イントゥ・ザ・トラップ
- 原題:Deadly Misconduct/Impropriety
- 公開年:2021年
- 上映時間:90分
- 製作国:米国
- ジャンル:サスペンス、クライム
- 視聴:U-next
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見どころ
仕事と育児に忙殺されるシングルマザーが殺人事件に巻き込まれ、真実を暴くため奔走。幾重にも仕掛けられたトラップや、リスクを顧みず立ち向かうヒロインの姿にハラハラ。
あらすじ
シングルマザーで検事のアニーは、悪評高い弁護士のラーソンに苦戦中。ある夜、ラーソンから取引を求められたアニーは酒に薬物を盛られ、彼の家で意識を失ってしまいます。目覚めたアニーの横では、ラーソンが殺されています。間もなくある男が逮捕されたのですが…。
感想
『イントゥ・ザ・トラップ』は、2021年に公開されたアメリカのサスペンス映画で、監督はナディーム・ソウマ、脚本はナオミ・L・セルフマンが手掛けました。主演はアンナ・マリー・ドビンス、コルト・プラッツ、ルイス・マンディロア。本作は、成功した検察官がライバルの弁護人と一夜を過ごした後、彼の殺害事件に巻き込まれるというスリラー。
『イントゥ・ザ・トラップ』は、低予算のテレビ映画(特にLifetimeネットワーク向け)の典型的な作品で、サスペンスとドラマを織り交ぜた展開が特徴。物語は、検察官アニー・セーガン(アンナ・マリー・ドビンス)が、恋人の浮気を疑い別れた後、ライバル弁護士ダグ・ラーソン(コルト・プラッツ)と一夜を過ごし、彼が殺されているのを発見するところから始まります。この設定は、観客を即座に緊張感のある状況に引き込みますが、全体の実行には賛否両論あり。
まず、映画の強みは、そのペースの速さ。90分の尺の中で、物語は無駄なく進み、次々と展開する事件が視聴者を退屈させません。アニーがダグの死体を発見し、自身が容疑者として疑われる状況に追い込まれるシーンは、サスペンス映画らしい緊迫感をうまく作り出しています。特に、アニーが検察官としてダグの殺人事件を担当することになり、個人的な関与と職業倫理の間で葛藤する姿は、物語に感情的な深みを加えています。ドビンスの演技は、こうした内面的な葛藤を表現する場面で特に光っていました。彼女の声の震えや表情の変化は、アニーの恐怖と決意をリアルに伝えます。
一方で、映画には明らかな欠点もあります。まず、脚本の予測可能性が目立ちます。IMDbのユーザーコメントでも指摘されているように、犯人の正体は早い段階(冒頭10分以内)で推測可能。サスペンス映画として、観客を驚かせるひねりが不足しているのは残念。また、ストーリーのいくつかの展開は非現実的で、観客に「なぜそうする?」と思わせる瞬間が多いです。例えば、アニーが家族や自身の安全が脅かされているにもかかわらず、警察に通報しない選択を繰り返すのは、物語の論理性を損ないます。、これについて、あるレビューでは「主人公が信じられないほど愚かか、極端にナイーブ」と批判されていました。
キャストの演技も一貫性がなく、全体の印象を下げています。ドビンスは主役として安定しているのですが、脇役の一部(特にルイス・マンディロア演じるキャラクター)は、感情の表現が平板で、物語の重みを十分に支えきれていません。また、映画全体のプロダクション価値は低予算を反映しており、照明やカメラワークは機能的だが際立った芸術性はありません。サウンドトラックも平凡で、緊張感を高める役割を果たしきれていません。
個人的に、『イントゥ・ザ・トラップ』は「気軽に楽しむ」タイプの映画として割り切れば悪くないと感じました。Lifetime映画のファンなら、予測可能な展開やメロドラマ的な要素も含めて楽しめます。しかし、深いサスペンスや複雑なキャラクター造形を求める観客には物足りないことに。Leisurebyteのレビューが「ストーリー、演技、キャラクターすべてが印象に残らない」と評した点は、厳しいが的を射ています。それでも、退屈な日に何も考えずに見るには十分なエンターテインメント性があります。特に、アニーの職業的ジレンマと個人的危機が交錯する場面は、共感を呼ぶ瞬間もありました。
最後に、映画のテーマである「不適切な行動(impropriety)」は、タイトル通り物語の核ですが、倫理的な探求は表面的に終わります。アニーの行動がもたらす結果は描かれるものの、なぜ彼女がその選択をしたのか、背景や動機の掘り下げが不足。この点が、映画が「まあまあ」止まりの理由でしょう。総合的には、期待を高くしなければ、そこそこ楽しめるB級サスペンス。
解説
『イントゥ・ザ・トラップ』は、2021年にオクラホマで撮影されたTV向けサスペンス映画で、Formula Features, LLCが製作し、オクラホマ・フィルム+ミュージック・オフィスの支援を受けました。物語の中心は、検察官アニー・セーガンが、ライバル弁護士ダグ・ラーソンとの一夜の後に彼の殺人事件に巻き込まれ、自身が容疑者として疑われるとともに、事件の検察官として担当することになるという複雑な状況。この設定は、職業倫理と個人的危機の衝突を描くサスペンスの定型を踏襲しています。
テーマと構造
映画の原題『Impropriety』は、「不適切な行動」や「不道徳」を意味し、アニーの行動(ライバルとの一夜、事件への個人的関与)が物語の推進力となります。サスペンス映画としては、以下のような典型的な構造をもちます。
- 導入:アニーの私生活(恋人との破局)と職業生活(検察官としての成功)が紹介され、ダグとの出会いへと進む。
- 事件:ダグの殺害とアニーの関与が発覚し、彼女が容疑者として疑われる。
- 葛藤:アニーが事件を担当する検察官となり、個人的な危機と職業的責任の間で板挟みになる。
- 解決:犯人の正体が明らかになり、アニーの無実が証明される。
この構造は、Lifetimeネットワークのテレビ映画でよく見られるパターンで、観客に馴染みやすい一方、斬新さには欠けます。テーマ的には、倫理的ジレンマや「外見上の不適切さ(appearance of impropriety)」が強調されるのですが、深掘りは不十分。例えば、アニーの行動が職業倫理にどう影響するかは描かれるが、彼女の内面的な動機や社会的な圧力についてはほとんど触れられません。
文化的・社会的背景
『イントゥ・ザ・トラップ』は、2021年のアメリカのテレビ映画文化、特にLifetimeネットワークの文脈で理解する必要があります。Lifetimeは、女性主人公を中心に据えたメロドラマやサスペンスを得意とし、家庭内ドラマや個人的危機を強調する傾向があります。本作もその例に漏れず、女性検察官の視点から、恋愛、裏切り、危険を描写。アニーのキャラクターは、職業的に成功した女性が個人的な過ちによって危機に瀕するという、Lifetime映画の典型的な原型を体現しています。
また、映画の製作背景として、オクラホマでの撮影はコスト削減と地域の映画産業振興を目的としたもの。オクラホマ・フィルム+ミュージック・オフィスは、地元クルーの雇用やロケーションの活用を強調しており、本作はカリフォルニアでは得られないユニークなロケーションを活かしたとされます。しかし、画面上ではそのロケーションの魅力が十分に伝わらず、汎用的な都市設定に終始しています。
映画的特徴
監督ナディーム・スマーは、低予算映画の効率的な製作に定評があり、本作も90分というコンパクトな尺で物語を収めています。カメラワークは機能的で、クローズアップを多用してキャラクターの感情を強調しますが、視覚的な革新性はなし。編集はテンポを保つために迅速ですが、シーンのつなぎ目が粗い部分もあります。音楽は、緊張感を高めるための標準的なサスペンス調で、記憶に残るメロディはなし。
キャストでは、アンナ・マリー・ドビンスがアニー役で感情的な重みを担います。彼女の演技は、恐怖や葛藤を表現する場面で効果的ですが、脚本の限界によりキャラクターの深みが不足。コルト・プラッツのダグは短い出番ながら存在感があり、ルイス・マンディロアは脇役として安定していますが、際立った印象は残しません。
批評的評価と意義
批評家の反応は厳しく、IMDbの平均評価は4.8/10と低め。Leisurebyteは「致命的な失敗」と呼び、ストーリーや演技が印象に残らないと批判。Letterboxdでは「創造的な不適切さ(creative impropriety)」の例として揶揄され、ゼロ点評価も見られます。一方、一部の視聴者は「退屈な日に見るには悪くない」と肯定的な意見も寄せています。
映画の意義は、低予算サスペンスの商業的役割にあります。Lifetime映画は、深い芸術性を目指すよりも、手軽なエンターテインメントを提供することを優先します。『イントゥ・ザ・トラップ』は、その目的をある程度達成していますが、予測可能な展開や非現実的な脚本が限界となっていました。サスペンス映画のファンやLifetimeの常連視聴者には受け入れられるかもしれないのですが、広く推奨される作品ではありません。
結論
『イントゥ・ザ・トラップ』は、典型的なテレビ向けサスペンス映画として、一定の娯楽性を提供しますが、脚本の浅さや演技のムラが足を引っ張ります。アニーの倫理的葛藤や危機的状況は興味深いものの、物語の掘り下げが不足し、観客に強い印象を残せません。それでも、低予算映画の枠組みやLifetimeの文脈を理解すれば、その意図と限界が見えてきます。サスペンスの入門編としては機能し、傑作を期待する観客には物足りないはず。
以上、『イントゥ・ザ・トラップ』は、気軽なサスペンスとして楽しむ分には悪くないものの、深い感動や驚きを求めるなら他の作品を勧めます。
キャスト
登場人物 | 出演者 |
---|---|
アニー・サガン | アンナ・マリー・ドビンス |
マーク | コルト・プラテス |
ダグ・ラーソン | ルイス・マンディロール |
ダニエル | アーリカ・トラボナ |
クリスタル | ニーシャ・レニー・ギルボット |
ジョージ | エリック・スターキー |
クエンティン・クルス | マーティ・ウィリアムズ |
ミラー判事 | シドニー・フラック |
ミッチ・ワーナー | ブライアン・ウォートン |
カーソン判事 | ドリュー・ポロック |
スタントン判事 | ダニエル・ロジャース |
警察署長 | マイケル・ギボンズ |
テニス・インストラクター | ベン・リチャードソン |
ハレー氏 | ジョニー・ホーン |
トニー・ペリエラ | ダレン・ダンバー |
サラ・ウィリアムズ | ビクトリア・クルーズ |
リサ・サヴィル | パメラ・バンクス |
ジョジー・フェロー | ブリット・アレン |
トニー | レイモンド・ロバーツ |
D.A.受付 | サラ・スミス |
ジェナ・アレン | アシュリー・ファビアン |
ブリアンナ・ノール | ビクトリア・クルーズ |
テニスプレーヤー | ダニエル・ギルボット |
テニスプレーヤー | マドレーヌ・ギルボット |
ニュースクルー | マティ・ウォーカー |
コーヒーショップの女性 | バービー・ベイリー |
募金活動パトロン | メアリー・C・ブルース |
審査員 ほか | ダニエル・フォートマン |
ジャッキー | コニー・フランクリン |
ゲストパトロン | ラリー・ゴールデン・シニア |
報道記者 | レナ・ハーモン |
キング判事 | スティーブ・マドックス |
記者 | シェリル・マコーネル |
喫茶店の常連客 ほか | アマンダ・ピアース |
ジャズ常連客 | デスティニー・シャイアン・セラーズ |
ジャズ常連客 | メリッサ・セラーズ=ダーラム |
報道カメラマン | デヴィッド・C・タム |
募金活動出席者 ほか | エイプリル・ウォーレン |
喫茶店の常連客 | ニシャ・ワシントン |
バレット | ケビン・ヤップ |
スタッフ
監督 | ナディーム・スマー |
衣装監督 | ホリ・テイラー |
メイクアップ部長 | ケイラ・ビーツ |
レビュー 作品の感想や女優への思い