『チェイサー』（2008年、韓国）はナ・ホンジン監督の長編デビュー作で、元刑事と連続殺人犯の追跡劇を描いたクライム・サスペンス。実在の事件を基に、緊迫感溢れる展開とリアルな人間ドラマで韓国国内500万人以上を動員し、大鐘賞6部門受賞。ハリウッド・リメイクも決定した傑作。
基本情報
- 邦題：チェイサー
- 原題：추격자
- 英題：THE CHASER
- 公開年：2008年
- 製作国：韓国
- 上映時間：125分
- ジャンル：アクション、クライム、バイオレンス
- 配給：クロックワークス、アスミック・エース
見どころ
犯人と元刑事の攻防を、練り込まれた脚本とパワフルかつスピーディな展開でスリリングに演出。狂気と狂気がぶつかり合う凄味は、息苦しくなるほどリアル。
女優の活躍
『チェイサー』における女優の活躍は、物語の中心となる男性キャラクターたちの激しい追跡劇を支える重要な役割を果たしています。特に、ソ・ヨンヒが演じるキム・ミジンと、キム・ユジョンが演じるミジンの娘ウンジは、物語に感情的な深みを与え、観客の心を強く揺さぶります。
ソ・ヨンヒ（キム・ミジン役）
ソ・ヨンヒは、元刑事ジュンホが経営するデリバリーヘルスの女性で、連続殺人犯ヨンミンの標的となるキム・ミジンを演じました。ミジンは物語の鍵を握るキャラクターで、彼女の失踪がジュンホの追跡劇のきっかけとなります。ソ・ヨンヒの演技は、恐怖と絶望の中で生き延びようとする女性の強さと脆さを繊細に表現。特に、ヨンミンに捕らえられた場面では、限られた出番ながらも強烈な印象を残し、観客に深い感情移入を促します。彼女の演技は、映画の暗く重いトーンを強調し、物語の緊張感を高める重要な要素となっています。
キム・ユジョン（ウンジ役）
子役として出演したキム・ユジョンは、ミジンの娘ウンジを演じ、物語に人間的な温かさと悲劇性を加えています。幼いながらも母親を気遣う姿や、ジュンホとの交流を通じて見せる純粋さが、観客に強い共感を呼びます。キム・ユジョンの自然体な演技は、映画の重苦しい雰囲気の中で一筋の光となり、ジュンホの行動動機に感情的な重みを付与。彼女の存在は、物語の後半でのジュンホの必死の行動に説得力を持たせます。
女優陣の出番は男性主役に比べると限定的ですが、ソ・ヨンヒとキム・ユジョンの演技は、物語の感情的な核として機能し、作品のリアリティと深みを増しています。
女優の衣装・化粧・髪型
『チェイサー』の女優たちの衣装、化粧、髪型は、映画のリアリスティックな雰囲気とキャラクターの背景を反映したものになっています。
ソ・ヨンヒ（キム・ミジン役）
ミジンの衣装は、デリバリーヘルスの女性という設定に合わせて、比較的シンプルかつ実用的なものが中心です。彼女が登場するシーンでは、カジュアルなトップスやスカート、薄手のジャケットなど、日常的で動きやすい服装が選ばれています。化粧は控えめで、ナチュラルなベースメイクに薄いリップとアイメイクが施され、過度な華やかさは避けられています。これは、ミジンが経済的に困窮し、過酷な環境で生きる女性であることを強調する演出です。髪型は、肩までの長さのストレートヘアで、特別な装飾やアレンジはなく、彼女の生活の現実感を表現。ヨンミンに捕らえられた後のシーンでは、乱れた髪と汚れた衣装が彼女の恐怖と絶望を視覚的に伝え、物語の緊迫感を高めています。
キム・ユジョン（ウンジ役）
ウンジの衣装は、幼い少女らしいシンプルなもの。カジュアルなTシャツやスカート、動きやすいスニーカーなどが主で、子どもらしい無垢さを強調しています。化粧は一切なく、自然な子どもの肌がそのまま活かされ、純粋なキャラクター性を際立たせています。髪型は、ショートまたはミディアムのストレートヘアで、リボンやヘアピンなどの可愛らしいアクセサリーが使われることもありますが、過度な装飾は避けられています。これにより、ウンジの無垢さと物語の重いテーマとの対比が効果的に表現されています。
全体的に、衣装や化粧、髪型は派手さを抑え、キャラクターの生活環境や物語の暗いトーンに合わせたリアルなデザインが採用されており、映画のリアリズムを支えています。
あらすじ
『チェイサー』は、元刑事のオム・ジュンホ（キム・ユンソク）が経営するデリバリーヘルスで働く女性たちが次々と失踪する事件から始まります。ジュンホは、失踪した女性ミジン（ソ・ヨンヒ）が連続猟奇殺人事件に巻き込まれたと疑い、彼女が最後に接触した客の青年ヨンミン（ハ・ジョンウ）を追跡。ジュンホはヨンミンを捕まえ、彼が殺人を自供するものの、証拠不十分で釈放されてしまいます。ミジンがまだ生きている可能性を知ったジュンホは、時間との戦いの中、警察の怠慢と戦いながら彼女を救うため夜の街を奔走。物語は、ジュンホの執念とヨンミンの冷酷な狂気が交錯し、息をのむ展開でクライマックスへと向かいます。
解説
『チェイサー』は、2004年に韓国で起きたユ・ヨンチョルによる連続殺人事件を基にした作品で、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作です。この映画は、単なるクライム・サスペンスにとどまらず、人間の闇、警察や社会の無力さ、そして個人の執念をリアルに描いたフィルム・ノワールとして高く評価されています。
物語の特徴は、緊張感とリアルタイムの緊迫感です。ジュンホがミジンを救うために時間と戦う描写は、観客に強い没入感を与え、物語のテンポは畳み掛けるようなスピード感で展開します。特に、ナ・ホンジン監督の緻密な脚本と演出は、暗い夜の街や雨のシーンを通じて、登場人物の不安や孤独を象徴的に表現。映像の暗さと陰鬱な雰囲気は、フィルム・ノワールのスタイルを強く感じさせ、観客に感情的な重圧を与えます。
キム・ユンソクとハ・ジョンウの演技対決も見どころです。キム・ユンソクは、過去の正義感と現在の堕落した自分との間で葛藤するジュンホを熱演。一方、ハ・ジョンウは、冷酷で感情を欠いた殺人犯ヨンミンを不気味なリアリティで演じ、観客に戦慄を与えます。この二人の対比が、物語に深みと緊張感を加えています。
韓国で500万人以上の観客を動員し、2008年大鐘賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門を受賞。さらに、第61回カンヌ国際映画祭特別招待作品に選ばれ、国際的な評価も獲得。ハリウッドでのリメイク権をレオナルド・ディカプリオが取得するなど、その影響力は大きいです。
キャスト
- キム・ユンソク（オム・ジュンホ役）：元刑事でデリバリーヘルスの経営者。執念深く、過去の正義感と葛藤しながら犯人を追う。
- ハ・ジョンウ（チ・ヨンミン役）：冷酷な連続殺人犯。感情を欠いた不気味な存在感で物語の恐怖を牽引。
- ソ・ヨンヒ（キム・ミジン役）：失踪するデリヘル嬢。恐怖と絶望の中で生き延びようとする姿を熱演。
- キム・ユジョン（ウンジ役）：ミジンの娘。幼いながらも純粋さで物語に温かさを加える。
- チョン・インギ、パク・ヒョジュ、ク・ヌボン：脇役として物語を支える。
スタッフ
- 監督・脚本：ナ・ホンジン（長編デビュー作。緻密な脚本と緊張感ある演出で評価される）
- 製作：Big House / Vantage Holdings
- 撮影：イ・ソンジェ（暗い夜の街を効果的に捉え、ノワール感を強調）
- 音楽：キム・ジュンソク（緊迫感と感情を高める劇伴）
- 編集：キム・ソンミン（テンポの速い編集で緊張感を維持）
- 配給：クロックワークス、アスミック・エース（日本）
まとめ
『チェイサー』は、ナ・ホンジン監督の鮮烈なデビュー作であり、韓国映画の傑作として知られるクライム・サスペンスです。ソ・ヨンヒとキム・ユジョンの演技は物語に感情的な深みを加え、リアルな衣装や化粧が作品のリアリズムを支えます。キム・ユンソクとハ・ジョンウの圧倒的な演技、緻密な脚本、緊張感溢れる演出が融合し、観客を引き込む力強い作品となっています。
レビュー 作品の感想や女優への思い