『クローズド 招かれた者たち』(原題:The Body Tree)は、2017年に公開されたロシア、スペイン、米国合作のホラー・スリラー映画。シベリアの呪われた木を巡る恐怖と復讐の物語で、若者たちが謎の儀式に巻き込まれ、血塗られた過去と対峙します。緊張感あふれる展開が魅力です。
クローズド 招かれた者たち
- 邦題:クローズド 招かれた者たち
- 原題:The Body Tree
- 公開年:2017年
- 製作国:ロシア、スペイン、米国
- 上映時間:97分
- ジャンル:ホラー
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見どころ
犯人捜しのサスペンスから、悪霊が現れるホラー展開、そして愛憎飛び交う本性の暴きあいと、ジャンルを問わない物語展開が新鮮。虚を突いてくる多様な演出も面白い。
あらすじ
アメリカの大学生グループが、友人のアリスを追悼するため、彼女の故郷であるロシアのシベリアを訪れます。アリスは不思議な死を遂げており、その真相を探るため、彼女の恋人だったブランドンや友人たちが現地へ向かいます。彼らはアリスの叔父エリックに導かれ、シベリアの奥深くにある神秘的な「ボディ・ツリー」と呼ばれる木を訪れることになります。この木は、地元で呪われた存在として恐れられ、古代の儀式と結びついています。
一行は現地のガイドであるナターシャやその友人たちと合流し、儀式に参加しますが、そこで異様な出来事が次々と発生。参加者の一人が不可解な死を遂げ、グループ内に不信感と恐怖が広がります。やがて、彼らはアリスの死が単なる事故ではなく、ボディ・ツリーにまつわる呪いと深い関係があることを知ります。過去の復讐、裏切り、そして超自然的な力が絡み合い、生き残りをかけた壮絶な戦いが始まります。果たして、彼らは呪いから逃れ、真実を解き明かせるのでしょうか。
感想
ホラーにありがちなダークなユーモアとヒッチコックのようなミステリーもあります。
本作は『10人のインディアン』や『シング』などの映画から大きな影響を受けていますが、プロットは独創的な方法で物事を覆してくれます。
出演者たちの演技も十分。登場人物は彼らの運命に関心をもてるほど成長しています。
ただ、途中、犯人探しを憑依と結びつけてたどっていく場面が何度もありますが、互いを罵り合いあい、うるさくて退屈。
アルタイ山脈からのドローンの写真が気に入りました。
ファム・ファタル
- イヴァンナ・ザクノが演じるヘレンのベッドシーン。薄いブロンドのロングヘア、色白の肌、背景の雪景色がマッチしてます。
- サンドラを演じたエマ・デュモンがミシェル・ファイファー型の爬虫類型。最後の場面でみせた笑顔が不気味に素敵。
女優の活躍
本作では、複数の女性キャラクターが物語の鍵を握ります。特に注目すべきは、アリス役のエリカ・ダッシャー(Erica Dasher)とヘレン役のエマ・デュモン(Emma Dumont)です。
エリカ・ダッシャー(アリス役)
エリカ・ダッシャーは、シベリアの現地ガイドであるアリスを演じ、物語の中心的な役割を担います。ナターシャは地元の文化やボディ・ツリーの伝承に詳しいキャラクターで、ミステリアスな魅力と強い意志を持っています。ダッシャーは、アリスの複雑な感情―地元への誇りと、外部者への不信感―を巧みに表現。特に、儀式のシーンでの緊張感ある演技は、観客を引き込む力があります。彼女の存在感は、物語の異文化的な要素を強調し、ホラーの不気味な雰囲気を高めています。
エマ・デュモン(ヘレン役)
エマ・デュモンは、アリスの友人であるヘレンを演じ、グループの中でも感情的なキャラクターとして際立ちます。彼女の演技は、恐怖と悲しみが交錯するシーンで特に光ります。ヘレンは、物語が進むにつれて精神的に追い詰められる役柄で、デュモンはその心理的変化を繊細に表現。彼女の叫び声や怯えた表情は、ホラー映画の定石を効果的に活かしています。
小括
両女優ともに、ホラー映画における女性キャラクターの典型である「悲鳴を上げるヒロイン」を超え、物語に深みを与える演技を見せています。彼女たちの活躍は、男性キャラクターとの対比を通じて、グループ内の力学や人間関係の複雑さを浮き彫りにします。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、シベリアの過酷な環境とキャラクターの個性を反映しています。
エリカ・ダッシャー(アリス)
アリスの衣装は、シベリアの寒冷な気候に適した実用的でラフなスタイルが中心です。厚手のコートやブーツ、ウールの手袋といった防寒具を着用し、ダークトーンのカラーパレット(グレー、ブラック、ダークグリーン)が彼女のミステリアスな雰囲気を強調。化粧は控えめで、ナチュラルなベースメイクに薄いリップカラーを使用し、過酷な環境での生活感を表現しています。髪型は、シンプルなポニーテールや緩いウェーブで、動きやすさと自然体を優先。物語が進むにつれ、儀式のシーンでは伝統的なロシアの装飾品を身につけ、神秘的な要素が加わります。
エマ・デュモン(ヘレン)
ヘレンの衣装は、アメリカの大学生らしいカジュアルなスタイルから始まります。ジーンズやスウェット、明るい色のジャケットを着用し、若々しさと無垢さを表現。化粧は、ピンクやコーラル系のチークとリップで、若さと活力を強調していますが、物語の後半では恐怖と疲労でメイクが乱れる描写が、彼女の心理状態を視覚的に示します。髪型は、ルーズなロングヘアで、序盤はカジュアルな魅力がありますが、物語が進むにつれて乱れ、ホラー映画らしい「追い詰められたヒロイン」のイメージを強化します。
衣装や髪型の変化は、キャラクターの感情や状況の変化を象徴しており、ホラー映画の視覚的ストーリーテリングに貢献しています。
解説
『クローズド 招かれた者たち』は、ホラーとスリラーの要素を融合させた作品で、異文化の衝突や人間の欲望、復讐のテーマを掘り下げています。シベリアの寒々とした風景や、神秘的かつ不気味な「ボディ・ツリー」の設定は、視覚的にも心理的にも観客に強い印象を与えます。物語は、若者たちの軽率な行動と、それが引き起こす壊滅的な結果を通じて、ホラー映画の定番である「知的好奇心の代償」を描いています。
本作の特徴の一つは、多国籍な製作背景です。ロシア、スペイン、米国の合作により、文化的なニュアンスが交錯し、独特の雰囲気を作り出しています。ロシアの民間伝承や呪術的要素が物語の基盤となり、欧米のホラー映画のスタイルと融合。低予算ながらも、効果的な演出と緊張感のあるストーリー展開で、ホラーファンに一定の満足感を提供します。ただし、キャラクターの掘り下げがやや浅い点や、ストーリーの一部に整合性の欠如が見られるため、批評家からは賛否両論の評価を受けました。
キャスト
- エリカ・ダッシャー(Erica Dasher):アリス役。地元のガイドで、ボディ・ツリーの秘密を知るキーパーソン。
- エマ・デュモン(Emma Dumont):ヘレン役。アリスの友人で、感情的なキャラクター。
- コスタ・ローニン(Kosta Ronin):エリック役。アリスの叔父で、儀式を主導する謎めいた人物。
- マーク・ガスパー(Marc Gasper):ブランドン役。アリスの恋人で、グループのリーダー格。
- ナディア・アレクサンダー(Nadia Alexander):アリス役(回想シーン)。物語の発端となる亡魂。
出演者 | 登場人物 |
---|---|
エリカ・ダッシャー | アリス |
エマ・デュモン | サンドラ |
カイル・ジョーンズ | マイク |
ジーン・ファーバー | ピョートル |
イヴァンナ・ザクノ | ヘレン |
サム・ハミル | レズ |
マーク・ボルコウスキー | ジェフ |
コスタ・ローニン | セルゲイ |
アレックス・スパロウ | エリック |
メイソン・マック | ダン |
マイケル・カーデル | トニー |
クリス・ペトロフスキー | ブランドン |
アナ・フラヴィア・ガヴラック | カーラ |
ジェイミー・アロンソン | ジェフのパーティーグッズ |
ロクサン・ムノス | パーティーメンバー |
スタッフ
- 監督:トーマス・ダン。本作が長編デビュー作となるトーマス・ダンは、低予算ながら効果的な演出でホラーとスリラーのバランスを保ちました。シベリアの風景を活かした映像美が特徴です。
- 脚本:トーマス・ダン、ナターシャ・カーマニョーラ。民間伝承と現代のホラー要素を融合させ、独自の物語を構築。
- 撮影:コリン・バーンズ。シベリアの荒涼とした風景を捉え、緊張感と不気味さを強調。
- 音楽:ナヴィッド・ヘジャジ。不協和音を活用したスコアで、ホラー映画の雰囲気を高めています。
- 製作:マリオ・グラシア、トーマス・ダン。多国籍のチームをまとめ、国際的な視点を取り入れた作品を完成。
担当 | 担当者 |
メイクアップ主任 | レイニー・シャンタル |
メイクアップ | ミシェル・R・ミラー |
メイクアップ | キャサリン・パッシェン |
まとめ
『クローズド 招かれた者たち』は、シベリアの神秘的な設定とホラー・スリラーの融合が魅力の作品。エリカ・ダシュコとエマ・デュモンの演技は、物語に感情的な深みを加え、衣装や髪型もキャラクターの変化を効果的に表現。低予算ながらも、独特の雰囲気と緊張感でホラーファンを引き込みます。キャストとスタッフの国際的なコラボレーションが、異文化の融合という本作のテーマを象徴しています。ホラー映画としての完成度は賛否両論ですが、独特の設定と視覚的魅力は一見の価値があります。
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