『悪魔は誰だ』(原題:몽타주)は、2013年公開の韓国サスペンス映画。15年前の未解決誘拐事件を追う母親と刑事、そして新たな事件が絡み合う。巧みな伏線と心理戦が織りなす緊張感溢れるストーリーで、正義と復讐の境界を問う。監督:チョン・グンソプ、主演:オム・ジョンファ、キム・サンギョン。
基本情報
- 邦題:悪魔は誰だ
- 原題:몽타주
- 英題:Montage
- 公開年:2012年
- 上映時間:120分
- 製作国:韓国
- ジャンル:スリラー
予告編はこちら。
あらすじ
15年前の誘拐事件で娘を失ったハギョン。その担当刑事・チョンホは事件が公訴時効を迎える5日前に現場を訪れ、そこに手向けられた1輪の花を見つけました。彼はそれを手掛かりに捜査を再開し、時効まで残り数時間のところで犯人を視界に捉えるのですが…。
キーワード
公訴時効、児童誘拐、身代金、偽札、完全犯罪の再現、音声分析、声紋、カセットテープ、モンタージュ写真、誘拐殺人、どんでん返し
見どころ
- 主演のオム・ジョンファが娘を失った母親を演じ、韓国の映画賞で最優秀主演女優賞を受賞。
- 時効が迫るハラハラ感と、誰にも予測できない結末に驚愕。ファンタジーではないリアルなタイムマシンに乗ったよう。
- 2つのカセットテープを音声分析した結果、声紋が一致するものの、一致のあり方が予想外。
ファム・ファタル
主演のオム・ジョンファがやつれた中年女性を演じています。黒のニットシャツ、グレーのカーディガンに紺の膝丈スカート。足元は黒の靴下とローヒールシューズ。ひたすらこの服装だけで、自分が納得いくまで、地味に娘の誘拐犯人を突き止めていきます。
女優の活躍
本作の主演であるオム・ジョンファは、誘拐事件で娘を失った母親、ハギョン役を熱演しました。彼女は韓国を代表する女優であり、歌手としても成功を収めたマルチタレントとして知られています。『悪魔は誰だ』では、深い悲しみと執念を抱える母親の複雑な心理を繊細かつ力強く表現し、観客に強い印象を与えました。特に、事件の真相を追い求める過程で、絶望から希望、そして再び葛藤へと揺れ動く感情の機微を見事に演じ切っています。オム・ジョンファは、過去にも『マリッジ・イズ・ア・クレイジー・シング』(2002年)や『ダンシング・クィーン』(2012年)などで幅広い役柄を演じており、本作でもその演技力の高さを遺憾なく発揮。彼女の演技は、物語の重厚なテーマを支える柱となり、批評家からも高い評価を受けました。特に、感情を爆発させるシーンと静かな哀しみを湛えた表情の対比は、観る者の心を強く打ちます。
女優の衣装・化粧・髪型
オム・ジョンファ演じるハギョンの衣装は、彼女のキャラクター設定である「娘を失った母親」を反映した、控えめで現実的なデザインが特徴です。普段着はシンプルなシャツやカーディガン、ダークトーンのパンツなど、日常的で飾らないスタイルが中心。これにより、彼女の悲しみや生活の重さが視覚的に表現されています。物語が進むにつれ、彼女の服装はわずかに変化し、真相を追う決意を象徴するような、シャープで機能的なジャケットやコートが登場します。メイクアップは、ナチュラルでほとんど施されていないように見えるほど控えめです。ハギョンは、事件のトラウマに苛まれる母親として、疲れた表情や赤く腫れた目元が強調され、感情の重さを引き立てています。特に、涙を流すシーンでは、彼女の素顔に近いメイクがリアルな感情を際立たせ、観客に共感を誘います。ヘアスタイルは、肩までの長さのストレートヘアで、シンプルにまとめられることが多いです。時に乱れた髪が彼女の内面的な混乱を表現し、物語後半では髪を束ねたスタイルが、決意と行動力を象徴しています。これらの要素は、キャラクターの心理状態やストーリーの進行に密接に連動しており、視覚的な物語の一部として機能しています。
解説
『悪魔は誰だ』は、誘拐事件を軸に、過去と現在の事件が交錯するサスペンス・スリラーです。物語は、15年前に娘を誘拐され、犯人が捕まらなかった母親ハギョン(オム・ジョンファ)と、事件を担当していた刑事チョンホ(キム・サンギョン)が、時効直前に新たな手がかりを見つけることから始まります。同時期に発生した類似の誘拐事件が、過去の事件との関連性を匂わせ、物語は複雑な心理戦と予想外の展開へと進みます。本作の魅力は、単なる犯罪捜査にとどまらず、正義、復讐、贖罪といったテーマを深く掘り下げている点にあります。ハギョンの視点からは、娘を失った母親の執念と苦悩が描かれ、チョンホの視点からは、刑事としての責任感と無力感が浮き彫りにされます。さらに、過去の事件の被害者と加害者の関係性が明らかになるにつれ、観客は「悪魔」とは誰なのかを考えさせられます。監督のチョン・グンソプは、緻密な脚本とテンポの良い編集で、緊張感を最後まで維持。伏線が巧みに張り巡らされ、終盤のどんでん返しは観客に衝撃を与えます。また、本作は韓国映画特有の感情的な深さと、社会的なメッセージを融合させています。誘拐という重いテーマを通じて、家族の絆や正義の曖昧さを問い、観る者に深い余韻を残します。特に、オム・ジョンファの演技は、物語の感情的な核となり、観客を引き込む力となっています。
キャスト
- オム・ジョンファ(엄정화):ハギョン役。娘を誘拐された母親で、真相を追い求める執念を体現。
- キム・サンギョン(김상경):チョンホ役。事件を追う刑事で、過去の失敗に苛まれる。
- ソン・ヨンチャン(송영창):ハン役。重要な鍵を握る謎めいた人物。チ
- ョ・ヒボン(조희봉):刑事の同僚役で、捜査をサポート。
- ユ・スンモク(유승목):事件に関わる脇役で、物語に深みを加える。
- チョン・ヘギュン(정해균):捜査に協力する人物。
- パク・チョルミン(박철민):コミカルな要素を加える脇役。
監督はチョン・グンソプで、彼の緻密な演出がキャストの演技を引き立てています。特にオム・ジョンファとキム・サンギョンの掛け合いは、物語の緊張感と感情のぶつかり合いを効果的に表現。脇役陣もそれぞれの役割をしっかりと果たし、物語のリアリティを高めています。
総括
『悪魔は誰だ』は、韓国サスペンス映画の傑作の一つとして、緻密なストーリー展開とオム・ジョンファの圧倒的な演技力が光る作品です。衣装やメイク、ヘアスタイルはキャラクターの内面を反映し、物語の重厚さを視覚的に補強。深いテーマと感情的な共感を呼び起こす本作は、サスペンスファンだけでなく、広く観客に訴えかける力を持っています。
レビュー 作品の感想や女優への思い