が魅力です。
- ダコタ荒原（1945年）：鉄道王ジョン・ウェインは、ノースダコタ州の開拓地で土地を狙う悪徳実業家と対立します。幼馴染の女性記者を巡る恋愛と、鉄道建設をめぐる陰謀が絡み合い、西部開拓の荒々しい風景の中で正義の戦いが繰り広げられます。ジョン・ウェインの逞しい演技が光る、クラシックな西部劇です。
- ゴースト・ハウス（2007年）：シカゴからノースダコタ州の古い農家に移り住んだソロモン一家は、次第に家屋に潜む超自然的な存在に脅かされます。娘のジェスと息子のベンだけが幽霊の気配を感じ、家族の過去の秘密が明らかになる中、恐怖の連鎖が始まります。クリステン・スチュワート主演のサスペンスホラーで、静かな田舎の不気味さが際立ちます。
- 消えた声が、その名を呼ぶ（2014年）：1915年のオスマン・トルコでアルメニア人虐殺に遭い、声を失ったナザレットは、生き別れた娘を探して中東からアメリカへ渡ります。ノースダコタ州の荒野で新たな人生を模索する中、過去のトラウマと向き合い、希望を見出します。ファティ・アキン監督の史実に基づく感動的なロードムービーです。
これらの映画は、ノースダコタの厳しい冬や広大な平原を効果的に活用し、物語に深みを加えています。特に『ファーゴ』は、州のイメージを広く知らしめた作品として知られています。
出身女優
ノースダコタ州出身の女優は限られていますが、以下の人物が代表的な存在です。
- ダコタ・ファニング：1994年2月23日生まれ、ジョージア州コンヤーズ出身ですが、ノースダコタ州で育った時期があり、州との関わりが深い女優。7歳で『I am Sam アイ・アム・サム』（2001年）に出演し、最年少でスクリーン・アクターズ・ギルド賞にノミネートされました。『マン・オン・ファイア』（2004年）、『トワイライト・サーガ』（2009-2012年）など幅広いジャンルで活躍。妹のエル・ファニングも女優として知られています。
- シャンテル・アルバースはノースダコタ州のハノーバーにある牧場で生まれ育ちました。乗馬と演劇に情熱を注ぐ。映画『The 6th Friend』や『Two Sinners and a Mule』に出演し、舞台経験も豊富。
- レスリー・ビブ：1973年11月17日、ノースダコタ州ビスマークに生まれました。TV番組『Popular』のブローク・マックイーン役や『アイアンマン』のクリスティーン・エヴァーハート役で知られます。
- ケリー・マクギリス（Kellie McGillis）：1957年7月9日生まれ、ノースダコタ州グランドフォークス出身。1980年代のハリウッドで活躍し、『トップガン』（1986年）でトム・クルーズの相手役チャーリーとして一躍有名に。その後も『刑事ジョン・ブック/目撃者』（1985年）や『告発の行方』（1988年）で高い評価を受けました。舞台女優としても活動し、近年はテレビやインディーズ映画にも出演しています。
ノースダコタ州出身の女優は多くありませんが、ケリー・マクギリスとダコタ・ファニングはハリウッドで確かな足跡を残しています。特にダコタ・ファニングは、子役から大人の女優へと見事に転身し、多彩な役柄を演じています。
まとめ
ノースダコタ州は、農業とエネルギー産業に支えられた中北部の州であり、先住部族の文化と開拓者精神が息づく歴史を持っています。芸術では、伝統工芸や風景画、カントリー音楽が特徴的で、映画では『ファーゴ』をはじめとする作品が州の厳しい自然を活かしています。出身女優としては、ケリー・マクギリスやダコタ・ファニングが活躍し、州の名をハリウッドに広めました。この州の魅力は、その静かな美しさと力強い歴史にあります。
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