トラック29は、1988年に公開されたニコラス・ローグ監督の心理ドラマです。テレサ・ラッセル演じるリンダは、15歳で出産した子供を養子に出した過去に苦しむ主婦です。
夫の無関心な生活に不満を抱く中、突然現れた青年が息子だと主張し、奇妙でオイディプス的な関係が展開します。現実と幻想の境が曖昧な物語です。
トラック29
- 邦題:トラック29
- 原題:TRACK 29
- 公開年:1987年
- 製作国:英国
- 上映時間:90分
予告編はこちら。
ファム・ファタル
本作のファム・ファタルはリンダ・ヘンリーを演じた主演女優テレサ・ラッセル。本作でもメイクが薄くて綺麗です。
テレサが演じるリンダの妄想が手当たり次第に炸裂するエロティック・コメディといったところ。
「あなたは悪い子ね」なんてテレサ・ラッセルに言われたら、脳みそもハートも溶けて、どうでもよくなりますよね(笑)
13分頃、レストランで息子らしき人物と初めて出会った場面。初見時の口をつむったままの笑顔が素敵でした。からかいと母性愛と興味の入り混じった複雑な口元。
16分頃に自室。膝上だけのネグリジエ が白のサテン地。靴下は白と薄紫のストライプで、脚が丸出し。中年人妻のこういう格好って妙にエッチ。
45分。リンダはベッドに寝そべっています。生足にピンクの靴下。残念ながら、この場面は短いです。
1時間9分。薄紫のスリップドレスを着ています。ソファにもたれて眠っている場面で、生足にサンダルを片足だけ投げ出し、右脚は少し太ももがめくり上がってるくらいでゾクッとします。
1時間26分。ツーピースのドレスを着用。ノースリーブで、スカート部分は膝丈。円形の変わった帽子を被っています。この帽子はノースリーブドレスに合わせて 白地で、帽子に大きな黒の水玉模様があります。生脚に白のピンヒール・シューズ。
50年代のオードリーヘップバーンの衣装を想像させる感じですが、それは私だけでかもしれません^_^
女優の活躍
テレサ・ラッセルは、本作『トラック29』で主人公のリンダ・ヘンリーを演じています。彼女の活躍は、映画の中心を担うもので、脆弱で不安定な女性の内面的な苦しみを表現する点にあります。リンダは、過去のトラウマからくる精神的崩壊を徐々に描き出しており、ラッセルは感情の沸騰や痛みの増大を繊細に演じています。特に、南部訛りのアクセントを加え、孤独な主婦の日常から幻想的な世界への移行を自然に体現しています。
批評家からは、彼女の演技が映画の謎めいた雰囲気を支えていると評価されていますが、一部ではアクセントの不自然さやキャラクターの共感しにくさを指摘する声もあります。それでも、ラッセルのパフォーマンスは、監督のニコラス・ローグとの夫婦関係による信頼感が反映され、大胆で挑発的なシーンを力強くこなしています。彼女は、若き日のフラッシュバックシーンでも、遠いまなざしと微笑みで印象を残しています。
この役を通じて、テレサ・ラッセルは心理的な深みを追求する女優としての実力を発揮しています。彼女の活躍は、映画のテーマである現実と妄想の曖昧さを強調し、観客に強い印象を与えています。また、ゲイリー・オールドマンとの共演では、母子関係の複雑さを強調する化学反応を生み出しています。全体として、ラッセルの演技は、映画の不気味でシュールなトーンを支える重要な要素です。彼女は、この作品で精神的なトラウマを抱える女性の微妙なニュアンスを捉え、観客を引き込む活躍を見せています。
批評では、彼女の努力が認められつつも、脚本の複雑さが演技の限界を生んだとの見方もあります。それでも、ラッセルは本作で独自の存在感を発揮し、以降のキャリアに繋がる活躍をしています。
女優の衣装・化粧・髪型
テレサ・ラッセル演じるリンダの衣装は、紫色を基調としたものが目立ちます。これは、彼女のキャラクターがライラックの茂みでの過去のトラウマにこだわる設定から来ています。常に紫の服を着用し、ジャズサイズのエクササイズウェアのようなカジュアルで1980年代らしいスタイルが特徴です。これにより、彼女の内面的な執着と日常の退屈さが視覚的に表現されています。
化粧は、自然で控えめなものが多く、孤独な主婦のイメージを強調しています。目元を軽く強調したメイクが、精神的混乱を表す場面で効果的に使われています。
髪型は、肩くらいの長さのウェーブヘアで、柔らかくボリュームのあるスタイルです。1980年代の典型的なヘアスタイルを反映し、時には乱れを加えて感情の揺らぎを示しています。
これらの要素は、映画のアメリカ南部を舞台とした設定にマッチし、ラッセルの演技を補完しています。衣装の選択は、ラッセル自身が提案した部分もあり、キャラクターの深みを加えています。全体として、これらのビジュアルは、物語の心理的な側面を強化しています。
トリビア
- 本作は女優テレサ・ラッセルがニコラス・ローグ監督と撮った7本の映画のうちの1本。
- リンダ・ヘンリー(テレサ・ラッセル)の旧姓は “リンダ・アリス・カーター”。
あらすじ
物語は、アメリカ南部の小さな町で暮らすリンダ・ヘンリーを中心に展開します。リンダは、15歳の時に強姦されて妊娠し、生まれた子供を養子に出した過去に苦しんでいます。
現在、彼女は夫のヘンリー・ヘンリー医師と結婚していますが、ヘンリーはモデルトレインの趣味に没頭し、看護師のスタインとの不倫関係に満足しています。リンダは子供を欲しがっていますが、夫の無関心さに苛立ち、孤独な日々を送っています。
そんなある日、ダイナーで友人アーランダと食事をしていると、謎のイギリス人青年マーティンが現れます。彼はリンダに近づき、自分が彼女の生んだ息子だと主張します。マーティンは、ヒッチハイクで旅をして母親を探していたと言います。
リンダは最初は信じられませんが、徐々に彼を受け入れ、母性的な感情を抱き始めます。しかし、マーティンの行動は幼児的で奇妙です。彼はリンダに甘え、時にはオイディプス的な関係を示唆するような言動を取ります。リンダの幻想の中で、マーティンはヘンリーのモデルトレインを破壊したり、ヘンリーを刺したりする場面が描かれます。現実と妄想の境が曖昧になり、リンダの精神は崩壊寸前です。
ヘンリーはスタインとの関係を深め、家を出る計画を立てていますが、リンダは血まみれの家から車で逃げ出します。物語は、すべてがリンダの妄想だったのか、それとも現実だったのかを曖昧に残して終わります。このあらすじは、心理的な緊張とシュールな要素が絡み合い、観客を困惑させる内容です。
解説
『トラック29』は、ニコラス・ローグ監督の独特なスタイルが光る心理ドラマです。原作はデニス・ポッターの1974年のテレビ劇「Schmoedipus」で、それを映画化したものです。テーマは、現実と幻想の境界、トラウマの影響、オイディプス複合、そしてアメリカ郊外の退屈な生活です。
ローグ監督は、過去の作品『Don’t Look Now』や『Bad Timing』のように、断片的な編集と視覚的な象徴を多用し、観客の解釈を促します。例えば、モデルトレインはヘンリーの幼児性や制御欲を象徴し、リンダの精神的崩壊を表すモンタージュシーンでは、列車の衝突や建物の崩壊が挿入されます。これにより、物語の曖昧さが強調されています。
批評家の反応は分かれています。ロジャー・イーバートは3つ星を与え、苛立たしいが興味深いと評価しています。一方、ジャネット・マスリンは過剰で馬鹿げていると批判しています。映画は、1980年代のアメリカ文化を風刺し、ジャズサイズの衣装やモデルトレインの趣味を通じて、消費主義や性的抑圧を描いています。予算500万ドルに対し、興行収入は42万ドルと振るわず、商業的には失敗しましたが、カルト的な人気があります。
テレサ・ラッセルの演技は、監督の妻として信頼された結果、大胆なシーンを可能にしています。ゲイリー・オールドマンのマーティンは、幼児的で攻撃的なキャラクターとして、映画の不気味さを増幅します。全体として、この作品は心理的な深層を探る挑戦的な映画です。
テーマの複雑さから、複数回の視聴を促す内容となっています。ローグのカメラワークは、官能的で歪んだ視点を強調し、観客に不快感を与えつつ、思考を刺激します。本作は単なるドラマではなく、精神分析的な要素を含みます。
キャスト
- テレサ・ラッセル:リンダ・ヘンリー(孤独な主婦で過去のトラウマに苦しむ主人公)
- ゲイリー・オールドマン:マーティン(リンダの息子だと主張する謎の青年)
- クリストファー・ロイド:ヘンリー・ヘンリー(リンダの夫でモデルトレインに夢中の医師)
- コリーン・キャンプ:アーランダ(リンダの友人)
- サンドラ・バーンハード:看護師スタイン(ヘンリーの愛人でフェティシな関係を持つ)
- シーモア・カッセル:バーナード・フェアモント医師(脇役)
- ヴァンス・コルヴィグ・ジュニア:エニス氏(脇役)
- エリヤ・ペリー:レッドネック(脇役)
- トミー・ハル:トラック運転手(脇役)
- トニ・デ・ローズ:若いリンダの友人(クレジットなし)
| 登場人物 | 出演者 |
|---|---|
| リンダ・ヘンリー | テレサ・ラッセル |
| マーティン | ゲイリー・オールドマン |
| ヘンリー・ヘンリー | クリストファー・ロイド |
| アーランダ | コリーン・キャンプ |
| スタイン看護師 | サンドラ・ベルンハルト |
| バーナード・フェアモント医師 | シーモア・カッセル |
| トラック運転手 | レオン・リッピー |
| ミスター・アニス | ヴァンス・コルヴィグ・ジュニア |
| 受付係 | キャサリン・トムリンソン |
| レッドネック | イライジャ・ペリー |
| カウンターマン | トミー・ハル |
| ウェイター | J. マイケル・ハンター |
| 代議員 | リチャード・K・オルセン |
| 老人 | テッド・バロウ |
| 若いリンダの友人 | トニ・デ・ローズ |
スタッフ
- 監督:ニコラス・ローグ
- 脚本:デニス・ポッター
- 製作:リック・マッカラム
- 製作総指揮:ジョージ・ハリソン(HandMade Films)
- 撮影:アレックス・トムソン
- 編集:トニー・ローソン
- 音楽:スタンリー・マイヤーズ
- 美術:デイヴィッド・ブロック
- 衣装デザイン:シャナ・ハート
- メイクアップ:未詳
| 担当 | 担当者 |
|---|---|
| 衣装デザイン | シュナ・ハーウッド |
| ワードローブ監督 | スージー・マネー |
| 衣装助手 | ハーツェル・テイラー |
| メイクアップ | ジェフ・グッドウィン |
| ヘアスタイル主任 | ミシェル・ジョンソン |





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