2010年公開の中国コメディ映画『Lost on Journey』(原題:人在囧途)は、春節の帰省ラッシュを背景に、傲慢な実業家と純朴な出稼ぎ労働者の奇妙な旅を描く。ユーモアと社会問題を融合した心温まる物語。女優リー・マンが物語の序盤で重要な役割を果たします。
基本情報
- 原題:人在囧途
- 英題:Lost on Journey
- 公開年:2010年
- 製作国:中国
- 上映時間:95分
あらすじ
『Lost on Journey』(原題:人在囧途)は、2010年に公開された中国のコメディ・ドラマ映画で、春節(中国の旧正月)の帰省ラッシュ「春運」を舞台に、2人の対照的な男性の旅路を描いた作品です。主人公の李成功(リー・チェンゴン、シュー・ジェン)は、傲慢で裕福な玩具会社社長で、家族と春節を過ごすため湖南省長沙市へ向かう予定です。しかし、愛人マニ(リー・マン)との関係に悩みつつ、空港で純朴な出稼ぎ労働者、牛耿(ニウ・ゲン、ワン・バオチャン)と出会います。牛耿は未払い賃金を回収するため長沙へ向かう途中です。二人は飛行機の欠航や偽造チケット、橋の崩落など、さまざまなトラブルに巻き込まれ、飛行機、列車、バス、果てはトラクターでの移動を余儀なくされます。旅の中で、李成功は自己中心的な性格を見直し、牛耿の純粋さと誠実さに影響を受け、人生の価値観を変化させていきます。最終的に、家族の大切さや信頼の重要性を学び、成長した李成功は愛人との関係を清算し、牛耿にも恩を返す決断をします。この映画は、コメディの軽快さと社会問題への深い洞察を融合させ、中国社会の現実をユーモラスに描き出しています。
女優の活躍
本作には複数の女優が出演していますが、主要な女性キャラクターは以下の通りです。
リー・マン(愛人・マニ役)
李成功の愛人であるマニを演じたリー・マンは、物語の序盤で重要な役割を果たします。彼女の登場シーンは短いものの、李成功の私生活の複雑さを象徴し、彼の葛藤を浮き彫りにします。リー・マンの演技は、愛人としての魅力と同時に、自己主張の強いキャラクターを自然に表現しています。
ズオ・シャオチン(妻・メイリー役)
李成功の妻メイリーを演じたズオ・シャオチンは、物語の後半で登場し、家族の温かさと安定感を体現します。彼女の穏やかで包容力のある演技は、李成功の心の変化を引き立てる重要な要素となっています。
ジャン・シーニー(詐欺師の女性教師役)
旅の途中で出会う「乞食」と見せかけた女性教師を演じたジャン・シーニーは、短い登場時間ながら強い印象を残します。彼女の演技は、最初は怪しげな雰囲気を持ちつつ、実は心優しい人物であるという二面性を巧みに表現し、物語に深い感動を与えています。
ファン・シャオレイ(ホテルの女性役)
脇役として登場するファン・シャオレイ(黄小蕾)は、コミカルなシーンで軽快な演技を見せ、旅のユーモラスな雰囲気を高めます。
リー・シャオルー(偽造品売り役)
ナナ役として登場するリー・シャオルー(李小璐)は短いシーンでコミカルかつエネルギッシュな演技を披露し、物語に彩りを添えています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、キャラクターの社会的背景や個性を反映しており、春運の混雑したリアルな環境に合わせた自然なデザインが特徴です。
衣装やメイクは、春運の雑多な環境やキャラクターの社会的立場を反映しつつ、視覚的に物語のコントラスト(都会と地方、富裕層と労働者階級)を強調しています。
リー・マン(マニ)
愛人役のリー・マンの衣装は、都会的で洗練されたスタイルが強調されています。タイトなドレスやコートに、華やかなメイク(赤い口紅や濃いアイライン)が施され、魅惑的な雰囲気を演出。髪型はゆるやかなウェーブのかかったロングヘアで、現代的な女性像を表現しています。
ズオ・シャオチン(メイリー)
妻メイリーの衣装は、シンプルで家庭的な印象を与えるもの。落ち着いた色のセーターやスカートに、ナチュラルメイク(薄いファンデーションと淡いリップ)が施され、優しさと温かみを強調。髪型は自然なストレートのミディアムヘアで、清潔感のある家庭的なイメージを構築しています。
ジャン・シーニー(女性教師)
詐欺師と見せかけた女性教師の衣装は、最初はみすぼらしいコートやスカーフで「乞食」らしい外見を演出。しかし、教師としての本性が明らかになると、シンプルなブラウスとスカートに変わり、誠実さを表現。メイクはほぼすっぴんに近く、髪型は簡素なポニーテールで、純朴な印象を与えます。
ファン・シャオレイ(ホテルの女性)
彼女の衣装は、カジュアルなトップスとジーンズで、庶民的な雰囲気。メイクは控えめで、髪型はショートカットまたは軽く巻いたヘアで、親しみやすさを演出しています。
リー・シャオルー(ナナ)
偽造品売りのナナは、カラフルで派手な衣装(派手な柄のトップスやアクセサリー)が特徴。メイクは明るいチークとピンクの口紅で、若々しくエネルギッシュな印象。髪型はポニーテールやアップスタイルで、活発なキャラクターを強調しています。
解説
『Lost on Journey』は、中国の春節における帰省ラッシュ「春運」を背景に、ユーモアと社会批判を織り交ぜた作品です。春運は、毎年数億人が移動する世界最大規模の人口移動であり、チケットの入手困難さや交通機関の混乱が社会問題となっています。本作は、この現実をコミカルに描きつつ、貧富の格差や都市と地方の対立、信頼と裏切りといったテーマを探求します。監督レイモンド・イップ(イップ・ワイマン)は、ジョン・ヒューズの『プレーンズ、トレインズ&オートモービルズ』(1987年)に着想を得て、対照的な二人の主人公を通じて、中国社会の多面性を浮き彫りにしました。シュー・ジェンとワン・バオチャンの息の合った演技は、笑いと感動のバランスを絶妙に保ち、観客に深い印象を与えます。特に、ワン・バオチャン演じる牛耿の純朴さと楽観主義は、物語に希望の光をもたらし、シュー・ジェン演じる李成功の冷酷な性格との対比を通じて、成長と和解の物語を強調しています。映画は、表面的なコメディだけでなく、人間性や信頼の大切さを訴える深いメッセージを持ち、中国国内で高い評価を受けました(興行収入4650万元、予算950万元)。また、2012年に公開された続編『Lost in Thailand』も大ヒットし、本作の人気をさらに広げました。
キャスト
- シュー・ジェン(李成功):傲慢な実業家
- ワン・バオチャン(牛耿):純朴な出稼ぎ労働者
- リー・マン(マニ):李成功の愛人
- ツゥオ・シャオチン(メイリー):李成功の妻
- ジャン・シーニー(女性教師):詐欺師と見せかけた教師
- ホアン・シャオレイ:ホテルの女性
- リー・シャオルー:偽造品売りナナ
- ジャン・チャオ:バスで出会うハンサムな男性
- マー・ジェン:偽造品売りのダマ
スタッフ
- 監督:レイモンド・イップ(イップ・ワイマン)
- 脚本:リウ・イーウェイ、ティエン・ユーシェン、シー・チェンユン、シュー・ユアンフェン
- 製作:マンフレッド・ウォン
- 撮影:マイケル・ツイ(スイ・コン・ツイ)
- 編集:レオン・クウォック・ウィン
- 音楽:ケイ・チャン(クウォン・ウィン・チャン)
- 美術監督:ハオユー・ヤン
- 衣装デザイン:ホンヤン・ジャン
- メイクアップ:ジージュアン・チウ(キー・メイクアップ・アーティスト)
レビュー 作品の感想や女優への思い