『ティーンスピリット』（2018年・米国）はエル・ファニング主演の青春音楽ドラマ。内気な少女が世界的オーディション番組で歌手を目指し、夢と成長を追い求める物語。
基本情報
- 邦題：ティーンスピリット
- 原題：Teen Spirit
- 公開年：2018年
- 製作国：米国
- 上映時間：93分
- ジャンル：音楽
見どころ
エル・ファニングがティーガン&サラの「アイ・ワズ・ア・フール」などで繊細な歌声を披露。ケイティ・ペリーらのヒットソングがオリジナルアレンジで登場し劇中を彩る。
あらすじ
イギリス南部のワイト島で、ポーランド移民の母子家庭に育つ17歳のヴァイオレット・ヴァレンスキは、内気で孤独な日々を送っています。彼女にとって音楽は、閉鎖的な環境や父親不在の寂しさから解放してくれる唯一の心の拠り所です。学校と農場の仕事を手伝いながら、夜は地元のパブで歌う彼女ですが、その歌声はまだ多くの人には知られていません。
ある日、世界的オーディション番組「ティーンスピリット」の予選がワイト島で開催されることを知ったヴァイオレットは、歌手になる夢を叶えるため、勇気を出してオーディションに挑戦することを決意します。パブで彼女の歌を聴いた元オペラ歌手のヴラドがその才能を見出し、彼女のマネージャーとしてサポートを申し出ます。母親の反対を押し切り、ヴラドと共にロンドンでの本選に挑むヴァイオレット。厳しい競争と音楽業界の誘惑の中で、彼女は自分自身と向き合いながら、夢への第一歩を踏み出します。
最終的に、彼女は圧巻のパフォーマンスで観客を魅了し、スターへの道を切り開いていきます。
女優の活躍
本作の主演を務めるエル・ファニングは、ヴァイオレット・ヴァレンスキ役として圧倒的な存在感を発揮しています。エル・ファニングは、これまで『マレフィセント』（2014年）や『ネオン・デーモン』（2016年）などで多様な役柄を演じてきましたが、本作では等身大のティーンエイジャーとして、内気ながらも情熱を秘めた少女を見事に体現しています。
特に、彼女が3か月にわたる歌唱トレーニングを経て挑んだ本格的な歌唱シーンは、映画の最大の見どころです。エリー・ゴールディングの「Lights」やケイティ・ペリー、アリアナ・グランデの楽曲を情感たっぷりに歌い上げ、そのスモーキーで力強い歌声は、観客にヴァイオレットの内なる覚醒を感じさせます。
ファニングは、ヴァイオレットの感情の機微を繊細に表現し、特にオーディションの緊張感や母親との葛藤、ヴラドとの師弟関係を通じて成長していく姿を丁寧に演じています。彼女の演技は、物語の感情的な軸を支え、批評家からも「エル・ファニングの好演が映画を牽引している」と高く評価されています。
また、劇中のダンスシーンでは、彼女のしなやかな動きがキャラクターの解放感を強調し、視覚的にも強い印象を与えています。ファニングは本作で、単なるアイドル映画の主人公ではなく、複雑な家庭環境や自己実現への葛藤を抱える一人の少女として、深みのある演技を見せています。
女優の衣装・化粧・髪型
エル・ファニング演じるヴァイオレットの衣装、化粧、髪型は、彼女のキャラクターの成長とストーリーの進行を反映する重要な要素です。映画の冒頭では、ワイト島の田舎町に住む普通の少女として、ヴァイオレットの衣装はシンプルで控えめです。主にダークカラーのセーターやジーンズ、チェック柄のシャツなど、質素で実用的な服装が中心で、ポーランド移民の母子家庭の経済状況や彼女の内気な性格を象徴しています。
化粧はほぼしておらず、ナチュラルな肌に薄いリップのみで、17歳の少女らしい無垢さが強調されています。髪型も、ブロンドのロングヘアを自然に下ろしたスタイルや、簡単なポニーテールで、飾らない日常を表現しています。
オーディションが進むにつれ、ヴァイオレットの衣装は徐々に変化します。ロンドンでの本選では、音楽業界の華やかな世界に合わせて、キラキラとしたスパンコール付きのドレスや、モダンなレザージャケット、タイトなパンツなど、より洗練されたスタイルが登場します。これらの衣装は、彼女がスターとして覚朝していく過程を視覚的に示し、衣装デザイナーのミレン・ゴードン＝クロージャーの手腕が光ります。特に最終ステージでの衣装は、鮮やかな色使いと大胆なカットで、ヴァイオレットの自信と輝きを際立たせています。
化粧も、初期のナチュラルメイクから、ステージでは大胆なアイラインやグリッターを使った華やかなメイクに変化し、彼女の内面の変革を強調。髪型も、ルーズなウェーブやアップスタイルに変化し、パフォーマンスのダイナミズムを補完しています。これらの変化は、ヴァイオレットが自分自身を受け入れ、夢に向かって進む姿を視覚的に表現する重要な役割を果たしています。
解説
『ティーンスピリット』は、音楽を軸にした青春サクセスストーリーでありながら、単なるシンデレラ物語にとどまらない深みを持っています。監督のマックス・ミンゲラは、自身の両親が移民であるという背景を反映し、ヴァイオレットの「閉鎖的な環境からの脱出」というテーマに真実味を与えています。物語は、ポーランド移民の少女が直面する社会的・文化的疎外感や、家族との複雑な関係を描きつつ、音楽を通じて自己実現を目指す普遍的なテーマを扱っています。
オーディション番組という設定は、『アメリカン・アイドル』や『Xファクター』を彷彿とさせ、現代の若者が夢を追い求めるリアルな舞台を提供します。映画の音楽は、『ラ・ラ・ランド』のスタッフであるフレッド・バーガーとマリウス・デ・ヴリーズが手掛け、ケイティ・ペリーやアリアナ・グランデのヒット曲を劇中に効果的に配置。特にオリジナル曲「Wildflowers」は、ヴァイオレットの心情を反映した歌詞とメロディで、物語のクライマックスを感動的に彩ります。
批評家からは「ストーリーに既視感はあるが、エル・ファニングの演技と音楽の力が作品を高めている」と評価され、Rotten Tomatoesでは71%の支持率を得ています。一方で、師弟関係や家族のドラマの掘り下げが弱いとの指摘もあり、ストーリーのシンプルさが賛否を分ける要因となっています。それでも、ヴァイオレットの成長と音楽の力が観客の心を掴み、青春映画として十分な魅力を持っています。
キャスト
- ヴァイオレット・ヴァレンスキ：エル・ファニング
- ヴラド：ズラッコ・ブリッチ
- マーラ（ヴァイオレットの母）：アグニェシュカ・グロホウスカ
- ジュールズ（レコード会社幹部）：レベッカ・ホール
- ロキシー：クララ・ルガアード
- ルイーズ：ユーソラ・ホリデイ
- ルーク：アーチー・マデクウィ
- アナステイジア：ミリー・ブレイディ
- キーヤン：ルアイリ・オコナー
- リサ：オリーヴ・グレイ
- ロロ：ジョーダン・スティーブンズ
スタッフ
- 監督・脚本：マックス・ミンゲラ
- 製作：ジェイミー・ベル、フレッド・バーガー
- 撮影：オータム・デュラルド
- 美術：ケイブ・クイン
- 衣装：ミレン・ゴードン＝クロージャー
- エグゼクティブ音楽プロデューサー：マリウス・デ・ヴリーズ
- 音楽監修：スティーブン・ギシュツキ
総括
『ティーンスピリット』は、エル・ファニングの歌唱力と演技力を最大限に活かした青春音楽映画。ヴァイオレットの夢と成長を軸に、音楽とビジュアルが融合した感動的な物語が展開されます。衣装やメイクの変化がキャラクターの進化を象徴し、音楽は観客の感情を揺さぶります。
ストーリーのシンプルさや脇役の掘り下げ不足は課題ですが、ファニングの魅力と音楽の力がそれらを補い、若者の夢と情熱を描いた作品として心に残ります。特に、音楽を通じて自分を見つけたいと願う人や、エル・ファニングのファンにとって、見逃せない一作です。
レビュー 作品の感想や女優への思い