『運命の女』(原題:Unfaithful)は2002年公開の米国の官能サスペンス映画。エイドリアン・ライン監督による、クロード・シャブロルの『不貞の女』のリメイク。ダイアン・レイン主演で、不倫に溺れる主婦とその夫の葛藤を描く。ダイアン・レインはコニー・サムナー役で圧倒的な存在感を示す。
基本情報
- 邦題:運命の女
- 原題:UNFAITHFUL
- 公開年:2002年
- 製作国:米国
- 上映時間:124分
- ジャンル:サスペンス
見どころ
エイドリアン・ライン監督による官能的でスリリングな演出は秀逸。ダイアン・レインとリチャード・ギア、オリヴィエ・マルティネスが織りなす危険な関係に引き込まれる。
あらすじ
ニューヨーク郊外で幸せな家庭を築くコニー・サムナー(ダイアン・レイン)は、夫エドワード(リチャード・ギア)と8歳の息子チャーリー(エリック・パー・サリヴァン)と平穏な日々を送っていました。しかし、ある風の強い日、ニューヨーク市内で若いフランス人ブックディーラーのポール・マーテル(オリヴィエ・マルティネス)と偶然出会います。この出会いをきっかけに、コニーはポールとの情事に溺れていきます。罪悪感を抱きながらも、情熱に抗えず密会を重ねるコニー。一方、エドワードは妻の微妙な変化に気づき、彼女の行動を調べ始めます。やがて不倫の事実を知ったエドワードは、嫉妬と怒りに駆られ、ポールの元へ乗り込み、衝撃的な事件を引き起こします。物語は、夫婦の愛と裏切り、罪と贖罪の間で揺れる心理をスリリングに描き、予想外の結末へと進みます。
解説
『運命の女』は、1969年のフランス映画『不貞の女』を原作としたリメイク作品で、エイドリアン・ライン監督の得意とするエロティック・サスペンスの要素を強く反映しています。ライン監督は『フラッシュダンス』(1983年)や『危険な情事』(1987年)などで、情熱と危険が交錯する人間関係を描く手腕を発揮してきましたが、本作でもそのスタイルが顕著です。物語は、平凡な日常が一瞬の出会いで崩壊する様子を、心理的な緊張感とともに丁寧に描写。特に、不倫というテーマを通じて、愛と欲望、道徳と背徳の葛藤を探求し、観客に深い余韻を残します。
本作の特徴は、妻コニーと夫エドワードの両方の視点から物語が描かれる点です。コニーの情熱と罪悪感、エドワードの嫉妬と苦悩が交錯し、観客は双方の感情に共感しながらも、複雑な心情に引き込まれます。また、映画の後半ではサスペンス要素が強まり、衝撃的な展開が物語を加速。結末は曖昧さを残し、観客に解釈を委ねる形で終わるため、さまざまな議論を呼びました。ダイアン・レインの演技は特に評価され、第75回アカデミー賞主演女優賞にノミネート、 第37回全米映画批評家協会賞で主演女優賞を受賞するなど、高い称賛を受けました。映画は興行的にも成功し、製作費5000万ドルに対し全世界で1億1910万ドルの興行収入を記録しました。
女優の活躍
本作の主演ダイアン・レインは、コニー・サムナー役で圧倒的な存在感を示しました。38歳当時のレインは、成熟した女性の魅力と内面的な葛藤を見事に表現。情熱に流される主婦の心理を、繊細かつ大胆に演じ分け、批評家から絶賛されました。彼女の演技は、日常の幸福と禁断の欲望の間で揺れる女性の複雑な感情をリアルに伝え、観客を引き込みます。特に、ポールとの情事後の電車内でのシーンでは、喜びと後悔が入り混じる表情が印象的で、彼女の演技力の高さを象徴しています。この役でレインはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、キャリアの新たな頂点を築きました。また、ケイト・バートンやマーガレット・コリン、ミシェル・モナハンなどの女優が脇役として登場し、物語に深みを加えています。バートンはコニーの友人トレイシー役で、日常的な会話を通じてコニーの心情を浮き彫りにし、モナハンは小さな役ながらも後のキャリアにつながる存在感を示しました。
女優の衣装・化粧・髪型
ダイアン・レイン演じるコニーの衣装は、彼女のキャラクターの変遷を象徴しています。物語の前半では、ニューヨーク郊外の主婦らしい上品で控えめなスタイルが中心。淡い色調のカーディガンやロングスカート、シンプルなブラウスが多用され、家庭的なイメージを強調します。しかし、ポールとの関係が深まるにつれ、衣装は大胆で女性らしいものに変化。タイトなドレスや深いネックラインのトップス、黒や赤などの情熱的な色合いが登場し、彼女の内なる欲望を視覚的に表現しています。特に、ポールとの密会シーンでのシルクのスリップドレスは、官能的でありながらもコニーの脆弱さを際立たせるデザインでした。衣装デザインはエレン・ミロジニックが担当し、心理的な変化を反映した細やかな工夫が施されています。
化粧に関しては、コニーの日常シーンではナチュラルメイクが基本。薄いファンデーション、控えめなアイメイク、淡いリップカラーが主婦らしい清潔感を演出します。一方、ポールとのシーンでは、アイラインやマスカラが強調され、赤やピンク系の口紅が使われ、情熱的で誘惑的な雰囲気を醸し出します。この変化は、コニーの内面の揺れを視覚的に補強する効果があります。髪型は、普段はゆるくウェーブのかかったミディアムヘアを下ろしたスタイルで、親しみやすさと優雅さを両立。ポールとのデートでは、髪をアップにしたり、軽くカールさせたりして、より洗練された印象を与えています。レインの自然な美しさが、衣装やメイク、髪型の変化を通じてさらに引き立てられ、物語の感情的な流れを視覚的に支えました。
キャスト
- ダイアン・レイン:コニー・サムナー(専業主婦、不倫に溺れる女性)
- リチャード・ギア:エドワード・サムナー(コニーの夫、会社経営者)
- オリヴィエ・マルティネス:ポール・マーテル(若いフランス人ブックディーラー)
- エリック・パー・サリヴァン:チャーリー・サムナー(コニーとエドワードの息子)
- チャド・ロウ:ビル・ストーン(エドワードの友人)
- ケイト・バートン:トレイシー(コニーの友人)
- マーガレット・コリン:サリー(コニーの友人)
- ミシェル・モナハン:リンゼイ(小さな役、後のキャリアで注目)
- ドミニク・キアニーズ:フランク・ウィルソン(刑事)
- ジェリコ・イヴァネク:エミール(ポールの知人)
- マイケル・エマーソン:ジョシュ(エドワードの従業員)
スタッフ
- 監督・製作:エイドリアン・ライン
- 製作:G・マック・ブラウン
- 製作総指揮:ピエール・リチャード・ミューラー、ローレンス・スティーヴン・マイヤース、アーノン・ミルチャン
- 原作:クロード・シャブロル(『不貞の女』)
- 脚本:アルヴィン・サージェント、ウィリアム・ブロイルス・Jr.
- 撮影:ピーター・ビジウ
- 編集:アン・V・コーツ
- 音楽:ヤン・A・P・カズマレック
- 衣装デザイン:エレン・ミロジニック
- 美術監督:ジョン・カスダ
- セット装飾:スーザン・ボード
まとめ
『運命の女』は、エイドリアン・ライン監督の巧みな演出とダイアン・レインの圧倒的な演技力により、不倫という普遍的なテーマを深く掘り下げた作品です。コニーの衣装やメイク、髪型の変化は、彼女の内面の揺れを視覚的に表現し、物語の感情的な重みを増しています。リチャード・ギアやオリヴィエ・マルティネスら共演者の演技も見事で、心理的な緊張感とサスペンスが絶妙に融合。愛と裏切りの間で揺れる夫婦の姿は、観客に多くの問いを投げかけ、深い余韻を残します。本作は、官能とサスペンスが見事に調和した現代の名作と言えるでしょう。
レビュー 作品の感想や女優への思い