『サイコ』は、ガス・ヴァン・サントが製作・監督し、ヴィンス・ヴォーン、ジュリアン・ムーア、ヴィゴ・モーテンセン、ウィリアム・H・メイシー、アン・ヘッシュらが出演した1998年米国のサイコホラー映画です。ノーマン・ベイツという謎めいた男が経営する古いモーテルに横領犯がやってくるという、アルフレッド・ヒッチコックの1960年の同名映画『サイコ』を現代風にリメイクしたもので、両作品ともロバート・ブロッホの1959年の小説を映画化しています。
ジョセフ・ステファノ(とクレジットされていない脚本家アルマ・レヴィル)のオリジナル脚本がほぼそのまま使われています。バーナード・ハーマンの音楽も再利用され、また、ダニー・エルフマンとスティーブ・バーテックによる新しいアレンジがステレオ録音されています。オリジナル作品からの技術進歩を考慮し、内容をより露骨にするため、いくつかの変更が加えられています。また、殺害場面にはシュールな映像が挿入されています。
『サイコ』は商業的には失敗し、オリジナル作品との類似性を批判する批評家からは賛否両論の評価を受けました。ゴールデン・ラズベリー賞の最低リメイク部門と最低監督賞を受賞し、最低女優賞(ヘッシュ)にもノミネート。しかし、サターン賞では主演女優賞(ヘッシュ)と脚本賞(ステファノ)の2部門にノミネートされました。
サイコ
- 原題:PSYCHO
- 公開年:1998年
- 製作国:米国
- 撮影場所:米国アリゾナ州、同国カリフォルニア州
- 上映時間:104分
- 製作会社:ユニバーサル・ピクチャーズ、イマジン・エンターテインメント
- 配給会社:ルソムンド映画、、パラマウント・フィルムズ、ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ
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見どころ
’60年の傑作である『サイコ』を『グッド・ウィル・ハンティング』のガス・ヴァン・サント監督が、構図や演出などをほぼ忠実に再現し、カラー撮影でリメイクした異色作。
- ジュリアン・ムーアが出てこないと思ったら途中から大活躍。
- 私立探偵アーボガストがノーマン・ベイツに行なう尋問がハイスピードでキレッキレ(後は残念…)。
- サム頑張った。
- エンディング・ミュージックが不調和、不協和音で切ない。
あらすじ
大金を横領したマリオン・クレインは、逃走の途中でノーマン・ベイツの経営するモーテルに潜伏。しかし、ノーマンのもとを訪れた者は、彼の母親の手に掛かり恐ろしい運命をたどっていました。マリオンの失踪に疑問を抱いた妹は、探偵に調査を依頼しますが…。
ファム・ファタル
マリオン・クレーン役
マリオン・クレーン役を務めたアン・ヘッシュがブロンドでショートヘア。可愛いです。モーテル管理人が客室を覗く場面は本作からはじまったといえます。ところどころで彼女のランジェリー姿を拝めます。また、入浴中に殺害される場面では足裏を拝めます。
脚本家のジョセフ・ステファノは、アン・ヘッシュがジャネット・リーと同じ台詞を言っているにもかかわらず、マリオン・クレーンの演じ方がまったく違うと感じました。
映画の序盤でマリオンが今入ったばかりの町のメインストリートを車で走っていると、アン主演のロマンティック・コメディ『6デイズ/7ナイツ』(1998年)のポスターが貼られたバスターミナルを通り過ぎます。
マリオン役を当初はニコール・キッドマンが演じる予定でしたが、スケジュールの関係で降板。また、ドリュー・バリモアも候補に挙がりました。
ライラ・クレーン役
ライラ・クレーン役のジュリアン・ムーアは、女優ヴェラ・マイルズの解釈とは対照的に、キャラクターを積極的な性格に演じました。妹の失踪を調査していく役柄なのでファム・ファタル要素は少ないですが、キュートでアトラクティブな役をうまく演じていました。
ジュリアンは、姉のライラ・クレーンにキャスティングされる前、妹のマリオン・クレーン役として検討されていたそうです。
感想
オープニングのタイトル文字がアニメーションになっていて、面白い動き。
1960年代の作品をリバイバルしたもので、これを意識してか、やや古いファッションやインテリアが出てきます。この点に完成度が高いと感じました。
オリジナルは白黒で今から見ればインパクトに欠けるのですが、素晴らしい音楽と演出で、本作と同じくらい良くできた映画。したがって、本作の再現度が高いため、このリメイクは必要なかったとも感じます。
オリジナルも好きだけど、古典を流用して新しい試みをしたリメイク版がもっと好きだという若年層が意外にたくさんいるそうです。オリジナルの『サイコ』は公開時に酷評されていましたが、70年代後半になって、カルト的で古典的な地位を得ることができました。ですから、今から40年後にこの映画も古典になるかもしれません。
オリジナルの『サイコ』におけるジョン・ギャヴィンの演技は、謎を解き明かすためだけの男という酷いものでしたが、リメイク版ではヴィゴ・モーテンセンのおかげで同じキャラクターがのんびりとしたカウボーイになっています。レズビアンの妹ライラを演じるジュリアン・ムーアのアグレッシブな演技によつって、ヴェラ・マイルズの演技は昼ドラ風になっています。アン・ヘッシュは興味深いマリオン・クレーンを演じ、ジャネット・リーよりもはるかに人間的です。
素晴らしい演技に、独特のシュールな色彩、クリストファー・ドイルによる巧みな撮影、バーナード・ヘルマンのグルーヴィーなスコアが加わり、本作は、エンターテインメント的には不気味で、分析的には魅力的な映画に仕上がっています。
キャスト
配役 | 出演者 |
---|---|
ノーマン・ベイツ ベイツ・モーテル経営者 | ヴィンス・ヴォーン |
マリオン・クレーン | アン・ヘッシュ |
ライラ・クレーン | ジュリアン・ムーア |
サミュエル・ルーミス(サム) | ヴィゴ・モーテンセン |
ミルトン・アーボガスト(私立探偵) | ウィリアム・H・メイシー |
アル・チェンバース(保安官) | フィリップ・ベイカー・ホール |
エリザ・チェンバース | アン・ヘイニー |
フレッド・サイモン(医師) | ロバート・フォスター |
キャロライン | リタ・ウィルソン |
ローリー(社長) | ランス・ハワード |
トム・キャシディ | チャド・エヴェレット |
チャーリー | ジェームズ・レグロス |
ボブ・サマーフィールド | フリー |
パトロール中の警官 | ジェームズ・レマー |
ノーマ・ベイツ(声) | ローズ・マリー |
スタッフ
担当 | 担当者 |
---|---|
監督 | ガス・ヴァン・サント |
脚本 | ジョセフ・ステファノ |
衣装監督 | ヴァネッサ・ヴォーゲル |
衣装主任 | クーキー・ロペス |
セット衣装 | フランク・C・ヘルマー |
メイクアップ主任 | エレーヌ・オワーズ |
メイクアップ | ジーナ・モナチ |
特殊メイクアップ | マシュー・マングル |
ボディメイク | ナデージュ・シェーンフェルド |
MRS. ベイツ デザイン | リック・ベーカー、マット・ローズ、チャド・ウォーターズ |
レビュー 作品の感想や女優への思い