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劇場映画

欲望

「見どころ」にPR表現を含みます。
ミケランジェロ・アントニオーニ監督による、不条理世界の粋を極めた問題作。
『欲望』は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督、アントニオーニ、トニーノ・グエラ、エドワード・ボンドの共同脚本、カルロ・ポンティの製作による1966年の心理ミステリー映画。アントニオーニにとって初の完全英語作品であり、主演はデヴィッド・ヘミングス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、サラ・マイルズ。モデルのヴェルーシュカ・フォン・レンドルフが本人役で出演し、ジェーン・バーキンは映画初出演。映画のノンジジェティック音楽はアメリカのジャズピアニスト、ハービー・ハンコックが担当し、イギリスのロックグループ、ヤードバーズが「Stroll On」を演奏。撮影監督はカルロ・ディ・パルマ。
『欲望』のあらすじは、アルゼンチン出身のフランス人作家フリオ・コルタサルの1959年の短編小説『Las babas del diablo』にインスパイアされたもので、後に映画と連動させるために『Blow-Up』と改題されました。スウィンギング・ロンドンの現代的なモッズ・サブカルチャーを舞台に、知らず知らずのうちに殺人事件をフィルムに収めたと思い込むファッション・フォトグラファー(ヘミングス)を描いています。
1967年のカンヌ国際映画祭のメインコンペティションで、『欲望』は同映画祭最高の栄誉であるパルムドールを受賞。露骨な性的描写を含むカウンターカルチャー時代の本作の米国公開は、ハリウッドのプロダクション・コードを無視したものであり、その後の批評的・商業的成功は、1968年のMPAA映画レーティング・システムによるコードの廃止に影響を与えました。第39回アカデミー賞では、監督賞と脚本賞にノミネートされ、BAFTA賞では優秀英国映画賞を含む3部門にノミネートされました。
『欲望』は、フランシス・フォード・コッポラの『カンバセーション…盗聴…』(1974年)やブライアン・デ・パルマの『ミッドナイトクロス』(1981年)など、その後の映画にも影響を与えています。2012年には「Sight and Sound」誌の批評家による史上最高の映画の投票で144位、監督投票では59位にランクインしました。
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欲望

  • 原題:BLOW-UP
  • 公開年:1966年
  • 製作国:英国、イタリア
  • 上映時間:111分
  • 撮影地:英国ロンドン市内各地
  • 撮影期間:1966年5月3日~1966年8月
  • ジャンル:ドラマ
  • 視聴:U-next
  • 公式サイト:criterion.com

予告編はこちら。

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見どころ

写真に写っていたものの真相をめぐるサスペンスフルな展開から、次第に不条理な描写が連続していくさまは想像力を刺激される。スタイリッシュな映像美の数々は必見。

あらすじ

人気写真家のトーマスは、公園で逢い引きをする男女を撮影。写真を撮られたことに気づいた女性がネガを譲ってくれと迫ってきて、彼は別のネガを渡して追い払います。逢い引きのネガを現像したところ、逢い引きをしていた男の死体らしきものが写っていました。

ファム・ファタル

ヴァネッサ・レッドグレイヴにとって『欲望』は見るのと同じくらい聴くことに重きを置いた映画でした。自伝の中で、この映画について彼女はこう語っています。

..ミケランジェロの耳は、台詞のためではなく、自然の音や普段は無生物である物に対するものだった。本質と現象の統一と差異、客観的に存在するものと、個人が見たり聞いたり把握したりするものとの対立について描いていた。

ヴァネッサ・レッドグレイヴは、役作りのためにダブルワークをこなさなければなりませんでした。彼女は日中にロンドンでミケランジェロ・アントニオーニと撮影をしながら、同時に舞台『The Prime of Miss Jean Brodie』のタイトルロールで毎晩、さらに週に2回のマチネにも出演。過酷なスケジュールにもかかわらず、ヴァネッサはアントニオーニとの仕事にやりがいを感じていました。

1991年の自伝で彼女は語っています。

ミケランジェロとは、カメラのアングル、その動き、フレーム、その色、位置、動き、それが人間であれ無生物であれ、彼の物語を語っていた。台詞は大きな意味を持たなかったし、二の次だった。 ダンサーとして訓練された私は、このことを理解することができた。 私は周りの形や色を鋭く正確に見ることを学んだ。 正確な位置、体の角度、頭や肩、正確な動きのテンポは、彼にとって不可欠なものだった。 私は映画でそのような眼に出会ったことはなかった。 イギリス映画やアメリカ映画では、色や形は装飾の一部であり、適切ではあったが、アクションの背景でしかなかった。 ミケランジェロの映画では、それらはアクションだった。

この映画に出演したモデルの一人、ジル・ケニントンによれば、トーマスとファッション・アイコンのヴェルーシュカとの有名な場面は、彼が彼女の写真を撮りながら官能的な熱狂に鞭打つもので、かなり本格的なものだったそうです。2011年、彼女が『ヴァニティ・フェア』誌に語ったことによると、

『欲望』のあの場面は、純粋なコーワン(ジョン・コーワン)だった。アントニオーニ監督は彼の仕事ぶりを見ていたに違いない。三脚などに邪魔されることなく、完全に流れるように、床から下に向かって撮影するのは、典型的なコーワン。

『欲望』: “I am in Paris”

感想:写真は真実を語るのか?

映画『欲望』は、20歳の新進気鋭のカメラマンの日常にターゲットを絞り、1960年代ロンドンのポップカルチャーをとても暗く撮した作品。半ば冗談ですが、この作品のなかで輝いていた唯一の場面はヴァネッサ・レッドグレイヴの背中だけではないでしょうか!?

ファッション雑誌の写真撮影ではピエール・カルダンやアンドレ・クレージュを思わせる60年代 ファッションを着たモデルがたくさん出てきて、観ている分には楽しいものです。

しかし、主人公のカメラマンがモデルに対して接する立場は超越的で傲慢そのものだし、ジミー・ペイジとジェフ・ベックがダブル・ギタリストとして活躍した頃のヤードバーズのライブも後半に挿入されていますが、ライブ会場から一歩外へ出れば、それまでの熱狂が冷めるものとして挿入されているに過ぎません。もっとも、ジミー・ペイジが楽しそうにギターを弾いている傍らで、ジェフ・ベックが調子の悪いアンプにギターをぶつけて壊してしまう場面があり、その後の彼らを予言しているような貴重な映像も出てきますが。

『欲望』(1966年)ヤードバーズ – ジミー・ペイジ & ジェフ・ベック

アントニオーニの商業映画として知られるこの映画は、他の作品に比べてワンシーンの時間が短くなっていて批判の的となったようです。しかし、当時のロンドンの若者文化を象徴する場面がいくつも出てくるのに、いずれも陰鬱なイメージとして描かれているので、単に商業映画として片づけるのは勿体ないです。

この作品は当時のロンドンでは発禁まがいの経緯をもっています。ドラッグ・パーティの場面あり、3P一歩手前の場面あり…。

でも映画のメッセージはそういう破廉恥な部分にあるのではなく、カメラマンが現像した写真が映し出す物、そして写真がなくなった場合に果たして言葉で説明することは可能か、あるいは、真実を伝えることができるのか、という問題を繰り返し提出しています。

この映画の良い点は「映像と言語」の関係、つまり映像は真実を語るかに似た問題として、写真が真実を語るのかを問題提起した点にあります。ジャン=リュック・ゴダールの『彼女について私が知っている二、三の事柄』を思わせます。

映画の前半は、ファッション・モデルやモデル志望の女の子に対するカメラマンの傍若無人な態度が執拗に繰り返されますが、偶然殺人事件を撮影していたことを知った瞬間から後半に移り、写真と真実との関係が語られ始めます。そして、写真が撮しだすイメージが「全てのこと」を語っている反面で、「真実」を語っていることにはならないというアントニオーニ独自の判定が下されます。

彼によれば、真実とは見せかけ(仮象)の下に存在し、その下にはさらなる真実が存在します。そして、どんどん深く真実は潜っていきますが、結局のところ、それまでの真実が描ききられ分析された後に最終的な真実が出されるので、この映画は抽象絵画のような位置を占めています。

アントニオーニは、写真がどこまで真実を語るかという問題だけでなく、その写真が失われたとき、どれほど真実というものは信用されるのだろうかという問題をぶつけてきますが、それに対する答はとても難しく、この映画でも、明快な解答は避けられています。

イギリス映画だからか、1960年代だからか、つい、先述のとおりフランス映画のジャン=リュック・ゴダール『彼女について私が知っている二、三の事柄』という長ったらしい作品を思い出します。とくにロンドン市街のマンション建設ラッシュの映像が出てきて、ゴダールの映画と似ている点。アントニオーニの『欲望』が1967年のイギリス・イタリア合作映画で、ジャン=リュック・ゴダールの『彼女について私が知っている二、三の事柄』が1966年のフランス・イタリア合作映画。いずれもイタリアを噛ましているのは、なにか予想外の意味があるのかな。

1960年代ポップ・カルチャーを示すといわれる本作ですが、60年代の軽快さも退廃も、また女性の写し方や女性の化粧も、ゴダールの作品に分があります。もっとも、本作は、デヴィッド・ベイリーを模型とする有名な男性カメラマンが男尊女卑的に女性モデルたちに接するのが一つの柱となっており、女性に焦点を当てられることが無いので仕方がないかもしれません。といっても、次の場面のように撮影現場がたびたび登場してきて、当時の衣装がよく分かって楽しいことも確か。

一番手前の女性のジャケットは2色で対照性を際立たせています。この配色と帽子の2つの丸(ゴーグル風)からアンドレ・クレージュを模したように思えます(ズボンなのでアンドレ・クレージュじゃないとも言えますが)。映画の前半に出てくるヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフは1960年代にツィギーのライバルとされていたようです(アントニオ・マンチネッリ『ファッション・ボックス』292頁)。

私としては有名すぎる彼女の場面よりも、やはり後半の色とりどりの衣装が出てくる方が軽快に感じます。

解説

1960年代のロンドン。トーマスは熱心で傲慢な有名カメラマン。暴力をテーマにした写真を撮るため、ホームレス・シェルターを出たばかりの彼は、ロールス・ロイスを運転してスタジオへ向かいます。彼は公園へ行き、無造作に写真を撮り始めます。若い女性と老人が一緒に写っている写真を撮り、女性がネガを取り出そうとします。その女性は彼のスタジオまでついてきて、ネガを手に入れようとし、ネガのためにセックスまで持ちかけますが、彼は別のネガを渡します。彼は夢中になって、その女性が写真に興味をもつ理由を理解しようとします。そして彼はネガを取り出し、細部を拡大したところ、公園で死体のようなものを見つけてしまいます…。

アントニオーニ監督の1966年の映画『欲望』の一節。トーマスが殺人未遂の可能性に関する証拠と思われるものを見つける場面。

製作

インスピレーションと影響

『欲望』のあらすじは、アルゼンチン出身のフランス人作家フリオ・コルタサルの1959年の短編小説「Las babas del diablo」(『End of the Game and Other Stories』所収)にインスパイアされたもので、写真家セルヒオ・ララインがコルタサルに語った話が元になっています。その後、この短編小説は映画と関連付けるために『Blow-Up』と改題されました。

キャスティング

主人公役にはショーン・コネリー(アントニオーニが脚本を見せることを拒否したため辞退)、デヴィッド・ベイリー、テレンス・スタンプなど数名がオファーされましたが、アントニオーニがディラン・トマスの『皮革貿易の冒険』の舞台でデヴィッド・ヘミングスを見たため、撮影開始直前に交代しました。ジェーン・バーキンは金髪の少女役で映画デビュー。

ロケ地

英国イングランド、ロンドンにて。詳しくみますと次のとおりです。

  • マリオン・パーク(チャールトン、ウールウィッチ・ロード)…トーマスが初めてジェーンを撮影するシーンと、最後にパントマイムアーティストがテニスをする場面
  • コンソート通り&ホールドロン・ストリート(ペッカム)…トーマスが、ナショナル・アシスタンス・ボード・カンバーウェル・レセプション・センターを出る際に落ちぶれた人々に交じっていた鉄道アーチ(現在はホールドロン・ストリート)
  • ストックウェル通り(ブリクストン、ランベス)…車に乗ったトーマスがプライドとクラーク・サイ・バイクのビルの間を通過
  • エル・ブラソン・レストラン(イギリス、ロンドン、チェルシー、ブラックランズ・テラス8-9番地)…トーマスがロンに写真集を見せる場所
  • クレヴェリー・クローズ(グリニッジ)…アンティークショップ
  • エコノミスト・プラザ(セント・ジェームズ・ストリート25番地)…映画の冒頭でパントマイムが登場する場所
  • MGMブリティッシュ・スタジオ(ボアハムウッド、ハートフォードシャー)…リッキー・ティック・クラブの場面
  • リージェント・ストリート…外観
  • ポッタリー・レーン77番地(ノッティング・ヒル)…トーマスのスタジオ
  • タマール・ストリート&ウリッジ通り(ウリッジ)…トーマスはウリッジ・ロードの標識がある青い家を通過(カメラはタマール・ストリートをパンアップし、建設中の建物は2019年に取り壊し)
  • ストックウェル・ロード144番地…トーマスはプライドとクラークのビルの間にあるニュー・クイーンズ・ヘッド・パブを通過
  • アルバート劇場(ウェストミンスター、ビクトリア・ストリート52番地)…トーマスは平和を求めるデモ隊に遭遇
  • ニュー・バーリントン・ミュー51番地…ジェーンのためにヘドン通りを見下ろした後、トーマスはクラブの入り口を探してミューズに入店
  • バーカーテックス・ハウス(メイフェア、オックスフォード・ストリート309番地)…リッキー・ティックを出て、ギターのネックを落とすトーマス

キャスト

  • デヴィッド・ヘミングス(トーマス役)
  • ヴァネッサ・レッドグレイヴ(ジェーン役)
  • サラ・マイルズ(パトリシア役)
  • ジョン・キャッスル(ビル役)
  • ジェーン・バーキン(ブロンド少女役)
  • ジリアン・ヒルズ(ブルネット少女役)
  • ピーター・ボウルズ(トーマスのエージェント、ロン役)
  • ヴェルーシュカ・フォン・レンドルフ(本人役)
  • ジュリアン・シャグリンとクロード・シャグリン(パントマイム役)
  • ツァイ・チン(トーマスの受付嬢役)
  • スーザン・ブロドリック(古美術商役)
  • ローナン・オケイシー(ジェーンの恋人/公園の被害者役)

ほかに、ジル・ケニントン、ペギー・モフィット、ドニェール・ルナがトーマスのモデルとして出演。ヤードバーズ(ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、クリス・ドレジャ、ジム・マッカーティ、キース・レルフ)が本人役で出演。

ピアーズ・ゴウとジャネット・ストリート=ポーターは、ナイトクラブのシークエンスにクレジットされていないエキストラとして出演。原作短編の作者フリオ・コルタサルがホームレス役でカメオ出演。実在の写真家レジ・ウィルキンスは、トーマスのキャラクターにインスピレーションを与えた人物の一人で、彼のアシスタントとして登場。

なむ

洋画好き(字幕派)。だいたいU-NEXTかNetflixで、妻と2匹の猫と一緒にサスペンスやスリラーを観ています。詳細は名前をクリックしてください。猫ブログ「碧眼のルル」も運営。

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