『Mank/マンク』は、2020年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督の伝記映画。『市民ケーン』の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツの人生と創作過程を、白黒映像で描く。名優ゲイリー・オールドマン主演で、ハリウッド黄金期の光と影を浮き彫りにする。
基本情報
- 邦題:Mank/マンク
- 原題:Mank
- 公開年:2020年
- 製作国:米国
- 上映時間:132分
- ジャンル:ドラマ、伝記
女優の活躍
『Mank/マンク』では、アマンダ・セイフライドとリリー・コリンズが重要な女性キャラクターを演じ、作品に深みを与えています。
アマンダ・セイフライド(マリオン・デイヴィス役)
アマンダ・セイフライドは新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの愛人で女優のマリオン・デイヴィスを演じました。サイフレッドは、マリオンの複雑な内面を巧みに表現。ハーストの権力に守られつつも、自身のキャリアに悩む女性像を、軽妙かつ情感豊かに演じています。特に、マンクとの軽快な会話シーンでは、彼女のウィットと魅力が際立ち、物語に人間味を加えています。サイフレッドの演技は、批評家から高く評価され、第93回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。彼女の存在感は、1930年代ハリウッドの華やかさと裏側の葛藤を象徴しています。
リリー・コリンズ(リタ・アレクサンダー役)
リリー・コリンズはマンクの秘書リタ・アレクサンダーを演じました。コリンズは、リタの知性とプロ意識、そしてマンクの破天荒な性格に振り回されながらも支える姿を繊細に表現。リタは物語の現実軸(1940年)で重要な役割を果たし、マンクの脚本執筆をサポートするだけでなく、彼の人間性を引き出す存在として機能します。コリンズの控えめながらも芯の強い演技は、物語の感情的なアンカーとして効果的でした。彼女の演技は、作品の地味ながらも重要な役割をしっかりと支えています。
女優の衣装・化粧・髪型
『Mank/マンク』の衣装・化粧・髪型は、1930年代から1940年代のハリウッドを忠実に再現し、女優たちのキャラクター性を強調しています。衣装デザインはトリッシュ・サマーヴィルが担当し、第93回アカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされました。
アマンダ・サイフレッド(マリオン・デイヴィス)
マリオンの衣装は、1930年代のハリウッドスターらしい華やかさが特徴です。シルクやサテンのドレス、肩パッドが入ったエレガントなガウンなど、豪華なデザインが目立ちます。特にハーストの豪邸でのパーティーシーンでは、きらびやかなドレスでスターの輝きを表現。化粧は、濃いめのアイラインと赤いリップで、クラシックなハリウッド女優の美しさを再現。髪型は、ゆるやかなウェーブのかかったショートヘアやアップスタイルで、時代感とマリオンの愛らしい魅力を引き立てています。これらの要素は、彼女がハーストの愛人でありながら、自身のアイデンティティを模索する姿を視覚的に補強しています。
リリー・コリンズ(リタ・アレクサンダー)
リタの衣装は、秘書としての実務的な立場を反映したシンプルかつ上品なスタイルです。スカートスーツやブラウスにタイトなスカートを合わせ、落ち着いた色調(グレーやベージュ)が中心。化粧は控えめで、ナチュラルなベースメイクに薄いリップカラーを採用し、清楚で知的な印象を与えます。髪型は、タイトにまとめたアップスタイルや短めのボブで、プロフェッショナルな雰囲気を強調。リタの地味ながらも芯のあるキャラクター性を、衣装とメイクが見事に表現しています。彼女のスタイルは、マンクの破天荒さとの対比を際立たせ、物語のバランスを取っています。
あらすじ
『Mank/マンク』は、1941年の名作『市民ケーン』の脚本執筆に焦点を当て、脚本家ハーマン・J・マンキウィッツ(マンク)の人生を描いた伝記ドラマです。物語は二つの時間軸で展開します。1940年、足を骨折したマンク(ゲイリー・オールドマン)は、若き天才オーソン・ウェルズ(トム・バーク)から『市民ケーン』の脚本を60日で仕上げるよう依頼されます。アルコール依存症に悩みながら、秘書リタ・アレクサンダー(リリー・コリンズ)の助けを借りて執筆に励むマンク。一方、1930年代の回想パートでは、マンクが新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハースト(チャールズ・ダンス)やその愛人マリオン・デイヴィス(アマンダ・セイフライド)と交流し、ハリウッドの権力構造や政治的策略に巻き込まれる姿が描かれます。マンクはハーストをモデルにした『市民ケーン』の脚本を書き上げるが、その過程でハーストや映画業界の大物ルイス・B・メイヤー(アーリス・ハワード)との対立が深まります。最終的に、マンクはクレジットに自分の名前を載せることを主張し、ウェルズとの対立を経て、1942年のアカデミー賞で最優秀脚本賞を受賞します。物語は、マンクの人間的な弱さと創作への情熱を、1930年代ハリウッドの光と影と共に描き出します。
解説
『Mank/マンク』は、デヴィッド・フィンチャー監督が父ジャック・フィンチャーの脚本を基に制作した、映画史へのオマージュに満ちた作品です。白黒映像や当時の撮影技法を再現し、『市民ケーン』の革新的なスタイルを意識した演出が特徴です。物語は、マンクの個人的な葛藤と、1930年代のハリウッドや政治的背景を巧みに織り交ぜ、創作の裏側と権力の影響力を掘り下げます。
特に、1934年のカリフォルニア州知事選におけるフェイクニュースの描写は、現代のメディア操作にも通じるテーマとして注目されます。マンクがハーストをモデルにした脚本を書く動機は、単なる個人的な反発ではなく、権力者による民衆操作への怒りと、映画を通じた真実の追求に根ざしています。フィンチャーは、マンクの人間的な欠点—アルコール依存や自己顕示欲—を隠さず描きつつ、彼の才能と信念を称えることで、複雑な人物像を浮かび上がらせます。
本作は『市民ケーン』を観た観客には特に響く作品ですが、単体でもハリウッド黄金期の魅力と闇を味わえる内容です。第93回アカデミー賞では10部門でノミネートされ、撮影賞と美術賞を受賞するなど、技術面でも高く評価されました。フィンチャーの映画愛と、マンクの創作にかけた情熱が融合した本作は、映画史に残る一作と言えるでしょう。
キャスト
- ハーマン・J・マンキウィッツ: ゲイリー・オールドマン(日本語吹替: 山路和弘)
- マリオン・デイヴィス: アマンダ・セイフライド(日本語吹替: 小島幸子)
- ウィリアム・ランドルフ・ハースト: チャールズ・ダンス(日本語吹替: 菅生隆之)
- リタ・アレクサンダー: リリー・コリンズ(日本語吹替: 清水理沙)
- ルイス・B・メイヤー: アーリス・ハワード(日本語吹替: 小形満)
- アーヴィング・タルバーグ: フェルディナンド・キングズレー(日本語吹替: 浜田賢二)
- ジョセフ・L・マンキウィッツ: トム・ペルフリー(日本語吹替: 前田一世)
- サラ・マンキウィッツ: タペンス・ミドルトン(日本語吹替: 中村千絵)
- オーソン・ウェルズ: トム・バーク(日本語吹替: 小松史法)
- ジョン・ハウスマン: サム・トラウトン(日本語吹替: 鈴木正和)
- チャールズ・レデラー: ジョセフ・クロス
- シェリー・メトカーフ: ジェイミー・マクシェーン(日本語吹替: 清水明彦)
- デヴィッド・O・セルズニック: トビー・レオナルド・ムーア
- ジョージ・S・カウフマン: アダム・シャピロ
- フリーダ: モニカ・ゴスマン(日本語吹替: 中村綾)
- ベン・ヘクト: ジェフ・ハームス
- イヴ: レヴェン・ランビン
スタッフ
- 監督: デヴィッド・フィンチャー
- 脚本: ジャック・フィンチャー
- 製作: セアン・チャフィン、デヴィッド・フィンチャー、エリック・ロス、ダグラス・アーバンスキー
- 撮影: エリック・メッサーシュミット
- 編集: カーク・バクスター
- 音楽: トレント・レズナー、アッティカス・ロス
- 美術: ドナルド・グレアム・バート
- 衣装デザイン: トリッシュ・サマーヴィル
- 製作会社: Netflix
- 配給: Netflix
レビュー 作品の感想や女優への思い