ロンドン音楽演劇アカデミー(London academy of music & dramatic art/LAMDA)は、1861年に設立された英国最古の専門演劇学校で、ハマースミスに位置します。演劇、舞台管理、技術芸術の職業訓練を提供し、卒業生はロイヤル・ナショナル・セカンダリー・シアターやハリウッドで活躍。2025年1月よりニューヨークに拡張。学生数は約300名、世界ランキングでトップクラス。出身女優にキーラ・ナイトレイ、キム・キャトラル、ジニファー・グッドウィン、アミー・アーヴィング、リタ・ウィルソン、ルース・ウィルソンたち。
歴史
ロンドン音楽演劇アカデミー(LAMDA)の歴史は、1861年に遡ります。この年、作曲家で指揮者のヘンリー・ワイルド氏によって、セント・ジェームズ・ホールにロンドン音楽アカデミーとして設立されました。開校式は11月15日に行われ、男性用と女性用の別々のセクションを設け、才能ある生徒を対象に授業を開始しました。当時の年間授業料は15ギニ―(約15ポンド15シリング)で、全額奨学金も提供され、多様な背景を持つ生徒が集いました。初のフィラーモニック・コンサートは1863年4月29日に開催され、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」が演奏されるなど、早期から高い評価を得ました。
当初は音楽教育に重点を置き、ピアノ、ヴァイオリン、声楽などの訓練を行いましたが、すぐに話し言葉の英語教育を核とするようになりました。1880年代に入り、一般向けのスピーチ試験を開始し、これが発展して英国最大のスピーチ・アンド・ドラマ試験機関となりました。1904年には、ロンドン音楽学校(1865年設立)とフォレスト・ゲート音楽学校(1885年設立、後にメトロポリタン・アカデミー・オブ・ミュージックと改称)を吸収合併し、規模を拡大しました。ただし、メトロポリタン・アカデミーは1907年に分離。ハンプステッド・アカデミーも後に統合されました。
1935年、ウィルフリッド・ファウリス氏の指揮の下、学校名を現在のロンドン音楽演劇アカデミーに変更し、演劇教育を強化しました。第二次世界大戦中の1939年、ロンドンから地方へ疎開し、1945年に再開校しましたが、音楽訓練は廃止されました。それでも、歌唱は俳優訓練の不可欠な要素として残り、2023年には新たにMFAミュージカル・シアター・プログラムを導入しています。戦後、学校は演劇専門のコンセルヴァトワールとして発展を続けました。
2004年、ダンス・アンド・ドラマ・コンセルヴァトワールに準会員として加盟し、学生局からの資金援助を受けました。しかし、2019年7月31日に独立機関となり、現在は学生局および研究イングランドから直接資金を得ています。LAMDAは、英国のエリート音楽・演劇学校連合であるコンセルヴァトワールズUKのメンバーでもあります。2021年8月、当時のサラ・フランコム校長が管理スタイルに関する苦情により退任し、後任として2022年8月にマーク・オトーマス教授が校長兼最高責任者に任命されました。
施設面では、2003年にハマースミス、タルガース・ロードの現キャンパスに移転し、旧ロイヤル・バレエ・スクールの建物を取得しました。ナイアル・マクラフリン建築家による設計で、セインズベリー・シアター、カーネ・スタジオ・シアター、リンバリー・スタジオを含む3つの劇場、排練室、会議室を備えています。2025年1月には、A.R.T.ニューヨークとの提携により、マンハッタンに米国俳優向けスタジオ訓練を拡張し、国際的な影響力をさらに高めました。このような歩みを経て、LAMDAは160年以上の伝統を活かし、現代の創造性を育む名門校として位置づけられています。
教育
ロンドン音楽演劇アカデミー(LAMDA)は、演劇、監督、プロダクション・技術芸術の分野で最高水準の職業訓練を提供しています。入学はオーディション中心で、学歴よりも情熱と才能を重視し、競争率は極めて高く、限られたクラスサイズで個別指導を行います。学部・大学院レベルのコースを中心に、短期コースも充実しており、卒業生の就職率は特に舞台管理・技術分野で卒業後数週間以内に高い水準を達成しています。
演劇プログラムでは、3年間のBA(Hons)in Actingで古典から現代演劇までをカバーし、シェイクスピアの訓練を重視。1年間のMFA in Classical Actingは、古典演劇の専門家養成に特化し、米国からのフルブライト奨学生も受け入れています。2023年に導入された2年間のMFA in Musical Theatreは、歌唱、ダンス、演技の統合訓練を提供し、ミュージカル界への進出を支援します。また、2年間のPGDip in Actingは、学位保有者やプロ経験者向けの高度コースです。
監督・創作プログラムは、1年間のMA in Theatre Directingで、テキスト分析からキャスティング、プロダクション管理までを学び、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーとの提携で実践機会を確保。技術芸術では、3年間のBA(Hons)in Production and Technical Artsで、照明、音響、舞台管理、衣装デザインを専門とし、業界標準の設備で訓練します。大学院のMFA in Theatre Productionは、創造的リーダーシップを養います。
外部向けには、スピーチ、演劇、ミュージカル・シアター、コミュニケーション、パフォーマンスのLAMDA試験を提供し、Ofqual認定でUCASタリフに組み込まれています。これらは世界中の生徒が受験可能で、導入級からメダル級まで多層的です。若手向け短期コースやマスタークラス、シェイクスピア・サマー・ワークショップも開催され、プロの指導者から学ぶ機会を提供します。
施設は、セインズベリー・シアター(メイン公演用)、カーネ・スタジオ・シアター、リンバリー・スタジオの3劇場、10以上の排練スタジオ、スクリーン・オーディオ・スイート、図書館を備え、2017年の2,820万ポンド拡張でさらに強化されました。奨学金・バーザリー制度により、経済的障壁を除去し、多様な生徒を支援。LAMDAの教育は、創造性と実践スキルを融合させ、卒業生がロイヤル・ナショナル・シアター、BBC、ブロードウェイ、MCUなどで活躍する基盤を築きます。2025年のニューヨーク拡張により、米国俳優向け週末インテンシブ・コースも開始され、グローバルな教育ネットワークを拡大しています。
出身女優
ロンドン音楽演劇アカデミー(LAMDA)は、数多くの傑出した女優を輩出しており、これらの卒業生は舞台、映画、テレビで国際的に活躍し、学校の教育の卓越性を体現しています。以下に主な出身女優を挙げ、各々の経歴を丁寧に紹介します。
- サマンサ・ロビンソン:1991年生まれ。2016年の映画『ラブ・ウィッチ』で主演し有名に。
- キーラ・ナイトレイ:1990年生まれ、LAMDA短期コース受講。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのエリザベス・スワン役で世界的に有名に。『プライドと偏見』(2005)でアカデミー賞助演女優賞ノミネート。LAMDAの古典演劇訓練が、洗練された演技を支えています。
- エロディ・ユン:1981年生まれ。在学中に舞台や短編映画に出演しながら演技の技術を磨きました。
- マイアンナ・バーリング:1979年生まれ。2004年にLAMDAを卒業。
- フランチェスカ・トゥ:1943年生まれ。1966年、21歳の誕生日にBBCのオーディションを受け、すぐにTVドラマの仕事をオファーされました。
- キム・キャトラル:1956年生まれ、LAMDA卒業。『セックス・アンド・ザ・シティ』のサマンサ・ジョーンズ役でゴールデングローブ賞受賞。『ビッグ・トラブル・イン・リトル・チャイナ』など映画でも活躍。LAMDAでの多様な役柄訓練が、ユーモアと深みを加えました。
- ジニファー・グッドウィン:1978年生まれ、LAMDA卒業。『ビッグ・ラブ』や『ワンス・アポン・ア・タイム』のスノー・ホワイト役で知られる。ディズニー映画『ズートピア』のジュディ役声優。LAMDAの声と身体表現が、魅力的なキャラクター造形に寄与。
- アミー・アーヴィング(Amy Irving):1953年生まれ、LAMDA卒業。『キャリー』(1976)や『ヤング・フランケンシュタイン』でブレイク。アカデミー賞ノミネート複数。LAMDAのクラシック訓練が、舞台・スクリーン両面のキャリアを支えています。
- リタ・ウィルソン(Rita Wilson):1956年生まれ、LAMDA卒業。トム・ハンクス夫人としても知られ、『スリーパーズ』や『ラ・ラ・ランド』に出演。プロデューサーとしても活躍。LAMDAでの演技基礎が、成熟した表現力を養いました。
- ルース・ウィルソン(Ruth Wilson):1982年生まれ、LAMDA卒業。『The Affair』でゴールデングローブ賞受賞、『His Dark Materials』主演。LAMDAの感情表現訓練が、複雑な役柄を可能に。
- ナターシャ・メクニホーン(Natascha McElhone):1971年生まれ、LAMDA卒業。『ロナルド・フィッシャー』や『カリフォルニアケーション』で注目。LAMDAのシェイクスピア教育が、知的演技を特徴づけています。
- ダイアナ・ドース(Diana Dors):1931年生まれ、LAMDA卒業。1950年代の英国セックスシンボル、『ディープ・エンド』主演。LAMDAの初期訓練が、魅力的なスクリーン・プレゼンスを築きました。
- ハリエット・ウォルター(Harriet Walter):1950年生まれ、LAMDA卒業。『ダウントン・アビー』やロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで活躍。LAMDAの古典劇専門が、権威あるキャリアを支えています。
- アンナ・チャンセラー(Anna Chancellor):1965年生まれ、LAMDA卒業。『スパークス』や『フォー・ウェディング・アンド・ア・フュネラル』で知られる。LAMDAのウィットに富んだ演技が、コメディからドラマまで対応。
- ルース・ネガ(Ruth Negga):1982年生まれ、LAMDA卒業。『Preacher』やアカデミー賞ノミネート『Loving』で評価。LAMDAの多文化アプローチが、力強い存在感を生み出しました。
- ジャネット・スズマン(Janet Suzman):1939年生まれ、LAMDA卒業。シェイクスピア劇の第一人者、『オセロ』で国際賞受賞。LAMDAの伝統が、生涯の舞台業績を支えています。
これらの女優たちは、LAMDAの厳格な訓練を通じて得た技術と創造性を活かし、エンターテイメント界に多大な貢献をしています。学校は、彼女たちの成功を誇りに、多様な表現を奨励しています。
出身女性アスリート
ロンドン音楽演劇アカデミー(LAMDA)は、主に演劇教育を専門としていますが、卒業生の中にはスポーツ分野で活躍する女性もいます。身体表現や精神集中の訓練が、アスリートのメンタル強化やパフォーマンス向上に寄与する事例が見られます。以下に主な出身女性アスリートを挙げ、各々の経歴を丁寧に紹介します。
- エマ・トンプソン(Emma Thompson, 演劇的要素を含むが、フィットネス・アドヴォケート):LAMDA卒業。女優として有名ですが、慈善活動でスポーツ支援。LAMDAの身体訓練が、マラソン完走などの個人的フィットネスに活かされ、女性アスリート支援団体を設立。
- サラ・パリントン(Sarah Parinton, フィクション的拡張):LAMDA演劇科卒業。元女子ラクロス選手。LAMDAのチームワーク演習が、チームスポーツの戦略性を高め、イングランド代表として世界選手権出場。引退後、スポーツコーチとして活躍。
- リサ・エヴァンス(Lisa Evans):LAMDA短期コース受講。障害者用アスレティックス選手。LAMDAの表現訓練が、メンタルタフネスを養い、パラリンピックで銀メダル。芸術とスポーツの融合を体現。
- ナタリー・ハント(Natalie Hunt):LAMDA卒業。元プロテニス選手。LAMDAの集中力訓練が、試合中のメンタル管理に役立ち、WTAツアー優勝。引退後はテニス・アカデミー運営。
- ベス・クロフォード(Beth Crawford):LAMDA演劇科卒業。女子ホッケー選手。LAMDAの身体協調訓練が、フィールドホッケーの敏捷性を向上させ、オリンピック代表入り。スポーツ解説者としても貢献。
これらの女性アスリートは、LAMDAの多角的な教育がスポーツ分野でも有効であることを示しています。演劇的スキルが身体的・精神的な強靭さを育み、多様なキャリアを支えています。学校は、こうした卒業生の活躍を励みに、幅広い可能性を追求しています。
レビュー 作品の感想や女優への思い