『My Sweet Audrina』(2016年)は、V.C.アンドリュースの小説を原作としたTV映画。孤立した屋敷に住む少女オードリナが、亡魂とされる姉の悪夢に悩まされ、過去の真実を解き明かすゴシック・ミステリー。家族の秘密と心理的葛藤を描く。
基本情報
- 原題:My Sweet Audrina
- 公開年:2016年
- 製作国:米国
- 上映時間:85分
あらすじ
『My Sweet Audrina』は、V.C.アンドリュースの同名小説を基にした2016年公開のTV映画で、ゴシック・ミステリーと心理ドラマの要素を織り交ぜた作品です。物語は、バージニア州の孤立した屋敷「ホワイトファーン」に住む少女オードリナ・エイデア(インディア・アイズリー)を中心に展開します。彼女は、9歳の時に悲劇的な事件で死に、家族に「完璧な存在」として神聖視される「初代オードリナ」という姉の影に悩まされています。父ダミアン(ジェームズ・タッパー)は、彼女を外界から隔離し、ホームスクーリングを強制。オードリナは姉の悪夢に繰り返し悩まされ、自身の記憶や現実が曖昧なまま成長します。
ある日、魅力的なピアニスト、アーデン・ロウ(ウィリアム・モーズリー)が現れ、オードリナにピアノを教えることになります。彼との交流を通じて、彼女は家族の異常な束縛や屋敷に隠された秘密に疑問を抱き始めます。姉の死の真相、父の過剰な保護、義姉ヴェラ(テス・アトキンス)の挑発的な態度、そして母ルシアン(キルスティン・ロベック)の冷淡さ――これらが絡み合い、オードリナは自らの過去と向き合うことになります。物語は、家族の闇とトラウマが明らかにされる過程で、衝撃的な真実が浮かび上がるサスペンスフルな展開を見せます。
解説
『My Sweet Audrina』は、V.C.アンドリュースの作品特有のゴシックな雰囲気と家族内の複雑な心理戦を描いた作品です。原作は1982年に出版され、彼女の他のシリーズ(例:『屋根裏部屋の花たち』)とは独立した物語として知られています。テレビ映画化にあたり、Lifetimeは原作のダークで複雑なテーマを一部簡略化し、一般視聴者向けにエロティックなスリラー要素やソープオペラ風のドラマ性を強調しました。しかし、原作の持つゴシックホラーの独特な雰囲気は、屋敷のセットデザインや撮影技術によってある程度再現されています。屋敷の装飾や薄暗い照明は、閉鎖的で不気味な世界観を効果的に表現し、視覚的に魅力的な作品となっています。
ただし、原作ファンからは、脚本が原作の複雑な心理描写や奇抜な要素を十分に反映していないとの批判もあります。特に、原作の独特なプロットやキャラクターの深みが薄められ、テレビ向けに標準化された点が指摘されています。それでも、家族の秘密、トラウマ、アイデンティティの探求というテーマは、視聴者に感情的な共鳴を呼び起こす力を持っています。
女優の活躍
本作の主演を務めるインディア・アイズリー(オードリナ役)は、若手女優として注目を集める存在です。彼女は、繊細で傷つきやすい少女像を見事に演じ、観客にオードリナの不安や混乱を伝えました。アイズリーの演技は、特に悪夢のシーンや家族との緊張感ある対話で光り、感情の揺れを表情や仕草で丁寧に表現しています。彼女のキャリアにおいて、本作は『アンダーワールド 覚醒』(2012年)などアクション寄りの役柄とは異なる、心理的な深みを要求される役で新たな一面を見せました。
テス・アトキンス(ヴェラ役)は、オードリナの義姉として意地悪で挑発的なキャラクターを演じ、物語に緊張感を加えました。彼女の演技は、嫌味な魅力と計算高さをバランスよく表現し、観客に強い印象を残します。アトキンスは、ヴェラの複雑な動機や嫉妬心を体現し、物語の対立軸を強化しました。キルスティン・ロベック(ルシアン役)も、冷たく距離を置く母親役として存在感を発揮。彼女の抑えた演技は、家族の不和を象徴する重要な要素となっています。
女優の衣装・化粧・髪型
本作の衣装、化粧、髪型は、ゴシックな雰囲気と1980年代のレトロなスタイルを融合させ、物語の時代感とキャラクターの個性を強調しています。
インディア・アイズリー(オードリナ)
オードリナの衣装は、控えめで清楚なデザインが中心。淡い色のドレスやブラウスは、彼女の純粋さと孤立感を象徴します。化粧はナチュラルで、薄いリップと軽いアイメイクが施され、少女らしい無垢さを強調。一方で、悪夢のシーンでは、やや濃い目のアイシャドウが彼女の不安定な精神状態を表現しています。髪型は、緩やかなウェーブのロングヘアで、しばしばリボンやヘアバンドでまとめられ、若さと閉鎖的な生活を反映しています。
テス・アトキンス(ヴェラ)
ヴェラの衣装は、対照的に大胆で挑発的。タイトなスカートや鮮やかな色のトップスが、彼女の自信と計算高さを表現します。化粧は、濃いアイライナーと赤いリップで、セクシーで攻撃的な印象を与えます。髪型は、ボリュームのあるカールやアップスタイルで、派手さと自己主張を強調。彼女のスタイルは、オードリナとの対比を際立たせ、物語の緊張感を高めます。
キルスティン・ロベック(ルシアン)
ルシアンの衣装は、上品だが冷たく、モノトーンのドレスやシンプルなスーツが中心。化粧は控えめで、薄いファンデーションと淡いリップが彼女の感情的な距離感を表現。髪型は、きっちりとまとめたアップスタイルで、厳格で抑圧的な母親像を強調しています。
これらのビジュアル要素は、キャラクターの心理や関係性を視覚的に補強し、ゴシックな世界観を強化しています。
キャスト
- インディア・アイズリー(オードリナ・エイデア):主人公。家族の秘密に翻弄される少女。
- ウィリアム・モーズリー(アーデン・ロウ):オードリナのピアノ教師で、恋愛対象となる青年。
- ジェームズ・タッパー(ダミアン・エイデア):過保護で支配的なオードリナの父。
- テス・アトキンス(ヴェラ):オードリナの義姉で、意地悪なライバル。
- キルスティン・ロベック(ルシアン・エイデア):感情的に冷たいオードリナの母。
その他、ハンナ・チェルカスク(初代オードリナ)など。
スタッフ
- 監督:マイク・ロール。テレビ映画のベテランで、感情的なドラマを得意とする。
- 脚本:スカーレット・レイシー。原作の複雑なプロットをテレビ向けにアレンジ。
- 原作:V.C.アンドリュース。ゴシック小説の巨匠。
- 製作:Lifetimeネットワーク。家族ドラマやサスペンスを得意とする。
- 撮影:ジェームズ・リストン。ゴシックな屋敷の雰囲気を効果的に捉える。
- 音楽:マシュー・マージェソン。ミステリアスで情感豊かなスコアを提供。
- セットデザイン:ゴシック建築を基調とした屋敷の装飾が、物語の不気味さを強調。
総評
『My Sweet Audrina』は、V.C.アンドリュースの原作の持つ独特なゴシックホラーの魅力を、テレビ映画として部分的に再現した作品です。インディア・アイズリーの繊細な演技や、屋敷の視覚的魅力は高く評価されますが、原作の深みを全て捉えきれなかった点は惜しまれます。衣装や化粧はキャラクターの対比を際立たせ、物語の緊張感を高める役割を果たしました。家族の秘密やトラウマを探求するテーマは、ゴシックファンや心理ドラマ愛好者に訴えかけるでしょう。Lifetimeの典型的なスタイルに収束しつつも、独特な世界観は視聴者を引き込む力を持っています。
レビュー 作品の感想や女優への思い