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内海の輪

「見どころ」にPR表現を含みます。

『内海の輪』は松本清張原作のサスペンス映画。山田信夫と宮内婦貴子が脚色し、斎藤耕一が監督。松本清張作品の中でも珍しく「女性心理」を露出させたことで注目を浴びたサスペンス。愛媛の呉服屋女将と東京の考古学者が不倫に陥り、殺人事件に巻き込まれる心理劇。岩下志麻の繊細な演技が光る。

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基本情報

  • 邦題:内海の輪
  • 公開年:1971年
  • 製作国・地域:日本
  • 上映時間:103分
  • ジャンル:サスペンス、ドラマ
  • 公式サイト:shochiku.co.jp

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女優の活躍

本作の主演女優は岩下志麻で、彼女の演技が作品の中心を成しています。岩下志麻は愛媛県松山市の老舗呉服店「加賀屋」の女将、志保役を熱演します。この役柄は、夫の浮気による心の傷を抱えながら、東京出張の際に考古学者の江村宗三と出会い、禁断の恋に落ちる複雑な女性像です。岩下志麻は、日常の穏やかな妻として振る舞う表層的な表情から、恋の喜び、罪悪感、恐怖、そして絶望に至るまでの感情の揺らぎを、微妙な視線や仕草で表現します。特に、不倫の秘密が露呈し、殺人容疑に追い込まれるクライマックスのシーンでは、静かな嗚咽や震える手つきが観客の心を強く打ちます。彼女の演技は、松本清張作品に欠かせない「普通の女性の内面的崩壊」を体現しており、1971年のキネマ旬報ベストテン女優賞に選ばれるほどの評価を受けました。

また、水上龍子が演じる江村の妻・美奈子役も重要な脇役で、夫の不倫を知りながらも耐え忍ぶ苦悩を、控えめながらも深い情感で描き出しています。北城牧子は志保の知人役として登場し、女性同士の会話を通じて物語の緊張を高めます。

これらの女優たちは、男性中心のサスペンスの中で、女性の心理を多角的に照らし出す活躍を見せ、作品の深みを増しています。岩下志麻のキャリアの中でも、この役は彼女の代表作の一つとして語り継がれ、後年のインタビューで「志保の孤独が自分に重なった」と語るほど没入した演技だったそうです。

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女優の衣装・化粧・髪型

女優たちの衣装、化粧、髪型は、1971年の時代背景と役柄の性格を反映した上品で現実的なスタイルが特徴です。主演の岩下志麻が演じる志保は、呉服屋の女将として和服を主に着用します。日常シーンでは、淡い青や緑の地味な小紋柄の着物に、控えめな帯を締め、足元は草履を履く姿が登場します。これは、伝統的な地方の商家妻の質実剛健さを表しており、贅沢を排した布地が彼女の内気な性格を強調します。一方、東京での不倫シーンでは、モダンな洋装にシフトし、膝丈のワンピースやシンプルなブラウスにスカートを合わせ、柔らかなシルエットのコートを羽織ります。これらの衣装は、地方から都会への移行を象徴し、恋の開放感を視覚的に表現しています。化粧はナチュラルメイクが基調で、薄いファンデーションに淡いピンクのリップ、細く引かれたアイラインが特徴です。まつ毛は長く自然にカールさせ、目元の印象を柔らかく保ちつつ、感情の高まりで涙がにじむシーンでは、素顔の儚さが際立ちます。髪型はワンレングスのセミロングで、軽くウェーブをかけ、ストレートに下ろしたスタイルが主流です。和服時には後れ髪をまとめ、洋装時には軽く巻いて優雅さを加えています。この髪型は、1970年代初頭の日本女性の流行を反映しつつ、志保の年齢層(30代後半)を考慮した大人の落ち着きを演出します。

水上龍子が演じる美奈子役は、大学教授の妻としてエレガントな洋服を着用し、膝下丈のドレスやツイードのジャケットが目立ちます。化粧は少し濃いめで、赤みがかったリップとアイシャドウが知的な印象を与え、髪型はショートボブに軽いパーマをかけ、洗練された都会女性を体現します。北城牧子の役は、地味なブラウスとスカートの組み合わせで、化粧は最小限、髪はポニーテールやお団子で素朴さを強調します。これらのスタイリングは、監督の斎藤耕一が女性の内面を外見で語る意図を反映し、衣装デザイナーの細やかな仕事が光ります。全体として、派手さを避けたリアリズムが、松本清張の心理描写を支えています。

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あらすじ

愛媛県松山市の老舗呉服店「加賀屋」の女将、志保(岩下志麻)は、夫の浩一(入川保則)が愛人との関係を続けていることを知りながら、表面上は平穏な家庭を保っていました。浩一の浮気相手は店の従業員で、志保は心に深い傷を負っています。そんな中、志保は東京への出張で、考古学者の江村宗三(中尾彬)と出会います。宗三は岡山大学の助教授で、古代遺跡の発掘調査を専門としています。二人は互いの孤独を共有し、やがて情熱的な恋に落ちます。東京のホテルでの逢瀬を繰り返すうち、志保は宗三の過去を知ります。宗三は妻の美奈子(水上龍子)と不和で、以前に愛人を殺害した疑いのある事件に関わっていました。しかし、志保は宗三の魅力に囚われ、関係を深めていきます。

一方、宗三の元愛人、由紀子が宗三を脅迫し始めます。由紀子は宗三の過去の秘密を握っており、金銭を要求します。宗三は志保に相談し、二人は由紀子を始末する計画を立てます。志保は東京から由紀子を呼び出し、伊豆の蓬莱峡で待ち伏せします。激しい争いの末、由紀子は崖から転落死します。この事故を隠蔽するため、宗三と志保は証拠を消去しますが、宗三の同僚である刑事の源三郎(三國連太郎)が事件を嗅ぎつけ、調査を始めます。源三郎は宗三の過去の不審死事件と関連づけ、志保の存在に気づきます。

物語は二重の不倫構造を軸に展開します。志保の夫浩一も実は別の秘密を抱えており、家族の崩壊が並行して描かれます。宗三の考古学調査現場で若い女性の遺体が発見されますが、これは本筋とは無関係のサブプロットとして、宗三の心理的なプレッシャーを高めます。クライマックスでは、志保が宗三の真意に疑問を抱き、互いの愛が殺意に変わる瞬間が訪れます。内海の輪とは、二人が逃れられない運命の輪を象徴し、心理的な閉塞感が頂点に達します。最終的に、事件は解決しますが、二人は永遠の孤独に陥ります。このあらすじは、松本清張の得意とする人間の弱さと社会の圧力を、細やかに描き出しています。

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解説

『内海の輪』は、松本清張の小説「黒の様式」シリーズ第6話「霧笛の町」を原作とした1971年の映画で、松竹が手がけたサスペンスの傑作。監督の斎藤耕一は、戦後日本映画の巨匠として知られ、『野良犬』や『砂の器』などの作品で心理描写に長けていましたが、本作では不倫と殺人の二重構造を、抑制されたタッチで描いています。原作は1968年に『週刊朝日』で連載され、1969年に光文社から刊行された中編集の表題作です。映画化に際し、脚本の山田信夫と宮内婦貴子が関わりましたが、完成後に監督の大幅改訂により、二人は公開状で抗議するエピソードがあり、これが作品の複雑さを象徴します。

テーマの核心は「内海の輪」すなわち、瀬戸内海の閉鎖的な地理がもたらす心理的な束縛です。主人公たちの恋は開放を求めるものですが、地方の伝統と都会の誘惑の狭間で、互いを破壊する運命に陥ります。これは、清張の社会派ミステリーの特徴で、個人の欲望が社会規範に衝突する様を、考古学というモチーフで象徴的に表現しています。宗三の専門である古代遺跡は、過去の秘密が現在を蝕むメタファーであり、発掘シーンは事件の真相を掘り起こすプロセスを並行させています。また、女性の視点から描かれる点が画期的で、岩下志麻の演技がその孤独と情熱を深く掘り下げます。1970年代初頭の日本社会では、戦後復興後の経済成長が家族の崩壊を招く問題が顕在化しており、本作はそれを不倫劇を通じて批評しています。

制作背景として、松竹は1960年代後半から清張作品を積極的に映画化し、『影の車』に続く本作は、会社の方針として年2-3本の清張映画を予定していました。撮影は竹村博が担当し、特殊効果を避け、客観的なカメラワークで主人公の行動を傍観するスタイルを採用。音楽の服部克久は、緊張感を高めるミニマルなスコアで貢献しました。公開当時、広告では「影の車をしのぐ恐怖とセクスの衝撃ドラマ」と宣伝され、岩下志麻のドアップ写真が用いられましたが、批評家からはスケール感の小ささが指摘され、テレビスペシャル風との声もありました。しかし、心理描写の緻密さが評価され、Filmarksでの平均スコアは3.2点と安定しています。後年のTV番組化(1982年、2001年)でも人気を博し、清張作品の定番となりました。本作は、現代のジェンダー観から見ても、女性の抑圧された感情を鋭く描いており、再評価の価値があります。全体として、清張の「人間の業」を丁寧に紡いだ一作です。

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キャスト

  • 岩下志麻:加賀屋の女将・志保
  • 中尾彬:考古学者・江村宗三
  • 三國連太郎:刑事・源三郎
  • 入川保則:志保の夫・浩一
  • 水上龍子:江村の妻・美奈子
  • 北城牧子:志保の知人
  • その他の脇役:由紀子役ほか

スタッフ

  • 原作:松本清張
  • 監督:斎藤耕一
  • 脚本:山田信夫、宮内婦貴子
  • 撮影:竹村博
  • 音楽:服部克久
  • 美術:中古智
  • 編集:村井靖彦
  • 照明:岩倉雄之助
  • 録音:紅谷聡
  • 助監督:小林義明
  • 製作:松竹
  • 配給:松竹

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劇場映画
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洋画好き(字幕派)。だいたいU-NEXTかNetflixで、妻と2匹の猫と一緒にサスペンスやスリラーを観ています。詳細は名前をクリックしてください。猫ブログ「碧眼のルル」も運営。

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